シリカ系ゴム補強充てん剤は, 吸湿性が大きく, 水分がゴムの物性, とくに加硫性におよぼす影響が大きい. また, 同一組成の微粉ケイ酸であっても, 原料, 製造方法が異なると, その吸着性も異なる.
酸性白土を原料とした微粉ケイ酸の吸着性が, ゴム物性におよぼす影響を明らかにするため, 活性剤の有無, ロール温度, 関係湿度, 添加水分, 放置時間などの要因を組み合わせて検討を行なった.
(1) ムーニー粘度は活性剤の有無, ロール温度に関係なく, 練生地中の水分の増加により低下の傾向を示す.
(2) スコーチタイム, キュアータイムは活性剤を使用しない配合では, ロール温度30°C, 50°Cの場合水分の増加と共に急激に短くなるが, 練生地中の水分3.5%以上となるとほとんど変らず, ロール温度80°Cの場合, 水分の影響は, ほとんど認められない. 活性剤を用いた配合では, いずれのロール温度でも, 水分量の増加と共に短くなる傾向が認められる.
(3) 練生地貯蔵中の湿度と重量変化との関係は, ロール温度30°C, 50°Cの場合, いずれの関係湿度でも活性剤を用いないものの方が, 用いたものよりも吸湿量は大きく, また, いずれも高湿度に放置した方が吸湿量は大きい. また, ロール温度80°Cの場合, 活性剤の有無にかかわらず, 各試料の水分量による吸湿の差は小さく, 関係湿度70%以下の吸湿量は, 放置日数に関係なくほとんど変らない.
(4) ムーニー粘度の経時変化は, ロール温度, 貯蔵湿度, 活性剤により異なる傾向を示すが, とくに水分の多い試料では, 活性剤の有無, ロール温度に関係なく低下する傾向を示す. ムーニースコーチタイムは, 活性剤の有無に関係なく, 水分の少ない試料と多い試料では, 前者がいずれのロール温度でも長く,後者は短くなる. また, 活性剤のない場合は, その傾向が著しい.
(5) 引張強さは, 活性剤の有無, ロール温度に関係なく, 練生地中の水分2.0%付近が最大になる傾向がみられ, この付近の引張強さはロール温度50°C>30°C>80°Cの順になる. また, モジュラスはロール温度, 水分量にあまり関係なく, 変らないが, 活性剤を用いない場合より, 用いた方が大きい値を示す.
(6) 水分量の異なる試料ゴムのうち, 練生地中の水分2.5%付近までは, 水分量に比例して透明性があらわれ, 水分2.5%以上の試料では, 明らかに透明性が認められ, このうちでもとくにロール温度50°Cの試料は, 透明性がもっとも良好である.
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