日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1983 巻, 1 号
選択された号の論文の31件中1~31を表示しています
  • 大井 健太, 北村 孝雄, 加藤 俊作, 菅坡 和彦
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素添加および未添加の塩化チタン(IV)溶液を加熱加水分解し,沈殿生成時および熟成過程での沈殿の結晶構造および細孔構造の変化を比較検討した。塩化チタン(IV)の加水分解速度は尿素添加の場合も.未添加の場合もほぼ等しく,尿素の加水分解速度にくらべてきわめて速かった。尿素添加により沈殿時および熟成時において,沈殿のアナタース形からルチル形への変化が抑制された。また,熟成時における細孔構造の変化が,尿素添加により小さくなった。尿素未添加の場合,加熱温度が80℃から100℃になると,沈殿の結晶子径は約2。5倍に増加した。これに対し尿素を添加した場合,加熱温度の影響は尿素未添加の場合より小さかった。以上から,尿素添加の効果は,ルチル構造の形成を抑制すること,および細孔構造を安定化することにあると考えられる.
  • 清水 崇
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    La1-xSrxFeO3タイプ(0≦x≦1.0)のペロブスカイト酸化物を調製し,1-ブテンの酸化脱水素反応を行ない,触媒の構造と活性の関係を調べた。
    ストロンチウムの置換によって,酸化脱水素活性,異性化活性,完全酸化活性は増加する。ストロンチウムはx=0.136までしか固溶しない,それ以上ではSrFeO3-yが共存する。La1-xSrxFeO3(x=0~0.136)相は酸化脱水素活性,異性化活性の増加に寄与しているが,共存するSrFeO1-x相は,反応中,容易に1-ブテンによって還元され,二酸化炭素の生成と同時に構造の変化をともない,より酸素欠陥の多いブラウンミラ-ライト型構造(SrFeO2.5)への移行状態で存在する。cis-およびtrans-2-ブテンはこの構造変化の過程で気相酸素によって完全酸化される。
  • 田中 勝彦, 小門 宏
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    物理現像液における金属イオンの利用効率の向上,現像液の少量化,また,添加剤を加えない現像液の安定化の一つの方法として提案した光により活性化する物理現像液の安定性や銀イオンの利用効率などの基本的特性と現像核,銀塩の種類による現像速度の変化を調べた。
    現像核を銀からパラジウムに変えることで,現像時間を数分短縮することができた。また,パラジウム核の方が銀核よりも画像形成に必要な露光量も少なくすることができ,同一フィルムを用いても,システム全体の感度を4倍程度上げることができた。銀塩の種類によっても現像速度は変化し,とくに銀核を現像する場合,銀塩を硝酸銀からテトラフルオロホウ酸銀に変えることでも,透過濃度3の画像を得るのに3分間現像時間を短縮できた。また,クエン酸を加えると本系の場合,現像速度はいちじるしく低下した。暗所での保存性については,2日放置後の現像速度は不変であり,少なくとも現像液調製後1週間は使用可能である。画像形成に利用される銀イオンの効率は,1~3%である。透過濃度で4以上の画像が得られ,解像力は現像核に用いる金属および銀塩により変化するが,80~2401inepairs/mmであった。
  • 古賀 秀人
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    硫酸マンガン(II)の熱分解により電池用として高活性な酸化マンガン(IV)を生成させることを目的として研究した。
    脱水硫酸マンガン(II)を空気中で1000℃ で熱分解すると四酸化三マンガンが生成する。この四酸化三マンガンを空気中で700-800℃で加熱すると酸化マンガン(III)を生成する。この総括酸化反応速度は界面化学反応が律速する。つづいて,この酸化マンガン(III)から硫酸を用いて硫酸マンガン(II)を抽出した残留物はγ型酸化マンガソ(IV)である。この酸化マンガン(IV)は電解酸化マンガン(IV)と同等以上のすぐれた放電性能がある。しかし,見かけ比容積は電解酸化マンガン(IV)より大きく,鉱石の活性化された酸化マンガンとは同等の大きさである。
  • 松田 恵三, 香山 勲
