理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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23 巻, 4 号
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原著
  • 松尾 恵利香, 佐々木 誠
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]本研究の目的は,バランス練習時のリーチ距離と練習後の立位バランスに対する即時効果を3つの練習方法で比較することである。[対象]対象は,健常者21名であった。[方法]バランスボード上にて側方リーチ練習を,環境目標設定法,閉眼での内省的方法,開眼での内省的方法で行い,最大リーチ距離と,バランス練習前後の静的立位の重心動揺を測定し,Cross Testを実施した。[結果]閉眼での内省的方法に対して開眼での内省的方法,環境目標設定法のほうが,リーチ距離が伸びていたが,開眼での内省的方法と環境目標設定法では差はみられなかった。練習後,開眼での静的立位において3条件すべてで重心動揺が増加しており,特に閉眼での内省的方法で顕著であった。しかし,すべての条件で閉眼の静的立位,Cross Testでは増加はみられなかった。[結論]視覚情報があることが最大側方リーチの成績を向上させること,練習後,静的立位において重心動揺が増し,特に閉眼での内省的方法で重心動揺が大きくなること,この重心動揺への影響は動的バランスに波及しないことが示唆された。
  • 堀切 悟史, 佐々木 誠
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 477-480
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]本研究の目的は,多裂筋のトレーニングによって腰部の脊柱安定化が得られ坐位姿勢のバランスが改善されるかを検討することである。[対象]対象は健常者21名であった。[方法]週3回,4週間の多裂筋の筋機能トレーニングを行わせ,トレーニング前後でトレーニング時の腰部の前弯,後弯コントロールを示す圧変動幅,安静坐位・最大側方リーチ時の圧中心軌跡,坐位保持課題遂行時の3つの体幹筋の最大等尺性収縮時の筋放電に対するパーセンテージ(以下%MVC)を測定した。[結果]圧変動幅は,トレーニング前と比較してトレーニング後に有意に減少した。安静坐位・最大側方リーチ時の圧中心軌跡,%MVCはトレーニング前後で有意差はみられなかった。[結論]脊柱安定性に寄与する多裂筋の機能が向上し椎体間の固定性が高まることが,必ずしも坐位バランスに影響を与えるものではないことが明らかとなった。
  • ─運動時間の違いによる検討─
    江口 淳子, 小原 謙一, 渡邉 進, 石田 弘
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 481-485
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]運動時間の違いによるジムボールを用いた脊柱可動性運動の効果を検討することである。[対象と方法]健常男性48名を運動時間60秒群,30秒群,15秒群,コントロール群の4群に無作為に分けた。60,30,15秒群はボール上で腹這位をとらせる脊柱可動性運動を行い,コントロール群は静止立位を15秒間保持させた。介入前後に脊柱可動性を計測した。各群での介入前後の比較と変化率の群間比較を行った。[結果]60,30,15秒群では体幹傾斜角と仙骨傾斜角の脊柱可動性運動後の値が運動前と比較して有意に大きかった。変化率の群間比較では60秒群の体幹傾斜角がコントロール群に比べ有意に大きい値を示した。[結語]ボールを用いた脊柱可動性運動は60秒間行うことで脊柱可動性が有意に変化することが示唆された。
  • ─5年後の追跡調査より─
    村田 伸, 安田 直史, 米田 香, 村田 潤, 樋口 直明, 樋口 善久
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 487-490
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]軽度要介護高齢者が,居宅生活を中・長期的に継続するための要因を検討する。[対象]2002年8月に某通所リハビリテーション施設を利用し,要支援または要介護1と認定された高齢者39名(平均82.6±5.4歳)である。[方法]2002年8月に行った身体・認知・心理機能検査および社会参加状況について,5年後の居宅生活継続の有無別に比較した。[結果]居宅生活継続可能群(16名)と不可能群(23名)との間に身体機能や認知機能に有意差は認められなかった。しかし,主観的健康感と社会参加の有無には有意差が認められ,継続群は不可能群より自分の健康状態を良好だと自覚し,老人会や趣味活動などの社会参加を行っていたことが明らかとなった。[結語]軽度要介護高齢者が居宅生活を継続するためには,身体的健康状態の維持を図るとともに,精神的健康を維持することの重要性が示唆された。
  • 青木 修, 香川 真二
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 491-494
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]変形性膝関節症(以下,膝OA)患者の膝関節位置覚は健常高齢者に比べ低下しているかを検討した。また膝OA患者に対し,局所圧迫を加える膝装具が位置覚に与える影響を検討した。[対象]対象は膝OA患者20名,健常高齢者20名であった。[方法]測定は角度測定ができるよう改良した持続的他動運動装置を用い,膝OA患者および健常高齢者の位置覚を測定した。膝OA患者に対してはさらに,膝装具を装着した状態でも位置覚を測定した。[結果]膝OA患者は健常高齢者に比べ,位置覚は低下していた。膝OA患者は装具装着により位置覚の改善がみられた。[結語]膝OA患者では装具装着により位置覚が改善するという,限局的な面においては装具が有効であることが示された。
