感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
69 巻, 3 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 悪性腫瘍との比較において
    河野 茂, 井上 祐一, 古賀 宏延, 賀来 満夫, 門田 淳一, 岡 三喜男, 原 耕平
    1995 年 69 巻 3 号 p. 247-253
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    感染症に合併したDICの患者17名における臨床症状や凝固学的検査, 治療効果などについて, 悪性腫瘍に合併したDIC患者12名と比較検討した.感染症は主に肺炎や敗血症であり, 悪性腫瘍は主に肺癌であった.DICの治療後, DICスコアーは感染症群で有意に改善がみられたのに対し, 悪性腫瘍群では改善がみられなかった.凝固学的検査では, 治療前に両群間には差はみられなかったが, 治療後に血小板数やFDP, fibronectin, TATなどは感染症群で改善がみられたのに対し, 腫瘍群では治療前後の差がみられなかった.感染症に合併したDICは, 悪性腫瘍に比べ, ヘパリンやATIII, 抗菌薬により改善が得られ易かった.これはDICの原因が, 感染症では抗菌薬により完全に除去できるのに対し, 悪性腫瘍では除去しにくく, 治療にても凝固系亢進の抑制は一過性になるためと思われた.
  • 柏木 征三郎, 中島 孝哉, 吉村 英理子, 池松 秀之, 林 純
    1995 年 69 巻 3 号 p. 254-261
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    HCV抗体測定について, 第1世代および2種類の第2世代の比較検討, これらの方法とHCV RNA, 抗体価およびHCVエピトープに対する抗体との関連をみるために長崎県壱岐郡の病院および医院の受診患者477例を検討した.
    方法としては, 第1世代はc100-3EIA, 第2世代は2ndEIAおよび2nd PHA, HCV RNAはRT-PCR法, HCVエピトープに対する抗体はRIB AIIにて測定した.
    HCV抗体陽性率はc100-3が26.6%, 2nd EIAが39.6%, 2nd PHAが38.8%であり, 第2世代の方が高率であった.
    HCV抗体陽性190例のHCV RNA陽性率は, 82.1%であり, 肝疾患患者以外の138例中104例 (75.4%) に比べて, 肝疾患患者52例の方が100%と高率であった.
    HCV抗体価はHCV RNA陽性例が陰性例に比べて高値であり, すべて211以上を示した.HCV抗体価は加齢と共に低下する傾向がみられた.
    RIBA IIによる各抗体は, HCV RNAが陽性であれば, ほとんどの例で4種の抗体が検出され, その反応も強かった.HCV RNA陰性例にcore領域のみ陽性例が存在し, 過去の感染ではcore抗体のみが陽性であった.
  • 全国アンケート調査 (第1報)
    落合 実, 谷村 弘, 梅本 善哉, 山本 基, 村上 浩一, 石本 喜和男
    1995 年 69 巻 3 号 p. 262-271
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1990年7月から1992年6月までの2年間の外科施設における術後MRSA腸炎の現況をアンケート調査した.279施設中144施設 (51.6%) で合計831例のMRSA腸炎が発症していた.症例数の多さで比べると, 消化器外科および一般外科施設で全体の95%を占めていた.小児外科および胸部外科では多発症例は認めなかった.また, 手術件数が多い施設ほどMRSA腸炎を経験しており, とくに悪性疾患を多く手術している施設に多いことが判明した.院内感染対策は, ほとんどの施設で行われていた (92.1%).その実施率は, 術前および術中予防対策としては, 少なくとも23.8%の施設が, 術後抗生剤の使用制限が56.7%以上, 環境対策が65.5%以上, 医療従事者に対する対策が70.5%以上, 院内感染拡散防止対策が42.9%以上とかなりの施設で本格的な対策が実施されていることが判明した.また, MRSA腸炎が発症していない施設でもかなりの対策を講じていることは, MRSA肺炎などの腸炎以外のMRSA感染症が全国的に広がっていることが示唆された.
