感染症学雑誌
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67 巻, 7 号
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  • 柴田 宏, 山下 啓子, 大塚 則光, 香川 昌平, 松岡 瑛
    1993 年 67 巻 7 号 p. 609-614
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    著者らは, 一般の病院検査室で実施可能な非放射性標識プローブを用いた微量血清からのHBV-DNAの検出, 並びにHBs抗原subtypeの同定を試みた.HBVは対象としたHBs抗原陽性血清73例 (HBe抗原陽性14・陰性59) を解析した結果, nestedPCRにより1例を除く72例 (98.6%) が検出できた.検出できなかった1例もプローブを変更することによって検出可能であった.また, HBs抗原subtypeを同定した30例においても, nestedPCRとHBs抗原subtype (r, w) に特異的な18merのプローブを用いることによりEIA法と同様な同定成績が得られた.さらに, EIA法ではHBs抗原低タイターのために同定不能の3例も本法では同定可能であったことからEIA法より高感度にHBs抗原subtypeの同定が可能であった.
    NestedPCR法と非放射性標識プローブを用いてHBV-DNAの検出, 並びにHBs抗原subtypeの同定を試みた結果, 高感度の検出・同定が可能であった.このことから, 一般の病院検査室においてHBVDNA診断が可能となった.
  • 川山 智隆, 徳永 尚登, 横山 俊伸, 本田 順一, 名取 英世, 市川 洋一郎, 大泉 耕太郎
    1993 年 67 巻 7 号 p. 615-621
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1991年1月から12月まで久留米大学第1内科病棟に入院した患者を対象としてメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の検出状況について検討した.MRSAを検出した患者は47例で, compromisedhostが大部分であった.そのうちMRSA感染症と診断されたのは57.4%と高率であり, 敗血症, 肺炎が多くそれぞれの死亡率も75.0%, 57.1%と高率であった.MRSA感染症の治療は積極的に行う必要があるが, 緑膿菌との混合感染が多いため抗生剤の選択に注意を要すると思われた.当科においては, MRSA感染症に対してIPM+MINOまたはIPM+FOMが使用され良好な成績を収めていた.これは2剤間の相乗効果によると考えられた.IPMと他薬剤との相乗効果の報告はinvitroにおいてはなされているが, 臨床報告例はあまりなされておらず, 今後のMRSA感染症治療上参考になりうると思われた.
    MRSAの感受性検査成績からABK, VCM, MINOの抗菌力が優れており, 特にVCMは臨床の場においてもその有効性が期待される.
  • 舟田 久, 真智 俊彦, 米山 宏, 松田 保, 三浦 宏明, 江崎 孝行, 横田 好子
    1993 年 67 巻 7 号 p. 622-628
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    過去3年間 (1989~1991年) に, Capnocytophaga菌血症が3例の急性白血病の治療中に発症した.侵入門戸は口腔内病変 (歯周炎や重症の粘膜炎) と考えられた.血液から分離された3菌株はデオキシリボ核酸 (DNA) の相同性からCapnmytophaga sputigenaと同定された.しかし, Capnmytophagaの生物学的性状の類似性から, 分離菌株の菌種を通常の臨床細菌学的検査法で同定することは困難であった.血液分離菌は嫌気性菌に通常抗菌力をもつ抗生物質の大部分に感性を示した.β-ラクタマーゼ産生が2菌株に認められ, このうちの1菌株は顆粒球減少患者の発熱時に経験的に使用されることの多いピペラシリン (piperacillin) とセフタジジム (ceftazidime) の両薬に耐性であった.それゆえ, 抗腫瘍薬治療による重症の口腔粘膜炎や歯周炎の急性増悪をみる穎粒球減少患者の発熱時にはイミペネム (imipenem) やクリンダマイシン (clindamycin) の使用が考慮されるべきである.
