皮膚の科学
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3 巻, Suppl.4 号
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指定演題
  • 柴田 瑠美子
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A1-A4
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    平成14年度の全国実態調査によるアトピー性皮膚炎の有症率は,4ヵ月12.8%,1歳6ヵ月9.6%,3歳で13.2%であり,平成4年度の有症率から1.6~1.8倍の増加を示していた。皮疹の重症度は軽症が8割であったが,乳児では重症が幼児より2倍高かった。ステロイド外用は平均38~34%,食事制限は平均12~7%であった。福岡市における民間療法の利用率は非アトピーに比してアトピー性皮膚炎で優位に高く,日常生活で気になることは4ヵ月児で食事,幼児では石鹸であった。乳幼児のアトピー性皮膚炎の要因として,重症例での食物アレルゲンの関与,ダニなど多種アレルゲン早期感作,秋冬の出生月があげられた。乳児期栄養法,妊娠中の除去食との関連はなかった。
  • 占部 和敬
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A5-A12
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    平成12年度~14年度の厚生労働省のアトピー性皮膚炎の患者数の実態及び発症・悪化におよぼす環境因子の調査に関する研究(班長:山本昇壯広島大学医学部皮膚科名誉教授)に参加させて頂いたので全国的な小学校健診による実態調査の結果を報告させて頂いた。健診の対象は小学1年生と6年生で全国8ヵ所で調査が行なわれた。有症率は7%から15%で,全体としては11%であった。北海道11%,岩手7%,東京10%,岐阜13%,大阪14%,広島11%,高知8%,福岡15%で福岡,大阪で高く,岩手,高知で低かった。福岡では同時に発症・悪化に関するアンケート調査を行なった。既往歴では気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎の合併が多く,家族にアトピー性皮膚炎を有するものが多かった。住居の種類,築年数,浄水器の使用,入浴法,クラブ活動などの影響はみられなかった。悪化因子として,食物,汗,日光,ストレス,ほこりの関与が認められた。また,アトピー性皮膚炎の有症率を推定するアンケート票はやや感度は低かった。
  • 竹中 基, 堀内 保宏, 松永 義孝, 牛島 信雄, 阿南 貞雄, 片山 一朗
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A13-A18
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    平成15年度に長与町にて乳幼児,小学校から高等学校での健診時にアトピー性皮膚炎の診断,重症度の判定を行った。対象は保育園588名,定期健診受診者673名,小学生2,981名,中学生1,154名,高校生1,072名であった。小学生から高校生の有病率は男子9.5%,女子9.1%,合計で9.3%であった。小学校1年生~高校3年生まで順に12.3%,14.1%,8.8%,8.8%,10.2%,10.6%,6.3%,8.2%,6.4%,4.4%,7.4%,8.8%であった。重症度では,軽症例は89.0%,中等症が11.0%であったが,小学校6年生,中学校2,3年生,高等学校2,3年生では,中等症が20%近くを占めていた。また,乳幼児では有病率は,0歳児4.7%,1歳児15.1%,2歳児18.0%,3歳児12.9%,4歳児16.5%,5歳児19.6%であった。いわゆるアウトグローは認められなかった。
  • 片山 一朗
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A19-A23
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    アトピ-性皮膚炎(以下ADと略す)の診療においては日本皮膚科学会によるADの診断基準1),重症度判定スコア,治療ガイドライン2),厚生科学研究班による治療ガイドラインなどが相次いで提示され,一時期のAD診療現場での混乱は少しづつ鎮静化する傾向が見られる。病因論,病態解析に関しても,症候群としてとらえる考え方が提唱され,アレルギー機序と非アレルギー機序によるアトピー性皮膚炎の存在が認知されるようになり,今後診断,治療の考え方に大きな影響を与えることが予想される。
  • 末廣 豊, 亀崎 佐織, 福井 徹哉
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A24-A27
