感染症学雑誌
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60 巻, 11 号
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  • 河野 茂, 笹山 一夫, 道津 安正, 渋谷 直道, 宮崎 幸重, 古賀 宏延, 中里 博子, 長沢 正夫, 須山 尚央, 福田 義昭, 森 ...
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1165-1171
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    正常マウスでのPseudomonas aeruginosa性肺炎モデル作製の検討を行った.使用菌株としては, P.aeruginosa NC-5を用い, 菌の接種は経気管的方法によった.本菌感染によるLD50は5.1×106CFU/mouseで, LD100における接種菌量では, 肺内生菌数は初期クリアランスなしに増加し, 24~48時間以内に全例死亡した.肺炎発症マウスでは6時間後より血中に菌の出現がみられ, その後血中菌量は経時的に増加した.病理組織学的には, 出血を伴う典型的な緑膿菌性肺炎の像がみられた.また, ceftazidime (CAZ) およびgentamicin (GM) による治療実験を行い, 本感染モデルの薬効評価に関する有用性の検討も行った.
  • 第3報: 分離頻度の低い細菌による敗血症例について
    鵜木 哲秀, 中村 功, 国広 誠子
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1172-1177
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1968~1983年に当内科で経験した敗血症147例の約3/4を占めるE.coli, α-streptococcus, S.aureus, P.aeruginosa, K.pneumoniae, B.fragilis の6菌種による症例の臨床的解析については本誌60巻5号に掲載ずみである.残りの分離頻度の低い細菌 (以下, 稀な細菌と略す) による敗血症39例にも注目すべき点が少なくない.
    これら39例の敗血症の病原菌はブドウ糖非発酵Gram陰性桿菌 (非発酵菌) 14株, Enterobacteriaceae10株, 嫌気性菌8株, Salmonella属4株, Neisseria属2株, S.pneumoniae1株で, 全例単一菌感染であった.基礎疾患は内科領域全般にわたる比較的軽症なものが多かった.感染様式では, 球菌, 嫌気性菌, C.perfingens, Salmonella属は在宅感染が多いのに反して, 非発酵菌とEnterobacteriaceaeは院内感染が多かった.Shockをきたし易い菌種は非発酵菌とEnterobacteriaceaeであった.稀な細菌による敗血症の致命率は23%で, 分離頻度の高い細菌群の33%に比してやや良好であったが, 非発酵菌とEnterobacteriaceaeによる敗血症の致命率は高く, 臨床上注意を要する.
    稀な細菌による敗血症の中で注目すべき症例として, Peptostreptococcus属とN.mucosaによる心内膜炎, S.marcescens, F.meningosepticum, N.gonorrhoeae, A.hydrophila, A.calcoaceticus, P. multocidaによる敗血症などがあり, これらの大多数は本学会誌などに既に報告ずみである.
  • 山本 満, 久保田 好之, 松浦 基博, 本間 遜
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1178-1183
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    緑膿菌の病原因子であるプロテアーゼ (P), エラスターゼ (E), 外毒素 (Ex) の各トキソイドと緑膿菌の共通感染防御抗原 (OEP) より成るコンポーネントワクチンをびまん性汎細気管支炎 (DPB) 患者38例とその他の疾患9例に接種し, 各抗原に対する抗体価の推移をELISA法で調べた.各抗体はワクチン接種後2~3ヵ月で著しい上昇を示し, 3~4ヵ月以降ほぼ同じレベルを維持した.発熱などの副作用は認められなかった.またDPB患者で喀痰中に緑膿菌が定着している患者群 (1) と定着していない患者群 (II) とに分けて各抗体価を比較するとワクチン接種前で1群は4種の抗原に対してII群より高い値を示した. (特にOEP抗体とEx抗体でその差が大きかった.) しかし両群ともワクチン接種により抗体価は一段と上昇した.次に両群につきワクチン接種により6ヵ月以上にわたり維持された抗体価について調べた.その結果OEP抗体とE抗体で1群の方が5%の危険率で有意に高い値を示したがP, Exでは有意差はみられなかった.両群ともワクチン接種前の抗体価に比べて維持された抗体価は何れも著しく有意に高い値であることがわかった.以上のことから本ワクチンの接種によりOEP, P, E, Exに対する抗体価はDPB患者の喀痰中の緑膿菌の定着の有無に拘らず上昇し, 未定着の患者でも定着した患者とほぼ同程度に高い抗体価を維持させることが明らかとなった.
