日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1984 巻, 5 号
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  • 坂口 雅一, 太田 雅尋, 長谷川 隆代, 遁所 まゆみ
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 663-667
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Na2SO4 結晶のIII→V型相転移反応におよぼす水蒸気の収着による影響を各種相鮒湿度下(30,50,70および90%)で調査した。さらに,種々の異種硫酸塩IEu,(SO4)3,Y2(SO4)3,SrSO4,Ti2S04あるいはCs2SO4を不純物として配合した試料についても同様に水蒸気収着による影響を調査し,高純度試料の結果と比較検討した。その結果,Na2SO,結晶のIII→V型相転移反応は,水蒸気の収着によって促進され,(i)水蒸気収着層形成にともなう反応開始過程,(ii)結晶表面近辺の飽和収着層の存在による急速な反応進行過程, (iii)その後の緩慢な反応進行過程の3種の反応機構を経て進行することがわかった。Na2SO4と固溶体の形成しやすいEu3+ あるいはY3+ を配合した試料の場合,水蒸気収着による促進効果はいちじるしく抑制された。他方,Na+よりイオン半径の大きいTI+あるいはCs+を配合した場合,その大半はそれぞれTI2SO4あるいはCs2SO4としてNa2SO4結晶粒界に介在し,その存在に由来するユピタキシャル効果によって水蒸気収着による促進作用が助長された。
  • 橋本 圭司, 井上 和男, 木下 通, 松村 安行, 渡辺 昭二
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 668-672
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パラフィンの酸化に対し実用的な固体触媒の探索を試み,Co3率を活性炭に担持した触媒はこの酸化に対し高い活性を有することを見いだした。この触媒は反応中,コバルト(III)イオンは反応液に溶出せず,また触媒調製に使用した溶媒中のCo3+は触媒活性を有さないこと,さらにコバルト(II)イオンを活性炭に担持しても触媒活性はないことが示された。これらの結果から,この酸化には活性炭に固定されたCo3+の関与することが示唆された。
    この触媒によるパラフィンの酸化速度は触媒濃度に1/2次,酸素圧に 0次であり,見かけの活性化エネルギーは 107~130℃ の範囲で 17kcal/molであった。また酸素吸収量124 l/l-パラフィンにおける生成物分布は脂肪酸3,エステル3,ケトン1,アルコール1の比率であった。原料パラフィンがドデカン23mo1%,トリデカン43mo1%,テトラデカン34mo1%からなるとき生成脂肪酸はC5~C8酸が主生成物となった。 これらの結果は金属イオンによる均一液相酸化に対し提出されたラジカル反応機構で説明できた。
  • 新井 五郎, 古井 正信
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 673-677
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    チオール類は,容易にキノン環に1,4-付加することがすでに知られている。著者らは,メルカプトヒドロキノンとかベンゾキノンの反応系においても,1,4-付加反応してビス(2,5-ジヒドロキシフェニル)スルフィドを生じることを確かめ,本報で述べている。この知見に基づき,グラッシーカーボン電極を作用電極に用い,メルカプトヒドロキノンを定電位電解酸化すると,電極表面にキノン環がスルフィド結合したキノノイド重合体を得ることができた。この重合体は,メタノールおよび水の中に長時間放置しても溶解することなく,安定で,+0.8-1.0V(vs.SCE)の電位域でのサイクリック,ボルタンモグラムでは,走査数が数百回を超えてもまったく変形が認められなかった。これらのことから,この化学修飾電極は,機能性電極として広い応用が期待できる。
  • 大王 宏, 水谷 保男
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 678-684
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    直接浸漬法で作成した第1~第5ステージまでの黒鉛-硝酸層間化合物の-196~25℃における軸長(identity period)の温度依存性をX線回折法により調べた。その結果,(1)相転移に基づく異常膨張む幅は,第1,第2および第3~ 第5ステージに対してそれぞれ0.025,0.031および0.045Åであった。また相転移温度は,第1ステージでは-10℃付近であるが,高次ステージではさらに低温域に移動すること,そして温度低下の現象がごくわずかの分解によっても生ずることがわかった。(2)5℃付近の小さな相転移の存在が,その前後の膨張係数の違い,あるいは異常膨張から明らかになった。(3)室温付近の膨張係数は第2~第5ステージに対してそれぞれα(2nd)=49.9×10-6/K,α(3rd)=43.0×10-6/K,α(4th)=41.9×10-6/K,α(5th)=37.o×10-6/Kであった。