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    尿素の加水分解を利用したマグネタイトの合成過程で起こる現象を明らかにするため,つぎのような実験を行なった。塩化鉄(II),塩化鉄(III)の混合水溶液に尿素を溶解し,98℃に加熱して,マグネタイトを得た。この合成過程での沈殿生成物をX線回折および電子顕微鏡観察をするとともに反応溶液中のFe2+ イオン濃度変化やpH変化を調べた。加熱開始と同時に塩化鉄(III)の加水分解により,溶液のpHは低下し,含水酸化鉄(III)(β-FeOOH)の黄褐色沈殿物がpH1.1付近で得られた。さらに加熱をつづけると尿素の加水分解によるNH3の発生で溶液のpHは上昇し,pH5.0 付近で沈殿物は黒色へと変化した。Fe2+イオソ濃度は黄褐色沈殿物が黒色になり始めるまでほとんど変化しなかったが,黒色になり始めると急速に減少した。この間の沈殿生成物のEM観察ではβ-FeOOH,Fe3O4のほかにα-FeOOHの存在が認められたが,最終生成物はマグネタイトのみであった。また別に調製した含水酸化鉄(III)や酸化鉄(III)の懸濁液に尿素と鉄(II)塩を溶解し,加熱したときもpH5.0付近で黄褐色の含水酸化鉄(III)も赤褐色の酸化鉄(III)も黒色へと変化し,マグネタイトが得られた。これらのことから,pH5.0付近ではFe2+イオンの存在が含水酸化鉄(III)あるいは酸化鉄(III)の溶解をうながし,溶解と同時にFe2+イオンとの反応によりマグネタイトになったものと思われる。
  • 宮地 賢司, 岡部 安三, 北條 純一, 加藤 昭夫
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3種の気相反応系,(CH3)4Si系(1200-1300℃),SiH4-CH4系(1400℃)およびCH3SiCl3系(プラズマ法)による平均粒径0.01-0.05μmのβ-SiC微粉体の焼結性をホウ素および炭素の存在下,1400-2050℃で比較するとともに,粒成長に対する添加剤の効果を明らかにしてち密化と粒成長との関係を検討した。
    (1)SiH4-CH4系の中空粒子からなるSic粉体を除けば,Sic粉体の合成反応系による焼結性の差は小さく,ホウ素および炭素共存下,2050℃ での常圧焼結で相対密度90%以上にち密化できる。原料SiC粉体の結晶性の影響は認められない。
    (2)焼結助剤のホウ素および炭素はSic粒子の粒成長を抑制する。その効果はホウ素と炭素を同時添加したとき大きく,とくに両助剤の同時添加は昇温過程での粒成長を抑制する。この昇温過程での粒成長の抑制が焼結助剤のち密化促進作用の一つの遠因であることを確認した。
  • 薄井 耕一, 今福 繁久, 小野 金一, 吉川 貞雄
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 34-41
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    感圧複写紙用発色剤として広く用いられているクリスタルバィオレットラクトン(CVL)の溶液中における酸または水による発色および減色ないし消色の挙動をUV,VIS,IR吸収スペクトルおよび1HNMR,13C-NMRの測定により検討した。併わせて類似の構造をもつクリスタルパイオレット(CV),マラカイトグリーン(MG),マラカイトグリーンラクトン(MGL)についても比較検討した。
    その結果,CVLの発色はラクトンの開環に基づくこと,ラクトンの開いたカルボキシル形ともとのラクトン形との問には酸濃度(強度)によって支配される一種の平衡関係が成立し,ある酸強度のところで,カルボキシル形対ラクトン形の比率が最大値を示し,ここで発色濃度は最大になる。さらに酸濃度が大きくなるとラクトン環が開いたまま減色することが認められた。一方,水によるCVL発色体(カルボキシル形)の減色ないし消色は環が閉じラクトン形にもどるためであることが明らかになった。
  • 三義 英一, 小林 明, 柳沢 三郎, 白井 恒雄
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らは,さきにC1あるいはC2炭化水素‐アンモニア‐水系および炭化水素-アンモニア-水‐硫化水素系の気相放電(dry放電)反応について報告し.そして本実験では,メタン‐アンモニア-水系にー酸化炭素,二酸化炭素あるいは各種金属の炭酸塩,ギ酸塩を添加し,電極水表面間放電(wet放電)により生成されたアミノ酸に関する定性・定量分析を行なった。そして得られた結果から,,添加物質のアミノ酸生成におよぼす影響について検討した。また,これらの系を詳しく解析するためにメタンーアンモニア‐水‐ギ酸系,メチルアミン‐水‐ギ酸系,アミノ酸‐水‐ギ酸系,メチルデミン‐水‐ギ酸系,アミノ酸‐水‐ギ酸系,メチルアミン-水-金属塩系の放電実験も行なった。