感染症学雑誌
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84 巻, 3 号
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原著
  • 鎌田 彩子, 大日方 薫, 松永 展明, 新妻 隆広, 木下 恵司
    2010 年 84 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー
    近年,耐性菌増加や集団保育の一般化により乳幼児の急性中耳炎が遷延・難治化し,急性乳様突起炎や乳突洞病変の合併が多くなっている.急性乳様突起炎は中耳の炎症が乳突洞に波及し乳様突起付近に皮下膿瘍を認める病態であり,骨膜下膿瘍や髄膜炎に進展する危険性から速やかな対応が必要である.しかし乳幼児期の反復性・難治性中耳炎ではCT 検査上乳突洞の含気低下を認めることが多く,中耳炎に伴う乳突洞病変として急性乳様突起炎とは区別して考える必要がある.今回の検討では乳様突起炎の8 例中4 例が乳児であり,後鼻腔より肺炎球菌,A 群溶連菌などが検出された.治療は抗菌薬投与と鼓膜切開が行われたが,2 例では耳介後部切開術や乳突洞削開術が必要となった.一方,中耳炎に伴う乳突洞病変では10 例中9 例が幼児であり,反復性中耳炎や肺炎の既往が多かった.全例,後鼻腔から肺炎球菌が培養され,1 例はペニシリン低感受性菌だった.また3 例ではβ ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌も検出された.全例抗菌薬投与と鼓膜切開により治癒した.
  • 冨家 俊弥, 阿部 祥英, 星野 顕宏, 大戸 秀恭, 酒井 菜穂, 村山 純一郎, 吉田 耕一郎, 板橋 家頭夫
    2010 年 84 巻 3 号 p. 269-275
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー
    小児急性上部尿路感染症は特に乳幼児や新生児では敗血症を伴うことがあり,初期治療において有効性の高い抗菌薬を選択する必要がある.しかし,第三世代セフェム系抗菌薬,カルバペネム系抗菌薬などを頻用することは耐性菌の出現や増加を惹起する可能性がある.症例の重症度や施設の違いなどによりさまざまな種類の抗菌薬が使用され,それぞれの抗菌薬ごとに有効性が検討された報告は少ないが,当院では初発の小児急性上部尿路感染症に対する初期治療の第一選択薬として第一世代セフェム系抗菌薬であるセファゾリン(CEZ)を用いており,その有効性に関して検討を行った.今回の検討では,CEZ が適応となる菌が88.9%の症例で検出され,CEZ の有効率は91.3%,尿培養陰性化率は97.2%と良好であった.Escherichia coli に対する抗菌薬感受性はCEZ においてMIC<4 が90.9%,セフタジジム(CAZ)はMIC<1 が93.9%,アンピシリン(ABPC)はMIC<4 が63.6%,ゲンタマイシン(GM)はMIC<4 が81.8%であり,第一世代のセフェム系抗菌薬であるCEZ が第三世代のセフェム系抗菌薬CAZ とほぼ同等の有効性を有していることが示唆された.よって,小児急性上部尿路感染症の初期抗菌薬治療としてCEZ は細菌学的臨床効果の観点から選択薬の一つになりうると判断された.
  • 永田 正喜, 青木 洋介, 福岡 麻美, 三原 由起子, 曲渕 裕樹, 宮本 比呂志, 草場 耕ニ, 永沢 善三
    2010 年 84 巻 3 号 p. 276-284
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が下気道検体より分離された場合に,感染か定着かを定量的に判断する臨床疫学的診断法を考案した.カルテレビューによる臨床経過に基づきMRSA の下気道感染あるいは定着(非感染)の2 グループに分類した181 名の患者(2006 年6 月~2008 年3 月:derivation cohort)について,発熱(>38℃),MRSA 菌量(>106CFU/mL),貪食像,血清アルブミン値(<3.0g/dL),末梢白血球数(>15,000/µL)の5 項目のMRSA 下気道感染に関する陽性尤度比,陰性尤度比を定め,Bayes 解析による定量的診断のフローチャートを作成した.次に,新たな40 名の患者(2008 年5 月~10 月:validation cohort)を対象として,各尤度比を知らされていないICT が通常のラウンドで感染あるいは定着と判断した2 群についてBayes 解析により定量化した診断確率を比較した.4 項目(発熱,菌量,貪食像,血清アルブミン値)の臨床因子による診断確率はICT 判定感染群で62.3±25.4%,同定着群で40.2±20.4%であった(p=0.005).ICT 判定に照合した場合の本診断法による確率51%をcut-off とした場合の陽性的中率は77%,陰性的中率は85%であった.本法は診断確定基準が明確でないMRSA 下気道感染症の定量的診断法として臨床的に有用であり,適切な抗菌薬治療の一助となることが期待される.
  • 浅見 諒子, 岡田 圭祐, 千葉 菜穂子, 生方 公子, 高橋 孝
    2010 年 84 巻 3 号 p. 285-291
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー
    2001 年1 月から2009 年8 月までの間に,当医療センターにおいて実施された血液培養から分離された45株のβ 溶血性レンサ球菌と,患者背景因子について解析した.45株の内訳は,Streptococcus pyogenes が2 株,Streptococcus agalactiae(GBS)が21 株,Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis(SDSE)が22 株であった.平均年齢は80 歳,基礎疾患保持例は85%以上であった.GBS 例は入院例の男性が多かったのに対し,SDSE は救急外来受診で入院となった女性が多かった.疾患としては肺炎,urosepsis,蜂窩織炎例が多くみられた.分離菌と予後との関係では,GBS 例では死亡率14.3%,SDSE では27.3%と高かった.死亡例における血液検査でのPLT 値は救命例に比して有意に低く,CRP 値は逆の傾向を示した.WBC 値には差は認められなかった.
  • 吉田 博, 草場 信秀, 佐田 通夫
    2010 年 84 巻 3 号 p. 292-295
    発行日: 2010/05/20
    公開日: 2017/08/18
    ジャーナル フリー
    血清学的にBartonella henselaeの感染が確認されたネコひっかき病(CSD)63 例の臨床症状,検査所見,治療経過について検討した.CSD 患者の年齢は0 歳から83 歳に分布し,平均年齢は35.0 歳であり,男女比は 1 : 1.2 で,女性に多かった.CSD の発生には季節性がみられ,夏から秋に多く,10 月がピークであった.CSD の感染源は61 例(96.8%)がネコであり,そのなかで39 例(61.9%)が1 歳未満の仔ネコであった.感染経路は約49.2%がひっかき傷であり,3.2%は咬傷,3.2%はネコ蚤刺傷であった.受傷部位の皮膚に硬結や膿胞などの皮膚病巣が観察できたのは27 例(42.9%)であり,受傷部位は上肢に多かった.リンパ節腫大は60 例(95.2%)に認められ,腋窩部が最も多く(51.7%),次いで鼠径部(31.7%),頸部(21.7%),肘関節(16.7%)の順に多かった.潜伏期の平均は18.9 日であり,治療開始からリンパ節腫大が消失するまでの期間の平均は44.2 日であった.白血球の平均は8,130/µL であり,CRP の平均は2.83mg/dL であった.
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