感染症学雑誌
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63 巻, 2 号
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  • 佐野 浩一, 矢木 崇善, 森松 伸一, 加藤 公生, 坂中 勝, 大久保 進, 安永 幸二郎, 中井 益代
    1989 年 63 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    逆転写酵素阻止抗体に代わる非RI検査を見いだすために逆転写酵素阻止抗体とCD-4陽性細胞数, CD-8陽性細胞数, CD-4/-8比, 更にフォトデンシトメトリーを用いたウエスタンブロットの解析から得られたP65抗体とP51抗体の相対量とをヒト免疫不全症ウイルス抗体陽性血友病患者の血清について比較した.その結果p65抗体が逆転写酵素阻止抗体に代わり得ることが明らかになった.
  • 向井 将, 浅岡 一之, 村上 説子, 鈴木 一馨, 向井 千珈子
    1989 年 63 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    chlamydiaが原因菌と考えられる上深頸部リンパ節炎4例, 滲出性中耳炎1例, 計5例に新しい16員環Macrolide系抗生剤Rokitamycin dry syrupを投与し, その臨床効果について検討した.その結果, 1.上深頸部リンパ節炎4例 (C.psittaci 4例,) では, 20.0~28.6mg/kg/dayを10~42日間投与し, 著効2例, 有効2例の優れた成績が得られた.
    2.滲出性中耳炎1例 (C.trachomatis) では, 30.0mg/kg/dayを15日間投与し, 有効の成績であった.
    3.全例において副作用は認められなかった.
    以上より, 小児の上深頸部リンパ節炎および滲出性中耳炎の治療薬としても本薬剤が使用可能であることが判明した.
  • HBsAg消失例の検討
    田村 偉久夫, 市村 宏, 椿尾 忠博, 栗村 統, 栗村 敬
    1989 年 63 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    3年間以上追跡調査のできたHBVキャリア1,029例のうち56例で血中のHBsAgが消失し, 24例でanti-HBsが出現 (HBsseroconversion) した.これら56例を対象に年間のHBsAg消失率ならびにHBs seroconversion (SC) 率を検討するとともに, デルタ肝炎ウイルス (HDV) 重複感染とHBsAg陰性化との関連について検討した.
    1.人年法による年間HBsAg消失率は0.94%であり, 年間HBsSC率は0.27%であった.年齢階層別の年間HBsAg消失率ならびに年間HBsSC率は, 30歳以上で加齢と共に増加した.
    2.血中デルタ抗体 (anti-HD) は56例中3例に検出された.この3例中2例は肝機能異常に伴ってanti-HDが出現し, その2年後にHBsAgが消失した.残り1例も肝機能異常に伴ってanti-HDの出現をみたが, HBsAgの消失はanti-HD出現から6年後であった.これらの3例中1例はHDV以外の要因によりHBsAgが消失した可能性も考えられるが, 残りの2例はHBVキャリアのHBsAg陰性化にHDVの重複感染が関与していると思われた.
  • 山本 正悟, 川畑 紀彦, 大浦 恭子, 村田 道里, 南嶋 洋一
    1989 年 63 巻 2 号 p. 109-117
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    宮崎県の慈虫病患者から分離されたRickettia tsutsugamushi (Rt) の抗原性を, モルモット免疫血清とモノクローナル (MC) 抗体を用い, 間接蛍光抗体法で調べるとともに, 1985年から1988年にかけて宮崎県で発生した患者のうち317名の血清抗体価を間接蛍光抗体法で測定し, 以下の成績を得た.
    1) 1981年に発生した患者から分離されたKawasaki株とKuroki株は, これらの株および標準株 (Karp, Kato, Gilliam株) ひご対する免疫血清のうち, それぞれ対応する免疫血清と最も強く反応した.2) Kawasaki株は, 標準株に対するMC抗体 (抗Karp株: 1-19, 抗Kato株: 2C-6, 抗Gilliam株: 4B-6) のいずれとも反応せず, Kuroki株は1-19と2C-6とのみ若干反応した.3) 1985年に発生した患者から分離されたRtのうち17株は, 前記の免疫血清とMC抗体に対して, Kawasaki株類似の反応性を示し, 他の10株はKuroki株類似の反応性を示した.4) 317名の患者中233名 (74%) は, Kawasaki, Kurokiおよび標準株のうち, Kawasaki株に, 69名 (22%) はKuroki株にそれぞれ最も高い血清抗体価を示した.
    以上の成績から, Kuroki株がKawasaki株と同様に標準株と異なる抗原性をもつこと, Kawasaki株とKuroki株が互いに異なる抗原性をもつこと, および1985年の患者から分離されたRtがKawasaki型とKuroki型に型別されることが示された.宮崎県においては, Kawasaki型が優勢であるが, Kawasaki型とKuroki型のRtが分布し, 志虫病の流行を引き起こしていることが示唆された.
