この論文は辷っているベルトの温度上昇につき, 前報1)の実験装置と同じものを用いて研究を行なったものである. 試験には3種類のB型ベルトを用いた. すなわち55inと72inの長さで厚さが普通のものと, 55inの長さで厚さが普通より薄いものの3種である.
走行中のベルトの温度上昇の原因は次の三つの条件によるものと考えられる.
1) ベルトが調車間にはさまれる度ごとに起るベルトの繰返し曲げによる. (図2~5)
2) ベルトが張り側, 弛み側に行くにしたがって起る張力の変化の繰返しによる. (図4~7)
3) ベルトと調車間の摩擦による. (図8~10)
同一回転数, 同一伝達馬力の下では, 同一厚さのベルトでは, ベルトの長い方が短いものより (72 in ordinary と55 in ordinary) 一般に温度上昇が低いのは単位時間中のベルトの曲げ回数が少ないからで, これはベルトの発熱がベルトの繰返し曲げに関係があることを示している (ただし, ベルトと調車間には厳密には必ず滑りがあり, 必然的に摩擦熱の影響は含まれている). 同種のベルトを伝達馬力のみを変化させ, その他の条件は同一にして使用した場合, 伝達馬力の高いベルトが上昇温度が高いのはベルトの張り側と弛み側との繰返しにより生ずる繰返し引張応力により生ずる発熱の影響を示している (ただし, この場合も摩擦熱の影響は含まれている). 同一長さで, 厚さの厚いものと薄いもの (55 in ordinary と55 in thin) とでは薄いものの方が一般に上昇温度が低い. これは厚さの薄いものの方が厚いものよりベルトが曲げられた時運転中のVベルトの温度上異について 日本ゴム協会誌生ずる曲げ応力が小さいからで, これはベルトの温度上昇にベルトの曲げ応力が大いに関係あることを示している. ただし1,300r.p.m.附近では厚さの影響, 伝達馬力の影響がはっきり表われていない. これは, ある程度回転数が高くなると, われわれが実験を行なった範囲の条件では厚さの差による曲げ応力の差, 伝達馬力差による繰返し引張応力差はあまり大きくないので誤差の範囲内に入ってしまうのであろう. しかしこの場合 (1,300r.p.m.) でも長さの長いベルト (72in) は短いベルト (55in) より常に上昇温度が低い (1, 2の例外の他は常に低い) ことは単位時間内の繰返し曲げ回数が低いためで回転数が高いほどその傾向ははっきりしている.
ベルトと調車間の滑りにより発熱することは図6~8より明かである.
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