感染症学雑誌
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59 巻, 10 号
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  • 加藤 隆弘, 本田 武司, 三輪谷 俊夫
    1985 年 59 巻 10 号 p. 955-959
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    種々のプロスタグランディン (PG) がClostridium difficileの2種類の毒素 (cytotoxinおよびenterotoxin) の産生に及ぼす影響について, マウス致死活性およびChinese hamster ovary細胞を用いた細胞致死活性を指標として調べた. 16, 16-dimethyl PGE2は菌の増殖を抑制しない範囲で毒素産生を1/16~1/1,024に抑制した. PGE2も同様に毒素産生を抑制した.しかし, PGF2α にはこのような作用は認められなかった.
    これらの成績により, Clindamycin惹起実験ハムスター盲腸炎の発生が16, 16-dimethyl PGE2で抑制されると言う現象は, PGによる毒素の産生抑制という観点から説明できる可能性が示唆された.
  • 小花 光夫
    1985 年 59 巻 10 号 p. 960-969
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia trachomatis (以下C.trachomatis) 感染症の診断法の1つとして抗C. trachomatis抗体測定法の本邦での確立とその改良を試みた. さらに, 血清抗体測定法とC. trachomatisの直接塗抹染色法, 分離培養同定法との比較検討を行なった. 抗体測定法の抗原にはHeLa229細胞内で増殖培養させた410種のC.trachomatis株を純化精製し, formalin不活化して用いた. 抗原固定にはNormal york sac (NYS) を混じたC.trachomatis抗原を無処理スライドグラスへ点置するか, NYSを加えずにアンモニアー卵白アルブミン処理スライドグラスへ点置した. 前者ではNYSによる非特異蛍光がみられ, 一方, 後者ではNYSによる非特異蛍光がなく判定は容易となるが抗原固定が不良となった. 抗体測定は前者の方法で間接蛍光抗体法を施行した. その結果, 抗C.trachomatis抗体の測定とImmunotypeの決定が可能となり, 非淋菌性尿道炎および新生児肺炎症例で陽性例がみられた.血清抗体測定法と抗C.trachomatisモノクロナール抗体による直接塗抹染色法, 分離培養同定法の3法を同時に施行した非淋菌性尿道炎患者12例では抗体測定法と他2法との陽性または陰性一致率は75%であった.
    以上, 本邦でも抗C.trachomatis抗体測定がImmunotype決定をも含めて技術的に確立でき, さらに, 非淋菌性尿道炎, 新生児肺炎などの症例でのC. trachomatis感染の検索に極めて有用であることが示された.
  • 林 純, 柏木 征三郎, 野村 秀幸, 梶山 渉, 池松 秀之, 青山 俊雄
    1985 年 59 巻 10 号 p. 970-976
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HBワクチンの乳幼児における効果をみるために, 乳幼児 (平均2.6歳) 147例 (男子74, 女子73例) に北研HBワクチンを接種し, HBs抗体が陽転しなかった例および再び陰性化した例に対して追加接種を行い, 最長25ヵ月にわたる長期観察を行った.
    HBs抗原, HBs抗体およびHBc抗体が陰性の例を対象とし, HBs抗原はRIA法, HBs抗体はRIA法およびPHA法, HBc抗体はRIA法を用いて測定した. 採血は接種前, 抗種後1, 6, 7, 13, 19, 24ヵ月と一部25ヵ月に行い, 原則として本ワクチン10μgを初回, 1, 6ヵ月に3回接種した. 13ヵ月までに陽転しなかった24例に4回目, さらに24ヵ月にHBs抗体が陰性であった22例 (再陰性化例を含む) に, 4回目あるいは5回目の接種を行った.
    24ヵ月でのHBs抗体陽性率は68.9%, 抗体価は24・3倍であった. 全経過を通じて女子が男子より高く, 4-6歳が0-3歳より高い陽性率であったが, 有意差はなかった. 13ヵ月に4回目接種を行い, 24カ月に陽性であったのは21例中6例, 28.6%であった. また24ヵ月に追加接種し, 25ヵ月で22例中14例, 63.6%が陽転した。全経過で陽転しなかった例は19例, 再陰性化は21例 (12例は追加接種により再陽転) であった.
    乳幼児のワクチンによるHBs抗体陽転率は, 成人に比べやや低い成績であったが, 副作用は1例も認められず, 本ワクチンは乳幼児に有用であると考えられた.