  • 菌株の継代, 保存と接種菌量について
    荒井 一二, 武藤 哲典, 山田 三紀子, 横田 俊平
    1993 年 67 巻 7 号 p. 629-634
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Martleyらはstandard methods caseinate agar (SMCA) 平板に黄色ブドウ球菌を穿刺培養すると, 菌が産生する蛋白分解酵素によってカゼインが分解されて沈降帯が生じ, しかも接種菌株によって異なるzone typeが形成され, そのsizeも種々であると報告している.この方法を特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の疫学を行うためのマーカーとして利用することを目的として, 基礎的な項目としての菌株の継代, 室温での保存期間, SMCA平板への接種菌量のzone typeやzone sizeに及ぼす影響を検討した.菌株を5, 30, 50代にわたってHeart infusion brothに継代しても, また, 菌株の保存前と保存後1および3年とでは, それぞれの菌株によって形成されるzone typeやzone sizeに影響は見られず, 再現性はきわめて良好であった.また, SMCA平板への接種菌量の影響も1日培養菌液 (約1×109CFU/ml) を接種した場合, 形成されるzone sizeの最大のものと最小のものとの差は3mm以下であることが判明した.
  • 後藤 俊夫, 三角 順一, 島岡 章, 青木 一雄, 安井 隆人, 工藤 政信
    1993 年 67 巻 7 号 p. 635-641
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HCV高浸淫地域である大分県内一山村において, HCV感染状況を明らかにするために, 地域住民 (20歳~89歳) のHCV抗体陽性率の経年的変化およびHCV-RNA陽性率の両者から検討を加えた.
    同地域住民のHCV抗体 (C100-3抗体) 陽性率は, 全体で42.5%と非常に高値であるが, 40歳未満の年齢階級では, 0~14.3%の陽性率であるのに対し, 40歳以上の年齢階級では, 41.7%~53.1%と大きな差を認める.一方, 7~8年前に遡った同地域住民の過去の抗体保有状況をみると, 20歳台で12.5%の陽性率, 30歳台になるとすでに43.3%と高い陽性率になっている.これらのことは, 当地域におけるHCV感染状況が, 現在の40歳前後を境にして大きく変化していることを示している.
    PCR法によるHCV-RNAの測定結果をみても, 40歳台の55.6%という陽性率に対し20歳台, 30歳台ではそれぞれ20.0%, 18.4%という陽性率であった.
    以上のことは, 本地域はHCV高浸淫地域ではあるものの, 40歳未満の若年成人に対するHCVへの感染率は, それ以上の世代に比べて著明に減少している可能性を示すものであると考えられる.
  • 石和田 稔彦, 黒崎 知道, 鳥羽 剛, 新美 仁男
    1993 年 67 巻 7 号 p. 642-647
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1990年, 1991年の千葉市立海浜病院における小児肺炎596例の病原体検索を行い以下の様な結果を得た.
    1) 小児肺炎596例のうち, 起炎病原体の判明した症例は384例 (64.4%) であり, そのうち細菌性肺炎では, 起炎病原体として, Haemophilus influenzaeが117例 (19.6%), Streptococcus pneumoniaeが51例 (8.6%) の症例に関与しており, ウイルス性では, RSウイルスが78例 (13.1%) に認められ, これら起炎病原体が小児肺炎の主な病原体であった.
    2) 年齢と起炎病原体の関連を検討してみると, 低年齢層に細菌性肺炎が, 高年齢層に肺炎マイコプラズマ肺炎が多く認められた.
    3) 季節別に, 起炎病原体の推移をみると, 1990年春, 1991年秋の肺炎マイコプラズマ肺炎の流行, 冬のインフルエンザウイルス, RSウイルス, 初夏のパラインフルエンザウイルスによる肺炎の流行が認められた.
  • 三笠 桂一, 喜多 英二, 澤木 政好, 古西 満, 前田 光一, 浜田 薫, 竹内 章治, 坂本 正洋, 国松 幹和, 樫葉 周三, 成田 ...
