感染症学雑誌
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60 巻, 5 号
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  • 第1報: 臨床的解析
    鵜木 哲秀, 中村 功, 国広 誠子
    1986 年 60 巻 5 号 p. 409-417
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    敗血症の予後を悪化させる要因を把握する目的で, 1968-1983年の16年間に当内科に入院した敗血症と感染性心内膜炎147例の臨床的解析を行った. 分離菌153株の内訳はGram陰性桿菌67%(ブドウ糖発酵菌39%, 非発酵菌28%), Gram陽性球菌22%, 嫌気性菌11%であった. 分離頻度が最も高い細菌は大腸菌で, 以下, 緑膿菌, α-溶連菌, 黄色ブドウ状球菌, K. pmummiae, B. fragilisの順で, これら6菌種が全体の70%を占めていた. 大腸菌は在宅, 院内感染の別なく軽症な基礎疾患患者より分離され予後は良好. 緑膿菌は重篤な基礎疾患を有する患者の院内感染として分離され予後は不良, 黄色ブドウ状球菌は在宅感染の皮膚・関節疾患患者より分離され予後良好. K. pneumoniaeはultimately-fataldiseaseおよびnon-fatal diseaseを基礎疾患として有する患者より分離され予後不良.B. fmgilisは院内感染である消化器固型癌患者より主に分離され致命率は80%と最悪であった. ShockやDICを併発し易い菌種はK. pmumoniaeB. fragihsで併発例の75%が死亡. 化学療法の適否が予後に及ぼす影響をみると, 化学療法不適の造血器疾患を基礎疾患として有する敗血症患者や, shockやDICの併発例や, B.fragihsによる敗血症患者は全例敗血症死しており極めて予後不良であった. 本集計の結果, 敗血症の予後を悪化させる要因は, (1) 基礎疾患の重症度, (2) 化学療法の不適, (3) shockやDICの併発, (4) B. fragilisによる敗血症の4項目に絞られた.
  • 第2報: 敗血症の予後を悪化させる要因の解析と考察
    鵜木 哲秀, 中村 功, 国広 誠子
    1986 年 60 巻 5 号 p. 418-427
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    第1報の集計結果より結論として導き出された敗血症の予後を悪化させる4つの要因を詳細に検討した. (1) 造血器疾患を基礎疾患とする患者の敗血症: 敗血症全体の19%を占め, これらの致命率は71%と高く, なかでも急性白血病患者では82%が敗血症死していた. 病原菌としては緑膿菌の頻度が最も高く, 化学療法の不適例が28%, shockやDICの併発が18%であった. (2) 化学療法の不適: 全体の16%を占め, これらの87%が敗血症死していた. 造血器ならびに消化器疾患を基礎疾患とする患者の院内感染例が多く, これらの半数でshockやDICを併発していた. 化学療法不適の内容は使用化学療法剤に感受性なしが半数以上を占めていた. (3) ShockやDICの併発: 全体の21%でみられ, これらの致命率は68%で, 基礎疾患としては消化器, 造血器系が主で, 在宅感染例が半数以上を占めていた. ShockやDICを起し易い菌種はK. pneumoniaeとB. fragilisであった. 本群の化学療法不適例はすべて敗血症死していた. (4) B. frabilis敗血症: 全体の7%を占め, その80%が敗血症死していた. 基礎疾患としては消化器固型癌が多く, 化学療法不適例あるいはshockやDICの併発例はすべて死亡していた.
    以上の解析により, 敗血症の予後を悪化させる要因の要は化学療法の不適であることが判明した. 一方, 病原菌と基礎疾患との間に密切な関連がある. これらの事実に基いて, 敗血症の予後悪化防止対策としては, 基礎疾患別に病原菌を推定して化学療法剤を選択するのが最も妥当と思われた.
  • 実験的クラミジア感染症の作成を含めて
    富田 弘志
    1986 年 60 巻 5 号 p. 428-442
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Chlamydia psittaci感染症の診断に, 間接蛍光抗体法 (IFA), 間接免疫ペルオキシダーゼ法 (IIP), 酵素抗体法 (ELISA) を応用し, 検討を行った. またマウスに実験的肺炎を作成し, 菌の消長や病理所見を対比させながら抗体の推移に検討を加え, 以下の成績を得た.
    1) IFAとIIPとはr=0.91, IIPとCFとの比較では, ヒトの場合r=0.69, マウスではr=0.95, ELISAとCFとでは, ヒトの場合r=0.65, マウスではr=0.96と良好な相関を示し, ELISA>IIP法>IFA法>CF法の順で感度がすぐれていると考えられた.
    2) 健康人におけるELISA抗体価128倍以上の保有率は26.6%と, 比較的高率であった. また長崎市における過去10年間の呼吸器感染症患者の抗体保有は, 1981年頃より増加の傾向がみられ, 本感染症の浸淫が示唆された. また, 鳥の飼育者に抗体価高値のものが多く, ELISA抗体価128倍以上の保有率は50%であった.
