感染症学雑誌
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73 巻, 4 号
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  • 宇野 芳史
    1999 年 73 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    慢性中耳炎におけるNorfloxacinとFosfomycinについて細菌学的, 臨床的に検討した.
    1.慢性中耳炎由来のS. aureusでは66.7%, P. aeruginosa80%に相乗効果を認めた.
    2. MICは単独測定時にはいずれの検出菌もFOM, NFLXの耳漏への移行濃度を超えていたが, 併用時には, FOMではS. aureus, P. aeruginosaの各1株, NFLXでもS. aureus, P. aeruginosaの各1株のみが耳漏の移行濃度を超えていた.
    3.臨床成績は著効2例, 有効6例, 無効3例であり, 有効率は72.7%であった.
    4.細菌学的には併用療法により, S. aureusでは83.3%, S. aeruginosa80%, 全体で81.8%で菌の消失が認められた.
    5.副作用および臨床検査値の異常は認められなかった.
    以上のように, FOMの点耳投与, NFLXの経口投与の併用療法は, 難治性慢性中耳炎において有用であると考えられた.
  • 山腰 雅宏, 鈴木 幹三, 山本 俊信, 品川 長夫, 中北 隆, 後藤 則子, 山田 保夫, 伊藤 誠
    1999 年 73 巻 4 号 p. 298-304
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1996年7月下旬から8月上旬にかけて, 名古屋市厚生院D病棟 (定員36名) では, 入院中の18名の患者全員に感冒が流行し, ウイルス培養および血清抗体価によりパラインフルエンザ3型感染症と診断した7名を対象に検討を行った.内訳は男性2名, 女性5名 (平均年齢82.1歳) で, 5名 (71.4%) が長期臥床例であった.入院患者の感冒の流行は7月21日から8月6日の17日間で, 感冒症状を認めた18名のうち15名にウイルス抗体価を測定し, 7名がパラインフルエンザ3型感染症と診断され, そのうち1名からパラインフルエンザ3型ウイルスが分離された.臨床症状は発熱, 咳嗽が最も多く (100%), ついで喀痰 (71.4%), 喘鳴 (42.9%) の順でみられた.発熱日数は1~4日 (平均3.1日) で最高体温は37.0~39.2度 (平均38.1度) で, 高齢者インフルエンザに比して発熱日数は短く, 最高体温は低値を示していた.パラインフルエンザ3型感染症に罹患した7名のうち2名に肺炎を合併したが, 死亡例はみられず, 後遺症もなく全例軽快した.高齢者が罹患した場合2次的細菌感染を起こすことがあり, 病棟内で一旦発症した場合は, 院内感染の予防に心がける必要があると思われた.
  • 荒木 和子, 篠崎 立彦, 入江 嘉子, 宮澤 幸久
    1999 年 73 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Bifidobacterium breve YIT4064 (B.breve YIT4064) はマウスにおいて抗ロタウイルスIgA産生を増強し, ロタウイルス感染を防御することがすでに報告されている.今回は乳幼児にみられるロタウイルス感染に対する同菌体の防御効果の可能性について検討した.
    某乳児院内の乳幼児10例を投与群として, 1日1回, 50mg (菌数: 5×1010) のB.breve YIT4064を2日間連続投与し, 同室に在室していた乳幼児9例を対照群とした.試験期間中, 対照群の9例中2例からロタウイルスの排出が認められたが, 10例のビフィズス菌投与群からはロタウイルスの排出は認められなかった.試験期間を7日間ごとに4分割し, 両群のウイルス排出頻度とロタウイルス特異的IgA抗体陽性比率を比較した.その結果, days8~14において, 対照群のウイルス排出検体数は32検体中4検体であるのに比べ, 菌体投与群は38検体中0検体であった.ビフィズス菌投与群ではdays8~14において抗ロタウイルスIgA陽性例が増加しているのに対し, 対象群では調査期間を通じてIgA陽性数の有意な増加はみられなかった.
