耳鼻と臨床
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43 巻, 2 号
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  • 嶋崎 孝嗣, 吉田 義一
    1997 年 43 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    咽喉頭異常感症として危うく見過ごされそうになったAIDSのl例を報告した. 患者は50歳の男性で, 約2ヵ月間耳鼻科, 内科で気管支炎, 次いで約3カ月間当大学関連病院で咽喉頭異常感症, 咽頭アレルギーとして加療を受けていたが, 下咽頭梨状陥凹の小さな白色腫瘤性病変がきっかけとなり, X線食道透視造影検査, 内視鏡検査および病理生検で食道カンジダ症が判明した. HIV抗体陽性, 血中CD4陽性細胞125/mm3と低値であることからAIDSと診断された.
  • 工田 昌矢, 夜陣 紘治
    1997 年 43 巻 2 号 p. 178-184
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    新しく開発された抗真菌剤 (ラノコナゾール, 商品名: アスタット液) の内耳毒牲を走査電顕を用いてモルモットで検討した. 2%, 1%アスタット液, 溶剤のいずれにおいても7日間連続の鼓室内投与で蝸牛, 末梢前庭器の感覚細胞の感覚毛の散在性の脱落が認められた. これらの障害の程度は薬剤投与終了24時間後が最も強く, 投与終了後7日目では部分的な回復が認められた. 今回の障害に特徴的な感覚毛の脱落は溶剤に含まれるエタノールにより感覚毛の脆弱性が増したために引き起こされたものと考えられた. 一方, ラノコナゾールそのものに関しては耳毒性を有していないものと思われた. 鼓膜正常な動物にアスタット液を点耳した場合には耳毒性を示さなかったことより, ラノコナゾールは耳真菌症の治療に有用な薬剤であると考えられた.
  • アンケート調査による
    澤木 修二
    1997 年 43 巻 2 号 p. 185-192
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科漢方診療における証検定の実態を把握するため, アンケート調査を試み, 25通の回答を得た, 集計結果をみると, 証は重視すべきであるという意見が多かつたが, 実施している人はそれより少なかつた. 多忙な診療のためである.
    問診, 望診, 聞診, 切診の四診のうち, 鼻粘膜の望診 (視診) は耳鼻咽喉科臨床特有の方法と思われた. 証検定の指標としては虚実が最も多く用いられ, 陰陽がこれについでいた.
    証は西洋医学を学んできた医師, とりわけ初心者にはむっかしい. 東洋医学と西洋医学の体系が根本的に異なっているからである. しかしわれわれは正しい漢方診療を実施するために, 熱心に証を学ばなければならない.
  • 小川 晃弘, 赤木 博文, 西崎 和則, 増田 游, 西岡 慶子, 木村 宣彦, 松浦 博夫
    1997 年 43 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は25歳女性で右頸部腫瘤と斜頸を主訴として来院した. 細菌などによる炎症性リンパ節腫大を疑われ, 抗生剤などの投与により症状は改善せず腫瘍性病変も疑われたため, 最終的に頸部腫瘤を摘出したところ組織学的に慢性肉芽性病変であることが分かつた. しかし頸部腫瘤の原因疾患は不明であつた.
    慢性扁桃炎の既往があり, 後ほど摘出した扁桃での病理組織学的に判明した扁桃放線菌症との関連が疑われた. その後のEMAの特殊染色を含む詳細な検討により, 頸部腫瘤は嚢胞性疾患が先行した病変であることが明らかになった.
  • 大輪 達仁, 古謝 静男, 糸数 哲郎, 真栄城 徳秀, 下地 善久, 真栄田 裕行, 中村 由紀夫, 野田 寛
    1997 年 43 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    喉頭癌と紛らわしい喉頭結核の1例を経験した. 症例は72歳, 男性で喉頭癌の診断で生検が施行された. 病理所見は軽度異形上皮と広範な壊死のみであった. 確定診断は喀痰検査, 病理組織検査のみで得られず, 抗酸菌染色により結核菌を証明することで得られた. 喉頭結核が疑わしい場合には抗酸菌染色を追加する必要があると考えられた.
    同症例は肺結核の既往があり, 気管支喘息に対する吸入ステロイド療法も行っていることから, 局所の免疫が低下し, 感染が再燃したものと考えられた. このような状況は少なくないことから, 喉頭の非定型的な病変を持ち, ステロイド療法など結核のリスクがある場合は, 喉頭結核の考慮が必要であると思われた.
