日本蚕糸学雑誌
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46 巻, 4 号
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  • II. 蚕の人工飼料の窒素留存率におよぼす蚕品種の影響
    松岡 道男, 須藤 光正
    1977 年 46 巻 4 号 p. 279-282
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭層の生成量の異なる多糸量系および少糸量系のカイコを用いて, 人工飼料育における5齢期の食下窒素の蚕体各組織への分配を, 窒素留存率によって比較した。5齢3日目から5日目までの期間で調べると, 食下量に対する留存率は, 絹糸腺については少糸量系に比し, 多糸量系が多く, 消化管および蚕体については, これらに大きな差がなかった。また多糸量系では絹糸腺が他組織よりも著しく多かった。消化量に対する窒素留存率も食下量の場合と同様であった。さらに飼料の窒素化合物の消化率も多糸量系の方が少糸量系より高かった。
  • 本間 慎, 白田 和人
    1977 年 46 巻 4 号 p. 283-290
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    東邦亜鉛KK安中製錬所近辺の重金属汚染土壌を用いてクワのさし木苗のポット試験を行い, 土壌中の重金属濃度ならびに土壌pHの違いがクワの乾物生長と器官別重金属濃度におよぼす影響について検討した。
    1. 土壌pHが低く, それに加え, 土壌重金属濃度が高くなると, クワの発根阻害や根の奇形化をもたらし, 桑葉にはクロロシスが発現した。
    2. クワの乾物生長阻害は土壌中の重金属濃度が高いほど大きく, 土壌pHの低下はさらにその阻害度を顕著に高めた。しかし, そのような土壌でも土壌pHを7.0に調整するとクワの乾物生長は軽減された。
    3. カドミウムおよび亜鉛の吸収量は土壌重金属濃度が高いほど, また土壌が酸性化するほど大であった。
    4. 展開器官中の重金属濃度は土壌pHが高いほど低下した。ただし, 高濃度区の葉および新条のカドミウム濃度は土壌pH5.5よりpH7.0の方が高い値を示した。
  • 阿部 芳彦
    1977 年 46 巻 4 号 p. 291-296
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エリサン, ハラアカマイマイおよびマツカレハに由来する細胞質多角体病ウイルスの多角体をカイコ幼虫へ接種し, 宿主を異にした場合の各多角体の形状について観察した。
    ハラアカマイマイおよびマツカレハ細胞質多角体の形態は18面体 (6個の正方形の面および12個の6角形の面よりなる) および斜方12面体 (12個のひし形の面よりなる) であった。これをカイコ幼虫に接種した場合, 感染初期には4角形の多角体が形成され, 感染末期には5~8角形の多角体が出現した。その立体像は, 18面体の正方形の面が長方形になったもの, および斜方12面体の一部の面が5角形に変形したものであった。
    エリサン細胞質多角体の形態は5角12面体 (12個の正5角形の面よりなる) であった。これをカイコ幼虫に接種しても, 形成された多角体の立体像は接種原の多角体と同じであった。
  • I. SFVとIFVにおける感染力価ならびにホルマリンと熱に対する感受性の差異
    古田 要二
    1977 年 46 巻 4 号 p. 297-300
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    SFVとIFVを種々の割合で混合し, 日124号に接種した場合におけるウイルスの混合割合と感染力価との関係ならびに, SFVとIFVのホルマリンまたは熱による不活化について実験を行った。
    1. IFVを単独で日124号に接種するとLD50は極めて低い値を示したが, IFVへのSFVの混合割合が大きくなるに従ってLD50も高くなり, このLD50はSFVによることが示された。なお, SFVによる発病に及ぼすIFV接種の影響は認められなかった。
    2. SFVとIFVとはホルマリンおよび熱に対する感受性が異なり, IFVに比してSFVはより抵抗性であることが示された。このことから, SFVの混在するFVを熱処理 (65℃, 30分間) して接種した発病蚕より抗SFV血清にのみ反応するウイルスを分離することが可能であることが示された。