    以上のことからB. breve YIT4064の投与によりIgA抗体産生が増強され, ロタウイルスの排出頻度が有意に減少したと考えられた.
  • 大森 明美, 吉田 俊昭, 古川 佳奈, 高橋 淳, 持永 俊一, 永武 毅
    1999 年 73 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Moraxella catarrhalisは呼吸器, 耳鼻科領域感染症における主要な起炎菌であり, じん肺症患者での下気道感染症においてもHaemophilus influenzae, Sfreptococcus pneumosiaeに続く, 第3の主要な起炎菌である.じん肺症患者は気道感染を繰り返しやすく, そのコントロールが患者の予後にとって非常に重要である.
    1988年1月~1993年12月に長崎労災病院に通院中のじん肺症患者のうち, 複数回のM. catarrhalisによるくり返しおよび持続呼吸器感染症を起こしているじん肺症患者9名 (管理区分4, 及び続発性気管支炎を有する管理区分2ないし3) の喀疾から得られた起炎性の明確なM. catarrhalis50エピソード, 50株を, Hind III, Hae III, Cla Iを用いたRestriction enzyme analysis (REA) により菌株の同一性について検討した.5カ月以内の間隔で検出された23株中12株 (56%) が同一株によるものであり, 6カ月以上ではすべて異なる株によるエピソードであった.特に同一株による13エピソード中12エピソードが3カ月以内に集中していた.
  • 木村 晋亮, 小崎 明子, 佐々木 富子, 小松原 彰
    1999 年 73 巻 4 号 p. 318-327
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    ベロ毒素 (VT) 産生性/腸管出血性大腸菌 (VTEC/EHEC) のスクリーニングには, Beutin洗浄羊血液寒天培地での溶血が有用な指標となる. そこで, 更に良い培地への改良を目指して, 血液の洗浄回数と濃度, 2価イオンの種類と濃度, 基礎培地の種類について, VT産生大腸菌27株, VT非産生大腸菌74株, Escherichia hermanii1株を用い, 基礎的な検討を加えた.羊血液のリン酸緩衝液 (PBS) (pH72) による洗浄回数の比較では, 原法の3回より5回の方が, また血液の濃度は5%より4%の方がより溶血の観察に適していた. 2価金属イオンでは, CaCl2とMgCl2とを用いたが, 溶血は前者の方がより明瞭で, 濃度はLOmMが適当であることを確認した。なお2価イオンがない場合には, 一部VT産生株が非溶血となった。基礎培地については, 原法のSoybean-Casein-Digest (SCD) 寒天培地のほか, 普通寒天培地, Heart-lnfusion (HI) 寒天培地, Brain-Heart-Infusion (BHI) 寒天培地を用いて比較したが, 溶血が鮮明なのはSCD寒天培地とHI寒天培地であった. また両培地の比較では, 溶血環は前者の方が大きいが, 溶血は後者の方が見やすく, また± の判定も後者の方がより容易であった.
    以上の結果から, VTEC/EHECのスクリーニングに用いるBeutin血液寒天培地には, HI寒天培地を基礎培地に, CaCl2を10mMに, 羊血液はPBS (pH 72) で5回洗浄したものを4%に添加した方がよいという結論に達した.
  • 小野川 傑, 遠藤 宣子
    1999 年 73 巻 4 号 p. 328-335
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureus 可溶性菌体成分 (Staphylococcus aureus soluble proteins: SaSP) を使って, これらが初期感染防御に重要な顆粒球にどのような変化を与えるか, ヒト末梢血顆粒球CD11b, CD62Lの陽性率および蛍光強度, ならびにH2O2産生を指標にフローサイトメトリーで検討した.5菌株より調整したSaSP蛋白濃度の0.5μg以上で, CD11bは蛍光強度の増強, およびCD62Lは陽性率ならびに蛍光強度の減少を示した.一方, H2O2はCD11bやCD62Lとは異なり, 終濃度50μgでのみ増加傾向が認められ, さらにホルボール・ミリステート・アセテートの添加によりその産生は増加した.これらの結果には, 株間における差は認められなかった.以上のことよりSaSPは, 顆粒球の活性化に影響を及ぼすこと, そしてその活性化はプロテインキナーゼCを直接介さずに生じた可能性が推測された.