    3) マウスにおけるC. psittaci株の感染実験において, 肺内分離率は3-8日で100%, 10日目に71%, 14日目には43%となり以後漸減した. 感染初期には肺胞性病変が強く, 間質性病変は比較的軽度で, 浸潤細胞は好中球主体であったが, 8-10日目には組織球が主体となり, その後改善が認められた. 血清抗体価は, 6日目頃より上昇をみとめ, 21-28日目にもなお高値を維持した.
  • 古賀 宏延, 道津 安正, 中島 学, 長沢 正夫, 中里 博子, 重野 秀明, 森 賢治, 田中 光, 伊藤 直美, 河野 茂, 重野 芳 ...
    1986 年 60 巻 5 号 p. 443-452
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionnaires'disease (在郷軍人病, Legionellosis: レジオネラ感染症) の血清学的診断法のひとつとして, ELISA法 (Enzyme-linked immunosorbent assay, 酵素免疫測定法) を用い, 血清抗体価測定の検討を行なった.
    血清はCDCの方法に準じて作製した家兎免疫血清を用い, 抗原はLegionella pneumophila serogroup1-6を1.0%のホルマリンで処理し, 420nmの吸光度でO. D. 0.5になるように菌浮遊液を作製して用いた.
    ELISA法はIFA法 (間接蛍光抗体法) と比較して感度が良い反面, 各serogroup間のcross reactionや, 他の菌種に対するcross reaction (とくにPseudomonas aeruginosaやBacteroides fragilis) が低頻度ながら認められた.
    菌体そのものを抗原として用いたELISA法は, 手技的にも簡単で, 費用もかからず, 感度も良いため, 本症の補助的診断法としての価値は高いものと思われた.
  • 関根 整治, 林 志直, 安東 民衛, 藪内 清, 大橋 誠, 岡田 正次郎
    1986 年 60 巻 5 号 p. 453-460
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1983年1月から1985年4月までの冬季に東京都で発生し, カキが原因食と推定された非細菌性胃腸炎集団事件38件における患者の臨床症状調査と患者糞便中のウイルス検索を行った.
    患者238名の主症状は, 嘔気 (80%), 下痢 (74%), 腹痛 (59%), 嘔吐 (56%) で, 潜伏時間の幾何平均は38時間, 発症後回復までの時間は3日以内であった.
    培養細胞によるウイルス分離およびELISA法によるロタウイルス抗原検出の対象とした38事件168名のうち, ウイルスが分離されたのは2事件3名にすぎず, また, ロタウイルスは全て陰性であった. これに対し, 電子顕微鏡によるウイルス検索を行った38事件116名では, 25事件 (66%) 50名 (43%) から形状の類似したウイルス様粒子が検出された. 粒子は直径約30nmの円形状で, 表面にカプソメア様構造が認められた. 粒子の検出率は, 3病日で最も高く, 病日の経過と共に急速に低下した. 3事件の患者各1名の急性期血清と回復期血清をそれぞれ同一人から検出された粒子と反応させ免疫電子顕微鏡法により比較したところ, 回復期血清中に本粒子に対する抗体価の上昇が確認された. これらの事実から, 検出された粒子が病原因子であった可能性が高いと考えられる.
  • 高橋 昌巳, 吉田 英一, 寺久保 繁美, 佐々木 千鶴子, 與那覇 朝英
    1986 年 60 巻 5 号 p. 461-467
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    臨床材料由来. Acinetobacter anitratus0119株とsoft-agar中で発育を異にする変異株A, B, Cを用いて, soft-agar中の発育型と莢膜, 線毛の保有性及びマウス致死性との関連性を比較検討した.
    親株はsoft-agar中でLarge round型の発育を示し, BTB乳糖寒天培地上では粘張性の大集落を形成した. 莢膜は小莢膜を形成し, 線毛は血球凝集反応及び電子顕微鏡的観察からも認められなかった. 変異株Aはsoft-agar中でFeather型を示し, BTB乳糖寒天培地上では粘張性のある小集落を形成した. 莢膜は光学顕微鏡的には小莢膜保有株, 非保有株が認められた. また線毛は認められなかった. 変異株Bはsoft-agar中でStreaming型を示し, BTB乳糖寒天培地上では非粘張性の集落を形成した. 莢膜は認められなかったが陰性染色から線毛が認められた. しかし, 血球凝集反応は陰性であった. 変異株Cではsoft-agar中でCompact型に発育し, BTB乳糖寒天培地上では非粘張性の小集落を形成した. 電子顕微鏡像から莢膜, 線毛の形態は認められなかった.
