感染症学雑誌
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64 巻, 11 号
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  • 高橋 慎一, 和山 行正
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1367-1371
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    帯状疱疹皮疹部塗抹標本のピオチン化DNAプローブを用いたin situ hybridization (ISH) 法の有用性について検討した.
    まず, 水疱帯状疱疹ウイルス (VZV) およびその他のヘルペスの感染培養細胞を基質としてISH法による染色を行った. VZV感染細胞のみに染色が認められ, 他の感染細胞では全く染色が認められず, 特異性の高い検査法であることが確認された.
    次に北里研究所病院を受診した帯状疱疹患者19人の皮疹部より塗抹標本を作製し, ISH法を施行した, 19例35検体のうち30検体で陽性で, 特に水庖期では100%の検出率であった. また, 血疱・膿疱期, 潰瘍・痂皮期では, 検出率はそれぞれ75%, 77.6%であった. さらに同時にウイルス分離を行った19検体では, ウイルス分離16検体, ISH法18検体陽性で, 分離法に比して感度が高かった. また, 単純疱疹患者の塗抹標本では全検体で陰性であった. 本法は全操作時間1時間あまりで, 簡便で, 特異性, 感度も高く, 水疱帯状疱疹ウイルス感染症の迅速診断法として有用と考えられた.
  • 深見 重子, 井関 幹郎, 村瀬 雄二, 石飛 アミ子, 岩田 崇, 村瀬 敏郎
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1372-1378
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我が国における破傷風予防接種が, DPTワクチンを用い, 全国規模で開始され, 20年を経過した現時点での, 破傷風抗毒素保有状況を知る目的で, 国内二つの地域を選び, 年齢別に血中破傷風抗毒素価を測定した.
    1. 東京都渋谷区で採取された211例中102例 (48.3%) が感染防御水準の0.01 HAU/ml以上の抗毒素価を保有していた. 抗毒素陽性率は, DPTワクチンの接種を受けた可能性のある3歳から21歳までの年齢層では90.8%, 22歳以上では27.7%で, 21歳以下の年齢層で有意に高率であった. また, 抗体陽性者のしめる割合は加齢とともに減少した.
    2. 静岡県浜松市における外傷患者128例中60例 (46.1%) は0.01 HAU/ml以上の抗毒素を保有していた. 抗体陽性率は, 21歳以下の年齢層では96.7%, 22歳以上では29.5%と有意差が認められ, 現行のDPTワクチンによる破傷風予防接種が有効に働いていることが示唆された.
  • 2. 市販Complement Fixation用抗原の向流免疫電気泳動法 (CIE) への適用と血清学的診断法の臨床的検討
    長野 功, 大友 弘士, 増田 剛太
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1379-1384
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    市販のcomplement fixation (CF) 用アメーバ抗原を向流免疫電気泳動法 (CIE) に適用し, 同抗原を用いたCF反応およびELISAとの比較を行った.また, 各血清学的診断法の抗体価の変動と臨床像との関連についても検討を加えた.
    CIEはCF反応およびELISAに比べるとかなり感度が低いが, 陰性例はCFおよびELISA抗体価の低い検体に集中する傾向がみられた.しかし, 高い抗体価の検体でも陰性となる例も若干みられた.一方, 特異性は三法ともに十分高いものと思われた.
    患者5例について, 急性期と発症約半年後の治療による軽快時との抗体価を比較すると, 全例に抗体価または吸光度の低下が認められた.しかし, なお陽性域内であった.ただ, CIEについては1例のみ陰性化が認められた.
    病型別にみた場合は, ELISA吸光度, ELISA抗体価およびCF抗体価の各平均値すべてにおいて, 腸アメーバ症は肝膿瘍ならびに両者の合併型に対して有意に低かった.
    以上の成績から, ELISAおよびCF抗体価と臨床像との相関性はかなり高いことが示された.しかし, CIEについては感度などの問題もあり, さらに検討を行うことが必要であることが示唆された.