  • 大石 修治, 楯 功, 平野 真一, 中重 治
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 685-690
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,高温溶液法による酸化物単結晶の育成のフラックス選択を系統的にかつ的確に行なうために,いくつかの基礎情報を用いて選択指針を提案した。
    この指針による選択は,溶質とフラックスのイオン半径,融点,化学結合のイオン性,Dietzel パラメーターおよび酸・塩基性度などを用いて行なう。指針の基準を満足する酸化物およびハロゲン化物を選びだし,必要に応じて第二成分を添加したのちにフラックスとして使用する。この選択指針を用い,α-Al2O3単結晶の育成について議論した。また,CaWO4単結晶の育成法を提案し,フラックスにNa2WO4を用いて実験し,高温溶液を徐冷することにより無色透明のCaWO4単結晶をつくった。さらに,NaNd(MoO4)2単結晶の育成について議論した。
  • 山崎 仲道, 叶原 悟司, 柳沢 和道, 松岡 清
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 691-696
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    280~300メッシュに粉砕した佐賀県産カリ長石をアルカリ水溶液とともに小型オートクレープ中で振動させながら100~400℃に加熱した。反応生成物をとりだし,K2O,Al2O3O,SiO2の抽出率を調べ,抽出残留物の結晶相を同定し,カリ長石の分解と変質を検討した。Ca(OH)2溶液を用いた場合,反応時間10分ではKAISi3O8に対するCa(OH)2のモル比5~6以上で抽出率60%となり,不溶性生成物の造膜作用によってそれ以上の分解が進みにくくなった。NaOH溶液を用いた場合,比較的低温(200℃)でSi-O-Si,Si-O-Al結合が分解され,300℃ までは各成分の抽出率は温度とともに増大する傾向を示した。抽出率は大きいものからK2O,SiO2,Al2O3Oの順で,5mol・dm-3NaOH溶液を用いた場合,200℃,10分間の反応でK20のほぼ100%が抽出された。Ca(OH)2溶液を用いた場合の固体生成物(抽出残留物)は主成分がトバモライト(Tobermolite,5CaO・6SiO2・5H2O),ケイ酸ニカルシウム(2CaO・SiO2・H2O)となり,ほかにカルシライト(Kalsilite,K2O・Al2O3O・2SiO2),ネフェリン(Nepheline,Na2O・Al2O8・2SiO黎)を認めた。NaOH溶液の場合の生成物はアルカリの濃度増加にともなってシリカ含量の高い長石(SiO2/Al2O3Oモル比6)からシリカの少ないアナルサイト(Analcite,Na2O・Al3O3O・4SiO2・2H2O,SiO2/Al2O3Oモル比4)ついでカンクリナイト(Cancrinite,3(Na2O・Al2O3O・2SiO2)・NaoH,SiO2/Al2O3Oモル比2),ソーダライト(sodalite,3(Na2O・Al2O3O・2siO2)・2NaoH,siO2/Al2O3Oモル比2)に順次変化していくことがわかった。
  • 早川 博, 鈴木 耀, 小野 修一郎
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 697-701
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ランタンケイ素三ヒ化物(F型,LaSiAs3)の結晶構造を明らかにした。結晶はヒ素圧力2.5atm下で1000℃ から徐冷して育成した。結晶学的データは,斜方晶系,空間群Pbc,a=6.084(1),b=5,986(1),c=26.235(3)Å,2=8である。結晶構造は四軸型自動X線回折計で測定した1272個の独立反射のX線強度からPatterson法によって解き,完全マトリックス最小二乗法でR=6.3%まで精密化した。しかし,As(3)原子に大きな異方的熱振動のある構造として精密化された。この構造は擬似的面心構造であり,CeSiP3構造(P型)と非常に関連性がある。この構造もCeSiP3構造と同様にc軸に沿って[As2]-[La][Si2As4][La][As2][La][Si2As4][La][As2]の層配列として描くことができる。
