感染症学雑誌
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58 巻, 11 号
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  • 亀岡 陽子, 中川 勝, 田村 正和, 安岡 劭, 螺良 英郎
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1139-1143
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    好中球によるE. coli殺菌能に及ぼす, 免疫グロブリン (secretory IgA, monomeric IgA, monomeric IgG) および気管支・肺胞洗瀞液の影響について検討した.
    1. 免疫グロブリンによるE. coli殺菌能を検討した結果, E. coliはsecretory IgAにて殺菌されたが, 好中球添加にて, さらに殺菌された.
    2. 気管支・肺胞洗源液には, 新鮮血漿ほどではないが, 好中球のE. coli殺菌能を上昇させるものが含まれていた.
    3. 気管支, 肺胞洗源液に免疫グロブリンを加えてE. coli殺菌能を検討した結果, secretory IgAを加えた系にて, Ecoliが殺菌された.さらに好中球を添加すると, secretory IgAおよびmonomeric IgAを加えた系にて, E.coli殺菌能が上昇した.
  • とくにステロイドの有用性にかんして
    河合 伸
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1144-1160
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Septic Shock Lung (敗血症ショック肺) の発生機序を解明しつつ, 本症の予後好転を目的にステロイドの作用点を明確にすべく臨床的ならびに実験的検索を行った.
    臨床的に本症の予後はステロイドにより有意に改善することが示された. 一方, 本症は白血球3,000/mm3未満の敗血症例, および好中球減少Edx家兎およびラツトに発生がみられなかったこと, またSOD前処理Edx小動物の肺の水腫性変化が有意に抑制されたことより, 本症の発生には好中球が重要な役割を有することが考えられた.
    実験的Edx家兎における, 好中球減少 (破壊) およびこれに伴なう血中ラインゾーム酵素の上昇, 引き続く変化として肺リンパ流量増加と肺の水腫性変化に対し, ステロイドの有意な抑制効果が示された.
    これら一連の成績から, 本症に対してステロイド剤は早期に用いられれば, きわめて有用であることが示唆された.
  • 猿渡 克比孔, 伊藤 直美, 長沢 正夫, 中里 博子, 古賀 宏延, 渡辺 講一, 田中 光, 藤田 紀代, 重野 芳輝, 山口 恵三, ...
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1161-1169
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    界面活性剤であるTweenは細菌学的に用いられる場合は菌の均一化, 材料の分散剤またはesterase活性の測定の際の基質として用いられ, その中でTween 60は土壌からLegionellaを分離する際の土壌の処理剤として用いられている. またTween 80はある種の菌の発育を阻害する作用があることは知られていたが, 私達は各種TweenのLegionellaの生存や発育に及ぼす影響を検討した.
    Legionellaの生存におよぼす影響では, L. pneumophila, serogroup 1 (Philadelphia l) は各種Tweenによってほとんど影響を受けなかったが, 他の菌種では6時間作用後より, 生菌数は減少し, その程度はTween濃度と相関々係にあった. 特にTween20はL. bozemanii, L. gormanii, およびL. tongbeachaeに対して0.1%以上の濃度で殺菌的に作用した.
    Tween 60は他のTweenに比較して発育阻害作用は少なかったが, 本剤の0.5%濃度以上では, L. pneumophilaの一部の菌株を除いてはほとんどすべての菌株の発育を阻害した.
    以上のことより, 土壌からのLegionella属の検出に際して用いる場合には, その濃度を0.1-0.2%にし, 且つ6時間以内に処理を行なうことが重要であると結論した.
  • 北垣 官四郎, 松前 昭廣, 合田 朗
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1170-1176
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    歯周疾患病原菌の中で特に偏性嫌気性菌に関して, その酸素耐性, すなわち口腔内の好気的条件化での生存性および発育性について検討した.
    酸素耐性能は生残菌数が1/10になるのに要する空気暴露時間 (D-time, Decimal Reductiontime) で表わした. その結果, 空気暴露開始時の菌数が102~105 cells/Plateの場合, 被検菌株のD値は, Bacteroides gingivalis, B・intermedius, B・loescheii, B・melaninogenicus, およびFusobacterium nucleatumが2~10時間の値を示し, 対照菌株として用いたB・fragilisの18~48時間と比較すると弱い酸素耐性であることが示唆され, 興味ある知見が得られた.
  • 高橋 修和, 薩田 清明
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1177-1186
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1981年8月山村の地域集団で40歳以上の住民を対象として健診を行い, 受診者にインフルエンザワクチン接種および採血を行った.
