耳鼻と臨床
Online ISSN : 2185-1034
Print ISSN : 0447-7227
ISSN-L : 0447-7227
58 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 小松 正規, 田口 享秀, 松田 秀樹, 塩野 理, 石戸谷 淳一
    2012 年 58 巻 3 号 p. 101-107
    発行日: 2011/12/26
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌再発症例で根治治療不能例に対する治療法は確立されておらず、各々の施設や症例に応じ治療を行っているのが現状である。われわれは再発例に対し cisplatin、5-fluorouracil、methotrexate、leucovin (PFML)、または docetaxel、cisplatin、5-fluorouracil (TPF) を用いた化学療法を行い治療成績・予後を検討した。対象は 22 例で、原発部位は喉頭 5 例、上咽頭 4 例、中咽頭 2 例、下咽頭 8 例、その他 3 例であり、再発時の stage はIII 1 例、IV 21 例であった。また、遠隔転移を 15 例で認めた。PFML 療法のみを行った症例は 2 例、TPF 療法のみを行った症例は 11 例、両療法を施行した例が 9 例であり、最も多く行った症例では計 6 コース施行した。結果は CR が 1 例、PR が 4 例、NC が 8 例、PD が 9 例で奏効率は 22.7 %であった。また、1 年疾患特異的生存率は 60.2 %、2 年生存率は 42.1 %で、化学療法開始日からの平均疾患特異的生存期間は 17.7 カ月であった。根治治療不能な再発例に対しても PFML、TPF を用いた化学療法による予後の延長が示唆された。
  • 山内 盛泰, 中条 恭子, 縄手 彩子
    2012 年 58 巻 3 号 p. 108-114
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    当科に 2008 年 3 月 - 2009 年 2 月の 1 年間にめまいを主訴に初診した新患患者 208 例についての臨床的検討を行った。性別は女性が多く男性の約 2.6 倍であり、年齢は 60 - 69 歳が最多であった。診断結果は良性発作性頭位めまい症 (BPPV) が 27 例 (13 %) と最多で、以下メニエール病 11 例 (5.3 %)、前庭神経炎 3 例 (1.4%)、突発性難聴 2 例 (1.0 %) 等が続いた。中枢性が 3 例(1.4%)であり橋梗塞、脊髄小脳変性症、Creutzfeldt-Jakob病がそれぞれ 1 例ずつであった。初診時には診断できなかった中枢疾患もあり、効率的かつ慎重な診療が重要だと考えられた。
  • 白根 美帆, 山本 麻代, 近藤 香菜子, 永野 由起, 牛迫 泰明, 東野 哲也
    2012 年 58 巻 3 号 p. 115-121
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    宮崎県の新生児聴覚スクリーニング事業の特色は、新生児聴覚スクリーニングセンターの設立と「難聴支援センター」の活用である。新生児聴覚スクリーニングセンターにより、スクリーニング検査から療育に至る一連の流れを円滑にし、難聴児のデータの一元化を実現した。そして、「難聴支援センター」を中心に、難聴児の聴覚補償や聴能・言語訓練の環境を整備した。2010 年の事業実績として、県内の全分娩数の 86.9 %にあたる 10,342 人が産科スクリーニング検査を受け、0.54 %にあたる 56 人が要再検査判定 (refer) となり精密検査機関へと紹介された。そこから 21 人の両側難聴の子どもが「難聴支援センター」での療育へ移行した。最終的に、両側難聴 21 人の内 8 人が補聴器装用を開始し、難聴発現率は 0.1 %となった。
  • 中川 尚志, 藤 賢史, 岡田 修一, 稲光 まゆみ, 小宗 静男
    2012 年 58 巻 3 号 p. 122-127
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    gusher とは、内耳の外リンパ腔がくも膜下腔と広く交通しており、アブミ骨手術の際に内耳開窓部より脳脊髄液が漏出することである。ほとんどの症例で、術後聴力は高度感音難聴となっている。われわれは先天性アブミ骨固着にアブミ骨手術を行ったところ、gusher をおこした症例に遭遇した。手術の結果、聴力改善することができたので、文献的考察を含め、報告する。症例は 10 歳の女児で難聴の家族歴はなかった。聴力は両側の伝音難聴で、3 分法で気導が右 52 dB、左 47 dB、骨導が右 10 dB、左 13 dBであった。骨導閾値の上昇は認めなかった。術前の側頭骨 CT では、中耳と内耳、内耳道の形態は正常であった。右耳の手術を行った。アブミ骨底板に小孔を開けたところ、透明な液が流出し始め、流出する量は時間とともに徐々に増えてきた。中耳側より軟部組織で覆ったが、液の流出は完全に停止できなかった。このため、アブミ骨底板を摘出した上で、卵円窓より大きめの軟部組織を一片、蝸牛内より卵円窓にあて、内側より完全に閉鎖させた。テフロンピストンの長さを調節、キヌタ骨長脚にかけ、先端を軟部組織にあてた。周囲にゼルフォーム® を引き詰め、鼓室内にフィブリン糊を塗布したところ、透明な液の流出がほぼ停止した。術後めまいが生じたが、7 日目に消失した。術後の純音聴力検査で手術側の気導が 3 分法で 17 dBと改善し、骨導も術前と変化なかった。
  • 石川 一葉, 松本 希, 築地 宏樹, 北浦 志保, 野口 敦子, 君付 隆, 小宗 静男
    2012 年 58 巻 3 号 p. 128-133
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    聴神経腫瘍により唯一聴耳が失聴過程にあるため、幼少時から高度感音性難聴である側に人工内耳埋込術を施行した 1 例の聴取成績や効果などについて報告した。音入れ直後は聴取不能であったが、3 カ月後より聴取検査が可能となり、聴覚的印象にも変化が現れた。現時点では両耳聴による一定の効果を得ており、さらに聴取訓練により人工内耳装用側の聴取能力が唯一聴耳を上回れば、聴神経腫瘍摘出を早期に実施できる可能性がある。
  • 小河原 悠哉, 橘 智靖, 松山 祐子, 阿部 郁, 三森 天人, 藤澤 正義
    2012 年 58 巻 3 号 p. 134-138
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/05/01
    ジャーナル フリー
    石灰化上皮腫は毛母細胞由来の良性腫瘍で頭頸部および上肢に好発する。18 歳、男性の耳下部に生じた石灰化上皮腫を報告した。主訴は耳下部に増大する腫瘍で痛みはなかった。石灰化上皮腫では CT で腫瘍内部の石灰化が証明されることが診断に有用であると報告されている。本症例では穿刺吸引細胞診 (FNA) および MRI で術前診断をし得た。FNA で毛包や脂腺・汗腺由来の所見を認めた。MRI で腫瘍は耳下腺外に存在し、上皮性腫瘍が示唆された。手術は全身麻酔下に行った。腫瘍は皮下に存在し、耳下腺から容易に剥離できた。石灰化上皮腫の診断や耳下腺との位置関係の把握のために腫瘍が耳下部に存在する場合には MRI が有用であると考える。
臨床ノート
feedback
Top