    [La]層内のLa原子問距離は4.27Åである。La原子は[Si2As4]層内のAs原子と3.09~3.18Åで5配位,[As],層内のAs原子と3.20-3.23Åで4配位,合計9配位である。[As]層内のAs原子間は2.99と3.04Aである。[Si2As4]層の原子配列はCeSiP3構造のそれと酷似している。こむの層内では,Si原子とAs原子の結合距離が2.34~2.37Aで交互に結合した舟形六員環が二次元的無限網目構造を形成して,(As2)に平行な方向へ広がっている。[As2]層内の配列はCeSiP3構造で観測されたジグザメ鎖の長周期的秩序性をもらていないらしい。
  • 武捨 清, 山崎 素直, 戸田 昭三
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 702-708
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素および硫黄で橋かけされた一連の複核モリブデン錯体,すなわちMo2O2(μ-O,S)(S2CNR2)2(S1錯体),Mo2O2(μ-S)2(S2CNR2)2(S2錯体),Mo2O2(μ-S)2(S2CNR2)2(S3錯体)およびMo2S2(μ-S)2(S2CNR2)2(S4錯体)において,アルキル基(R)が2-エチルヘキシル基の場合,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析すると,S4錯体は単一成分のままであるが,S1およびS2錯体ではおのおのがさらに5成分に,S3錯体ではさらに3成分にそれぞれ分離できることを見いだした。その原因究明のため,各成分の平衡関係をHPLC分取法により検討した。また,S2錯体については,紫外および赤外分光法により各成分の構造変化を調べた。さらに,各種アルキル基(ブチル基,オクチル基およびシクロヘキシル基)のS1~S4錯体をも合成して比較検討した。その結果,これはMo2X42+骨格の立体異性によると考えられた。2-エチルヘキシル基のS2錯体において判明した立体異性体は,2個のターミナル原子がMo2(μ-X)2の四員環に対して同じ側か反対側かによるシスートランス異性体と,それぞれの場合についてMo(μ-X)2二面角の異なるものがシス体では3種類,トランス体では2種類の合計5種類である。
  • 中川 良三
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 709-715
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    自然環境から供給される水銀のバックグラウンド値を明らかにし,人為的水銀汚染の実態を解明する上での基礎資料を得るために,地熱地帯(東北地方北部下北半島および八幡平周辺,関東地方草津白根火山周辺および箱根大涌谷,北陸地方立山地獄谷,九州地方別府,阿蘇山,大岳,雲仙,霧島周辺)の噴気孔ガスおよび温泉ガス中の水銀含量を調べた。72試料の噴気孔ガス中の水銀量は乾きガスあたりで0.096~1020μg/m3(平均値75μg/m3)であった。同時に採集した凝縮水中の水銀量は0.08~4.8μg/lでほぼ一定の範囲にあり,平均して気体として揮散した水銀量の1/100以下の分配量であった。温泉ガス申の水銀含量はo.078~6.5μg/m3であり,噴気孔ガスにくらべて平均して1/100の低値であった。同一地熱地帯内では,泉温の低い温泉ガスは水銀含量も比較的低値の傾向を示した。地熱地帯の大気中の水銀含量は一般環境の3~500倍量の0.045~7.3μg/m3であった。この値は極端な気象変化や地熱変化がないかぎりあまり変化しないようである。火山活動によって大気中に放出される水銀量を噴気孔ガス中の水銀含量から試算した結果,本邦では大気に関連する水銀の約5%が火山ガスの寄与によると推定された。
  • 吉村 長蔵, 西口 年彦
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 716-721
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    金属キレートの非水溶媒中における配位子置換反応の分析への応用を検討した。本報では,金属キレートとしてβ-ジケトンキレートである金属アセチルアセトンキレートを用い,非水溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド,ジメチルスルポキシド)中におけるエチレンジアミン四酢酸との配位子置換反応を伝導度滴定法により追跡し,金属アセチルアセトンキレートの定量を行なった。また,各種金属アセチルアセトンキレートのエチレンジアミン四酢酸に対する反応性,異種金属アセチルアセトンキレート共存時における示差滴定および滴定時における金属イオン,水,無機酸の影響を調べた,本法によると金属アセチルアセトンキレートの溶液化が簡便で,他の定量方法にくらべ迅速に定量ができた。
    また,本法の実際分析への応用としては,金属アセチルアセトネートが潤滑油,殺虫・殺菌剤,絵の具などの添加物として用いられることから,これらの分析方法としての利用や抽出非水滴定への利用が考えられる。
  • 本里 義明, 松本 和秋, 平山 忠一
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 722-727