    マウス致死性は親株, 変異株A, Bの順で弱くなる傾向を示し, 変異株Cは108/0.5ml以上でも致死性を示さなかった.
  • 徳本 静代, 武井 直已, 瀬川 和幸, 妹尾 正登, 海佐 裕幸, 毛利 久夫
    1986 年 60 巻 5 号 p. 468-472
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1978年から1985年の間に広島県のA商船高等専門学校に入学した学生703名 (男子) について1年生 (15歳) 時のHBs抗原 (RPHA法), HBs抗体 (PHA法) を検索しその保有状況を検討した. このうち5年生 (19歳) 時にも再度調査された224名はさらにHBc抗体 (EIA法) およびHBs抗原陽性血清のHBe抗原・抗体 (ともにEIA法) を検索し対象内HBV水平感染について検討した. HBc抗体陽性血清は200倍希釈血清についても検討を加えた.
    703名の入学時のHBs抗原陽性率は平均2.0%, 年次別では1%から3%の間のほぼ横ばいの, HBs抗体陽性率は平均7.5%, 年次別では15.3%から2.0%へと減少の傾向を示した.
    ペア血清で調査された224名の延448血清は保有抗原抗体により6群 (I群: HBs抗原, HBc抗体陽性でHBe抗原陽性例, II群: 同じくHBe抗体陽性例, III群: HBs抗体, HBc抗体陽性例, IV群: HBs抗体alone, V群: HBc抗体alone, VI群: HBs抗原・抗体, HBc抗体すべて陰性例) に区別された. 対象内HB感染源は1群で経過した2名とI群からII群へHBe抗原からHBe抗体へseroconversionした2名の計4名 (1.8%) を検出したが, 1年生から5年生までの間に有意な抗原抗体の変化を示した例は認められなかった. HBc抗体の検索においても有意な抗体価の上昇例は認められず対象内HBV新感染例は全く検出されなかった.
    IV群のHBs抗体alone: 0.4%とV群のHBc抗体alone: 0.9%の間には有意差は認められなかった.
  • 公園, 寺院等のハト糞便からのChlamydia psittaciの分離
    三宅 恭司, 森下 高行, 井上 裕正
    1986 年 60 巻 5 号 p. 473-478
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    人のオウム病は, 鳥由来のChlamydia psittaci (C. psittaci) によって惹起される人畜共通感染症である. 通常, オウム病の鳥は大量の病原体を糞便中へ排泄し, 人は乾燥した糞便粒子の吸引で感染するとされている. 従って, 鳥の糞便は人のオウム病の感染源として極めて重要視される. そこで, 病原体を含む糞便の排泄状況を調べる目的で, 著者らは1984年5月から, 1985年2月の期間に名古屋市内にある公園2ヵ所, 寺院2ヵ所で採取した新鮮ハト糞便215個からC. psittaciの分離を試みた. 分離は, 20%糞便乳剤をマウス腹腔内へ接種し, 続いて, マウス脾臓の10%乳剤をDEAE dextran処理したHeLa 229細胞へ接種する方法で実施した. 最終的な分離の確認はHeLa229細胞内の封入体の有無によった. そして, 以下の結果を得た.
    封入体形成因子は, A公園で採取した糞便101個中の24個 (23.8%), B公園54個中8個 (14.8%), C寺院30個中8個 (26.7%), D寺院30個中1個 (3.3%) から分離された. これらの分離因子はギムザ, ヨード染色, 間接蛍光抗体試験によって, ハトに由来するC. psittaciと同定された.
    以上の結果は, 公園, 寺院等で群棲するハトが人のオウム病の感染源として重要であることを示唆していた. また, 今回の分離方法は, 感度も高く, 特別な技術の習熟も不要で, 特に細菌汚染の強い検体からのC. psittaci分離に最適であると考えられた.
  • 沼崎 啓, 千葉 峻三, 古川 圭子, 中尾 亨
    1986 年 60 巻 5 号 p. 479-484
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cytomegalovirus (CMV) 感染症の血清診断への応用の目的でELISA (CYTOMEGELISATMM) による特異的IgM抗体の測定法について検討した. ELISAによる抗CMV・IgM抗体の特異性の確認のため薦糖密度勾配超遠心法 (SDGC) により, 蛍光抗体間接法 (IF) での抗CMV・IgM抗体陽性および陰性血清を分画した. 分画後の各fractionについてIgGおよびIgM値をELISAで測定し, 抗CMV・IgM抗体をCYTOMEGELISATMMで測定した. 抗CMV・IgM抗体陽性血清ではCYTOMEGELISATMMでのピークはELISAでの血清IgMのピークに一致した. 抗CMV・IgM抗体陽性血清のIFでの終末抗体価と1: 100の希釈倍数におけるELISA値との間には相関が認められた. さらにCYTOMEGELISA TMMの血清疫学的な応用の目的で新生児, 未熟児の高IgM血症における抗CMV・IgM抗体の陽性率について検討したところ, 99例中3例 (3.0%) が陽性だった.