  • 西村 昌宏, 熊本 悦明, 広瀬 崇興, 酒井 茂, 塚本 泰司, 出口 浩一
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1385-1393
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1980年から1989年までに札幌で分離された淋菌592株を対象にその栄養要求型を検討し, また一部の淋菌では血清型も検討し, あわせて栄養要求型とAmoxicillinに対する感受性の関係も解析し以下の結果を得た.
    1. 栄養要求型は東南アジア地域での分布に類似していた.
    2. 栄養要求型の年代別の検討ではproto, Pro-の頻度が減少し, AHU-の頻度が増加していた.
    3. 血清型の検討では検討し得た淋菌はすべてWII/III型でありWI型は認められなかった.
    4. 栄養要求型とAMPCに対する感受性の関係ではAHU-株はAMPCに対してproto, Pro-よりも高い感受性を示していた.
  • 長岡 章平, 谷 賢治, 石ヶ坪 良明, 千場 純, 加藤 清, 松永 敬一郎, 成田 雅弘, 五十嵐 俊久, 大久保 隆男
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1394-1399
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Twenty-two patients with polymyositis and dermatomyositis (PM-DM) were retrospectively studied with regard to development of herpes zoster.
    Herpes zoster occurred with high frequency in patients with PM-DM. The clinical courses of zoster infections were uneventful; no severe complications nor deaths occurred, and only one patient had postherapeutic neuralgia. No specific therapy for this infection was necessary. Zoster tended to occur in the inactive stage of PM-DM. PM-DM patients with herpes zoster had a significantly higher incidence of antinuclear antibody. There seemed to be no relationship between steroid therapy and herpes zoster infection.
  • 奈田 俊, 飯田 悦夫, 一山 智, 竹内 純, 太田 美智男
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1400-1407
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    過去2年間に, ニューキノロン耐性のEnterobacter cloacaeを3人の患者 (A, B, C) から, 5株 (A患者からのA株, B患者からのB株C患者からのC1株, C2株, C3株) を分離した.
    これらの5株を用いて, 最小発育阻止濃度を測定したところ, ニューキノロンには中程度から高度耐性を示し, その他の薬剤にも高度耐性を示した.
    plasmid promeの解析では, B株, C2株, C3株は同一となり, A株, C1株とは異なったprofileを示した.
    A株, B株, C3株とEscherichia coliとの接合伝達試験後のR plasmidの泳動パターンは, B株とC3株は全く同一になり, A株とは異なっていた. また接合伝達試験後の薬剤感受性試験でも, B株とC3株は全く同一になりA株とは異なった結果を示した.
    さらにB株, C3株から染色体DNAを抽出し, 制限酵素 (EcoR I, BamH I, Sma I) で切断した後, パルスフィールド電気泳動を行った. その結果, B株とC3株は, 全く同一の泳動パターンを示した.
    以上の結果から, ニューキノロン耐性E. cloacaeによる院内感染が示唆された.
  • 志喜屋 孝伸, 国吉 孝夫, 東恩納 厚, 新垣 民樹, 親川 富憲, 嘉手納 啓三, 金城 福則, 斎藤 厚, 安里 龍二
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1408-1415
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    糞線虫の新しい検出法の考案に伴い, 本寄生虫がなお広く浸淫していることが明らかになった. これに対する効果的な駆虫法を確立するためにmebendazoleを中心とした治療を行い, 下記の結果を得た.
    1. Mebendazole単独投与群 (Group1): 1回100mg経口投与を1日2回, 4週間連続で行なった.
    1) 33症例に対する短期駆虫効果は83.3%であった.
    2) 副作用として, 頭痛や便秘などがみられたが, いずれも軽度であった.3) S-GOT, S-GPTの上昇が予想以上の高頻度 (71.4%) に出現した.
    2. Thiabendazoleとmebendazole併用群 (Group2): 前者を500mg1日3回5日間投与後, ひきつづき後者を100mg1日2回9日間投与. これを2クール行なった.
    1) 26症例に対する短期駆虫効果は100.0%であった.
