糞線虫の新しい検出法の考案に伴い, 本寄生虫がなお広く浸淫していることが明らかになった. これに対する効果的な駆虫法を確立するためにmebendazoleを中心とした治療を行い, 下記の結果を得た.
1. Mebendazole単独投与群 (Group1): 1回100mg経口投与を1日2回, 4週間連続で行なった.
1) 33症例に対する短期駆虫効果は83.3%であった.
2) 副作用として, 頭痛や便秘などがみられたが, いずれも軽度であった.3) S-GOT, S-GPTの上昇が予想以上の高頻度 (71.4%) に出現した.
2. Thiabendazoleとmebendazole併用群 (Group2): 前者を500mg1日3回5日間投与後, ひきつづき後者を100mg1日2回9日間投与. これを2クール行なった.
1) 26症例に対する短期駆虫効果は100.0%であった.
2) Mebendazole単独治療群よりも悪心やめまいなどの副作用の頻度が高く, 程度も強かった.
3) S-GOT, S-GPTの上昇が52.2%に出現した.
3. 糞線虫保有者の抗HTLV-1 (human T cell leukemia virus type I) 抗体陽性率は40.0%(23/57) と高率であった.
以上の結果より, 併用群では100%の駆虫率であったが, 悪心やめまいなどの副作用が強く, 副作用の面からはthiabendazoleは駆虫薬には適さないと思われた. Mebendazole単独投与では肝障害が高頻度に出現したが, dose-dependentであるため, 投与期間の短縮や新たな休薬期間の設定などの手段を講ずれば駆虫薬として今後使用できるものと感触を得た.
抄録全体を表示