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    小児,とりわけ乳幼児のアトピー性皮膚炎(AD)では,掻破が最大の悪化因子といっても過言ではない。掻くにまかせていると決して皮膚症状はよくならないので,手袋,袖・裾のテーピング,包帯など積極的な掻破予防対策が必要である。また,ADのある小児が成長する過程においては乾燥環境からいかに皮膚を保護し,保湿をはかるかが大切である。さらに,現代社会では少子化に伴う育児・親子ストレスが基本的に存在し,子どもの掻破行動・症状の悪化に拍車がかかるので,メンタルケア・ストレス解消プログラムが治療上の重要な課題となる。
  • 戸倉 新樹
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A28-A32
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎は古くより細菌感染とのかかわりが議論されてきた。その歴史は,黄色ブドウ球菌のコロナイゼーション,黄色ブドウ球菌に対する反応の模索,スーパー抗原の登場,自然免疫の時代,という過程を通して進展してきた。つまり黄色ブドウ球菌のアトピー皮膚における定着という現象が,その時々の最先端の生物学の進展を受け,ダイナミックに意味付けされてきたことになる。その意義は今後も多方面から研究されていくであろうが,増悪因子という見方の一方で,発症抑制因子という側面も忘れてはならない。
  • 宇理須 厚雄
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A33-A37
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)は種々の増悪要因が複雑に絡み合った多因子疾患である。食物も増悪因子の1つとして認知されるようになった。筆者ら食物の体内への侵入ルートとして経口摂取以外に皮膚への接触もありうると推測している。年齢が大きくなると食物アレルギーが関与するADは減少する。また,ADが重症程食物アレルギーの関与する頻度が高いとされている。食物アレルギーが関与したADの治療の基本は原因食物の除去である。除去食は患者とその家族に栄養学的障害,精神的・時間的・経済的負担をかける恐れがある。正確な原因食物の同定によって除去すべき食物を最小限にすることが大切である。
  • 山田 秀和
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A38-A42
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    おおくのアトピー性皮膚炎患者はダニでのプリックテストやパッチテストにて,陽性をしめし,血清のダニ特異的IGEが上昇しており,アトピーパッチテストの部位もアトピー皮膚炎部位も,海綿状態や表皮肥厚を同様に示すが,アトピー性皮膚炎におけるダニの病因論的役割はまだ複雑である。ダニの回避は成人,子供のアトピー性皮膚炎の治療に有効であると考えられる。
  • 松永 佳世子, 鷲見 康子, 鶴田 京子, 矢上 晶子
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A43-A47
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    小児アトピー性皮膚炎(AD)患者は皮膚バリア機能が弱く,外来性刺激物質によって接触皮膚炎を起こしやすい。その結果として障害された皮膚からスキンケア製品や外用薬など日常頻繁に接触する単純化学物質が吸収され,感作された結果アレルギー性接触皮膚炎を起こす。また,ラテックスなどの蛋白抗原による接触蕁麻疹も発症しやすい。小児ADにおける刺激性接触皮膚炎の原因は洗浄用スキンケア製品と消毒薬があげられる。アレルギー性接触皮膚炎の原因は外用薬,スキンケア製品,金属などがあげられる。これらの診断にはパッチテストやプリックテストを行ない,合併する接触皮膚炎を早期に治療し,代替品の選択を行なうことが肝要である。
  • 羽白 誠
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A48-A52
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    小児ではストレスを言語的に表現することは難しく,また言語的な介入を行うことも困難な場合が多い。しかし小児アトピー性皮膚炎患者では,スキンシップによるコミュニケーションもうまく形成されていないことがある。そのためストレスが生じるとアトピー性皮膚炎の悪化だけでなく,掻破が激しくなることが多い。母親の精神的負担は大きく,不安になることが多い。筆者らの調査では患児の母親は,精神身体症状の訴えや不安が強く,冷静な判断力や自立心が低く,依存的である。ストレスの関与がある場合は母親に介入を行い,間接的にアプローチする方法をとっている。直接的な方法としては行動療法のうちオペラント条件付けが適している。
  • 高路 修