二酸化炭素添加系においては,二酸化炭素初濃度の増加にともなって全アミノ酸収量が増え,二酸化炭素初濃度がメタン初濃度の1/2のときに最大となることがわかった。しかし,二酸化炭素初濃度がメタン初濃度より高いときには,中性アミノ酸の生成は抑制され,酸性アミノ酸であるアスパラギソ酸,グルダミン酸が効果的に生成された。アラニン‐水‐ギ酸系の結果から,メタンーアンモニア-水-二酸化炭素系における酸性アミノ酸の生成にはカルボキシルラジカルが重要であったことが明らかとなった。一酸化炭素添加系では,アミノ酸の前駆体となるアルデヒド,ケトンが二酸化炭素添加系に比較して多量に生成された。また,一酸化炭素の添加は二酸化炭素の添加と異なり,酸性・中性アミノ酸のいずれの収量も増加させることがわかった。そして炭酸塩,ギ酸塩の添加も,アミノ酸生成に影響をおよぼすことがわかった。
  • 加藤 豊明, 角谷 博樹, 加藤 道雄, 鈴木 信男
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 49-58
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    地質調査所の日本海海底地質調査(1978)のさいに,日本海盆,大和海嶺,大和海盆および隠岐トラフで採取した4本のコア試料を,30MeV制動輻射による光量子放射化法によって非破壊分析し,Ca,Sr,Ba,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Mg,Ti,Na,Rb ,Zr,Nb,YおよびCeの計16元素の存在度を求めた。別に,化学分析法でAlおよびSiO2も定量し,これら諸元素の存在度と表層からの深さとの関係を求めて,主として最終氷期開始以降の堆積環境の永年変化について考察した。後氷期の元素存在度分布は一般にほぼ均一であるが,氷期に相当する層準では不均一で,地理的条件の差が現われている.CaおよびSrの存在度ピークは有孔虫化石が多量に産出する層準と一致するがBaとば必ずしも一致しない.大和海盆のコアではMnの分布はCaとよい相関を示し,生物活動に起因する酸化還元状態の変化による二次的な移動が主要な役割を演じていると考えられた。Ni,CoもMnにともなって堆積するが,Coとの相関性の方がよい。大和海嶺のコアは他の3地点と異なり,Mn,Fe,Co,Niなどがいちじるしく濃縮した層準が出現し,非常に遅い速度で静穏な環境下に堆積したと考えられた。
  • 今井 弘, 田中 勝鋼, 白岩 正
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4-ペンタンジオン[1],1-(p-置換フェニル)-1,3-ブタンジオン類[2]とこれらのコバルト(III)錯体[3],[4]の13C-NMRスペクトルを測定した。[1]はベンゼン-d6,クロロホルム-d,DMSO-d6中でケト(K)形のシグナルが202,58,30ppm付近に,そしてエノール(E)形のシグナルが191,100,25ppm付近にそれぞれ現われた。試料濃度が低くなると,K形のシグナルは消失した。錯形成すると,E形の191,100ppmのシグナルは高磁場側へ,25PPmのシグナルは低磁場側へ移動した。[2]のアセトアセチル基はクロロホルムー4中でE形のシグナルが193,182,96,25PPm付近に現おれた。DMSO-d6中ではE形とK形とのシグナルが現われた。[4]のfacとmer異性体のアセトアセチル基による各炭素のシグナルは[2]のそれらに近似した。mer異性体の各炭素のシグナルは3本にわかれた。[2],[4]におけるアセトアセチル基の各炭素の化学シフトとHammettの置換基定数ぷ(σp),[2]のΔ(両カルボニル炭素の化学シフトの差)とpKd,の[4]の と10Dqとの間に比例関係が認められた。
  • 壁谷 洋
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    強塩基性陰イオン交換樹脂(LC-R-3)を固定梱に,1.5mmol・dm-3EDTAを含むO.25mol・dm-3塩化ナトリウム溶液を移動相に用いる液体クロマトグラフィーにより,水中の低濃度ポリリン酸塩を分析した。カラム溶出液中のリン酸イオンの検出には,ASTM D515-72のL-アスコルビン酸を用いる1種類の混合試薬から酒石酸アンチモンカリウムを除いたものを発色試薬溶液とし,反応後生成したリン-モリブデン青の可視吸収を利用するポストカラム法を採用した。本法により,0.01mg.dm-3(Pとして)(以下mgP・dm-3とする)という低濃度のポリリン酸塩の分離分析を行なうことができた。このような低濃度のポリリン酸塩を分離分析するためには,試料採取チューブとしてステンレススチール製チューブを用いポリリン酸塩の加水分解を抑制すること,および生成したリン-モリブデン青がテフロン製接続用チューブに吸着するのを阻止するため硫酸ドデシルナトリウムと混合させることが必要であることがわかった。本定量法を種々の試料水に適用し,ASTM法の分析結果と比較して,海水を除き満足できることがわかった。また,下水試料については,ピロおよび三リン酸塩の存在が確認できた。
