ベロ毒素 (VT) 産生性/腸管出血性大腸菌 (VTEC/EHEC) のスクリーニングには, Beutin洗浄羊血液寒天培地での溶血が有用な指標となる. そこで, 更に良い培地への改良を目指して, 血液の洗浄回数と濃度, 2価イオンの種類と濃度, 基礎培地の種類について, VT産生大腸菌27株, VT非産生大腸菌74株,
Escherichia hermanii1株を用い, 基礎的な検討を加えた.羊血液のリン酸緩衝液 (PBS) (pH72) による洗浄回数の比較では, 原法の3回より5回の方が, また血液の濃度は5%より4%の方がより溶血の観察に適していた. 2価金属イオンでは, CaCl
2とMgCl
2とを用いたが, 溶血は前者の方がより明瞭で, 濃度はLOmMが適当であることを確認した。なお2価イオンがない場合には, 一部VT産生株が非溶血となった。基礎培地については, 原法のSoybean-Casein-Digest (SCD) 寒天培地のほか, 普通寒天培地, Heart-lnfusion (HI) 寒天培地, Brain-Heart-Infusion (BHI) 寒天培地を用いて比較したが, 溶血が鮮明なのはSCD寒天培地とHI寒天培地であった. また両培地の比較では, 溶血環は前者の方が大きいが, 溶血は後者の方が見やすく, また± の判定も後者の方がより容易であった.
以上の結果から, VTEC/EHECのスクリーニングに用いるBeutin血液寒天培地には, HI寒天培地を基礎培地に, CaCl
2を10mMに, 羊血液はPBS (pH 72) で5回洗浄したものを4%に添加した方がよいという結論に達した.
抄録全体を表示