  • Corynebacterium pseudodiphtheriticumによるBranhamella catarrhalisのin vitro付着抑制について
    力富 直人, 秋山 盛登司, 松本 慶蔵
    1989 年 63 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Branhamella catarrhalis (B. catarrhalis) 性呼吸器感染症の患者発生には冬に多く, 夏に少ないという季節変動が見られる.この季節変動の要因としての咽頭常在細菌叢の役割を明らかにするため, 慢性の呼吸器疾患を有する患者45名に対し1年間を通じ計77回の咽頭培養を施行した.咽頭常在細菌叢のうちCorynebacterium speciesは冬に低値 (0%) で夏に比較的高い頻度 (30%) で分離された.これらの事実より咽頭の粘膜表面上で両菌間には競合的関係があるのではないかという仮説をたててinvitroで患者咽頭上皮細胞に対する B. catarrhlaisと常在性のCorynebacterium pseudodiphtheriticum (C. pseudodiphtheriticum) の競合付着実験を行なった.その結果, B.catarrhlaisはC.pseudodiphtheriticumを先行して付着させた場合でも, 同時に付着させた場合でも単独時に比べ有意に (p<0.02) 付着率が低下した.また同時付着におけるC. pseudodiphtheriticumの付着率 (平均13.86) はB.catarrhalisの付着率 (平均1.22) より高かった.両菌の血液寒天培地上の増殖には相互抑制効果は見られなかった.以上より咽頭常在細菌叢の一種であるCorynebacterium speciesは患者咽頭粘膜上皮細胞へのB.catarrhalisのcolonization及び下気道感染症への進展を阻止する可能性を有しており, B. catarrhalis性呼吸器感染症が夏に少ないことの要因の1つとなりうることが示唆された.
  • 荒島 康友, 井口 和幸, 川端 真人, 熊坂 一成, 奥山 清子, 河野 均也
    1989 年 63 巻 2 号 p. 125-129
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    従来の報告では, Pasteurella multocidaはBTB寒天培地上で発育しないと記載されている.しかも本菌は, この性状に基づいて分離・鑑別されている.しかし, 筆者は一部のPasteurella multocidaがBTB寒天培地上で発育することを経験した.そこで, 今回Pasteurella multocidaがBTB寒天培地上で, どの程度発育するかを確認する目的で, 市販BTB寒天培地について, 生培地および各pHに調整した乾燥培地上でのPsteurella multocidaの発育について検討を行った.被検菌株としてヒト由来株, 動物由来株等10株を用い, 滅菌生理食塩液に菌を浮遊させ濃度をMcFarland No.0.5に調整し, 培地上に接種した.培地はBTB寒天培地, 血液寒天培地等3社5種類の生培地とBTB寒天培地の乾燥培地を用いた.
    検討項目および成績は以下のとうりである.1.各培地のpHの測定: 実測値と能書の記載の間に, 解離のあるものが存在した.2.室温37℃, 42℃における本菌の発育: BTB寒天培地では37℃が最良であった.但し, 集落の形成の程度は各社により差が認められた.3.各pHのBTB寒天培地上での発育: 培地のpHがアルカリ性側に傾く程, 発育は良好であり, とくにpH7.4, 8.2が最良であった.
    今回の実験の結果, Pasteurella multocidaのBTB寒天培地上での発育が確認された.従来の報告と, 今回の検討結果との相違の原因として, 1.培地の栄養状態の変化2.培地のpHの相違に起因する発育の違いが主に考えられた.
    以上, 集落の形成の程度・発育の程度に差はあるもののPasteurella multocidaのBTB寒天培地上での発育を確認し報告した.
  • 恒川 琢司, 熊本 悦明
    1989 年 63 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    慢性前立腺炎におけるChlamydia trachomatisの起炎菌としての関与を検討する目的で, 慢性前立腺炎症例における血中, 前立腺分泌液中抗C.trachomatisIgA・IgG抗体価をindirect immunoperoxidaseassayを用いて検討し, 以下の結果を得た.
    1) 慢性前立腺炎症例群132例 (前立腺分泌液中WBC数≧10個/HPF) において, 血中, 前立腺分泌液中IgA・IgG抗体価は, 慢性前立腺炎疑い群42例 (前立腺分泌液中WBC数く10個/HPF), 炎症を認めない正常男子群22例 (前立腺分泌液中WBC数=0個/HPF) に比し, 高い陽性率を示した.
    2) 慢性前立腺炎症例において, IgA抗体価は前立腺分泌液中に, IgG抗体価は血中に, 高抗体価を示す傾向を認めた.これはC.trachomatisにより前立腺で炎症が起こることによる局所免疫能の発現を示す結果と考えられた.
    3) 前立腺分泌液中のIgA抗体価陽性症例に対し, DOXYにて治療したところ, IgA抗体価の低下, 及び炎症所見の軽減を認めた.
    4) C.trachomatisに'よる感染を疑われる慢性前立腺炎症例の妻において, 血中IgA・IgG抗体価陽性例を高頻度に認めた.
    以上の成績は慢性前立腺炎における, C.trachomatisを起炎菌としての関与を示す結果と考えられた.