  • 打矢 恵一, 菓子田 充明, 杉原 久義
    1986 年 60 巻 5 号 p. 485-494
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Lipopolysaccharide (LPS), Muramyl dipeptide (MDP) をマウスの腹腔内に投与すると腹腔, 血液, 脾臓中のマクロファージ, 好中球, リンパ球数が10日目までに最高値に達したが, Soluble Protective Antigen (SPA) の腹腔内投与では, それぞれ14日目に表われた. このことはSPAの感染防御能が14日目に最高に達することと一致した. SPA処理マクロファージのLatex粒子に対する貪食能はLPS, MDPに比べて高く又処理後30日目に至っても対照群との間に有意な差が見られた. SPA処理によってマクロファージのLysosome酵素 (Cathepsin D, Acid-Phosphatase, β-N-Acetyl-D-glucosaminidase, Lysozyme) の産生, NBT還元能が増強した.
  • 青木 隆一, 清水 長世, 冨沢 功, 滝沢 慶彦, 松原 義雄, 瀬尾 威久, 相楽 裕子, 田川 溪子, 増田 剛太, 根岸 昌功, 揚 ...
    1986 年 60 巻 5 号 p. 495-509
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    感染性腸炎 (細菌性赤痢, 病原大腸菌腸炎, カンピロバクター腸炎, サルモネラ腸炎など) に対するAM-715 (norfloxacin: NFLX) の有用性, 安全性を評価する目的で, 感染性腸炎患者および保菌者274例に本剤を投与し, その臨床効果, 副作用などの検討を行った. 併せて, 臨床分離株について本剤の抗菌力を測定した.
    投与方法は1日量600mg, 投与期間5日間 (サルモネラ腸炎患者, 保菌者には7日間) とした.
    解析の対象となった感染性腸炎は176例で, 細菌性赤痢での対症状効果は有効率100%, 対排菌効果は98.8%, 総合効果は98.9%であった. サルモネラ腸炎, カンピロバクター腸炎の対症状効果の有効率はともに100%であったが, 前者の主要症状の改善は赤痢に比し遅延した. 対排菌効果の有効率は前者では73.3%後者で80.0%と, 赤痢より劣った. 病原大腸菌腸炎, 腸炎ビブリオ腸炎に対しては対症状効果, 対排菌効果とも全例有効以上であった.
    副作用は274例中, 消化器症状4例, 皮疹1例, 計5例 (1.8%) に認められたが, いずれも軽微であった.
    臨床検査値異常は204例中, GPT上昇7例, GOT・GPT上昇4例, 好酸球増多3例, 計14例 (6.9%) にみられた.
    臨床分離株について, NFLXの抗菌力を測定した結果では, 本剤はNA, PPA, KM, FOMに比し強い抗菌力を示し, OFLX, ENXとほぼ同等のMIC分布を示した. NFLXは赤痢菌, 腸炎ビブリオに対して0.05-0.1μg/ml, 病原大腸菌, サルモネラに対して0.1-0.2μg/mlで大部分の菌株を, 1.56μg/mlで全株の発育を阻止した. 0.39μg/mlでは175株 (95.1%) の発育を阻止した.
  • 三笠 桂一, 澤木 政好, 堅田 均, 国松 幹和, 塩谷 直久, 今井 照彦, 成田 亘啓, 三上 理一郎, 前川 純子, 好井 正明, ...
    1986 年 60 巻 5 号 p. 510-517
    発行日: 1986/05/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性. 既往歴は16歳頃より慢性副鼻腔炎がある. 15歳頃より少量の喀痰があった. 44歳時に発熱, 喀痰, 咳漱が出現. 胸部X線写真, 喀痰検査から, Klebsiella pneumoniae (以下K. pneumoniae) 肺炎と診断され, T病院に入院, 以後, 治療により改善したが, 喀痰, 咳嗽は消失しなかった. 45歳時にも肺炎で2回目の入院治療を受ける. 46歳頃より血痰, 47歳頃より労作時呼吸困難出現し, 胸部X線上, 粒状影を認めたため, T病院にて3度目の入院. 精査のため, 59年3月5日当科入院となる. この間, 喀痰中にK. pneumoniaeが頻回に検出され多種の抗生剤治療を受けている. 入院後Sinobroncho-bronchiolitisと診断し, 本例の経過と当科でのTranstracheal aspiration (以下TTA) の結果から, 最初の肺炎以後, 4年間にわたってK. pneumoniaeが持続的に感染していると推定した. K. pneumoniaeの持続感染の報告は他になく, 本例の特異性が注目され, また病態の進展形式を考える上でも非常に示唆に富んだ症例と考える.
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