    1993 年 67 巻 7 号 p. 648-653
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas aeruginosa, Neisseria gonorrhoeaeのHeLa細胞・HT-177細胞への接着に及ぼすerythromycin (以下EM) の影響とP.aeruginosaの細胞障害毒素産生に及ぼす作用とを検討した.1) EMは両菌の接着を抑制した.2) EMは両菌のpiliの発現を抑制した.3) EMはN.gonorrhoeaeの第二接着因子であるprotein IIの産生を抑制した.4) EMはP.aeruginosaの66K cytotoxinの産生を抑制した.
    以上から, EMが両菌の接着因子の発現や毒素の産生を抑制することで感染の成立を阻害している可能性が示唆された.
  • 三鴨 廣繁, 和泉 孝治, 伊藤 邦彦, 渡辺 邦友, 上野 一恵, 玉舎 輝彦
    1993 年 67 巻 7 号 p. 654-658
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    産科婦人科領域の細菌感染症では, 上行感染が大部分を占めるため子宮内の細菌叢を知ることは, 上行感染により起こった付属器炎, 腹膜炎や子宮全摘術後の感染予防に対してEmpiric therapyを施行するうえで重要なデータとなる.特に, 合併症として糖尿病を持つ易感染性宿主の患者における子宮内細菌叢を知ることは重要な意味を持つと考えられる.また, 糖尿病患者に子宮体癌の罹患率が高いという疫学的事実は, 子宮内細菌が発癌に関係する可能性も示唆しており, この見地からも糖尿病患者の子宮内細菌叢を知ることは重要である.今回, 我々は, 当科で子宮筋腫のため子宮全摘術を施行した患者のうち, 合併症のない患者20例, 糖尿病を合併症として持つ患者10例の子宮内細菌叢について検索した.その結果, 糖尿病患者の子宮内では, Escherichia coli, Proteus mirabilis, Enterobacter cloacae, Klebsiella pneumoniaeなどのEnterobacteriaceaeが優位を占めていた.以上より, 不幸にして糖尿病患者に子宮内感染症, 子宮付属器炎が発症した場合や, 術後骨盤内感染症を発症した場合には, これらの腸内細菌にも強い抗菌作用を示す薬剤を使用する必要があると考えられた.
  • 西村 泰司, 寺島 保典, 渡辺 潤, 天谷 健二, 佐藤 三洋, 邵 強, 秋元 成太
    1993 年 67 巻 7 号 p. 659-664
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    尿路感染症において下部尿路に出現するマクロファージの役割に関する著者らの一連の研究として, 以前急性細菌性膀胱炎患者の尿沈査を非特異的エステラーゼ染色し, 尿中に出現するマクロファージの検出を試みたがマクロファージは全く検出でず, その原因として尿の影響および尿沈査をつくる過程における細胞傷害が考えられた.今回は急性細菌性膀胱炎発症後1週間以内の患者から得られた尿を直ちに最小限の遠心後, 培養液に尿中白血球を移し, 1時間ガラス板底の培養チャンバーで培養後, ガラス板に付着した白血球を非特異的エラステーゼ染色しマクロファージを検出する方法を試みた.その結果, 付着した白血球の5.9%にマクロファージが認められた.しかし, 非細菌性前立腺炎の早期に見られるようなマクロファージの活性化を意味するマクロファージのspreadingは認められなかった.付着性白血球の割合は尿浸透圧と相関しなかったが, その原因として尿採取後, 可及的に早く尿中白血球を培養液に移したことが考えられた.過去に尿中白血球を用い培養した研究は比較的少なく, 最小限の遠心後直ちに培養液に尿中白血球を移すわれわれの簡便な方法は, 尿路感染症に出現する他の細胞, サイトカイン, 抗菌剤と尿中白血球を培養するなどの尿路感染防御機構における細胞の役割の研究に有用と思われた.
