従来の報告では,
Pasteurella multocidaはBTB寒天培地上で発育しないと記載されている.しかも本菌は, この性状に基づいて分離・鑑別されている.しかし, 筆者は一部の
Pasteurella multocidaがBTB寒天培地上で発育することを経験した.そこで, 今回
Pasteurella multocidaがBTB寒天培地上で, どの程度発育するかを確認する目的で, 市販BTB寒天培地について, 生培地および各pHに調整した乾燥培地上での
Psteurella multocidaの発育について検討を行った.被検菌株としてヒト由来株, 動物由来株等10株を用い, 滅菌生理食塩液に菌を浮遊させ濃度をMcFarland No.0.5に調整し, 培地上に接種した.培地はBTB寒天培地, 血液寒天培地等3社5種類の生培地とBTB寒天培地の乾燥培地を用いた.
検討項目および成績は以下のとうりである.1.各培地のpHの測定: 実測値と能書の記載の間に, 解離のあるものが存在した.2.室温37℃, 42℃における本菌の発育: BTB寒天培地では37℃が最良であった.但し, 集落の形成の程度は各社により差が認められた.3.各pHのBTB寒天培地上での発育: 培地のpHがアルカリ性側に傾く程, 発育は良好であり, とくにpH7.4, 8.2が最良であった.
今回の実験の結果,
Pasteurella multocidaのBTB寒天培地上での発育が確認された.従来の報告と, 今回の検討結果との相違の原因として, 1.培地の栄養状態の変化2.培地のpHの相違に起因する発育の違いが主に考えられた.
以上, 集落の形成の程度・発育の程度に差はあるものの
Pasteurella multocidaのBTB寒天培地上での発育を確認し報告した.
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