粒子の小さいオイルファーネス法のブラック存在下でスチレンの熱重合を行なうと, ベンゼン, トルエンあるいはトリクレンなどに良分散性を示すカーボンブラック・グラフトポリマーの成生が認められるが, 粒子表面に酸素含有基の多いチャンネルブラックを用いると性状のすぐれたものが得られず, スチレンは反応系で単独に重合する傾向が強い.
なお, 粒子の小さいファーネスブラックでも, あらかじめ, その粒子表面を熱硝酸や過酸化ベンゾイルなどで処理するか, あるいは不活性ガス中で1,500℃で加熱処理を行った場合には, それらの粒子表面からグラフトポリマーが生成しにくい.
ところで, 反応系へ過酸化ベンゾイルを重合開始剤として加えると, その分解に由来する遊離基とブラック表面との結合反応が優勢で, スチレンのグラフト重合がいちじるしく妨害される.
一方, モノマーとしてアクリロニトリル, 酢酸ビニルあるいはメチルメタクリレートなどを選ぶと, たとえファーネスブラックの存在下でも, 単なる熱重合の方式によっては, のぞましいグラフトポリマーが得られない. このような系ではα, α'-アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤に用いると, 適当な零囲気の下で, 有機溶媒中へ良分散性を示すグラフトポリマーが得られ, 反応も比較的すみやかに進む.
カーボンブラック・スチレングラフトポリマーを一つの素材として眺めるときには, ポリマーそのものに由来するもろさのため, 他のモノマーとの共重合がのぞましい.とくに, ラウリルメタクリレートをスチレンのコモノマーに選ぶと, もろさがなくなり, 極性面に対する接着性もよくなるが耐熱性に劣る。これに反し, アクリロニトリルを選ぶと, 耐熱性は向上するが, もろさは改善されない。
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