  • 下気道感染成立機序について
    田野 吉彦, 中村 淳一, 松島 敏春, 田辺 潤, 木村 丹
    1993 年 67 巻 7 号 p. 665-672
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    院内感染における下気道感染成立機序を知る目的で, 気管切開患者7例, 気管チューブ挿管患者7例を対象に, 胃液, 咽頭ぬぐい液, 気管チューブ (カニューラ) 付着物, 吸引短を同時に細菌培養をおこなった.胃液からの分離菌は36株で, その内, 咽頭ぬぐい液からの分離菌との一致は, わずか22.2%にすぎず, 胃内細菌叢と上気道細菌叢とは密な相関があるとは言えなかった.咽頭ぬぐい液と吸引短の分離菌の一致率は, 気管切間例で38.5%, 気管内挿管例で80%であり, 咽頭ぬぐい液と気管カニューラ又は気管チューブ付着物のそれは, 気管切開例で33.3%, 気管内挿管例で88.9%であった.すなわち, 上気道細菌叢と下気道細菌叢の関連は, 気管切開例と気管内挿管例とでは大きな差があり, 気管切開例に比べて, 気管内挿管例で関連が密であった.院内感染の病原体となりうると思われる細菌が, 胃, 上気道, 下気道の各細菌叢間で一致した症例は14例中4例と少なかった.
    院内感染の下気道感染成立機序として, 従来から言われている胃内細菌叢から上気道細菌叢を経て下気道細菌叢を形成するということが, 極めて日常的に起こっている結果は得られなかった.
  • 笹田 昌孝, 澤田 博義, 山本 孝吉, 田嶌 政郎, 大熊 稔, 内野 治人, 岡田 弘, 岡田 隆道, 鈴木 孝世, 安田 典正, 大森 ...
    1993 年 67 巻 7 号 p. 673-679
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    造血器疾患に合併した深在性真菌症50例を対象に, 真菌学的検査に加えてβ-D-グルカン (以下β-グルカン) を測定し, 診断におけるその有用性を検討した.更に臨床的に抗真菌剤Miconazole (MCZ) を投与し, 血液学的所見と治療効果との関連性について検討を行った.β-グルカンの測定は44例に行われ, 54.5%(24/44) に陽性 (β-グルカン≧10pg/ml) を認めた.全体でのMCZの有効率は80%(40/50) であり, 陽性例に対するMCZの有効率は75.0%(18/24) であった.MCZの副作用は50例について検討し, 3例に認められたが全てMCZ投与継続可能症例であった.血液学的所見とMCZの治療効果との関連性を検討したところ, 好中球数並びにリンパ球数が500/μ1未満で推移した症例の有効率は64.7%(11/17), 50%(5/10) であった.一方, 500/μ1以上で推移した症例の有効率は86.7%(19/22), 91.7%(22/24) と有効率を示した.好中球数およびリンパ球数それぞれについてMCZの有効率との関連をみると, リンパ球数とより強い関連性を認め, 深在性真菌症におけるリンパ球の意義が窺われた.
  • 中村 敦, 山田 保夫, 服部 隆康, 児島 康浩, 山本 俊信, 松浦 徹, 武内 俊彦, 山腰 雅宏, 山本 和英
    1993 年 67 巻 7 号 p. 680-685
    発行日: 1993/07/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    A case is reported here of brain abscess due to Streptococcus sanguis in association with multiple pulmonary arteriovenous fistulas. A 19-year-old male who had been diagnosed in 1988 as pulmonary arteriovenous fistulas was admitted to our hospital for repeated epistaxis, headache, and vomiting. A brain abscess which was diagnosed using various roentogenologic examinations, worsened despite conservative therapy. Additional surgical drainage was performed; S. sanguis was isolated from the drainage fluid. After drainage, clinical symptoms gradually improved with no subsequent neurological dificits.
    We have formulated the following hypothesis regarding the mechanism of abscess formation in this case: S. sanguis invaded from a ruptured nasomucosal vein, forming a septic emboli in the blood flow, which passed through a pulmonary arteriovenous shunt and led to the formation of a brain abscess which established a metastatic presence in the cerebral tissue.
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