耳鼻と臨床
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55 巻, Suppl.2 号
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第32回日本嚥下医学会
〔シンポジウム : 嚥下障害治療普及に医師は何をすべきか―各科関連医師からの提言―〕
総説
[教育講演]
総説
原著
  • 廣田 隆一, 高ノ原 恭子, 安江 友世, 馬場 均, 長谷 斉, 久 育男
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S142-S150
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    前方アプローチによる頸椎手術後に一側性上喉頭神経内枝麻痺を生じた 2 症例を経験した。いずれも術後嚥下障害を訴え、内視鏡検査でアプローチ側の喉頭蓋感覚低下を認めたが、嚥下障害および内枝麻痺ともに保存的に軽快した。頸椎前方アプローチにおいて、内枝麻痺は比較的高頻度にみられる術後合併症と推察されるが、内枝麻痺に対する脊椎外科医、耳鼻咽喉科医の認識は高いものとは言えず、これまで見逃されてきた可能性が高いと考える。前方アプローチの術後合併症として嚥下障害はさまざまな要因でみられる。嚥下障害の要因の一つである喉頭感覚低下を防ぐために術中に上喉頭神経内枝を温存することは重要である。
  • 高橋 春子, 金沢 英哲, 関 敦郎, 三澤 清, 佐藤 友里, 森脇 元希, 藤島 一郎
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S151-S157
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    今回われわれは高度の声門閉鎖不全を伴った球麻痺による重症嚥下障害患者に対し、全身麻酔下に嚥下と音声機能改善を目的にして、両側輪状咽頭筋切除術、喉頭挙上術と喉頭枠組み手術 (披裂軟骨内転術・甲状軟骨形成術 I 型) を一期的に施行した。その際輪状軟骨を前上方に牽引し食道入口部開大・喉頭挙上の補助効果を図った (輪状軟骨前上方牽引術)。術後 4 カ月までに坐位で普通食摂取ができ、音声機能も著明に改善し、電話での会話にも支障がなくなった。輪状軟骨前上方牽引術は音声機能に重大な支障を来さなかった。
  • 青柳 陽一郎, 嘉村 雄飛, 佐藤 新介, 畠 二郎, 山口 若水, 椿原 彰夫
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S158-S163
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    Wallenberg 症候群による嚥下障害では、延髄の CPG (central pattern generator) および下部脳神経核の障害が原因とされているが、それらが関与する神経機構が十分に解明されているわけではない。われわれは、Wallenberg 症候群患者の嚥下関連筋の筋活動および動態を評価する目的で、筋電図検査 (EMG) および嚥下造影検査 (VF) を施行した。対象は、発症から 3 カ月以上経過し、嚥下訓練を行っても経口摂取が困難な Wallenberg 症候群患者 11 名とした。嚥下動作時の咬筋、舌骨上筋群、舌骨下筋群の運動点直上の表面筋電図、輪状咽頭筋の針筋電図を同時記録した。結果、VF にて全例で食道入口部での通過障害を認めた。筋電図では、11 例中 10 例で舌骨筋群の収縮から輪状咽頭筋の弛緩という一連の協調的かつ連続的な筋活動が障害されていた。嚥下時の輪状咽頭筋筋電図は、 ( 1 )完全弛緩、 ( 2 ) 不完全弛緩、 ( 3 ) 弛緩不能に分類可能であった。完全弛緩例は 20%未満で、不完全弛緩もしくは弛緩不能が 80%以上を占めた。以上より、Wallenberg 症候群における通過障害は、輪状咽頭筋弛緩不全に加えて、嚥下関連筋の協調的かつ連続的な筋活動の障害、すなわち協調運動不全による通過障害が深く関与していると考えられた。
  • 佐藤 哲也, 唐帆 健浩, 中山 剛志, 穐村 美津子, 宅 美貴子, 青池 いずみ, 新名 由利子, 中島 純子, 甲能 直幸
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S164-S170
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    杏林大学医学部付属病院における、入院患者の摂食嚥下障害への取り組みについて紹介する。年間 3,000 件以上の救急車搬送があり超急性期の治療を積極的に行っている当院では、急性期の摂食嚥下機能評価を多数実施する必要があり、「言語聴覚士による摂食嚥下障害初期評価」と「耳鼻咽喉科医による喉頭・嚥下機能評価」という嚥下診療体制を整えた。さらに摂食嚥下障害看護認定看護師 1 名も加わり、嚥下障害に対するチームアプローチを行っている。耳鼻咽喉科が行った嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査の所見などの情報を共有し、連携して診療にあたっている。病床数の多い病院では、さまざまな状況の摂食嚥下障害患者がいて、単独の診療科による対応では困難となることも少なくない。そこで当院ではさらに、複数の診療科の医師や多職種のコメディカルが、症例ごとに摂食嚥下の治療方針を協議するシステム (杏林大学摂食嚥下センター) も構築し、院内症例だけでなく外来患者の摂食嚥下障害への対応も開始した。今後は、「摂食嚥下パス」などを介して、病診連携など地域の医療連携にも取り組んでいく予定である。
  • 山野 貴史, 村上 健, 樋口 仁美, 深浦 順一, 梅崎 俊郎, 中川 尚志
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S171-S176