  • III. 眠期における脂肪細胞の更新におよぼすウイルスの影響
    阿部 芳彦
    1977 年 46 巻 4 号 p. 301-305
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の眠期における脂肪組織の新生およびこれにおよぼす核多角体病ウイルスの影響について病理組織学的な観察を行った。
    幼虫の脂肪組織は眠期の直前より有糸分裂により増殖し, 眠期には基底膜が融解して細胞は個々に遊離した。その後脱皮の時期には再び新しい組織が形成された。この現象はいずれの齢においても観察された。
    核多角体病ウイルスを接種した場合には前述の脂肪組織の改変は顕著に阻害された。低温処理後に本ウイルスを接種した場合には新生脂肪組織の発達は顕著に阻害された。一方, 大造では低温処理後のウイルス接種でも新生脂肪組織の発達は阻害されず, 低温処理後のウイルス接種に強い抵抗性を示した。
  • 井上 元
    1977 年 46 巻 4 号 p. 306-312
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    軟化病ウイルス (IFV), 小型軟化病ウイルス (SFV), または細胞質多角体病ウイルス (CPV) に感染したカイコ幼虫の高温処理による発病抑制を追究した。
    各脱皮期毎に37℃で24時間高温処理を行うことによって, 致死量のIFVを接種したふ化幼虫を営繭に導くことができた。高温処理の適期は眠中~脱皮後12時間までであり, この時期には処理効果が顕著であるが, 脱皮後24時間以降では営繭幼虫はみられなかった。なお, 脱皮直後の幼虫に対しては6時間の高温処理でも治療効果がみられた。
    SFV感染幼虫を37℃で処理するとSFVの増殖が阻止され, 脱皮期ならびに高温処理期間中に中腸皮膜組織のSFV抗原量が減少した。一方, CPVでは37℃で多角体形成が顕著に阻害され, またCPV感染中腸細胞は脱皮期に脱落し新生細胞で補填された。
    これらの結果から, 高温処理がIFV, SFVおよびCPV感染幼虫の治療に有効であることが明らかにされた。
  • 前田 進, 渡部 仁, 松井 正春
    1977 年 46 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    軟化病ウイルス (伊那株) の精製法について検討を行った。また精製伊那株ウイルスに対する抗血清を作成し, Ouchterlony 法により坂城株ウイルスとの血清学的関係を調べた。それらの結果は次の通りである。
    1. 病蚕中腸を材料にしてフロロカーボン処理-50% (W/W) ショ糖液の分画遠心-ショ糖密度勾配遠心を行う方法により, 比較的簡単に純度の高いウイルスが精製できた。この精製方法の過程でクロロホルム処理あるいは硫安塩析を行っても精製度は変らなかったが, 50%ショ糖液を用いないで超遠心を行った場合には精製度が低かった。またショ糖密度勾配遠心のかわりにCsCl密度平衡遠心を行った場合には精製度はかなり低下した。
    2. 精製伊那株ウイルスの抗血清はFVと反応しなかったが, 坂城株から分離された小型軟化病ウイルス (松井株) とはよく反応し, 伊那株ウイルスは松井株ウイルスと近縁もしくは同種のウイルスと推定された。
  • 斎藤 英毅, 松尾 卓見
    1977 年 46 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    風洞内において, Fusarium lateritium f. sp. moriF. solani f. sp. mori の分生胞子の離脱・飛散条件を調査したところ, これら病原菌の分生胞子は風のみでは離脱せず, 水滴をともなった風でよく離脱・飛散し, 風速が増すにつれて離脱分生胞子数・飛散距離がともに増加する傾向がみられた。野外で降雨時に雨水を採集し, 罹病枝からの距離別に含まれる分生胞子の数を調査したところ, 罹病枝に近い程胞子数は多いが, 2m離れた地点でも採集された。これは上述の離脱・飛散条件についての実験結果を裏づけるもので, 主として雨中の風によるものと推定される。桑条上でスポロドキヤをなす分生胞子のみならず, 一旦空中に浮遊し桑条や桑葉上に沈着している分生胞子についても同様に雨をともなった風によって飛散し, 9月あるいは10月頃ならば重要な伝染源になるものと推定される。
