本日は精工化学株式会社の25周年に当りまして講演をさせていただきます機会を得ましたことを, 厚くお礼申し上げます.
私は, 精工化学の前社長君島先生にはいろいろなことでお世話になっております.非常に昔のことでいつという記憶がはっきりしませんが, わたくしがゴムに入れます充てん剤と促進剤が一緒になったようなものを作ってみたいとかねてから考えておりました.これは昭和10年頃田中芳雄先生の助手をしておりましたころにそういうことを考え, そしていろいろな炭酸カルシウムとか, あるいはカーボンブラックにうまく吸着するか, 化学結合してある部分は促進剤として働き, ある部分は充てん剤, 補強剤として働くことを考えました.私にはよくわかりませんので君島前社長にご相談いたしまして, いろいろなアドバイスを得たことを記憶しております.それで配合試験などをやりました結果, 大変おもしろい結果が出てまいりましたのが, その後発展いたしまして今日白石工業さんでつづけて作っていただいております白艶華のUであります.そういったこともありますし, それから精工化学さんには, その後私どもがいろいろやっかいな化合物が欲しくなりましたときにいつもお願いいたしました.工大におりました終りの頃に有機半導体の研究をいたしました.その有機半導体はなかなか複雑な化合物を作らなければなりませんので, そういったことでもいろいろご援助を得まして, 大変研究を進めさせていただいたこともあります.
そういうことでありますので, かねて25周年の機会に話をしろということを仰せつかったときにお引受けしようと考えておりました.たまたまゴム協会の今年の総会が先般名古屋で開かれましたときに, 私にはからずもゴム技術有功賞という栄えある賞をお授け下さいました.ところが私はこのごろ何かといたずらに間口ばかり広がり, なかなかゴム協会のお世話, お手伝いをすることができませんで, 非常に心苦しく思っておりましたところであります.そういった多少の責任をここで幾分なりとも果すことができれば幸せと存じまして, 今日まかり出た次第であります.
きようは「最近の高分子材料の動向」といった漠然とした話をいたします.これは勝手なことでございますが, この26日に高分子学会の年会がございまして, 私はからずも高分子学会の会長を仰せつかりまして, そこで記念講演をさせられました.そのときに「高分子工業の未来」という話をしたわけであります.それをお聞きいただいた方もおありかと存じますが, スライドなど準備いたしました関係もあり, その高分子学会の話にも多少触れ, また, そこで使いましたスライドなども再びお目にかけることもお許しいただきたいと思います.
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