所謂ゴムの老化防止劑として多くの化合物が有り、有機加硫促進劑の中の或物は同時に老化防止能をも有する事は知られてゐるが、然し其等の多くは加硫ゴムに對してのみ老化防止能を有するのであつて、生ゴムに對しては其の作用は全く異る。即ちJ. T. Blake 及び Bruce(1)は加硫ゴムに對して酸化防止劑と認められる物質の多くは、光の存在に於て生ゴムの老化進行の強力な促進劑であり市販老化防止劑の多くは之に屬する事を指摘してゐる。加硫促進劑の場合(2)(3)(4)も亦同樣であり、D.P.G.,M.等の作用は著しい。
特に生ゴムに對して老化防止能を有すると認められる物質は比較的少く、生ゴム中へ含まれる天然物質の他ハイドロキノン、ピロガロール、ベンヂディン、タンニン、硫黄等で多く還元性物質に屬する。
然るに著者はメチルレッドC
6H
4-N(CH
3)
2-N=N-C
6H
4-COOHが生ゴムに對して強力なる老化防止能を有する事實を認めた。之は上記の還元性物質とは全く異り一種の赤色色素である。又天然生ゴムに對して老化防止能を有する事より、他の不飽和化合物、例へば不飽和油脂類、炭化水素、合成樹脂、天然纎維、等にも同樣抗酸化劑としての効果が期待され興味がある。本報に於ては生ゴムのベンゾール溶液について行つた豫備的實驗結果を報告する。
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