  • 小林 宏行, 押谷 浩, 吉田 雅彦, 齋藤 玲, 中山 一朗, 小野寺 壮吉, 佐々木 信博, 長浜 文雄, 平賀 洋明, 中林 武仁, ...
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1184-1215
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しいアミノ配糖体系抗生剤HAPA-Bの呼吸器感染症に対する有効性, 安全性および有用性を検討する目的で, Amikacin (以下AMK) を対照として二重盲検法による比較試験を実施した.
    対象疾患は細菌性肺炎, 肺化膿症ならびに慢性呼吸器感染症 (慢性気管支炎・び漫性汎細気管支炎の急性増悪, 感染を伴った気管支拡張症・肺気腫・肺線維症・気管支喘息など) とした.
    これらにHAPA-B1回200mg1日2回, AMK1回200mg1日2回のいずれかを原則として14日間筋注投与した.
    その結果以下の成績が得られた.
    1. 集積症例
    218例について検討薬剤が投与された.このうち小委員会およびコントローラーにより開封前に解析対象症例としての適否が検討された.その結果, 臨床効果解析対象例として185例 (HAPAB98例, AMK87例), 副作用解析対象例として207例 (HAPA-B108例, AMK99例), 臨床検査値解析対象例として193例 (HAPA-B102例, AMK91例), 有用性解析対象例として182例 (HAPA-B96例, AMK86例) が採用された.
    2. 臨床効果
    小委員会判定でHAPA-B投与群98例中, 著効1例, 有効65例, やや有効9例, 無効23例, 有効率67.3%, AMK投与群87例中著効1例, 有効56例, やや有効10例, 無効20例, 有効率65.5%であり, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.また, 肺炎群と慢性呼吸器感染症群での層別, 重症度別の臨床効果においても両薬剤投与群問に有意差は認められなかった.また, 主治医判定においても両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.しかしながら慢性呼吸器感染症群における投与3日後あるいは7日後の咳嗽, 呼吸困難喀痰量の改善度において, HAPA-B投与群はAMK投与群に比して有意に優れていた (P<0.01, 0.05).
    3. 細菌学的効果
    起炎菌として108株が分離されたが, その内訳はグラム陽性菌27株, グラム陰性菌81株とグラム陰性菌が多くを占め, 菌種も多彩であった.その消失率はHAPAB投与群66株中消失40株, 60.6%, AMK投与群42株中消失25株, 59.5%であり, 両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.さらに, グラム陽性菌, 陰性菌別あるいは菌種別に層別した場合においても両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
    4. 副作用および臨床検査値異常
    副作用はHAPA-B投与群108例中3例, 2.8%, AMK投与群99例中6例, 6.1%にみられた.HAPAB投与群では3例とも発疹, 発熱, 掻痒感などアレルギー症状を主体とした例であり, AMK投与群は発疹, 掻痒感のほかに注射部位の疼痛1例, 注射部位の発赤・疼痛1例, めまい1例がみられた.両薬剤投与群間における発現頻度に有意差は認められなかった.両薬剤投与群を通じて重篤な症状を呈した例, 後遺的症状を呈した例はみられなかった.
    臨床検査値異常は, HAPA-B投与群102例中20例, 19.6%, AMK投与群91例中27例, 29.7%にみられた.主たるものは, 好酸球増多, トランスアミナーゼ上昇などであった.両薬剤投与群間において発現頻度に有意差は認められなかった.また, BUN上昇3例, BUN上昇およびクレアチニン上昇1例がみられたが, これらはいずれもAMK投与群において発現し, HAPA-B投与群ではみられなかった.全ての臨床検査値異常は重篤な例ではなく, 後遺的な経過を示した例はみられなかった.