  • 沖津 忠行, 浅井 良夫, 安田 哲夫, 滝沢 金次郎
    1985 年 59 巻 10 号 p. 977-983
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983年と1984年の4月-9月の間に, 216名 (小児111名, 成人105名) の散発下痢患者を対象とした検査で23名からAeromonas属の菌が分離された. 内訳けはAeromonas hydrophila 8菌株, A.sobtia7菌株, A.caviae8菌株で, ヒトの下痢症との関連性が指摘されているA.hydrophila/sobriaは合計15菌株に達し, 推定病原菌としてはCampylocacter jejuni (26菌株) につぐ高い分離率を示した. 小児と成人におけるA.hydrophila/sobriaの分離率を比較すると, 両者でほぼ同様の割合 (6.3%対7.6%) であったが, とくに成人においては, ほかの推定病原菌と比して最も高い分離率であった. 本下痢症例から分離したA.hydrophila/sobriaの培養上清は, 15菌株中13菌株 (86.7%) がウサギ血球に対して溶血性を示した.
    A.hydrophila/sobriaの本下痢症例由来菌株 (15菌株) と環境材料から分離した菌株 (26菌株) について, 溶血性試験の成績とリシン脱炭酸試験およびVP反応の成績との関連性をしらべたが, 相関は認められなかった.
  • 重岡 秀信
    1985 年 59 巻 10 号 p. 984-995
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    結核症の補助診断に資する目的のため, Mycobacterium bovis BCG株より糖脂質AおよびC族を抽出精製し, 両者を抗原としたELISA法でヒトの血清IgG抗体価を測定した. 健常者30例ではA抗体, C抗体陽性例は各1例 (3.3%) であったのに対し, 活動性肺結核患者で排菌中または発症より3ヵ月以内の40例では, A抗体陽性14例 (35.0%), C抗体陽性28例 (70.0%) であり, いずれかが陽性を示したものは32例 (80.0%) と有意に高かった. 両抗体価は結核発症よりの時間経過とともに低下したが, C抗体価は発症より2年以上経過した結核患者でも22例中4例 (18.2%) の陽性例を認めた. 対照とした細菌性呼吸器感染症患者22例, 肺癌患者8例においては両抗体価とも陽性例はなく, 両抗体価を併せて測定することは結核症の補助診断法として有用と考えられた. 尚, これらの抗体価はツベルクリン反応の程度とは全く相関しなかった. また, 維持血液透析患者に併発した活動性結核患者では, 9例中A抗体陽性2例, C抗体陽性2例にすぎず, またその抗体価も低値であった.
  • 吉村 邦彦, 蝶名林 直彦, 中谷 龍王, 中森 祥隆, 中田 紘一郎, 谷本 普一
    1985 年 59 巻 10 号 p. 996-1004
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    低分子免疫調節剤Forphenicinolの慢性呼吸器感染症患者に対する臨床効果および免疫学的効果を検討した. 対象は9例の気道・中間領域感染症で, 基礎疾患の内訳はびまん性汎細気管支炎 (DPB) 8例, 気管支拡張症1例であり, 感染起炎菌はPseudomonas aeruginosa7例, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌 (GNF-GNR) 2例であった. また本剤は経口投与され, その投与日数は平均357日, 総投与量は平均31.89であった.
    1. 臨床効果は, 有効1例, やや有効4例で, やや有効以上の有効率は55.6%であった.
    2. 細菌学的には全例で不変であった.
    3. 副作用ないし検査値異常は1例も認められなかった.
    4. 免疫学的検査では, T, Bリンパ球比率には有意な変化は認められなかったが, Tリンパ球サブセットのうち本剤投与によりサプレッサーT細胞の減少傾向が認められた. また, NK細胞活性も本剤投与前後で有意な変化を示さなかったが, 4例で軽度の上昇が認められた.
    以上より, Forphenicino1はサプレッサーT細胞の減少により抗体産生能の増強効果が推測され, かつ安全性が高く長期投与が可能なため, 慢性呼吸器感染症に対し有用であることが示唆された.
  • 武内 可尚, 渡辺 淳, 野川 孝之, 木村 和弘, 由井 郁子, 安部 隆, 渡辺 幸恵
    1985 年 59 巻 10 号 p. 1005-1009
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    予め予想されたように, Mycoplasma pneumoniaeの流行が1983年より始まり, 1984年は多数の小児が肺炎で入院した. 以前からわれわれは, Mycopasma pneumoniae感染症に対する酒石酸Kitasamycin (Leuconlycin) の静注による治療効果を高く評価しており, 今回の流行でも同様の効果が得られるかどうかを検討した. 主として下熱効果を客観的指標として, 治療開始後24時間以内に平熱になったものを著効とすると, 73例中49例が著効, 5例が有効, 3日目以降になって下熱したものが19例であった。この19例の一見無効例を子細に検討してみると, 10例にはRSウイルスやアデノウイルス等の呼吸器系ウイルスの重複感染が証明された. 5例には胸水の貯留が, 2例には中耳炎あるいは鼓膜炎が, 他の2例のうち1例は好中球増多を伴う白血球増加例と肺気瘤を認めた. これらのことから, Leucomycinを適正に使用しているにもかかわらず手応えが不確実な例では, 他の因子の重複を考慮すべきであり, 逆に, 24時間以内に十分な臨床効果が得られれば, それは治療的診断にも結びつくものである. 小児はしばしぼ重複感染をするので, 薬効の評価に際しては慎重な配慮が望まれる. Leucomycinは静注に際して血管痛も少なく使用に便利であり, Tetracycline系抗生物質で言われる様な発育期にある小児に与える悪影響もない. M.pneumoriae感染症で入院した場合には, 第1選択薬として使用されてよいと考える.