  • 渡部 勝憲, 保母 敏行, 鈴木 繁喬
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 73-77
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    著者らはかねてより電場印加液晶カラム内での溶質の吸着現象について検討を行なってきた。本報では,この吸着現象の機構の解明の一環として,一連のエステル,ケトン同族体の吸着挙動を検討した。炭素数と吸着量の関係はいずれの同族列についてもU字型の曲線となり,この原因について考察した。さらに,ケトン,アルデヒドの異性体問の吸着挙動についても検討した。以上の検討により,官能基を除いた炭素骨格形状の吸着への影響は,他の因子と独立に考えられることがわかった。
  • 山本 二郎, 国方 博之, 梅津 雅裕
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    各種ヨードアゾキシベソゼンを90%硫酸およびクロロ硫酸で処理すると,いずれの場合も相当するアゾ化合物が主生成物として得られた。アゾキシベンゼンおよび2,2'-ジハロアゾキシベンゼンと90%硫酸との反応では,2,2'-ジヨードアゾキシベンゼンの場合のみアゾ化合物が多く生成したが,他のアゾキシ化合物からは40%以上のヒドロキシアゾ化合物が得られた。また酸との反応に用いられたヨードアゾキシベンゼン類に紫外線照射すると,いずれからも2一ヒドロキシアゾ化合物が生成したが,ヨードアゾキシベソゼン類とSbCl5との(1:1)錯体の熱反応ではほとんど反応が起こらなかった。
  • 島崎 長一郎, 山畔 勝博, 竹内 文和, 沖 伸宏, 内田 敦, 大西 八郎
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トリス(2,3-エポキシプロピル)=イソシアヌラート(TEPIC)とフェノール類およびベンゼンチオールとの反応によってオキサゾリジノン環を含む5-フェノキシメチル-2-=オキサゾリジノン(PMO)誘導体12種類と5-フェニルチオメチル-2-オキサゾリジノン(PTO)を合成し,熱安定性および質量スペクトルによって開裂機構を検討した。PMO類,PTOの分解は熱分析により検討し,いずれも熱的にかなり安定な物質であり,DTA,DSC曲線とも,PMO以外の化合物はすべて融解温度付近で1本の吸熱ピークを示しただけである。融解熱はPTOがもっとも小さく,PMO類ではベンゼン環に電子求引性の置換基をもった化合物が電子供与性の置換基をもつものより一般に小さい値を示した。熱電子衝撃による主要開裂機構としてベソゼン環とオキサゾリジノン環との間の結合の開裂には,単純開裂反応(1)と転位反応(II)によるものと二つの経路がある。また各経路ともさらに三つの開裂様式がある。主要開裂ピークのフラグメソトィオンの強度の比率(1)/(II)を計算すると,PMOではo.52であり,PTOでは1.13である。PMO誘導体のうち,大部分の化合物の基準ピークはRC6H5O(不飽和度=4.0)であり,主要フラグメソトイオソのうち,ベンゼン環を含むフラグメントイオンの割合は80%以上である。
  • 徳光 隆雄, 林 隆之
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第一級および第二級のβ-ニトロエナミンの合成とそのキレート構造について検討した。3-ニトロ-2,4-ペンタンジオン〔2〕は,ポリメチレンジアミン(n=2,3,4,6)と反応してN,N'-ビス(1-メチル-2-ニトロビニル)ポリメチレンジアミン〔7〕を与えることを見いだし,〔7〕(n=2,3)の遷移金属錯体を合成した。〔2〕は塩化チタン(IV)の存在下でアミンと反応して37~69.5%の収率で.4-置換アミノ-3-ニトロ-3-ペンテン-2-オン〔6〕(R=H,Me,PhCH2,Ph)を与えた。また,ニトロァセトンも同様に,2-置換アミノ-1-ニトロプロペン〔4〕を51.5~91%の収率で生成した。〔7〕および〔4〕はいずれもニトロエナミン形,〔6〕はβ-アミノエノン形のキレート構造でそれぞれ存在することが確かめられた。
  • 内野 洋之, 横山 晋, 加藤 隆, 真田 雄三