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジクロロメタンを主としてこれと希釈剤からなる混合溶液に三酢酸セルロースを溶かした溶液を水系の媒体中に懸濁させて液滴をつくり,その液滴中のジクロロメタンを昇温により蒸発させて除去し希釈剤を含有する三酢酸セルロースの球状粒子を得た。この球状粒子をけん化し,引きっづき希釈剤を除去して多孔質セルロース球状粒子を得た。多孔質球状粒子の浸透性はポリ(オキシエチレン)のような水溶性物質を溶出させることによって測定し,ゲルマトリックスと試料との間の疎水性相互作用の度合いはゲ~レを充填したカラムを通してメタノールと1-ブタノールを溶出することによって測定した。希釈剤の増減によってゲルの多孔質の度合いを調節でき,分離できる分子量範囲は2000~80000であった。ゲルと試料の問の疎水性相互作用はほとんど見られなかった。電気伝導度測定の結果ゲル中の酸性基の量は25μeq/gであり,またゲル充填カラムの耐圧性は大きい。この多孔質セルロースゲルはゲルクロマトグラフィー用充填剤として実用に耐えることがわかった。
  • 中田 昌宏, 鵜沢 惇, 福士 幸雄, 冨田 弘, 広田 穣
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 728-731
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    芳香族スルホン酸およびその塩類をリン酸を用いたプレカラムにより脱スルホン化反応を行ない誓隼成する芳香族化合物を検出することにより,もとのスルホン酸を迅速かつ簡便に分析する反応ガスクロマトグラフ法を研究した。ペソゼン,トルエン,ジメチルベソゼン,トリメチルベンゼン,・エチルベツゼン,クロロベンゼン,ジクロロベンゼシ,トリブロモベンゼソ,ナフタレンのスルホン酸およびその塩類の水溶液について検討したところ,脱スルホン化は反応温度250~300℃ですみやかに進行し,対応する脱スルホン化物が得られ,これらの試料の定性および定量分析に本法が十分利用できることがわかった。スルホン酸の水溶液濃度と脱スルホン化の関係について調べたところ,10-3mol/l 以上の濃度においては脱スルホン化反応の副反応による生成物はほとんど見られず,良好な検量線が得られた。それ以下の濃度では副反応生成物が急激に増加するので低濃度の試料の分析では濃縮操作が必要であることがわかった。
  • 平山 忠一, 松本 高志, 本里 義明
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 732-738
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペルオキソニ硫酸カリウム水溶液を含浸させたコンニャクマンナン顆粒に酢酸ビニルをグラフト共重合させてペンダントポリ(酢酸ビニル)鎖の重合度が約2000,グラフト率が54,71,84mol%のグラフト共重合体を合成した。グラフト共重合体のアセチル化物のジグロロメタン溶液を水溶液系に懸濁させて球粒子化し, さらにけん化, 橋かけしてマンナン-ポリ(ビニルアルコール)(PVA)グラフト共重合体球状ゲル粒子を調製した。得られたゲルの水系ゲルクロマトグラフィーを行なった結果,グラフト共重合体から得られたゲルのキャパシティー比,排除限界分子量はPVAゲルにくらべて大きくなった。これはPVAゲルマトリックス中にに高親水性コンニャクマンナンミクロゲル相が存在するためと考えられる。
    これらのゲルは水溶性のオリゴマー分離に有用であると考えらる。
  • 代島 茂樹, 飯田 芳男, 梶木 俊夫
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 739-744
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連の有機塩素系農薬およびその関連化合物について,その負イオン化学イオン化(NCI)質量スペクトルを測定し,正イオン化学イオン化(PCI)質量スペクトルと比較し,きその特徴を明らかにした。また,正および負の基準ピーク(m/z 100以上),塩化物イオンピークのイオン量の測定を行ない,これらの間のイオン量比を求めた。NCIスペクトルは一般に比較的単純で特徴的なスペクトルが得られたが,分子イオンは芳香族化合物でおもに生じ,そのほかの化合物ではあまり生じなかった。フラグメンテーションはPCIにくらべると少なく,フラグメントイオンはおもに(M-HmCln)-(m≧0,n≧1),塩化物イオンおよびペンタクロロシクロペンタジエニドアニォン,C5Cl5で,前二者はすべての化合物で,後者はドリン系化合物で生じた。NCIにおける基準ピークはPCIにおけるそれとはイオン種が異なる場合が多く,そめイオン量はNCIの方が数~数百倍多かった。塩化物イオンの量は化合物により大きな華があり,しばしば基準ピークによるイオンよりもイオン量が多かった。
  • 飯田 芳男, 代島 茂樹, 柴田 明宏, 松下 秀鶴, 古谷 圭一
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 745-749