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A53-A56
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    小児アトピー性皮膚炎(AD)治療におけるエンドポイントで最も重要なものは皮疹の重症度である。今回,成人AD患者におけるアンケート調査で乳幼児期から成人期までの重症度の経過を検討し,小児AD患者においては重症度の推移と血清総IgEの関係を検討した。重症度以外にエンドポイントとなりうる因子は血清総IgEであり,小児ADにおいてIgE値はその後の重症度の推移と関連のある因子である可能性が示された。
  • 片岡 葉子
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A57-A62
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の薬物療法として重要な位置を占めるが,使用に際して患者(保護者)の不安は大きく,また,医師の側においても不適切な使用がなされている場合もあり,必ずしも完成された薬剤とはいえない。小児アトピー性皮膚炎治療における現時点でのステロイド外用薬の問題点を7項目あげ,筆者の施設での臨床データおよび文献的検討をもって回答を試み,さらに残されている問題点を今後の検討課題として提示した。7項目とは,1.対症療法であるとの認識があるか? 2.全身および局所副作用の確認 3.必要な期間の見通しはどのくらいか? 4.ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の予後を悪化させないか? 5.ステロイド治療に抵抗性の症例の検討 6.適切な外用がおこなわれているか? 7.外用の適応でない皮膚症状の存在の7点である。
  • 中川 秀己
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A63-A67
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    免疫調整外用薬または局所カルシニューリン抑制薬と呼ばれるタクロリムス外用薬はステロイド外用薬と並んで,アトピー性皮膚炎外用治療には欠かせないものになっている。2~15歳の患者には0.03%軟膏が16歳以上の患者には0.1%軟膏の適応が認められている。本薬はその作用機序からステロイド外用薬で認められるような局所性副作用がなく,しかも正常皮膚からは吸収されづらいのが特徴である。本薬の問題点は使用開始時に一過性に皮膚刺激症状が生じることであり,特に糜爛や掻破痕が顕著な場合に強まる。我が国においては,外用量や使用法の制限が設けられており,懸念される皮膚癌やリンパ腫の発生に留意する必要はほとんどない。
  • 今山 修平, 河崎 玲子
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A68-A75
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(AD)の治療は(1)環境の異物や抗原の除去,(2)スキンケアによる皮膚バリア機構異常の補正,(3)薬物による過敏反応性抑制からなる。スキンケアの主たる目標は角層バリア機能の回復であり,それにより日常生活が全うできることであるが,ADの皮膚機能異常の代表である乾燥肌は角層水分量の減少のみならず細胞間脂質の異常や異常な細菌叢によることが判明してきた。スキンケアの主流は清潔と保湿であるが,しかし過剰な水洗と保湿は逆に角層脂質を溶解し,細菌増殖に加担する危惧がある。そこで熱容量が小さく水透過性の良い絹や薄い木綿製の衣類で体幹と四肢を包み,表皮(特に角層)を安静にしてバリア機能を回復させるスキンケアを実施したが,この方法は特に時間制約の少ない乳幼児の重症例に適していると考えられた。
  • 大矢 幸弘
    2004 年 3 巻 Suppl.4 号 p. A76-A80
    発行日: 2004年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル 認証あり
    小児アトピー性皮膚炎の治療には養育者のステロイドフォビアやノンコンプライアンの壁があり,適切な薬物処方を行っても患者サイドが実行しなければ無意味である。行動医学は従来の生物医学モデルではなく生物心理社会医学モデルを採用する包括的な医学であり,アトピー性皮膚炎患者の習慣性掻破行動を適切な薬物療法と行動療法の併用によって短期間に改善することが可能である。また行動科学的な数理モデルに基づくプログラムを応用したNarrative based ApproachがEvidence based Medicineと両立することを示すことができた。そして不登校とひきこもりを合併した重症のアトピー性皮膚炎の中学生を短期間で行動修正し良好なコントロールを実現することが可能であった。
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