他の材料にはない大きな変形と復元という特性を持つ「ゴム」は, 自動車の構成要素として必要不可欠な存在であり, タイヤ, ブッシュ, インシュレータ, シールなどの要素技術が, この100年余りの自動車発展の歴史を支えてきたことは疑う余地がない. 自動車はこの「ゴム」の柔軟性により, 車体や原動機, 車軸などの耐久性や信頼性を高め, 乗員にとっての快適性をも向上させた. 中でも空気入りタイヤによる接地特性の改善のお陰で, 自動車が極めて高い運動性能 (走る・曲がる・止まる) を獲得したことはよく知られている. 現在の自動車開発の課題は, 環境への負荷・交通渋滞・交通事故などのネガティブな側面の最小化と, 楽しさ・喜び・感動・快適さなどのポジティブな側面の最大化に集約されつつある. ここにおいても「ゴム」はますます重要な役割を果たすに違いない. 自動車の開発を担う立場から, これからの「ゴム」要素に対する期待を, 私見を交えながら紹介する.
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