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    強アルカリ製剤を服用した後に食道炎と胃炎による狭窄を生じ、胃管で食道再建を行った術後に嚥下機能障害が生じた症例を経験した。強アルカリによって生じた嚥下障害に対しては、病変が徐々に進行するために経時的な局所症状の改善が望めないため、積極的な嚥下機能改善手術の方針をたてることが大切であることが示唆された。また、術後は早期にブジーおよびバルーン訓練を行い、これに併用して、早期からの嚥下リハビリテーションによる介入と転院先でのリハビリテーションの継続を行うことが必要であった。
  • 宮地 英彰, 梅崎 俊郎, 安達 一雄, 山下 泰治, 的場 麻美子, 小宗 静男
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S177-S184
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍において腫瘍の転移や圧迫や浸潤、または、感染や虚血や代謝異常によらず神経症状を伴うものを傍腫瘍性神経症候群 (paraneoplastic neurologic syndrome : PNS) という。血中や脳脊髄液中に腫瘍細胞と神経細胞に共通して存在する蛋白に対する自己抗体である抗腫瘍神経抗体 (onconeural antibodies) が見いだされており、これらの抗体による神経への自己免疫反応により多彩な神経症状を呈することが報告されている。しかし、現在までに PNS による嚥下障害の経過を嚥下造影で評価した報告はない。本症例は、原因不明の神経症状の精査中に嚥下障害を来したため当科受診し、その後約 9 カ月にわたり経過を追うことができた抗 Hu 抗体陽性の PNS の 1 例である。抗腫瘍治療直後に 2 度の一過性の嚥下自覚症状の悪化を生じ、嚥下造影検査では喉頭挙上遅延時間 (Laryngeal Elevation Delay Time) とクリアランス値の変動が観察された。観察された抗腫瘍治療直後の一過性の嚥下機能の悪化の病態には、抗 Hu 抗体を介する自己免疫機序の活性化の関与が示唆された。
  • 辻中 猛, 三宅 久美子, 橋本 啓子, 小川 真, 猪原 秀典
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S185-S192
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は、指示従命スコアの信頼性および妥当性を検証することである。当院介護病床入院症例 138 名 (男性 35 名、女性 103 名、平均年齢 82.4 ± 9.7) を対象に、上気道運動の 1 )発声、2 )咳払い、3 )舌運動、4 )空嚥下、さらに 5 )開閉眼、6 )掌握の指示への応答をそれぞれ 0 - 3 点で評価し、上気道に関する運動のスコア 1 ) - 4 )、その他の運動のスコア 5)、6 )のそれぞれの和を求めた。信頼性に関しては、内部一貫性について上気道運動に関するスコアの和と他の運動のスコアの和の間の相関性およびクロンバックの α 係数を用いて評価し、評価者間および評価者内信頼性については kappa 値を算出して評価した。妥当性については、病床勤務の看護師による主観的印象による評価と指示従命スコアとの相関性、または指示が入ることを予測するスコアの cut-off 値を求めた。結果として、( 1 )上気道運動に関するスコアの和と他の運動のスコアの和との間に高い相関性が得られた (r = 0.86、p < 0.0001)。また、クロンバックの α 係数は 0.94 と高い値を示した。( 2 )評価者間一致率の kappa 値は空嚥下を除き 0.8 以上と良好であった。( 3 )評価者内一致率の kappa 値は評価者間のものよりも低い値であった。( 4 )「指示が入る」と主観的に判断された症例と「指示が入らない」と判断された症例との間に明確なスコアの差が認められた。 ( 5 ) 「指示が入る」ことを予測するためのスコアの cut-off 値を 1 あるいは 2 にしたときに、感度と特異度の最良のバランスが得られた。以上のことから、指示従命スコアの高い内部一貫性、評価者間信頼性および妥当性が示された。また、当スコアの評価者は単独でも十分であるが、評価時については患者の状態が良好な時間を選ぶべきであることが示唆された。
  • 河本 勝之, 藤原 和典, 三宅 成智, 長谷川 勇二, 清水 洋子, 玉川 友哉, 須田 真由美, 近藤 章子, 安井 建一, 鈴木 里伊 ...
    2009 年 55 巻 Suppl.2 号 p. S193-S201
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/01
    ジャーナル フリー
    難治性嚥下性肺炎に対する誤嚥防止術は、声を失うという不利益があるものの、嚥下性肺炎を予防し、経口摂取が可能となるという利点で非常に有効な手段である。しかし行っている施設はまだ限られているのが現状である。われわれは、小児から成人における難治性の嚥下性肺炎 26 例に対し、誤嚥防止術として喉頭気管分離術、喉頭全摘術および声門下喉頭閉鎖術を行った。術後の呼吸状態はいずれの症例においても良好であり、重症心身障害児の 1 例が一度肺炎に罹患した以外は全例で肺炎は消失し、呼吸状態は良好であった。経口摂取の獲得は成人例の全例で可能となり、そのうち 71 %で通常の食事が可能となった。重症心身障害児は原疾患によって嚥下機能の低下もしくは消失している症例が多かったことや、複雑な家庭環境などが原因で一部の症例では楽しみ程度の経口摂取にとどまったが、安定した呼吸状態が得られたため、全例で在宅や施設での生活が可能となった。誤嚥防止術は安定した呼吸状態が得られる点と症例によって差はあるものの経口摂取が可能となる点において、有用な術式である。
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