  • 米倉 修司, 長尾 忠美, 小松田 光真, 野崎 宏幸, 有森 茂, 沢村 貞昭, 柳川 容子, 橋本 一男, 小沢 敦, 佐々木 正五
    1985 年 59 巻 10 号 p. 1010-1016
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    再生不良性貧血は原因不明の汎血球減少を呈する難治性の疾患であり, 重症感染によって死亡することが多いのが特徴的である. 最近われわれは重症再生不良性貧血の一例を無菌室にて治療し, 救命しえたのでここに報告する.
    患者は17歳の男性。昭和57年10月初旬皮下出血が出現し, 同年10月9日精査のため当科に入院。入院時理学的所見では全身の皮膚に大小の出血斑を多数認め, 検査成績では汎血球減少と骨髄低形成が著明であり, 再生不良性貧血と診断し, 副腎皮質ホルモン, 蛋白同化ホルモンの併用投与を開始したが, 好中球は全く増加する傾向がみられず, 重症感染症の発症が充分に予想されたので, 10月18日無菌室へ収容した. 無菌室入室中, 呼吸器感染症は全く認められなかったが, 原因不明の発熱が数回みられ, 抗生物質の経静脈投与により, 数日以内に解熱した. 咽頭糞便中からは常に細菌が検出されたが, これらの細菌を起炎菌とする感染症は認められなかった。319日間にわたる長期の無菌室治療を続けた結果, 次第に正常造血が回復し, 昭和58年9月無菌室を退出した。
    このように無菌室治療スタッフー同の協力によって重症感染症を克服し, 患者を寛解へ導きえたことは極めて有意義であり, 無菌室治療が好中球の極度に減少している重症再生不良性貧血にも有用であることが示された.
  • 宮崎 幸重, 赤司 文広, 新里 健, 石野 徹, 朝長 昭光, 重野 芳輝, 山口 恵三, 今村 俊之, 古賀 秀隆, 広田 正毅, 斉藤 ...
    1985 年 59 巻 10 号 p. 1017-1023
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    原因菌としては極めて稀な, Haemophilus paraifluenzaeによる感染性心内膜炎を経験したので報告する. 症例は29歳, 男性. 既往歴として過去に心疾患, 心雑音を指摘されたことはない. 昭和59年9月中旬ごろより, 発熱, 全身倦怠感が出現し, 10月13日入院となった. 入院時現症として, 発熱を認め, LevineIV度の収縮期雑音を聴収した. 入院後, PIPCを投与したところ, 過敏反応を示し, その後は心不全状態となった. 血液培養にて繰返してH.parainfluenzaeが検出され, 心エコーにて僧帽弁のprolapseと, 9mm×16mmのvegetationが確認されたため, H. parainfluenzaeによる感染性心内膜炎および僧帽弁閉鎖不全と診断した. 薬剤感受性検査では, 第三世代のセフェム系, とくにCZXは優れたMICを示した. CZXを投与するとともに, 心不全に対する治療を行ったところ, 臨床症状の改善がみられ, vegetationも5mm×11mmと縮小した. しかし, 胸部レントゲンでは肺浮腫の所見にあまり改善がみられず, この原因としては血清アルブミンの低下 (2.3g/dl) と肺血管透過性の充進が考えられたので, アルブミン製剤とステロイドを併用したところ, 1週間後には胸部レントゲンの改善が認められた.
    本症例は化学療法によって臨床症状および炎症所見の改善が認められたが, 僧帽弁閉鎖不全状態やvegetationには一定以上の改善がみられず, 弁置換術の適応と考え外科転科とした.
  • 田村 偉久夫, 市村 宏, 栗村 統, 栗村 敬
    1985 年 59 巻 10 号 p. 1024-1025
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1985 年 59 巻 10 号 p. 1026-1028
    発行日: 1985/10/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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