小論では, 非結晶性鎖状高分子の広温度域の材料力学を目指し, 広範囲の温度変化により自動的に飛躍してゴム状態から硬樹脂状態へ, 又は硬樹脂状態からゴム状態へ不連続的に転移する構成方程式を得る. それは前論で導かれた構成方程式に, 後述の転移モデルを組み合せれば果される. ガラス転移に関する研究は多く, 平衡論近似の取扱いも少なくはない. われわれは温度変化による硬化や軟化を含む高分子材料の全温度域の力学的挙動の推移の記述に興味をもち, 転移そのものの物性的解明は目的としないから, 小論でも平衡論近似を用いる. 転移モデルはいろいろ考えられるが, 小論ではガラス化鎖とゴム状鎖を“2要素モデル”とし, 2種の鎖の割合をカノニカル集団, あるいは定応力集団と転移促進因子とから定める. その結果, 導かれた構成方程式は, 温度が転移温度T
tより何度か高ければゴム状態を記述し, 何度か低ければ硬樹脂状態を記述することが確かめられる.
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