地質調査所の日本海海底地質調査(1978)のさいに,日本海盆,大和海嶺,大和海盆および隠岐トラフで採取した4本のコア試料を,30MeV制動輻射による光量子放射化法によって非破壊分析し,Ca,Sr,Ba,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Mg,Ti,Na,Rb ,Zr,Nb,YおよびCeの計16元素の存在度を求めた。別に,化学分析法でAlおよびSiO
2も定量し,これら諸元素の存在度と表層からの深さとの関係を求めて,主として最終氷期開始以降の堆積環境の永年変化について考察した。後氷期の元素存在度分布は一般にほぼ均一であるが,氷期に相当する層準では不均一で,地理的条件の差が現われている.CaおよびSrの存在度ピークは有孔虫化石が多量に産出する層準と一致するがBaとば必ずしも一致しない.大和海盆のコアではMnの分布はCaとよい相関を示し,生物活動に起因する酸化還元状態の変化による二次的な移動が主要な役割を演じていると考えられた。Ni,CoもMnにともなって堆積するが,Coとの相関性の方がよい。大和海嶺のコアは他の3地点と異なり,Mn,Fe,Co,Niなどがいちじるしく濃縮した層準が出現し,非常に遅い速度で静穏な環境下に堆積したと考えられた。
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