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 94-101
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    赤平炭の高圧水素化分解反応生成油のオイル成分を,LCによって芳香族環数ごとに分別し,さらに各芳香族クラス分別物をGPCによって分子サイズ別に分別した。LC-GPCフラクシ滋ンの低電圧イオン化法質量スペクトルを測定し,LC,GPCの溶出挙動から質量スペクトルにおける化合物タイプ(Z数)の帰属について検討を行なった。また,化合物タイプによって特徴的な分子量(Mw)-GPC保持容量(Ve)の関係を見いだした。
    これから,LC-GPCフラクション中に存在する種々の化合物タイプと,これら同族系列の炭素数の分布(側鎖アルキル基炭素数)を解析した。この結果,芳香族オイルに含まれる化合物タイプはZ=-6からZ=-42,母核環に置換する側鎖アルキル基炭素数は0から20までの幅広い分布をもった組成分から構成されていることがわかった。
  • 内野 洋之, 横山 晋, 佐藤 正昭, 真田 雄三
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    赤平炭液化油オイル成分の質量スペクトルから平均化学構造指数(芳香族性指数fa,芳香族環数:Ra,ナフテン環数:RN,側鎖アルキル基炭素数:Css,,平均分子量:Mw)を解析した
    これらの平均化学構造指数は質量スペクトルによる化合物タイプの同定と同族系列の組成成分の含有量の結果から算出し,構成成分をより直接的に反映しており,複雑な液化油オイル成分の特徴を平均的構造として的確に評価している。また従来法のBrown-Ladner法および1H-,13C-NMR法の結果と比較してほぼよい一致が示された。これらの計算処理は電算機によって汎用的かつ迅速に行なえるようにした。これから,石炭液化油を構成組成分の分布とこの平均構造指数の両者から化学構造を評価することができた。
  • 金谷 冨士雄, 根来 健二, 水野 博, 松江 賢治
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 107-111
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    新しい型の陰イオン界面活性剤3-(3一アルキルー2一オキソイミダゾリジン-1-イル)-1一プロパンスルホン酸ナトリウム〔1〕を合成し,水溶液中における界面化学的諸性質と抗微生物性について検討した。化合物〔1〕は水素化ナトリウムを塩基として,1-アルキル-2-イミダゾリジノン〔2〕と1,3-プロパンスルトンから収率よく合成できた。〔2〕はN-アルキルエチレンジアミソと尿素とから容易に合成できた。〔1〕は一般の陰イオン界面活性剤にくらべて表面張力低下能が小さくCMCにおける表面張力は45~48dyn/cmであった。しかし,水中への流動パラフィンの乳化とOrangeOTの可溶化に関してはドデシルベシゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)と同等またはそれ以上の性能を示した。泡立ち作用と泡安定性は,DBSにくらべてやや劣った。〔1〕は当初期待したような抗細菌性を示さなかったが,Aspergillur oryzae(日本コウジカビ)に対してテトラデシル体とヘキサデシル体がかなり強い活性を示した。
  • 山中 寛城, 桑原 正樹, 小森 正博, 大谷 益央, 加瀬 公一郎, 福西 興至, 野村 元昭
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(フルオロアルキル)アニリン化合物を合成するために,種々のフルオロアルキル=アレーン-およびメタγスルポナートとアニリンとの反応について検討した。溶媒効果の検討の結果,用いた極難溶媒の中ではスルホランがこの反応にはもっとも適していた。無溶媒中では得られなかったN-(α,α,ω-トリヒドロペルフルオロアルキル)アニリン(〔8b〕や〔8c〕)もスルホラン中の反応では生成した。フルオロアルキル=o-ニトロベンゼンスルポナートは他の相当するアレーンスルポナートにくらべてアニリンに対して非常に高い反応性を有し,N-フルオロアルキル化剤として非常にすぐれていることが示された。N-アルキルアニリン化合物はフルオロアルキル=アレーンスルポナートと反応しN-アルキルN-(フルオロアルキル)アニリンのほかにアルキル基の脱離したN-(フルオロアルキル)アニリン〔8a〕とアルキル(エチル)基がベンゼン環のパラ位に転位した化合物を与えた。N-(ヒドロキシエチル)アニリンとブルオロアルキル=o-ニトロベンゼンスルホナートとの反応ではN-ヒドロキシエチル-N-(フルオロアルキル)アニリン化合物が良好な収率で得られた。