  • II. 異なる飼料組成にて飼育した蚕糞中の数種フェノールカルボン酸量の比較
    飯塚 敏彦, 小池 説夫, 水谷 純也
    1977 年 46 巻 4 号 p. 325-330
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉育ならびに人工飼料育の蚕糞中に含まれるprotocatechuic acid (PA), p-hydroxybenzoic acid (HA) および caffeic acid (CA) の定量を行った。これら3物質の定量は, 抗菌性物質を含む酢酸エチル可溶物をTMS化し, ガスクロマトグラフィー (GLC) によって行った。
    その結果, 桑葉育においてはPAが抗菌性物質の主成分であること (乾燥糞当り0.173%) ならびにHAも検出されたがCAは検出されなかった。一方, 人工飼料育においては桑葉粉末を添加した人工飼料育蚕糞中にはPA, HAが検出されるとともにCAも検出された。PAの量は桑葉育蚕糞の約1/3~1/4であった。
    桑葉粉末を含まない飼料 (LP0) においては, 3物質はいずれも検出されなかった。
    LP0飼料に1% chlorogenic acid を添加して飼育した区から得た蚕糞ではPAとCAか検出された。
    クロラムフェニコールを除去したLP50飼料による無菌飼育ならびに staphylococcus epidermidis 単一種を添加して飼育した区から得た蚕糞では, 対照区に比べ量的に3物質とも顕著な差が認められなかった。
    LP25飼料にPA, HA, CA, quinic acid (QA), p-coumaric acid (pCA), quercetin (QU) をそれぞれ添加して飼育した区から得た蚕糞では, 3物質の定量の結果, CA添加区でPAが増大すること, なちびにpCA添加区でHAが増大することが明らかになった。
    なお, これらのフェノールカルボン酸類添加飼料の家蚕若齢幼虫におよぼす成長促進効果は, CA, pCAおよびPAにおいて顕著に認められ, QUとQAにおいて成長阻害が認められた。
  • 島田 秀弥, 山下 興亜, 長谷川 金作
    1977 年 46 巻 4 号 p. 331-337
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕蛹の卵巣における糖の透過機構をD-アラビノースを用いて検討した。
    1. D-アラビノースの卵巣への取り込みは, 培養後すばやく取り込まれる相とその後ゆっくり取り込まれる相が示された。
    2. D-アラビノースの卵巣への取り込みは濃度差に逆らった過程を示し, D-アラビノースの卵巣への取り込みは濃度勾配に対し飽和現象を示した。
    3. D-アラビノースの取り込みに対するD-グルコースの阻害効果が示された。
    4. D-アラビノースの卵巣への取り込みに対する親和性はD-グルコースのそれよりも低かった。
    5. 各種糖類の卵巣への取り込み量の多い順位は, ペントース類ではD-キシロース>L-アラビノース>L-キシロース≒D-アラビノースであり, ヘキソース類では, D-フラクトース≧D-グルコース>D-マンノース>D-ガラクトースであった。
    6. D-アラビノースの取り込みは代謝阻害剤 (NaCN, NaN3) で阻害された。
    7. 卵巣への糖の透過機構は濃度勾配にしたがった拡散による過程と代謝エネルギー依存性の能動輸送による過程とから成り立つと推察した。
  • 倉田 啓而, 重松 孟
    1977 年 46 巻 4 号 p. 338-346
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    4倍体蚕を作りその絹糸腺の核酸量と繭層重の関係および絹糸腺細胞数を調べた。それらの結果をもとに4倍体蚕の絹糸蛋白質産生の増大の可能性を考察した。4倍体の絹糸腺細胞のDNA量は2倍体蚕に比較し2倍となったが, RNA量は2倍とならなかった。繭層量は2倍体蚕の78%にとどまった。4倍体蚕の絹糸腺細胞数は2倍体蚕の半分に減少した。中腸組織のDNA量が2倍体蚕と変らないことから推定し, 中腸細胞の数も2倍体蚕の半数の可能性が高い。
    勝木モザイク蚕を用いて日124号および610とのモザイク蚕を作り, モザイク蚕の絹糸腺重と核酸量との関係を調べた。モザイク蚕の絹糸腺重は皮膚モザイクと一致した左右モザイクとなり多糸量系と少糸量系の表現型をとった。同時に後部絹糸腺のDNA量, RNA量とも良く一致した。RNA合成量はそれに関連した遺伝子群の支配をうけ, その遺伝子群の発現状態はまた生体の生理的条件にも影響をうけていると考えられた。また遺伝的に不変と思われていたDNA量も生体の生理的条件により可動である可能性がみられ。