    5. 有用性
    有用性において有用以上と判定された症例は, 小委員会判定でHAPAB投与群96例中63例, 65.6%, AMK投与群86例中54例, 62.8%であった.また主治医判定においてはHAPA-B投与群92例中60例, 65.2%, AMK投与群で84例中46例, 54.8%であった.両薬剤投与群間に有意差は認められなかった.
    6.以上の成績より, HAPA-B1回200mg1日2回投与は, AMK1回200mg1日2回投与に比し, 肺炎, 慢性呼吸器感染症などに対し, 少なくとも同程度の臨床効果が得られたものといえよう.また, HAPA-B投与群においては, 腎および聴器に対する副作用および臨床検査値異常がみられなかったことから, より安全性が示唆され, かかる感染症に対しても臨床的に有用性が期待される新しいアミノ配糖体系抗生剤と考えられた.
  • HAPA-B点滴静注研究会
    勝 正孝, 斎藤 篤, 小田切 繁樹, 岸 洋一, 斎藤 玲, 中山 一朗, 武部 和夫, 田村 豊一, 遠藤 勝実, 米田 政志, 井戸 ...
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1216-1239
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    新しいアミノグリコシド系抗生剤HAPA-Bの点滴静注投与における有効性および安全性について基礎的・臨床的検討を行った.
    内科領域, 泌尿器科領域における諸感染症を対象とした.HAPA法Bは原則として1回200mgを1日2回, 1時間を中心として0.5時間から2時間かけて点滴静注し, 以下の成績を得た.
    1) HAPA-B200mg, 1時間点滴における血中濃度のピークは点滴終了時にあり, ピーク値の平均濃度は14.13±4.44μg/mlであったが, 患者によりバラツキがみられた.腎機能障害者では, 正常者に比べてHAPA法Bの排泄が遅れ, 血中濃度の遷延する傾向がみられた.
    2) 内科領域における臨床効果は呼吸器感染症61例中43例 (70.5%), 尿路感染症6例, 敗血症4例, その他の疾患3例ではいずれも全例著効ないしは有効で, 全体では75.7%(56/74) の有効率であった.細菌学的効果は62.5%の菌消失率であった.
    3) 泌尿器科領域における臨床効果はUTI薬効評価基準による判定では54.9%(50/91), 主治医判定では61.2%(60/98) の有効率であった.菌消失率は68.3%であった.
    4) 副作用の発現例は182例中食欲不振1例, 発熱1例, 皮疹1例の計3例 (1.6%), 臨床検査値異常の発現例は9例で, その多くはトランスアミナーゼの一過性の上昇であった.これらの副作用・臨床検査値異常は, いずれも軽度で, 重篤なものはみられなかった.
    5) 以上の結果より, HAPA-Bを点滴静注投与した際の有効性, 安全性は筋注投与時のそれとほぼ同等と考えられ, 点滴静注は有用な投与方法と考えられた.
  • 椎名 義雄, 武田 敏, 岩倉 理雄
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1240-1247
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    本研究は本邦婦人のChlamydia trachomatis (C. trachomatis) の罹患状況を明らかにする目的で, 産婦人科外来を訪れた2,559名の頚管スミアにMicro Trak法を用い, C.trachomatisの検出を試みた.
    その結果, 107例 (4.2%) が陽性を示した.職業別陽性率は学生 (14.1%), 風俗および風俗関連営業従事者 (10.1%), 自営業者 (5.9%), 会社員 (5.5%), 主婦 (2.4%) で, 学生や風俗営業従事者で高い傾向を示した.
    年齢別陽性率は20歳までが9.4%と高く, その後は21~30歳 (4.9%), 31~40歳 (3.1%), 41~50歳 (2.1%), 51歳以上 (1.1%) と, 加齢と共に減少傾向を示した.