  • 芳野 純, 佐々木 祐介, 臼田 滋
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 495-499
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]回復期リハビリテーション病棟退院後患者のADLの変化の特徴と影響を与える関連因子を解明する。[対象]回復期リハビリテーション病棟より自宅退院した患者117名。[方法]退院後のADLに影響を与えると思われる因子,退院時および退院1ヵ月後のFIM運動項目を調査し,統計学的に分析した。[結果]退院時と比較すると退院1ヵ月後のFIM運動項目は有意に低下していた。各項目では,セルフケアが有意に低下しており,排泄コントロールは有意に向上していた。退院時のFIM運動項目が50~69点(半介助群)の患者および通所系サービス利用者が有意に低下していた。[結語]回復期リハビリテーション病棟退院患者は,退院1ヵ月後においてADLが低下する恐れがあり,低下を予防する必要性がある。
  • 中川 和昌, 猪股 伸晃, 今野 敬貴, 中澤 理恵, 坂本 雅昭
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]要介護高齢者に対する運動介入において,集団運動の実施がその後の個別運動に与える影響について検討する。[対象]通所リハビリテーションを利用している,要支援または軽度要介護高齢者計41名。[方法]集団運動と個別運動を指導した群と,個別運動のみを指導した群に分けて比較検討した。評価内容は身長・体重・体脂肪,握力,膝伸展筋力,長坐位体前屈,開眼片足立ち時間,FRT,TUG,10 m歩行時間,老研式活動指標,SF-36,LSAであった。[結果]集団運動と個別運動を実施した群に,下肢筋力,精神面の有意な改善を認めた。[結語] 集団運動による活気の向上や運動習慣の形成が,その後の個別運動に好影響を及ぼす事が示唆された。
  • 岡崎 倫江, 那須 千鶴, 吉村 和代, 曽田 武史, 津田 拓郎, 高畑 哲郎, 矢倉 千昭
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 509-513
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]女性の前十字靭帯損傷のリスクは,ホルモン変動による筋緊張の低下と関連している可能性がある。本研究は,月経周期中における大腿筋群の筋硬度および筋短縮度の変動について調査することを目的とした。[対象と方法]対象者は正常月経周期を有する若年女性9名(測定:18脚),平均年齢25.9±2.1歳で,月経周期の月経期,排卵期,黄体前期,黄体後期に測定を行った。筋硬度は筋硬度計を用いて大腿直筋と大腿二頭筋について測定し,筋短縮度は関節角度計を用いて大腿直筋とハムストリングスについて測定した。[結果]筋短縮度は有意な変化がなかったが,大腿直筋および大腿二頭筋の筋腹の筋硬度は他の周期に比べて黄体前期において有意に高くなった(p<0.05)。[結語]本研究の結果,大腿筋群の筋硬度は月経周期中に変動していることが示唆された。
  • 曽田 武史, 矢倉 千昭, 高畑 哲郎, 岡 真一郎, 田原 弘幸
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]本研究では,背臥位から腹臥位,続いて立位に姿勢変化させたときの血圧レベルの変動について調査した。[対象と方法]健常成人54名(男性27名,女性27名,平均年齢22.0±2.7歳)を対象に各姿勢における収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP)および脈拍数(PR)を測定した。[結果]腹臥位は背臥位や立位に比べてSBPが有意に低下し,背臥位に比べてPRが有意に増加した。立位は背臥位や腹臥位に比べて有意にDBPは上昇し,PRも増加した。[結語]本研究の結果から,背臥位から腹臥位への姿勢変化における短時間の血圧レベルの変動は,背臥位から立位への姿勢変化に比べてDBPやPRの変動が少なく,SBPが低下する可能性があることが示された。
  • 今田 健, 加藤 浩
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 521-527
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]変形性股関節症に対して単関節,多関節運動をそれぞれ重視したエクササイズが歩行などに及ぼす影響を主に表面筋電図(EMG)を用いて検証した。[対象]変股症と診断された女性18例であった。[方法]チューブバンドによる股関節外転運動にて施行された群を単関節運動群,固有受容器性神経筋促通(PNF)にて施行された群を多関節運動群とした。被検筋は大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋とし,各群のエクササイズ前後における片脚立位及び歩行時のEMGを計測し統計処理した。[結果]多関節運動群ではエクササイズ後の片脚立位において3筋で有意な筋活動の増大が認められた。歩行時立脚相においては大殿筋,中殿筋の有意な増大を認めた。[結語]本研究により多関節運動による質的アプローチの重要性が示唆された。
  • ─立ち上がり動作を利用して─
    前岡 浩, 福本 貴彦, 坂口 顕, 長谷川 正哉, 金井 秀作, 高取 克彦, 冷水 誠, 庄本 康治
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 529-533