  • 畢 筱剛, 斎藤 厚, 小出 道夫, 伊志嶺 朝彦, 普天間 光彦, 山城 裕子, 草野 展周, 川上 和義
    1995 年 69 巻 3 号 p. 272-279
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Mycobacterium tuberculosisの染色体中にくり返し現れるDNA配列からプライマーを作製し, PCR法による臨床検体からのM.tuberculosisの検出について検討した.40サイクルの増幅の後, PCR産物の電気泳動およびサザンハイブリダイゼーションで, M. tuberculosis菌体から抽出した精製DNA5fgまで検出しえた.M. tuberculosiscomplex 以外のMycobacterium属菌, Mycobacterium kansasii, Myobacterium intracellulare, Mycobacterium avium, Mycobacteriumfortuitumおよび他属の細菌Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Legionella pneumophila, Staphylococus aureus から抽出した精製DNAでは増幅されなかった.112検体の臨床材料を患者112名から採取した.培養陽性あるいは病理学的に結核と診断された25名のうち20名がPCRで陽性であった.塗沫染色で陽性であった6名のうち5名, 陰性であった19名のうち15名がPCRで陽性であった.のこりの87例のうち塗沫陰性 (培養実施せず) の2例と塗沫陰性, 培養陰性の8例がPCR陽性であったが, この10名はいずれも臨床上, 結核と診断された.疑陽性の検体はなかった.PCR法は迅速診断法として, また結核に特異的な診断法として有用であると思われた.
  • 松下 秀, 山田 澄夫, 関口 恭子, 太田 建爾, 工藤 泰雄
    1995 年 69 巻 3 号 p. 280-283
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    近年分離されたShigella flexneri4の特徴を把握する目的で, 1979~1993年に散発症例より分離され, 分離時の血清型別試験においてS.flexneri4aと型別された14株, 及び群抗血清に非凝集のためS.flexneri4とまでしか同定できなかった24株, 合計38株の諸性状について検討した.
    生化学的性状では, 38株中21株 (55.3%) と半数以上がマンニトール陰性の生物型であった.酢酸塩の利用性では, マンニトール陽性の17株は全て陰性, 同陰性の21株は全株陽性であった.
    血清学的性状についてみると, 分離時にS.flexneri4とまでしか決定できなかった24株では, 保存後の試験で22株 (91.7%) が群3, 4抗血清に反応することより, これらは基本的にはS.flexneri4aであることが判明した.
    9種薬剤 (CP, TC, SM, KM, ABPC, ST, NA, FOM及びNFLX) に対する感受性試験では, マンニトール陽性の17株では15株 (88.2%), 同陰性の21株では12株 (57.1%) が供試薬剤いずれかに耐性であった.但し, KM, NA, FOM及びNFLXには全株が感受性であった.
  • 石和田 稔彦, 黒崎 知道, 島羽 剛, 新美 仁男
    1995 年 69 巻 3 号 p. 284-290
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    小児入院肺炎596例の病原体検索を行い, 抗生剤前投与のなされることが多い2次病院において, 入院時, 臨床的に細菌性, ウイルス性, マイコプラズマ性肺炎の鑑別が可能かどうかの検討を行った.起炎病原体の判明した症例は384例 (64.4%) であった.これらを, I群: 血液培養, 尿中細菌抗原陽性例, II群: 洗浄喀痰培養にて優位細菌分離例, III群: マイコプラズマ肺炎例, IV群: ウイルスのみ診断可能例, V群: 細菌+ウイルス例, VI群: 細菌+マイコプラズマ例に分類し, 入院時炎症反応, 臨床症状, 理学的所見を比較検討した.その結果, マイコプラズマ性肺炎は, 末梢血白血球数は正常で, 他の肺炎に比べ, CRP高値, 赤沈値の充進を認め, 臨床症状, 理学的所見に乏しいという特徴がみられた.しかし, 細菌性肺炎とウイルス性肺炎を鑑別することは困難であった.
  • 松尾 光弘, 高瀬 登美子, 井上 祐一, 石野 徹, 辻 芳郎, 賀来 満夫
    1995 年 69 巻 3 号 p. 291-296
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    1992年8月から9月にかけ, 人口約13万人の長崎県北部地区で, Salmonella腸炎の流行がみられた.腹痛や下痢症状を呈した来院患者数は142名で, その内便培養を施行した96名中51名がSalmonella感染症と確定診断された.51名の血清群は09が42名, 078名, 081名であり血清型ではO9はSalmonella EnteritidisでありO7はSalmonella Virchowであった.S.Enteritidis患者の内同定可能だった38症例全員のファージ型は1型であった.患者の発症年齢の分布では10歳未満が全体の約9割を占め, 小児のみの流行であった.流行期間およびそのピークはその時期行われた夏祭りとほぼ一致しており, 原因食品として露天で売られているアイスクリームが原因と考えられた.ある露天業者の同検体よりS.Enteritidisがグラム当り5.2×104検出され, そのファージ型も1型であった.アイスクリームを原因食品とした場合の潜伏期は87時間であった.