  • 千葉 耕司, 榊原 清生, 太田 晃稔
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々め尿素誘導体および炭酸カリウムの存在下,活性メチレン化合物と二酸化炭素との反応を常圧下,室温で行ない,1,3-ジフェニル尿素と炭酸カリウムの組み合わせ系が反応をいちじるしく促進するこを見いだした。アセトフェノン,1-インダノン,インデン,フェニルアセトニトリルおよび1-テトラロンは,この方法によって容易にカルボキシル化され,それぞれベンゾイル酢酸,1-オキソインダン-2-カルボン酸,1H-イソデン-3-カルボン酸,α-シアノフェニル酢酸および1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-ナフトエ酸を生じた。1,3-ジフェニル尿素は,まず炭酸カリウムおよび二酸化炭素とからモル組成比2:1:2の錯体を生じ,ついで,この活性錯体と活性メチレン化合物とがすみやかに反応応してカルボキシル化が進行するものと推察された。炭酸セシウムと炭酸ルビジウムは炭酸カリウムよりりも有効であったが,炭酸リチウムと炭酸ナトリウムは効果がなかった。
  • 磯川 静子, 新井 弘美, 成田 光章
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    可溶性高分子を支台とするフラグメント縮合によるペプチド合成にアジド法を適用する場合,塩基および添加都の違いによる収率およびラセミ化,副反応への影響について検討した。ラセミ化度の測定は泉屋法により行ない,副反応量の測定はラセミ化度測定のさい生成物中に混在するアミド(Z-Gly-Ala-NH2)および尿素誘導体(Z-Gly-NHCH(CH3)NHCO-Leu-OBzlおよび[Z-Gly-NHCH(CH3)NH]2・CO)の定量により行なった。塩基としてトリエチルアミン(TEA)を用いると塩基量の増加にともなってラセミ化が増大し,N一メチルモルホリン(NMM)を用いるとラセミ化はないがTEAの場合より副反応が多かった。添加剤1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール(HOBt)は,N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)よりもラセミ化抑制効果が大きいがいずれの添加剤も副反応の抑制には効果がなかった。可溶性高分子支台上でのフラグメント縮合反応はZ-Gly-Ala-Gly-N3,Z-Ala2-Leu3-N3またはZ-Ala2-Leua-Pro2-Leu3-N3とIle-O-resinまたはLeu-O-resinの系について検討した。いずれの系でも塩基を過剃に用いた場合TEA-HOBtあるいはNMM-HOBtの組み合わせでほぼ定量的に反応した。ラセミ化抑制の点からもこれらの組み合わせが適しており,副反応の抑制には,TEA-HOBtの系がすぐれていることが明らかとなった。
  • 円満字 公衛
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロロフィルaと各種電子受容体との相互作用を調べるために,電子受容体のプロトンNMRの縦緩和時聞に対する銅クロロフィルの効果を研究した。β-カロテンを除く各種電子受容体のプロトン縦緩和時聞は銅クロロフィルを添加することにより短くなった。これらの現象は,おもに電子受容体のプロトンが銅および四つのピロールのN原子の電子スピンと双極子-双極子相互作用をすることによる。この縦緩和時間の減少から錯体の縦緩和時間を計算した。種々の電子受容体と銅クロロフィル間の平行分子面間距離と相対位置との値をパラメーターにとって,銅クロロフィルの銅イオンおよび四つのピロールのN原子から電子受容体の各プロトンまでの距離を算出した。これらの算出した距離をSolomonの式に用いて,錯体のT1を計算した。T1の実測値にもっともよく合うT,の計算値を与えるパラメーターをとって,錯体の構造を推定した。この方法により,銅クロロフィルとα-トロフェロール,α-トコフェロール酢酸エステル,ビタミンK1,ビタミンK3,1,4-ナフトキノンとの錯体,および銅クロロフィリンとルマジン,ヒスチジン,トリプトファン,P-ベンゾキノンとの錯体の構造を推定した。とくにβ-カロテンと銅クロロフィルの系では,クロロフィルaとβ-カロテンとが単分子膜中で強い相互作用をするという報告があるにもかかわらず,柑互作用しないことがわかった。
  • 杉山 一男