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]フリーウェアであるImageJは顕微鏡画像の処理,解析に利用されているが,角度測定機能は理学療法分野でも活用可能と考えた。そこで,立ち上がり動作を利用し,ImageJによる体幹前傾角度測定の信頼性を検証した。[対象]被験者は3名,ImageJを使用する検者を10名とした。[方法]被験者に左側の肩峰,大転子,膝関節外側関節裂隙に反射マーカーを貼付し,立ち上がり動作を矢状面から1回撮影した。体幹前傾角度はImageJおよび三次元動作解析装置で測定した。[結果]級内相関係数と標準誤差を用いて統計解析を行った結果,検者内・検者間信頼性を示すICCはともに高かった。[結語]ImageJを用いた二次元での動作分析は理学療法分野における評価や研究,教育に有益な手段である可能性が示唆された。
  • ─上部線維と中部線維における筋厚の変化から─
    吉川 幸次郎, 丸山 仁司
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 535-538
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]腹横筋の上部線維と中部線維の活動の違いを検証することにある。[対象]健常男性34名。年齢22.8±3.1歳,身長169.4±21.0 cm,体重68.1±18.8 kgである。[方法]背臥位,立位,爪先立ち位のそれぞれの姿勢で腹横筋の上部線維と中部線維を超音波画像診断装置で撮像し,その筋厚を測定して比較した。[結果]上部線維と中部線維との筋厚は有意に異なった(p<0.05)。また,姿勢間の比較では,背臥位と爪先立ち位との間には有意差が認められた(p<0.05)。一方,背臥位と立位,立位と爪先立ち位との間には有意差は認められなかった。[結語]この結果は上部線維が胸郭を固定する役割を有するという先行研究を支持する。背臥位から立位さらに爪先立ち位と不安定な姿勢になるが姿勢を安定させるため上部線維が活発に働き胸郭を固定することで安定した姿勢を維持していると考えられる。
  • 吉松 竜貴, 久保 晃
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 539-544
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]近赤外線分光(NIRS)法による体脂肪率,体脂肪量,除脂肪体重の信頼性を検討すること。[対象]高齢脳卒中片麻痺患者10例(男性5例,女性5例,年齢78±9歳)。[方法]複数回の測定を非麻痺側と麻痺側に分けて行い,級内相関係数(ICC)にて検者内信頼性を検討した。また,対応のあるt検定,変動係数(CV),Bland-Altman Plot(BA Plot)にて非麻痺側と麻痺側の差異を検討した。[結果]ICCは0.9以上で高い信頼性が示された。t検定では6例に非麻痺側と麻痺側で有意差が認められたが,CVには認められなかった。BA Plotは体脂肪率が低い例で誤差が生じる傾向を示した。[結語]誤差は小さく,非麻痺側と麻痺側での測定は同精度と考えられた。
  • -FIM総得点90点以下の症例を対象に-
    浅川 育世, 居村 茂幸, 臼田 滋, 菅谷 公美子, 可児 佑子
    原稿種別: 原 著
    2008 年 23 巻 4 号 p. 545-550
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]ADL(Activities of Daily Living)が介助レベルにある脳血管障害者が,自宅へ退院するための要件を検討する。[対象]回復期リハビリテーション病棟に入院し,退院時FIM(Functional Independence Measure)総得点が90点以下の脳血管障害者51名。[方法]対象を自宅へ退院した群(自宅退院群)と,施設等,自宅以外へ退院した群(非自宅退院群)との2群にわけ,FIMの各得点,その他転帰に影響をおよぼすと考えられた変数について比較を行う。[結果]単変量解析の結果,自宅退院群では移動様式が歩行の者が有意に多く,入院期間も自宅退院群で長かった。また,FIMのセルフケア,排泄コントロール,移動,移乗,コミュニケーション及び社会的認知の6項目では移動を除く5項目で有意差が認められた。FIM下位項目では歩行・車椅子,階段,理解,記憶を除く14項目で有意差が認められた。ロジスティックモデルでは退院前外泊の有無(オッズ比5.8),移動様式(オッズ比4.9),FIM総得点(オッズ比1.1)の3因子が有意な変数として選択された。[結語]ADL能力の低い脳血管障害者が自宅へ退院するには,ADL能力が高いことに加え,移動様式が歩行であることと,自宅への退院前外泊が可能な状況にあることが大きな要因となっていることが示唆された。
紹介
  • 上杉 雅之, 嶋田 智明
    原稿種別: 紹 介
    2008 年 23 巻 4 号 p. 551-554
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/09
    ジャーナル フリー
    [目的]知的障害を伴う症例3名を対象にAberrant Behavior Checklist(ABC)を用いた評価を施行し紹介することである。[対象]知的障害を伴う脳性麻痺2名とスミス・マゲニス症候群1名の計3症例とした。[方法]小児理学療法の経験のある理学療法士がABCのマニュアルと評価表を翻訳し,そのマニュアルに従い対象3名に対して評価を施行した。[結果]症例Aは I 攻撃性7点,II 引きこもり6点,IV多動性8点,V不適切な言語2点を示した。症例BはI攻撃性3点,II 引きこもり4点,IV多動性2点を示した。症例CはI 攻撃性9点,II 引きこもり1点,III 常同性5点,IV多動性14点を示した。ABCは知的障害の問題行動を短時間で評価できる有用な尺度の一つであると言えるだろう。
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