    1976年以前に流行したインフルエンザ流行株に対するHI抗体価64倍以上保有率を検討した. A/PR/8/34株は60-69歳, 80歳以上の年齢層で31.3-31.8%と低率であったが, 40-59歳, 70-79歳の年齢層では70.3-76.7%, 61.9%と高率であった. A/大町/1/53株は各年齢層ともHI抗体楊4倍以上保有率は12.2-43.2%と低率であった. A/足立/2/57株およびA/愛知/2/68株は各年齢層とも63.8-65.6%, 71.9-76.2%と高率を示していた. A/NJ/8/76株はHsw N1型で, 60歳以上の年齢層では65.6-90.5%と高率であった.
    1976年以降の流行株に対するHI抗体64倍以上保有率は各年齢層ともA/USSR/92/77株, A/熊本/37/79株, A/Bangkok/1/79株のそれぞれについて25.0-31.8%, 18.8-27.3%, 23.8-31.8%と低率であった. B/神奈川/3/76株およびB/Singapore/222/79株のHI抗体価64倍以上保有率は22.7-37.5%, 22.7-40.6%と低率であった.
    高齢者に市販インフルエンザワクチン0.7ml, 1回皮下接種し, そのHI抗体産生について検討した. ワクチン接種によるHI抗体4倍以上上昇率はA/熊本/37/79株, A/Bangkok/1/79株およびB/神奈川/3/79株について60歳以上の年齢層で56.0-75.8%, 48.0-58.6%, 28.0-48.2%であった. 流行株のA/USSR/92/77株, A/新潟/102/81株およびB/Singapore/222/79株は44.0-76.0%, 51.7-70.0%, 32.6-64.0%にHI抗体産生がみられた.
    この地域の高齢者は流行ウイルス株に対するHI抗体価楊4倍以上保有率が低率であり, ワクチン接種が必要であると考える.
  • 伊藤 隆子, 平野 トヨ, 吉岡 守正
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1187-1193
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    B群レンサ球菌 (GBS) 各血清型計7株について, ddYマウスを用いビルレンスを調べた結果, 新生仔 (1週齢以内) はアダルト (4週齢以上) より, 脳内接種は腹腔内接種より (特にIII型) 高い感受性を示した.
    出生後生存仔数は, 正常母13.7匹に対し膣内Ia型株接種母では3.8匹と少く, 死仔はすべて敗血症死で, GBS産道内保有は新生仔敗血症罹患の高い危険性を示した. それに対し受働 (ウサギ抗血清) および自働 (Ia型加熱死菌ワクチン) 免疫処理母では各々11.5, 9.0匹と中間の値を示した. 新生仔への腹腔内攻撃実験では, 正常母からの新生仔では防御率32.5%と低いのに対し, 免疫処理母からの新生仔では76.5-95.2%と高かった. また抗Ia型血清投与母からの新生仔へのIII型株攻撃に対しても82.1%の防御率を示した. 各実験群母の血清抗体価は, 凝集素価, 殺菌抗体価ともに, 免疫処理群の方が有意の値を示した.
  • 高橋 昌巳, 一幡 良利, 大島 赴夫, 吉田 耕作
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1194-1198
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Klebsiella pneumoniaeに対する宿主側の抵抗性因子を検討する目的で, 正常人血清100例について臨床材料から分離したマウス致死性を保有するK. pneumoniae K-9株を用いて被働性感作によるマウス感染防御能を検討した. この結果30%の血清に感染防御能が認められ, うち2%が10倍希釈濃度おいても感染防御能を示した. この活性は抗ヒトIgG, IgM, IgAヤギ血清で吸収されると共に, K-9株の泰膜多糖体によっても吸収された. また, 本血清中の免疫グロブリンをK-9株の莢膜多糖体で吸収したところ, IgG量が21%, IgA量が13.5%, IgM量が4.8%吸収され減少した.
  • 菅谷 憲夫, 三田村 敬子, 武内 可尚, 根路銘 国昭, 石田 正年
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1199-1205
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983年の初頭, 全国的に約50万人規模のインフルエンザの流行があり, その主体は, H3N2亜型ウイルスであったと報告された. この流行に際して, 小児科外来患者を対象に, ウイルス分離を試みたところ, 29株のH3N2型ウイルスが分離され, HA抗原分析の結果, 分離株は, A/Philippines/2/82およびA/石川/7/82と類似した抗原性を有することが明らかとなった. 1982年の秋に接種されたワクチン株, A/新潟/102/81と分離ウイルスとの間には, 抗原構造の大幅な差が認められたので, ワクチンの効果は期待できなかったと思われたが, 実際, ウイルス分離陽性例の中にも, ワクチン接種者が, かなり含まれていた. 2歳未満の患児 (平均年齢10.7ヵ月) から, 10株のウイルスが分離されたが, 高熱は伴うものの, 普通感冒の臨床像を呈して軽症に経過し, 肺炎, 喉頭炎等の合併症はみられなかった. 乳幼児の感染径路としては, 保育園での流行が2名にみられたほか, 家族内に有熱者が存在したものが7名おり, 外出の機会の少ない乳児も, 家庭内で濃厚に感染を受け, 流行期には, 幼児, 学童ともに多数, 小児科外来を受診しているものと思われる.
