放射線加硫天然ゴムラテックスの特徴を明らかにする目的で, 天然ゴムラテックスタンパク質のアレルギー反応に対する放射線照射の影響を検討した. このため,マウスとラットを使った受身皮膚アナフィラキシー(PCA)試験, 天然ゴムラテックス中の水溶性成分の定量とその分子量分布の測定, ラテックスを乾燥して得たフィルム中の窒素含有量の定量およびSDS-PAGE法によるタンパク質分子量分布の測定を実施した. PCA試験によると, 照射ラテックスでは, 硫黄加硫のものよりは弱いアレルギー反応が認められた. アレルギー反応の線量依存性は認められなかった. ラテックス中の水溶性成分の量およびフィルム中の窒素含有量は放射線照射によって増加したが, 1%アンモニア水によるリーチングで容易に除去された.分子量分布測定では, 放射線照射で水溶性の高分子量成分は増大するが, タンパク質の高分子量成分は減少することがわかった. これらの結果は, ラテックス中に存在するタンパク質などの非ゴム成分が放射線で分解•低分子量化し, 水相に溶出しやすくなったことを示している. 以上の結果から, 放射線加硫後もゴムタンパク質は抗原性を有するが, 水溶性が増大するため, リーチングで容易に除去されると結論した.
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