    2) Mebendazole単独治療群よりも悪心やめまいなどの副作用の頻度が高く, 程度も強かった.
    3) S-GOT, S-GPTの上昇が52.2%に出現した.
    3. 糞線虫保有者の抗HTLV-1 (human T cell leukemia virus type I) 抗体陽性率は40.0%(23/57) と高率であった.
    以上の結果より, 併用群では100%の駆虫率であったが, 悪心やめまいなどの副作用が強く, 副作用の面からはthiabendazoleは駆虫薬には適さないと思われた. Mebendazole単独投与では肝障害が高頻度に出現したが, dose-dependentであるため, 投与期間の短縮や新たな休薬期間の設定などの手段を講ずれば駆虫薬として今後使用できるものと感触を得た.
  • その使用量と耐性出現率の年次推移について
    中條 俊博, 広瀬 崇興, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 上原 信之, 丸田 浩, 小六 幹夫, 松田 啓子
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1416-1424
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年, 臨床の場で繁用されて来たニューキノロン系抗菌薬はその幅広いスペクトラム, 強い抗菌力, 耐性化しにくいなどの特長を有しているが, その耐性菌が徐々に増加しつつあると言われている.そこで今回, 大学と1つの関連病院泌尿器科において, ディスク法により, 尿路分離菌のニューキノロン系抗菌薬に対する耐性出現率の年次推移を4年間にわたって検討したところ以下の結論を得た.
    1) 両病院において, ニューキノロン系抗菌薬の使用量は急激に増加していた.
    2) 特にStaphylococcus aureus (大学: 0-41.2%まで, 関連病院: 16.7-96.7%まで) とPseudomonas aezuginosa (大学: 24-66.7%まで, 関連病院: 37.5-81.8%まで) の2菌種においてonoxacinに対する耐性出現率が増加していた.
    3) また, indole (+) Proteus spp. (大学: 0-1.8%, 関連病院: 65-82%の範囲) とSerratiamazcescens (大学: 10-43%, 関連病院: 71-100%の範囲) において, その耐性率に病院間の差を認めた.
  • 黒岩 豊秋, 岩永 正明, 小張 一峰, 東恩納 厚, 金城 福則, 斉藤 厚
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1425-1432
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    抗菌剤投与による糞便内菌叢の変動とそれに対する生菌性整腸剤併用の影響を検討した. 消化管に特記すべき疾患を持たずに, 抗菌剤療法を受けた成人入院患者を対象とした.
    抗菌剤投与前の患者69名の糞便内菌叢は, 各菌属の検出率・検出菌数とも光岡らの報告した健康成人のものとほぼ同一であり, 正常菌叢を反映しているものと思われた.
    抗菌剤投与後, Enterococcus, Yeastsを除く全ての菌属で検出率の減少が観察され, 検出された菌属ででも多くの場合, その菌数は減少する傾向がみられた. このような糞便内菌叢の変動は, 生菌性整腸剤 (ミヤBM: Clostridium butyricum M588) を併用した群においても同様に観察された. また, ミヤBM投与群において, 抗菌剤投与にもかかわらずC.butyricum M588株は, 70%の患者糞便中から分離された. そのうち約半数は, 芽胞形より非芽胞形の菌数が多く, 投与された生菌が消化管内において発芽していることを示していた.
    糞便中C.difficileまたはToxin Aの検出率は, 抗菌剤投与後著しく増加したが, その増加はミヤBMの併用により著明に抑制された.
  • 山本 和英, 山田 保夫, 林 嘉光, 武内 俊彦, 足立 暁, 鈴木 幹三, 山本 俊幸
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1433-1438
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高齢者肺炎の複数菌検出例について, 臨床細菌学的に検討した結果, 以下の成績を得た.