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 136-140
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    薬理活性を示す高分子の合成を目的として,3種の1-アリール-5-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2一オキソピロリジン-4-カルボン酸〔2〕(アリール基はフェニル,トリルおよびp-クロロフェニル)と2種のメタクリラート〔3〕を合成した。さらに,〔2〕および〔3〕を水溶性にするためアンモニアあるいはトリエチルアミンによりアソモニウム塩〔4〕~〔7〕とした。ピロリジノン誘導体の抗菌性はBacillus polymyxa Hino 株に対して,改良Winogradsky培地申で試験した。その結果1-トリル-5-[3-メトキシ-4-(メタクリロイルオキシ)フェニル]2-オキソピロリジン-4-カルボン酸トリエチルアンモニウム塩〔6b〕がもっとも高い抗菌性を示した。
  • 鹿田 勉, 小川 秀樹, 藤元 薫, 冨永 博夫
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 141-146
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素のアンモニア還元反応における酸化バナジウム(V)触媒の作用機構および担体の効果,とくにチタニアの効果を明らかにすることを目的とし,通常,還元および酸化の各条件における各種担体上のバナジウム酸化数変化についてESR法を用いて検討した。担体にはシリカゲル,チタニアおよび少量のチタニアで予備処理したシリカゲルを用いた。活性物質のバナジウムは反応中一酸化窒素とアンモニアによって5価から4価に還元され,また酸素によって4価から5価に再酸化されるいわゆるレドックス機構で触媒作用を示すことが判明した。触媒中に存在するバナジウム種には5価で安定なもの,4価で安定なものおよび4価と5価の問を往復するものがあった。このうち4価と5価の間を往復するものが目的の接触反応に関与し得るバナジウム種であると考えられた.接触反応に関与し得るバナジウム種の量,およびその酸化還元反応性は担体によって大きく異なった。チタニア担持触媒の場合に接触反応に関与し得るバナジウム種の量がもっとも多く,また再酸化の速度も大であった。シリカゲル担持の触媒では接触反応に関与し得るバナジウム種の量が少なく,また再酸化の速度も小さかった。チタニアを用いるシリカゲル担体の予備処理による活性促進効果は,酸化バナジウム(V)をその上に担持した場合に接触反応に関与し得るバナジウムの量を増し,また再酸化速度を向上させることに基づくものであることが明らかとなった。
  • 藤井 一
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 147-149
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The polarogram of 4-isopropyltropolone (Hhi) using a dropping mercury electrode was observed and analysed. The first anodic wave was attributed to the adsorption wave, and the second wave was concluded to result in the electrode oxidation of the π-electron system accompanied by a follow-up chemical reaction; the formal potential corresponding to the following reaction was calculated to O.29 V vs. SCE,
    Hhi →Ox(n-1) + H++ ne (n≤6) (1)
    where Ox(n-1) represents the oxidized form of 4-isopropyltropolone. In contrast with a dropping mercury electrode, the anodic wave of 4-isopropyltropolone obtained at a platinum electrode was resulted by the one-electron oxidation process accompanied by a follow-up chemical reaction.