  • 佐藤 公輝, 鈴木 章之, 山田 和之, 安藤 敬子
    1997 年 43 巻 2 号 p. 204-210
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 女性. 咽頭痛を主訴に来院. XP上気管狭窄を認めたため, 気管切開と同時に生検を施行し, 気管扁平上皮癌と判明した, 腫瘍は, 傍気管・食道筋層・甲状腺に浸潤していた, 放射線照射の後, 遊離空腸を用いた再建を含む摘出術を施行した. 病理報告では甲状腺乳頭癌もあり, 稀な重複癌症例であった.
    最近の気管原発癌の報告例を検討した. 従来, 腺様嚢胞癌が多いとされてきたが, 近年は扁平上皮癌の報告が多く, レーザーによる呼吸道の確保や放射線治療・手術療法の組み合わせによつて, 良好な結果を得たとする報告も多く見受けられ, 今後の予後向上が期待される.
  • 渡邉 昭仁, 斎藤 泰一
    1997 年 43 巻 2 号 p. 211-213
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    眼窩気腫は眼窩と鼻腔副鼻腔に交通が生じ空気が眼窩眼瞼に侵入した状態をいう. これらは空気の存在部位により以Fの3タイプに分類される. 眼瞼にのみ見られるタイプ, 眼窩内にのみ見られるタイプ, これら両側に見られるタイプである. このなかで眼瞼のみのものは非常に珍しく, さらに外傷の既往のない症例はさらに稀である. 今回われわれは骨折をおこすような外傷の既往なく, 拂鼻により眼瞼にのみ気腫を認めた症例を経験したので報告する.
  • 三好 彰, 三好 明美, 三邉 武幸
    1997 年 43 巻 2 号 p. 214-217
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    われわれは本論文で, 発話時のtongue thrustを訴えて入院となった, 16歳女子の1症例について報告した. 彼女は家庭内の問題に起因する不登校に悩んでおり, 神経症症状を募らせていた. このtongue thrustの発作も神経症の身体症状と判断されたので, 神経科の主治医を紹介した.
    本症例の経験は, 耳鼻科医といえども不登校に対するある程度の知識を有しておく必要性を痛感せしめた.
  • 至適投与量の検討
    奥田 稔, 海野 徳二, 今野 昭義, 石井 哲夫, 馬場 駿吉, 中井 義明, 茂木 五郎, 中村 晃, 金井 直樹, 川堀 眞一, 坂田 ...
    1997 年 43 巻 2 号 p. 218-238
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性アレルギー性鼻炎患者を対象に, TMK-688の至適用量を二重盲検試験により検討した. 最終全般改善度 (中等度改善以上) は10mg群66%, 20mg群35%および40 mg群44%であり, 10mg群が最も高く20mg群とは有意差が認められた. 安全度 (投与終了時に副作用なしの症例) は, 10mg群85%, 20mg群89%および40mg群86%であり3群間に差は認められなかつた. 副作用としては, 皮膚症状が20mg群と40mg群で各5例, 消化器症状が10mg群7例, 20mg群2例, 40mg群1例認あられたが, 投薬中止で軽快, 消失した. 眠気は10mg群と40mg群で各1例認められただけであった. 以上から, 本薬剤は極めて有効性が高く, また従来の抗ヒスタミン剤にありがちな眠気の副作用が少ない有用性の高い薬剤であることが明らかとなつた. ただし, 10mg群の改善率が最も高かったため至適用量を決定するまでには至らなかった. 今後は, 10mg群およびそれより低用量側で至適用量を検討する必要がある.
  • 低用量側での至適投与量の検討
    奥田 稔, 海野 徳二, 今野 昭義, 石井 哲夫, 馬場 駿吉, 中井 義明, 茂木 五郎, 畑山 尚生, 川堀 眞一, 新川 秀一, 池 ...
    1997 年 43 巻 2 号 p. 239-260
    発行日: 1997/03/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    通年性アレルギー性鼻炎患者を対象として, TMK-688の至適用量を二重盲検試験により検討した. 最終全般改善度 (中等度改善以上) は2.5mg群40%, 5mg群46%およびl0mg群42%であり, 5mg群が最も高い有効率を示した. 安全度 (投与終了時に副作用なしの症例) は2.5mg群96%, 5mg群96%および10mg群90%であり3群間に差は認められなかつた. 以上から有効性, 安全性に勝る5mgが用量として適当と推定された. しかし, 急性上気道感染の罹患がなく, 併用薬・併用療法がなく, かつ本薬剤の服薬率が90%以上の症例では, 最終全般改善度は2.5mg群41%, 5mg群46%, 10mg群53%となり, 10mg群が最も高かった. また, 10mg群は前回の結果と比較して統計的に有意差は認められなかつた. それゆえ, TMK-688の至適用量は1日量10mgと推察された. ただし, この考え方はあくまでも後付け解析の結果出てきたものであり, この考えを検証するために5mgと10mgの比較を行う必要がある.
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