    1. TTAによる検索では, 病原性菌が検出された111エピソード中39エピソード (35%) が複数菌検出で, 口腔内常在菌の検出を含めるとさらに検出率は上昇すると考えられた.
    2. 複数菌として検出された菌種は, Staphylococcus aureusをはじめ, Pseudonzonas aeruginosa, Klebsiella pneunzoniae, Streptococcus pneunzoniaeの順に多かった.
    3. 複数菌の組合せは, S.aureus+P.aeruginosaが7エピソード, S.aureus+K.pneumoniae, S.aureus+Serntia marcesensが各5エピソード, S.aureus+S.pneunzoniae, S.aureus+嫌気性菌, K. pneumoniae+ P.aeruginosaが各4エピソードの順に多かった.
    4. 複数菌検出例は, 院外発症肺炎に比し, 院内発症例において有意に高率であった.
    5. 院内と院外で発症した肺炎で, 複数菌の組合せを検討すると, 院内発症群ではSaureusを主体として, グラム陰性桿菌あるいは嫌気性菌との組合せが多かったのに対し, 院外ではS.pneumoniaeを主体としてS.aureus, グラム陰性桿菌との組合せが多かった.
    6. 複数菌検出例における抗菌剤投与後の検出菌は, S.aureusP.aeruginosaにおいて, 存続あるいは菌交代として新たに出現する頻度が高かった.
    7. 複数菌検出例の予後は, P.aeruginosaあるいは, K.pneumoniaeなどのグラム陰性桿菌とS.aureusの関与する例に死亡例が多かった.
  • 横井山 繁行
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1439-1446
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Macrolide系薬剤ではMIC濃度と比較して極めて低いsub MIC濃度においてムコイド型緑膿菌のslimeの主要成分であるアルギン酸およびelastase, proteaseの産生抑制が認められた. ムコイド型緑膿菌の形態を電子顕微鏡で観察したところ, 培地コロニーとマウス呼吸器感染モデルにおける病巣内菌の形態に共通するslime様構造が観察され, 薬剤接触後の菌では明らかに対照よりslime様構造の減少像が認められた. 14員環macrolide系薬剤のerythromycinにおいて見られたムコイド型緑膿菌に対する作用は16員環macrolide系薬剤のrokitamycinにおいても認められ, macrolide系薬剤に共通な作用と考えられた.
  • 初尿検査によるスクリーニング調査
    林 謙治, 熊本 悦明, 塚本 泰司, 広瀬 崇興, 田付 二郎, 上野 了
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1447-1453
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    モノクローナル抗体を用いたEIAキットであるIDEIA CHLAMYDIA® (以下, IDEIA) (NoboNordisk社) による初尿沈渣からのC.trachomatis抗原検出法が有望視されている. そこでこの方法によるスクリーニング調査を行い, 無症状の若年成人男子におけるC.trachomatis感染率を検討した. また抗C.trachomatis血清IgA, IgG抗体価も測定し, 比較した.
    1. 尿路性器症状を有さない若年成人男子 (141例) の初尿沈渣からの抗原検出: IDEIAによる検出率は5.0%(7/141) であった. また初尿沈渣抗原陽性の7例中3例は精査を施行し, 尿道からも抗原が検出され, 無症候性のC.tmchomatis性尿道炎であることが再確認された.
    2. 血清抗体陽性率: スクリーニング検査対象のうち血清抗体価を測定した128例のIgA, IgG抗体陽性率はそれぞれ6.3%(8/128), 35.9%(46/128) であった. また初尿沈渣抗原陽性例では陰性例と比べ, IgA, IgG抗体ともに有意に高い陽性率を示し, この方法による抗原検査の有用性が裏付けられた.
    3. 以上より, 初尿沈渣を用いたスクリーニング調査により若年成人男子の5%に無症候性のC.trachomatis感染が認められ, 広範な流行が示唆された. 今後, 初尿沈渣を用いて積極的にスクリーニング調査をすることは公衆衛生上も意義があると考えられた.