  • 内山 秀和, 等々力 達也, 松井 清治
    1989 年 63 巻 2 号 p. 138-144
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    低温環境におけるnon-01 Vibrio choleraeの生存と増殖へのcationの影響について実験を行なった.環境条件として, いろいろな濃度のNaCl溶液, そして1価と2価のcationとpeptonを栄養源として加えた水溶液を, 幾つかの温度条件を設け検討を加えた.これらの実験の結果は, 低温環境でもnon-01 Vibrio choleraeの生存延長の可能性を示した.即ち, 栄養がない場合0.4%から2.0%のNaCl濃度において, この菌の生存は10℃から20℃ の水温範囲で良好であった.栄養源がある場合, 約10mMの2価cationと0.3%以上のNaC1濃度のとき, この菌は10℃ で増殖することができ生存状態が良好であった.このことは, 温暖な水温の場合のみでなく比較的低温の10℃での生存の可能性を示唆した.
  • 白血球減少マウスにおける緑膿菌性腎盂腎炎での検討
    田仲 紀明, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 横尾 彰文
    1989 年 63 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cyclophosphamideの2回投与により感染日から感染7日後の屠殺日までの間末梢白血球数が2000/mm3前後に減少した状態を保たせたマウス実験モデルを作成した.そのマウスに対し緑膿菌 (G群) による上行性尿路感染実験を行い, ヒトGranulocyte-colony stimulating factor (G-CSF) の予防および治療効果について検討した.Cyclophosphamide群は正常対照群に比し有意に易感染性化した.Cyclophosphamide群にG-CSF2μg/day/mouseの予防投与を行った群では, Cyclophosphamide単独群より有意に感染発症率と感染死亡率が低値となり感染防御効果を認めた.しかしG-CSFの治療投与を行った群では感染発症率および感染死亡率の低下は認めず治療効果は認めなかった.
    G-CSFの予防投与により感染日の好中球数の増加は認めないが, 感染7日後の屠殺日における好中球数はcyclophosphamide単独群より有意に増加した.しかしG-CSFの治療投与では, 屠殺日までは明らかな増加は認めなかった.次に腹腔浸出好中球の貧食殺菌能を検討するとCyclophosphamide単独群では正常対照群より著明に低下したが, G-CSFの予防投与により有意に亢進を認めた.以上の結果からG-CSFは好中球減少マウスにおいて細菌感染予防効果を有し, その作用機序は好中球数の増加と貧食殺菌能の促進の両者にもとずくものと考えられた.
  • 健山 正男, 比嘉 昌文, 嘉数 朝一, 宮城 睦子, 志喜屋 孝伸, 新垣 民樹, 兼島 洋, 伊良部 勇栄, 下地 克佳, 橘川 桂三, ...
    1989 年 63 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は最近肝硬変患者に発症したVirio vulnificus敗血症の1例を経験し, 早期診断, 早期治療により救命し得たので, 2年前に経験した死亡例とあわせて報告した.
    症例1は58歳男性.B型肝炎キャリアーからの発症と思われる肝硬変を有し, 生貝類摂取後約4時間目から急に悪寒戦傑, 高熱, 両側前腕部の紅斑が出現し, 当科へ緊急入院となった.入院時現症より敗血症が強く疑われたので, 直ちにcefoperazoneを投与した.入院時の血液培養にてVibrio vulnificusを分離し, 治療経過中にpre-disseminated intravascular coagulopathy (preDIC) を併発したものの, 早期診断, 早期治療により治癒し得た.症例2は53歳男性.アルコール性肝硬変にて入院加療中, 寿司を摂取後2日後より悪寒戦標, 発熱が出現し, 血液培養にてV. vulnificusが分離された.検査直後から開始したcefazolinにより臨床症状の改善がみられ, 経過良好であったが, 治療第16病日より再度発熱がみられ急激に状態が悪化し, 発病第22病日に死亡した.
    分離された2症例の菌はいずれも多くの抗生剤に感受性を示していたが, 第1ないし第2世代のセフェム剤には高いMIC値を示した.
  • 竹中 章
    1989 年 63 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    患者は71歳, 男性.粘血下痢, 腹痛を主訴とし, 大腸粘膜生検および血清反応の結果からアメーバ赤痢の診断にて入院した.扁桃扁平上皮癌手術後2年前より5-FUの投与をうけており, Tリンパ球減少, T4/T8比0.36と細胞性免疫不全の状態であった.戦時中外地でアメーバ赤痢に罹患しており, 制癌剤の服用を契機として再発したものと考えられた.日和見感染症の1つとしてアメーバ症の1例を報告した.
  • 竹中 章, 青木 知信
    1989 年 63 巻 2 号 p. 166-169
    発行日: 1989/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    患者は62歳女性で, 35年間にわたり前胸部腫脹, 自然排膿をくり返していた.膿よりチフス菌Salmonella typhiが検出され, CTにて胸骨をとり囲んだ胸壁膿瘍が確認された.チフス菌による膿瘍形成は稀であるのでここに報告した.
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