  • 大楠 清文, 中村 明
    1999 年 73 巻 4 号 p. 336-340
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    当院開設以来の約10年間に経験したインフルエンザ菌性全身感染症の化膿性髄膜炎13例15件, 化膿性関節炎9例, 急性喉頭蓋炎4例, 敗血症1例および肺膿瘍1例の計28例30件の臨床細菌学的診断方法について検討した.化膿性髄膜炎15件のうち13件が培養陽性であった.1件が無葵膜株で残る12件は全てb型 (Hib) であった.抗原検出は12件中11件 (92%) が陽性で, 検体別陽性率は髄液が10例中9例, 濃縮尿が2例全て陽性であった.この濃縮尿抗原陽性2例は先行抗菌薬投与により髄液培養陰性であったため, 抗原検査の結果で病因診断が可能となった.化膿性関節炎9例のうち6例が培養陽性でb型株であった.先行抗生剤投与のため関節膿培養陰性であった3例を含む8例で抗原検出を実施し全例陽性であった.また, Hib抗原陽性のうち6例は, この結果で治療を開始し順調に治癒した.急性喉頭蓋炎4例のうち濃縮尿の抗原検出を実施した2例中1例がHib抗原陽性であった.以上のことから, Hib全身感染症の診断率を向上させるには, 抗原検出の検体として髄液に加え濃縮尿を併用することや関節膿などでも実施することが重要である.また, グラム染色は原因菌の推定の域を出ない点や判断に熟練を要するが, 抗原検出法を併用することにより原因菌推定の精度も著しく向上し, 多くの症例において常法である培養の結果を待たずに迅速診断が可能であった.よって, 抗原検出法は迅速病因診断および早期治療開始にきわめて有用な手段である.
  • 遠藤 一博, 小林 功幸, 川井 信孝, 伊東 克郎, 富永 一則, 楠本 修也, 福田 正高, 室橋 郁生, 別所 正美, 平嶋 邦猛, ...
    1999 年 73 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 34-year-old male with a history of chickenpox developed primary abdominal non-Hodgkin's lymphoma (diagnosed in August 1995). Treatment with cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, and prednisolone achieved a partial remission. In July 1996, the disease recurred, and the patient recieved chemotherapy with carboplatine, etoposide, mitoxantrone, and prednisolone, but no response was noted. Involvement of the central nervous system and meninges was diagnosed on September 12, 1997. Blast cells were detected in the peripheral blood on September 26. Based on these findings, he was diagnosed as having leukemia. On September 27, painless vesicles developed on the left gluteal region. On October 13, the patient was hospitalized because the vesicles had spread over his entire body. Pathologic examination of the roofs of the blisters showed masses of inclusion bodies. Based on this, a diagnosis of varicella-zoster infection was made. Treatment with acyclovir (750mg/day) for seven days failed to form crusts. New vesicles developed after the drug was discontinued, but crusts formed after acyclovir therapy was resumed. He died of interstitial pneumonia on December 21. Autopsy could not be perfomed. Histopathologic examination of pulumonary tissue obtained by necropsy did not reveal the presence of inclusion bodies characteristic of herpes simplex or varicella-zoster infection. Varicella-zoster virus (VZV) antigen was negative by an immunochemical staining methed using monoclonal antibodies against VZV. Continuous long-term administration of acyclovir has been reported to be effective for non-Hodgkin's lymphoma complicated by recurrent intractable herpes zoster.