  • 森本 隆夫
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1454-1461
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Legionnaires'diseaseの血清学的診断法としてELISA法が研究されてきたが, 各血清型間や他の菌種との間にある程度の交叉反応が認められる. この交叉性を少なくするためには抗原を高度に精製することが必要と言われている. そこで今回, Legionella pneumophila serogroup1から作製した酵素処理, 超音波処理, 超遠心後のcrudeな抗原と, 硫安分画後の比較的selectされた抗原, さらにSephacryl S400によって精製後TSKDEAE-5PWによるHigh-Performance Ion-exchange chromatographyで純化したpurified 60-kDa蛋白抗原の3種類の抗原について, 家兎血清を使いその感度と特異性について比較検討を行った.
    感度はcrudeな抗原でも臨床診断上には十分高く, 比較的selectされた抗原ではさらに高くなり, purified 60-kDa抗原では一層高くなった. また, 各血清型に対する特異性は3種類の抗原とも十分高かったが, 他菌種との交叉性についてはK.pneumoniae type IIに対し, crudeな抗原と硫安分画後の抗原では軽度だったが, purified 60-kDa抗原では高度であった. その理由として60-kDa proteinがL.pneumnophila serogroup 1とKpneumoniae type IIとの共通抗原であるか, または, 両者の抗原が60-kDa proteinに共存している可能性が示唆された.
  • 和田 紀之, 福永 謙, 久保 政勝
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1462-1467
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Yersinia pseudotuberculosis (Y.pseudotuberculosis) 感染症は, キャンピロバクター, サルモネラ感染症とならび重要な腸管感染症である. この臨床症状は多彩であるが, 本稿では自験例2例も含めY.pseudotuberculosis感染症の臨床症状, 免疫状態について報告する.
    症例1は4歳男児, 発熱, 下痢, 嘔吐を主訴に来院, 臨床的に最も川崎病が疑われた. 対症療法により改善したが, 入院中の血清検査よりY.pseudotuberculosis 4a感染症と診断された. 症例2は7ヵ月男児, 基礎に精神運動発達遅延がある. 発熱, 発疹を主訴に来院, 臨床症状, 検査所見より, 重症感染症と診断, 抗生剤加療で改善した. やはり入院中の血清検査より, Y.pseudotuberculosis 5a感染症と診断された. この2例においてともに, 急性期に細胞性免疫能の低下を認めたが, 病状の改善に伴い正常化した.
    Y.pseudotuberculosisは宿主の細胞性免疫能に一過性ではあるが大きな影響を与えている可能性が示唆された.
  • 中島 敏晶, 小平 誠, 増田 義重, 坂元 寛志, 畠山 勤, 安達 桂子, 稲松 孝思
    1990 年 64 巻 11 号 p. 1468-1473
    発行日: 1990/11/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    高齢者を対象とする当院において1985年までは1例もListeriosisが経験されなかったが, 最近の4年間に5症例のListeriosisを経験した. 全例敗血症を呈し, 2例は髄液からも検出された. 5症例中3症例は死亡と予後不良であった. 5症例の基礎疾患は, 糖尿病, 肺癌, 慢性呼吸不全, 胃潰瘍, 再生不良性貧血であり3例にステロイドの使用を認め, また, 3例にH2-Blockerの使用を認めた. 剖検の3例においては全例に髄膜炎あるいは髄膜脳炎を認め, 2例に脾臓の肉芽腫様の変化を認めた. 5症例から検出された分離株の血清型は, 4株が4b型, 1株が1b型であり, 今日汎用される第2, 3世代セフェム剤やモノバクタム剤に対して全株耐性を示した. 近年の高齢者におけるListeriosisの増加傾向の原因として, Listeria monocytogenes に対して無効な第3世代セフェム剤が多用されていること, H2-Blockerの多用, さらに感染経路の面から考えて食生活の欧米化・輸入食品の増加などが関与しているものと思われる.
  • 1990 年 64 巻 11 号 p. 1474
    発行日: 1990年
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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