  • I. 本属菌のホルムアルデヒド酸化作用について
    柳田 健郎, 西城 澄雄
    1977 年 46 巻 4 号 p. 347-352
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Aspergillus flavus-oryzae 系菌種の中からホルムアルデヒド抵抗性を異にする菌株を選び, 培養による培地中のホルムアルデヒドの消失および菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用とホルムアルデヒドに対する抵抗性の関係を調べ, 次の結果を得た。
    1. 供試菌をホルムアルデヒド添加培地に培養すると菌の発育に伴って培地中のホルムアルデヒド量が著しく減少した。また, 菌体抽出液を作用させてもホルムアルデヒド量の著しい減少が認められた。この現象は菌株間のホルムアルデヒド抵抗性と平行的であった。
    2. 菌体抽出液によるホルムアルデヒドの酸化はホルムアルデヒド添加培地による培養によって著しく増加し, 抵抗性の弱い菌株ほど顕著であった。
    3. 菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用は50℃の温度処理によって著しい減少が認められ, 60℃, 5分間処理で完全に消失した。
    また, 金属イオンによる菌体抽出液のホルムアルデヒド酸化作用はCaCl2, CuSO4, LiSO4, Na2SO4およびZnSO4によって著しく阻害された。
    4. 培養滬液および菌体抽出液によるホルムアルデヒド酸化作用を比較した結果, 培養汚液による作用は微弱であったが, 菌体抽出液では著しく強い酸化作用が認められた。
    5. 菌液抽出液をホルムアルデヒドに作用させると, ホルムアルデヒド量の減少にともなって, 定性的あるいは定量的にもギ酸の生成が認められた。
  • II. ウイルスの株別による2・3の性状
    古田 要二
    1977 年 46 巻 4 号 p. 353-358
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    IFV, SFV, 松井継代株, 姫野継代株および伊那株について蚕品種別感受性, 血清学的性状, ウイルスのCsClによる平衡密度勾配遠心法による精製および電子顕微鏡による観察を行った。
    1. 蚕品種別感受性では, SFVと伊那株が同一傾向を示し, 支124号, 黒子および大造に感染しなかった。松井継代株および姫野継代株はIFVと同一傾向を示し, 日124号における感染力価が極めて低く, SFVおよび伊那株の混在しないことが明らかにされた。
    2. 血清学的性状としてOUCHTERLONY法および螢光抗体法を行ったところ, 抗原的にはSFVと伊那株は共通であり, 松井継代株および姫野継代株はIFVと共通であることが示された。
    3. ウイルスのCsClによる平衡密度勾配遠心法による精製および電子顕微鏡観察を行ったところ, 精製では伊那株はSFVと同様に巾の広いバンドとなり, 松井継代株および姫野継代株には2~3本の斉一なバンドが形成された。このバンドの部分を電子顕微鏡で観察したところ, 伊那株は直径20nmの均一な粒子のみからなり, SFVとほぼ同じ大きさであった。松井継代株および姫野継代株には直径28nmのIFV粒子と直径14nmの極小粒子が多数観察され, 直径21~23nmの粒子は観察されなかった。
  • 漆崎 末夫
    1977 年 46 巻 4 号 p. 359-360
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 平尾 〓蔵
    1977 年 46 巻 4 号 p. 361-362
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 北野 実
    1977 年 46 巻 4 号 p. 363-364
    発行日: 1977/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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