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    一連のニトロアレーン類にっいそ,その負イオン化学イオン化(NCI)質量スペクトルを測定し,正イオン化学イオン化(PCI)質量スペクトルと比較しっつその特徽を明らかにした。また,正および負の基準ピークのイオン量を測定し,それらのイオン量比を求めた。NCIスペクトルにおいて生じるおもなイオンは分子イオン,M-,フラグメントィオンの(M-H<xNyOz)-(x≧0,y≧0,z≧1),たとえば(M-O)-,(M-NO)-,(M-NO2)-とNO2-,付加イオン,(M+CH3)-,(M+C2H5)-,および擬分子イオン,(M-H)-であり,2,2′-ジニトロビフェニルを除き分子イオンが基準ピークとなった。またフラグメントイオンはPCIにくらべるとやや少ない傾向にあったが,そのイオン種はPCIのそれと類似のものであった。各基準ピークのイオソ量はNCIの方が数~1000倍多く,NCIによるニトロアレーンの高感度検出の可能性を示唆した。
  • 堂野 礼三, 赤松 敏弘, 大倉 浩和, 白子 忠男
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 750-754
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンチオ尿素,1,3-ジメチルチオ尿素,トリメチルチオ尿素,1,3-ジブチルチオ尿素および2-メチルチオ-2-イミダゾリンの臭化マグネシウム塩〔1a〕,〔2a〕,〔3a〕,〔4a〕および〔5a〕を二酸化炭素の担体として活性メチレン化合物のカルボキシル化を行なった。これらの塩基は二酸化炭素を取り込み付加体〔1b〕,〔2b〕,〔3b〕,〔4b〕,〔5b〕を形成するが,このうち〔1b〕,〔2b〕および〔3b〕はDMF中で室温においてほぼ定量的に脱炭酸する。しかし,〔4b〕と〔5b〕の脱炭酸能は非常に低い。一方,これらの付加体によるカルボキシル化において,〔1b〕,〔2b〕,〔3b〕はインデン,アセトフェノン,シクロヘキサノン,1-テトラロンなどを窒素雰囲気下,室温で容易にカルボキシル化し,二酸化炭素の活性化に有効なことが認められた。しかし,〔4b〕および〔5b〕さらにエチレンチオ尿素のカリウム塩では生成物はほとんど得られず,付加体の脱炭酸能とカルボキシル化効率はよい相関性を示した。また,臭化マグネシウム塩にくらべてカリウム塩ではほとんどカルボキシル化反応は起こらなかった。
  • 杉本 義一, 三木 康朗, 山田谷 正子, 大場 昌明
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 755-763
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    溶融シリカキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフ(GC)およびガスクロマトグラフー質量分析計(GC/MS)を用いて,Wandoan炭液化油中の極性成分の分析を行なった。反応は,内容積300mlの回転かきまぜ式オートクレープにWandoan炭20g,トルエン25ml,α-Fe2O3(硫化)0.5gを充填し,反応温度450℃,水素初圧100kg/cm2,反応時間1時間で行なった。液化生成物から蒸留により得た留出独(常圧換算180~420℃)をアルカリ洗浄,酸洗浄および活性アルミナカラムにより,それぞれ酸性成分,塩基性成分,中性極性成分に分離した。
    酸性成分は単環のフェノール類が大部分であり,ほかにインダノール類,テトラヒドロナフトール類,ナフトール類フェニルフェノール類などが含まれていた。塩基性成分は単環から四環までの窒素化合物であり,ピリジン類,アニリン類,キノリン類,ナフチルアミン類,三,四環窒素化合物およびそれらの部分水素化物であった。中性極性成分には非塩基性窒素化合物であるインドール類,カルバゾール類が少量含まれているが,ほとんどはアルキル側鎖の炭素数が比較的多いフェノール性化合物であると推定された。
  • 白岩 正, 井川 明彦, 藤本 清, 岩藤 賢司, 黒川 秀基
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 764-768