  • 伊藤 武, 高橋 正樹, 甲斐 明美, 高野 伊知郎, 斉藤 香彦, 大橋 誠
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1206-1212
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    ヒトの散発下痢症や集団下痢症から検出された111株, ウシ由来の29株, 家禽由来の46株および野鳥由来の59株のC. jejuniならびにヒト由来の18株およびブタ由来の54株のC. coliを対象に9種類の抗菌性物質 (ABPC, EM, CP, TC, AMK, GM, KM, CER, NA) に対する感受性を検討した. ヒト由来のC. jejuniではAMK, EM, GMのMICは3.12μg/ml以下に分布し, すべての株が感受性であった. ABPC, CP, KMのMICは12.5μg/ml以下にやや幅広く分布するが, KMにMIC 100μg/mlの耐性菌が1株みられた. CERのMICは主として6.25μg/ml以上に分布した.TCのMICは6.25μg/mlを谷とする二峰性の分布を示し, 12.5μg/ml以上のものを耐性と考えると, 耐性菌は約69%を占めた.
    ウシ, 家禽・野鳥由来のC. jejuniの薬剤感受性パターンはヒト由来株のそれに類似した. ただし, ウシ由来株ではAMK・GM・KMおよびAMK・GM・KM・TCというパターンの多剤耐性菌がそれぞれ1株認められた.家禽由来株ではAMK・EM・KM・TCに耐性の株が1株, また野鳥由来株ではKMに耐性の株が低頻度ながら認められた.AMK・KM・TCおよびKM・TCというパターンの耐性菌がそれぞれ1株認められた.
    TCに対しては動物由来株でもヒト由来株と同様に二峰性のパターンを示したが耐性菌はウシ由来株で55%, 家禽由来株で22%, 野鳥由来株で10%であった.
    C. coliC. jijuniと同様の薬剤感受性パターンを示した. ヒト由来株でAMK・GM・KM (1株), EM・TC (2株), KM・TC (1株) およびTC単独耐性の菌 (3株) が認められた.
    ブタ由来のC. coliではヒト由来株と異なりTC耐性菌の頻度がやや低く, またEM耐性株 (24株, 44%), KM耐性株 (32株, 59%) が高頻度に認められ, それらの中にはAMK・EM・KM・TC (2株), AMK・EM・TC (1株), EM・KM・TC (4株) などの多剤耐性株があった.
  • 岡部 信彦, 立沢 宰, 小林 信一, Philip P. MORTIMER
    1984 年 58 巻 11 号 p. 1213-1220
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    伝染性紅斑は第5病ともよばれる軽微な伝染性発疹性疾患であり, ウイルス感染によることが推測されているが, その病原体はこれまでに明らかにされていない.
    1977年および1981年に東京で発生した伝染性紅斑の患者血清につき, ヒトパルボウイルスに対するIgM・IgG抗体を, モノクローナル抗体を用いたantibodycaptureradioimmuaoassayで測定したところ, 以下の成績が得られた. 対象は6~11歳の28名・38検体の患者血清で, age-mathedcontro117名についても測定した。さらに若干低年齢層であるが, 原因不明の発熱発疹性疾患である川崎病の5名についても測定を試みた.
    ヒトパルボウイルスに対する抗体は, 伝染性紅斑患者28名のうち1名のみがIgM・IgGともに陰性であったが, 27/28名 (96.4%) がIgM・IgGに対してそれぞれ陽性であった.
    検体数では37/38例 (97.4%) がともに陽性であった. age-matchedcontro1のIgM抗体は17例全例陰性 (0%). IgG抗体は10/17例 (58.8%) が, 患者群より低値で陽性であった. 川崎病の5名は, IgM・IgG抗体ともに陰性であった.
    病週ごとに各抗体の推移をみると, IgM抗体は発症1週後にすでにピークにあり, 次第に減少傾向がみられた. IgG抗体のピークは発症第3週にあるが, 第1週よりほぼプラトーに達していた.
    以上の成績より, ヒトパルボウイルスは伝染性紅斑の発症因子であろうと考えた.
  • 1984 年 58 巻 11 号 p. 1268-1270
    発行日: 1984/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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