  • 斎藤 聖子, 矢野 敬文, 小柳 徳明, 有川 圭介, 古賀 英之, 大泉 耕太郎
    1999 年 73 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    A 32-year old male was admitted to our hospital conplaining of cough, fever, and skin eruptions. He was coctacted with a child who had chickenpox 3 weeks before the onset. He showed the elevating of antibody to varicella-zoster virus. Despite of the administration of Acyclovir for four days, cough was not relieved and a chest X-ray film showed infiltrative shadow in right middle lobe of the lung. Bronchoscopic examination revealed vasicle and edema, and the varicella-zoster virus (VZV) DNA was detected in the bronchoalveolar lavage by the polymerase chain reaction. The patient in first case confirmed by the virus DNA in the bronchial washing by thePCR.
  • 高橋 秀彦, 大石 和徳, 真崎 宏則, 麻生 憲史, 峰松 俊夫, 南嶋 洋一, 永武 毅
    1999 年 73 巻 4 号 p. 351-355
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Cutaneous Kaposi's sarcoma (KS) is a well-known complication of theacquired immunodeficiency syndrome. KS in the internal organs, however, is rare inJapan. We present here a 33-years-old Japanese homosexual man who had AIDS complicated with cytomegalovirus (CMV) infec tion and KS. He was found to be HIV-seropositive, when he was 31-years-old. He visited our hospital in June 1996 because of high fever. The peripheral blood CD4+lymphocyte counts were 2 per cubic millimeter, and CMV antigenemia was noted (p65 antigen positive cells; 240/50, 000 white blood cells). Thereafter he was successfully treated with parental ganciclovir. On admission, some browncolored flat nodules were found on the skin, and the diagnosis of KS was made by skin biopsy. We administrated human chorionic gonadotropin (hCG) for the treatment ofKS, but had no clinical response. In September 1996, he complained of severe cough, shortnessof breath, and vomiting. A chest radiogram showed nodular lesions and pleural effusion in bilateral lungs. A computed tomography of his chest also revealed nodular and linear densities distributed along the bronchovascular bundles. The ultrasonic examination of his abdomen revealed a duodenalnodule . Both nodules in the lungs and duodenum were proved to be KS based on the autopsy findings. Intranuclear inclusionbodies pathognomonic for CMV infections were detected in the stomach and the colon.
  • 中村 信也, 杉枝 正明, 宮本 秀樹
    1999 年 73 巻 4 号 p. 356-360
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    Small round structured viruses (SRSV) are the major cause of acute non-bacterial enterogasritis and have a characteristic of breaking out with mass victims as food poisoning. The outbreak usually occurs among school children from school lunches in Japan. A case in adults is relatively rare.
    The SRSV food poisoning with 644 adult victims carried through lunch box broke out, which may be the biggest number in adult cases in the world. This is the report describing its outlines, analytical result of clinical symptoms and fecal microbial examination.
    The average latent period was 37 hours, the time was mostly (47%) between 24-36 hours. The most emerged symptom was diarrhea and followed nausea, abdominal pain, vomiting and high fever. The older patients showed a higher rate of diarrhea and fewer one of nausea and fever. 15 patients complained of eye symptom. This number should not be neglected. It may be a characteristic of the disease. SRSV detection test with PT-PCR method of feces was done on 36 patients and 24 patients were positive. The most sensitive primer was Yuri/nested/22F/R.
    In Japan, lunch-service has become a industry advancing monopolization and wide areazation. SRSV make easily contamination to food, therefore if mass victim food-poisoning occurs, this should be considered initially.
  • 大森 明美, 土橋 佳子, 隆杉 正和, 廣瀬 英彦, 高橋 淳, 渡辺 貴和雄, 永武 毅
    1999 年 73 巻 4 号 p. 361-362
    発行日: 1999/04/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 73 巻 4 号 p. 401
    発行日: 1999年
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
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