緑膿菌について, 臨床材料由来株と環境由来株の関連を追究するために, 環境の一典型として, 河川水からの本菌の分離, 血清型別を試み, 以下の知見を得た.
1. 河川水から緑膿菌を検出する場合, 同一検水について, 37℃と42℃の液体NAC増菌培養を併用すると, 菌の検出率は高まり, 更に菌型の違いを別のオリジンと考えるなら, 菌の分離率は著しく高くなる.同一検水から, 増菌培養時の温度差によつて, 別々の菌型が分離される場合がしばしばあるが, これは検水に共存する他菌種との関係や, 緑膿菌, 菌株による微妙な発育至適温度の違いにもとつくのではないかと考えられる.
2. 河川水からの緑膿菌の検出率は, 富山県下全体で65.7%, そのうち, 富山市内の3河川については86.7%, 県西部の12河川では61.7%, 県東部の13河川では38.4%であつた.
3. 緑膿菌が検出された河川水の一般生菌数および大腸菌群 (MPN) の平均は, 本菌が検出されなかつた場合に比べると, 1オーダー高く, その差は有意であつた.
4. 河川水由来菌の血清型分布を見ると, 8型 (39.0%), 10型 (11.0%), 5型 (9.0%), 6型 (5.7%), 7および9型 (各5.2%) の順に優勢であり, 臨床材料由来菌では, 8型 (28.4%), 5型 (14.4%), 10型 (9.4%), 7型 (8.2%), 13型 (7.9%) の順で, 両者のパターンは類似していた.環境←→患者のサイクルにおいて, 特に8型, 5型, 10型菌が重要視される.
抄録全体を表示