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    DL-α-フェニルグリシン(DL-Phg)硫酸塩のラセミ体構造におけるラセミ混合物とラセミ化合物との問の転移現象について調べた。融点付近におけるDL-Phg硫酸塩のラセミ化合物生成の自由エネルギーは負の値を示し,高温ではラセミ化合物として存在することを示した。しかし,そのエンタルピーは正の値であり,温度炉低くなるとそのラセミ化合物の安定性が乏しくなることを示唆した。Phg硫酸塩の溶解度の三成分系状態図において,10ならびに20℃ の溶解度曲線まラセミ化合物のパターンを示したが,0ならびに5℃のそれらはラセミ混合物のパターンを示した。また,0℃で30wt%硫酸水溶液から晶出させたDL-Phg硫酸塩の赤外吸収スペクトルは,20℃で晶出させたDL-Phg硫酸塩のそれとは異なり,D-Phg硫酸堪のスペクトルに一致した。そして,それらの赤外吸収スペクトルにおけるSO42-による吸収帯から,20℃で晶出したDL-Phg硫酸塩においてはSO42-によってD-とL-H+Phgが橋かけした構造が考えられ,また0℃で晶出したDL-Phg硫酸塩とD-Phg硫酸塩においては同種の光学対掌体がSO42-によって橋かけされている構造が考えられた。以上の結果から,DL-Phg硫酸塩は高い温度ではラセミ化合物を形成しているが,5~10℃ でそのラセミ体構造が変化し,それ以下の温度ではラセミ混合物として存在することがわかった。さらに, DL-Phg碑酸塩の優先晶出法による光学分割を30wt%硫酸水溶液中,-10℃で行なった結果,この温度で分割が可能であったので,さきの結果が支持された。
  • 井本 稔, 酒井 章吾, 大内 辰郎
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 769-773
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶性高分子は水相で疎水領域(HA)を形成し,そのなかでビニルモノマーをラジカル重合させる。それは"無触媒重合"と呼ばれる。その開始機構は一方のモノマーから他方のこεソマーへH・が移動する反応である。それはスピントラッピング法で立証された。H・移動を分子軌道洗で支持するために,水溶性高分子の模型としてギ酸イオン,酢酸イオン,ジメチルエーテルの三者をとり,それらとビニルモノマーの代表としてのアクリロニトリル(AN)との錯体を想定した。ab initio HF(STO-3Gまたは4-31G基幹関数)法によりANおよび想定3錯体の最適構造を求め,さらにそれぞれのMOの固有値や各AOの係数などを算出した。ANのMOは,ANが上掲の塩基と錯体を形成することによってつねに上昇した, フロンティァMO法によってH・移動の遷移状態における摂動エネルギーを計算した。H・は錯体を形成したANから遊離のANの方に移行することがわかった。摂動エネルギーΔEは,作用エネルギーΔβを-3eVと仮定すると,AN/AN,HCOO:…AN/AN,CH3COO:…AN/AN,(CH3)2O:…ANIANの順に0.003,0.030,0.029,0.029eVであった。このことからAN/AN系ではラジカル開始は起こり得ないが,Lewis塩基性高分子…AN/AN系では起こり得る可能性があるものと結論できる。
  • 山本 統平, 山本 忠弘, 広田 正義, 蒲池 幹治, 野桜 俊一
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 774-779
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    四塩化炭素を溶媒としたメタクリル酸メチル(MMA)およびスチレンのラジカル重合の動力学的検討を行なった。そのさい重合速度(Rp)のモノマー次数は従来いわれてきた停止過程における粘度効果では説明できない結果を得た。各素過程に関する情報を得るため回転セクター法によって生長速度定数(kp)と停止速度定数(kt)を求めたところ,生長過程には溶媒効果がなく,ktに溶媒粘性の効果が認められ通常のラジカル重合における挙動と同じであった。R1はCCl4濃度が増すといちじるしく低下し,この結果CCl4がモノマー次数を異常に大きくすることを明らかにした。
  • 鉄見 雅弘, 松本 忠也, 角 正夫
    1984 年 1984 巻 5 号 p. 780-783
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Sodium salts of dialkyldithiocarbamates (R2NCS2Na) and hetero-ring-containing dithiocarbamates were subjected to capillary tube isotachophoresis to study the effects of substituents to their electrophoretic behaviors. (n-Pr)2NCS2Na and (i-Pr)2NCS2Na were found to have the same mobility and similar evidence was also observed in the case of (n-Bu)22NCS2Na and (n-Bu)2NCS2Na. Sodium 4-morpholinecarbodithioate, containing an oxygen and a nitrogen atom in the ring, showed mobility larger than expected from its molecular weight.
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