  • 柏木 征三郎, 林 純, 角田 恭治, 山路 浩三郎, 上野 久美子, 谷 良樹
    1995 年 69 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    最近開発されたHBs抗体の測定法としては初めてのImmunochromatography Assayを利用したダイナスクリーン・オーサブ (ダイナボット社) と従来のPHA法 (セロディアーアンティHBs, 富士レビオ社) とを比較検討した.
    HBワクチン接種例, 一般住民, 自己免疫疾患患者および急性B型肝炎患者を含む合計493検体のHBs抗体は, ダイナスクリーンが154検体 (31.2%), PHA法が145検体 (29.4%) に検出された.ダイナスクリーンとPHA法との一致率は98.2%であった.両方ともに陽性が145検体 (29.4%), 本法のみ陽性が9検体 (1.8%), 両法ともに陰1生が339検体 (68.8%) であり, PHA法のみ陽性例はなかった.ダイナスクリーンのHBs抗体価とIMxの抗体価 (mlU/ml) とはほぼ直線的傾向がみられた.
    本法は従来のPHA法に比べて操作も簡単で反応時間も15分と短時間であった.
    以上の成績から, 本法はPHA法よりも感度がよく, 操作も簡便で測定時間も短く有用な検査方法と考えられた.
  • 豊田 丈夫, 青柳 昭雄, 大角 光彦, 川城 丈夫
    1995 年 69 巻 3 号 p. 303-307
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Gen-Probe Mcobacterium tuberculosis Direct Test (MTD) を用いて臨床検体を経時的に検査することの臨床的意義について検討を行うため, 19例の肺結核患者について化学療法開始時より5カ月間毎月1回喀疾の塗抹, 培養およびMTDによる検査を行った.
    1) 結核の活動性低下と共にMTD陽性率は低下がみられ, 入院時軽症ないし中等症の結核患者16例は治療開始4カ月後までにMTDは陰性化した.治療開始後5カ月後になおMTD陽性を示した3例 (15.8%) はいずれも入院時多量排菌の重症結核患者であった.
    2) 全経過中MTD陰性は43検体にみられたが, 小川培地で培養陽性であったのは1検体 (2.3%) のみで, 残り42検体 (97.7%) は培養陰性であり, 小川培地陰性を感染性なしと仮定すれば, MTDは感染性のないことの迅速な判断に有用であった.
    3) 小川培地で塗抹陽性培養陰性を示した12検体中11検体 (91.7%) がMTD陽性であり, MTDは非定型抗酸菌では陰性を示すため, 塗抹陽性培養陰性の場合の菌の同定に有用であった.
  • ヒト多核白血球の貪食殺菌能に対する影響
    豊田 和正, 草野 展周, 斎藤 厚
    1995 年 69 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    口腔内常在菌であるStreptococcus millerigroup (SMG) は, 種々の化膿性疾患だけでなく, 特に呼吸器感染症の起炎菌として重要であるが, その病原因子についてははっきりしていない.そこでSMGの1つであるStreptococcus constellatusの臨床分離株と健康成人分離株についてヒト末梢血由来多核白血球 (PMNs) の貧食殺菌能に対する影響を調べた.
    肺炎患者の気管支肺胞洗浄液から分離され, 嫌気性菌との混合感染にて60%以上の致死的マウス肺炎をおこす病原性株RZYK001と健常成人の唾液由来の非病原性株RT4303およびRT6002のS.constellatus 3株を用いた.RZYK001を108cfu/mouse経気管的に接種したマウス (n=10) の生存率では非病原性株に比して差は認められなかったが, 肺の組織学的炎症スコアはRZYK001が有意に高値を示した (p<0.001).
    RZYK001の培養濾液はPMNsによるStaphylococous aureus ATCC25923の貧食殺菌能に対して全く影響を与えなかった.しかし, SMGの貧食殺菌試験ではRZYK001の培養90分時の殺菌インデックスは36.4%を示し, 一方RT4303およびRT6002はそれぞれ94.7%, 99.4%と高値であった (p<0.001).