  • 入江 和夫
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 150-151
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reactions of aldehydes with nitromethane in the presence of a catalytic amount of nickel(II) acetate-2, 2'-bipyridine complex proceed at room temperature to give nitro alcohols in good yields.
  • 在間 忠孝, 松野 千加士, 三橋 啓了
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 152-156
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The reaction of 1, 1'-bis(methoxycarbonyl)divinylamine (BDA) with primary amines was investigated as an example of nucleophilic attack on a cross-conjugated dienamine. BDA reacted with primary amines to yield azomethines [5]-[8], which supported the reaction mechanism involving a nucleophilic attack of primary amines at the electron deficient α-carbon atom of the enamine form of BDA, followed by an elimination of methyl 2-aminoacrylate. In these reactions, unexpected 3-pyrrolin-2-ones [10]-[13]were also isolated and their structures were determined by means of IR and 1H-NMR spectra.
  • 林 弘, 田中 稔一, 俵 純一, 田中 靖昭, 岡崎 達也
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 157-160
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Acetone azine, which gives hydrazine quantitatively on acid-hydrolysis, was obtained in a high yield from acetone and ammonia via hydrogen peroxide oxidation of the intermediate imine in the presence of benzonitrile. Attempts were made to apply the reaction to the syn-thesis of substituted hydrazones. Thus acetone phenylhydrazone was obtained accompanied with azine from acetone, ammonia and aniline. The yield of phenylhydrazone increased and that of azine decreased with increasing the aniline added. A large excess of aniline was unfavorable for preparation of both azine and hydrazone. Similar behavior was observed for t-butylamine to afford acetone t-butylhydrazone and azine, while cyclohexylamine resulted in the exclusive formation of 2-cyclohexyl-3, 3-dimethyloxaziridine.
  • 中山 充, 森 勇之, 堀江 徳愛
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3', 4'-Bis(benzyloxy)-, 4'-benzyloxy-5, 6, 7, 8-tetramethoxy- and 3', 4', 6-tris(benzyloxy)-5, 7, 8-trimethoxyflavones, ([7a], [7b] and, [7c], respectively) were synthesized from the corres-ponding 2-hydroxyacetophenones and the substituted benzoyl chloride via 3 steps. The desired hydroxyflavones [3a-c], which could be inhibitors of lens aldose reductase, were obtained by the hydrogenolysis of benzyloxyflavones [7 a-c] followed by the selective demethylation with anhydrous aluminum chloride in acetonitrile. A natural flavone isolated from Sideritis leucantha Cavanilles was found to be identical with the title compound [3a].
  • 倉持 智宏, 大谷 初市, 山田 始, 伊保内 賢
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 166-168
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Radical graft polymerizations of styrene and methyl methacrylate onto 1, 4-polybutadiene were carried out in various solvents using α, α'-azobisisobutyronitrile as an initiator. Maxi-mum vaValues of grafting and grafting efficiency were observed in the solvent whose dielectric constant was similar to that of monomer.
  • 岩瀬 公一, 小林 憲正, 原口 紘〓, 不破 敬一郎
    1983 年 1983 巻 1 号 p. 169-171
    発行日: 1983/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The mixture of sample and Cu2+ solutions was chromatographed with a Sephadex G-10 gel column using O.1 M (1 M=1 mol. dm-3) Tris-HCl solution (pH 6.9) containing 10 ng/cm3 of Cu2+ as eluent solution. Copper complexes, e. g., Cu-EDTA complex, were eluted earlier than free Cu2+. Thus only complexed copper concentration, which was defined as "complexing capacity" could be determined accurately. Detection limit for complexing capacity with the present method was 0.3 μM. No apparent interferences with coexisting cations were observed. The present method was applied to the measurement of complexing capacity of lake water. Complexing capacity of freshwater in Lake Kasumigaura was determined to be 0.02 μM. The molecules with molecular weight more than 10000 was preconcentrated by an ultrafiltration technique.
feedback
Top