    来院時の主訴別陽性率は妊娠が6.0%(学生・風俗および風俗関連営業従事者共に12.5%, 自営業者10.5%, 会社員9.2%, 主婦2.7%), 不妊症 (16.7%), 性病検査希望者 (13.3%), 帯下増加 (7.0%), 不正出血 (4.6%), 外陰部不快感 (3.6%), 癌検希望者 (1.4%) であり, 未婚女性の妊娠・不妊症・性病検査希望者で高い傾向を示した.
    以上の成績と我々が既に報告した1,096名に対して検索した成績 (検出率2.3%) より, 本邦30歳以上の婦人からは約2~3%の割合でC.trachomatisが検出されるものと思われる.しかしながら, C.trachomatis陽性者の年齢分布は, 20歳以下が26.2%, 30歳以下では69.2%であり, 若年者層にC.trachomatis感染が広まっていることが明らかになった.今後, 本邦においても経口避妊薬の使用が一般に認可されようとしている。それに伴って性の開放はさらに進み, C.trachomatisを含めた他のSTD罹患者が欧米並になることは確実と思われる.この点からも早急な社会的対策が望まれる.
  • 鈴木 幹三, 川村 秀和, 山本 俊幸, 岸本 明比古, 友松 武, 足立 暁, 山本 和英, 有我 憲仁
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1248-1252
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗生剤投与中止後に発症し, vancomycin (VCM) の内服により軽快した偽膜性腸炎の1例を報告した.症例は78歳, 女性.昭和58年9月15日心不全および肺炎となり, cefazolin (CEZ) 4g/日16日間, cefoperazone (CPZ) 3g/日3日間, ticarcillin (TIPC) 10g/日12日間使用, 上記軽快し10月17日より抗生剤を中止した.10月30日より粘血便が出現し, 大腸内視鏡検査では, 直腸粘膜は全体に浮腫状, 易出血性で, 黄白色の偽膜様小隆起が多発し, 偽膜性腸炎と診断した.糞便中よりCEZ, CPZ, TIPCに低感受性のClostridium difficileが103以上/g分離され, C.difficile毒素も証明された.治療は11月1日よりVCM 1.5g/日を投与開始, 8日間の使用により粘血便は消失, 大腸内視鏡所見も軽快した.
    偽膜性腸炎は抗生剤投与中に発症することが多いが, 本例ではTIPC投与中止14日後に発症した.長期間の抗生剤治療により腸内細菌叢の変動をきたし, 菌側および宿主側の状況により本症が遅延して発症したと推察された.
  • 田中 真奈実, 堀 栄太郎, 糸川 英樹, 杉山 悦朗, 芝田 敏勝, 神山 隆一, 寺田 充彦, 安村 寛, 神戸 文雄
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1253-1257
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    埼玉県下の利根川支流流域にて感染した慢性日本住血吸虫症の2例を報告する.関東地方における本症の発生は, 東京近郊の利根川下流流域での分布について報告されているが, その中間宿主である宮入貝が川の氾濫時に容易に移動しうることから, 埼玉県内のより上流流域も本症流行地であったと考えられる.ここで報告した2例は, いずれも埼玉県下の利根川支流 (上流の人間川及び下流の中川) 流域在住者で, 本症とは異なる基礎疾患で消化管摘出を行い, 摘出臓器中に, 日本住血吸虫虫卵が認められ, 本症と診断された.虫卵は石灰化が認められなかったが, いずれも古いものであり, 陳旧感染例と考えられた.また, 1例では, Borrmann III型の胃癌に合併しており, 本症と消化器癌の発生とに関連して興味深いものと考えられた.患者の居住地域近隣では, 宅地化のため, 宮入貝は発見できず, 新感染の可能性は少ないと思われるが, 陳旧感染例は数多く存在すると思われ, 今後も検討が必要であると考えられた.
  • 宇都宮 与, 日高 和吉, 小寺 顕一, 米 佳子, 上野 留夫, 花田 修一, 橋本 修治
    1986 年 60 巻 11 号 p. 1258-1260
    発行日: 1986/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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