    以上により, S.constellatusの病原性のメカニズムの一つとして, PMNsに貧食殺菌されにくくする物質を菌体成分として持っている可能性が示唆される.
  • 西條 政幸, 山本 美智雄, 西條 晴美, 藤保 洋明, 滝本 昌俊
    1995 年 69 巻 3 号 p. 316-319
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    We report here a case of a 5-month-old infant with thrombocytopenic purpura associated with serologically confirmed primary human herpesvirus-6 (HHV-6) infection. His platelet count decreased to 17, 000/mm3 on the 3rd day from the onset. Bone marrow aspiration showed that the megakaryocyte count was 129/mm3 and almost all of the them were of the non-platelet forming type. The IgG antibody to HHV-6 by indirect immunofluorescent assay in the sera in acute and convalescent phases were <10× and 160×, respectively. IgM antibody to HHV-6 in the acute phase was positive. Platelet-associated IgG was also positive. We diagnosed this case as having thrombocytopenic purpura associated with primary HHV-6 infection. Steroid therapy was started for his thrombocytopenic purpura from the 4th day after the alleviation of his fever. His platelet count increased without side effects and became within the normal range without relapse despite discontinuation of steroid therapy. Thrombocytopenic purpura might be one of the complications of primary HHV-6 infection.
  • 杉山 肇, 斧 康雄, 青木 ますみ, 西谷 肇, 徳村 保昌, 大谷津 功, 国井 乙彦, 宮下 英夫
    1995 年 69 巻 3 号 p. 320-323
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Recently, Chlamydia trachomatis infection in sexually active women has increased. C. trachomatis cause pelvic inflammation. A few of these patients develop Fitz-Hugh-Curtis syndrome (FHCS). Clinical symptoms of FHCS include pain of sudden onset in the right upper quadrant mimicking acute biliary disease.
    Diagnosis of FHCS has been weighed upon laparoscopic findings. Since FHCS is a benign disorder which responds to appropriate antibiotics, non-invasive diagnostic method would be expected.
    We report here two cases of FHCS, diagnosed by a high serum antibody titer against C. trachomatis and clinical manifestations. Both cases showed small effusion in the pelvic cavity detected by ultrasonography, one of them was associated with small effusion in the right perirenal space suggesting perinephritis.
    Detection of small effusion intra abdominal cavity or pelvic space could be useful for non-invasive diagnosis of FHCS.
  • 栗田 亨, 川端 寛樹, 山田 和人, 鈴木 裕幸, 秋山 真人, 鳥居 春己, 増澤 俊幸, 柳原 保武
    1995 年 69 巻 3 号 p. 324-326
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 鈴木 潤, 吉原 英児, 小林 貞男, 福山 正文, 岸川 正剛, 原 元宣, 池田 輝雄, 田淵 清
    1995 年 69 巻 3 号 p. 327-332
    発行日: 1995/03/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    C群レンサ球菌の産生する溶血毒素 (GCH) のpIは5.6, 分子量は32,000であり, 非還元状態でも溶血活性を示した.これらの性状はストレプトリジンS (SLS) に類似しており, さらにK+とヘモグロビン (Hb) の遊離態度からはSLSと同様にコロイド浸透圧過程に従う溶血様式を示した.しかし, 溶血機序解析の指標となる溶血効率は1.06とSLSの3.49に比し低値であることから, 膜上にはSLS複合体よりも小さな孔形成が認められるものと推測される.また, コレステロールで阻害されないという成績より, 赤血球への結合部位はSLSと同様にリン脂質と考えられる.従って, 赤血球膜のリン脂質部分に直接結合することによって膜秩序を乱し, イオンを放出させ, その後の浸透圧作用によって細胞が破壊されるものと考えられる.また, ヒト-γグロブリンで毒素中和されない成績から, GCHはストレプトリジンO (SLO) とは免疫原性が異なることが示された.ゆえに, ここで得られた32,000の分子量はSLSと同様に毒素のキャリアタンパク質の可能性が示唆された.これらの成績よりGCHはSLSに極めてi類似する毒素であることが判明したが, SLSの細胞障害性および組織障害性を考慮すると, リス感染症においても本毒素が病変へ大きな影響を与えたことが強く示唆された.
feedback
Top