280~300メッシュに粉砕した佐賀県産カリ長石をアルカリ水溶液とともに小型オートクレープ中で振動させながら100~400℃に加熱した。反応生成物をとりだし,K
2O,Al
2O
3O,SiO
2の抽出率を調べ,抽出残留物の結晶相を同定し,カリ長石の分解と変質を検討した。Ca(OH)
2溶液を用いた場合,反応時間10分ではKAISi
3O
8に対するCa(OH)
2のモル比5~6以上で抽出率60%となり,不溶性生成物の造膜作用によってそれ以上の分解が進みにくくなった。NaOH溶液を用いた場合,比較的低温(200℃)でSi-O-Si,Si-O-Al結合が分解され,300℃ までは各成分の抽出率は温度とともに増大する傾向を示した。抽出率は大きいものからK
2O,SiO
2,Al
2O
3Oの順で,5mol・dm
-3NaOH溶液を用いた場合,200℃,10分間の反応でK20のほぼ100%が抽出された。Ca(OH)
2溶液を用いた場合の固体生成物(抽出残留物)は主成分がトバモライト(Tobermolite,5CaO・6SiO
2・5H
2O),ケイ酸ニカルシウム(2CaO・SiO
2・H
2O)となり,ほかにカルシライト(Kalsilite,K
2O・Al
2O
3O・2SiO
2),ネフェリン(Nepheline,Na
2O・Al
2O8・2SiO黎)を認めた。NaOH溶液の場合の生成物はアルカリの濃度増加にともなってシリカ含量の高い長石(SiO
2/Al
2O
3Oモル比6)からシリカの少ないアナルサイト(Analcite,Na
2O・Al3O
3O・4SiO
2・2H
2O,SiO
2/Al
2O
3Oモル比4)ついでカンクリナイト(Cancrinite,3(Na
2O・Al
2O
3O・2SiO
2)・NaoH,SiO
2/Al
2O
3Oモル比2),ソーダライト(sodalite,3(Na
2O・Al
2O
3O・2siO
2)・2NaoH,siO
2/Al
2O
3Oモル比2)に順次変化していくことがわかった。
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