感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
74 巻, 8 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 1. 企画主旨説明と計画
    藪内 英子, 江崎 孝行, 河村 好章, 小迫 芳正, 吉田 眞一, 小林 和夫
    2000 年 74 巻 8 号 p. 627-629
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
  • 白石 香, 田中 健, 大窪 恭光, 坂本 昭彦, 城島 浩人, 深堀 茂樹, 藤松 由起子, 白石 恒明, 本田 順一, 大泉 耕太郎
    2000 年 74 巻 8 号 p. 630-637
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    成人血球貪食症候群 (HPS) はほとんどが二次性であり, 各種感染症や悪性腫瘍等種々の疾患に続発し時に重篤な転帰をとる. なかでも感染症関連HPS (IAHS) はウイルス, 細菌, 真菌感染症等を契機に発症し, 日常診療中にしばしば経験するが, HPS診断時原疾患不明の場合やIAHS疑いでも原困微生物が同定し得ない場合も多い. そこで今回我々はRPS例の発症時検査所見を用い, IAHSと悪性腫瘍関連HPS (MAHS) との比較, IAHSをウイルス性 (VAHS), 細菌性 (BAHS), 真菌性に分類し各々の検査値の比較検討を行なった. HPS21例, IAHS11例 (VAHS4例, BAHS5例, 真菌2例). MAHSIO例. これらの発症時検査所見 (WBC, Hb, Plt, LDH, フェリチン, 骨髄像) サイトカイン (IFNγ, TNFα, IL-6, sIL-2R, M-CSF) 接着分子 (sICAM-1, sVCAM-1, sELAM-1, sL-selectin) を用い, IAHSとMAHS, IAHSの原因微生物毎の比較検討を行なった. IAHSとMAHSを比較するとMAHSは発症時Hb値が有意に低下し, sIL-2Rが高値の傾向を示した. IAHS症例を原因微生物毎に比較すると, BAHSでは発症時pltが有意に低下しており, sICAM-1, sVCAM-1が高値を示した. またBAHS症例は重篤な基礎疾患を有し, DICの合併も高率で予後不良であった.
  • 小島 洋子, 大竹 徹, 森 治代, 川畑 拓也, 大石 功, 永尾 暢夫, 柴田 弘俊
    2000 年 74 巻 8 号 p. 638-645
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    1988年より11年間, HIV感染者を対象に, 体内のウイルスの生物学的性状の変化を指標とした予後判定検査法の確立を試みてきた. その結果, 感染者体内のHIV-1は, 病態の進行に伴い, 1) 分離率が高まり, 2) in vitroでの増殖速度が増し, 3) T細胞株 (MT-4) に感染性を示して巨細胞形成能を有すSIタイプへと変化することが示された. このような3点のHIV-1フェノタイプを指標としたHIVの「分離指標」は, 感染者の病態をよく反映して, 非常に有用なエイズ発症マーカーであることが確認された. その後, 1997年頃よりわが国においてHAARTの導入が始まったことを契機に, 長期観察中の感染者を1997年を境に前後2期に区分して, 分離指標による測定値の変動を調べたところ, 1997年以降においてウイルス分離率の明らかな低下とSIタイプウイルス出現率の著しい減少傾向が観察された. また, 同じCD4+細胞数の値をもとにした病態ステージにおいて分離指標の改善が著しく, HAARTによる影響がCD4+細胞数よりむしろ分離指標に強く反映していることも示された. 以上の結果から, ウイルス分離を指標とした臨床検査成績は, エイズ発症の予知のみならず, HAARTの効果判定においても役立ち, 特にCD4+細胞数や血中ウイルス量が相関を示さない例においては, その効果判定に有効に活用でき得ることが示唆された.
  • 斎藤 玲子, 増田 寛樹, 押谷 仁, 鈴木 宏, 川崎 聡, 佐藤 博
    2000 年 74 巻 8 号 p. 646-652
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    アマンタジンは抗インフルエンザ剤であるが, 投与後に耐性株が容易に出現する. 本剤は1975年より抗パーキンソン薬とし, 更に1998年末にA型インフルエンザへ適応追加され, その直後から処方量が急増し, 耐性株の増加が懸念された.
    この耐性化はウイルスM2蛋白膜通過部位の4つのアミノ酸変異が関連し, 我々は31番の変異 (genotype Ser-31-Asn) が約8割を占めることを明らかにしてきた. この事実から, 咽頭ぬぐい液から直接的にこのgenotypeを検出するPCR-RFLP (PCR-restriction fragment length polymorphism) 法を用い, 新潟県内高齢者施設における耐性株出現頻度を検討した.
    1998/99年シーズンにおいて, 新潟県内8高齢者施設のインフルエンザ患者141件のRT-PCR陽性中, 31件 (220%) が耐性株であり, アマンタジン内服者は6件 (194%) と少数のみであった. 6施設でアマンタジンが抗パーキンソン剤として投与されていたが, 抗インフルエンザ剤として用いたのは4施設のみであり, 両群での耐性株出現頻度は14.0%, 255%であったが有意差を認めず, 耐性株のみの施設内流行は見られなかった.
    以上, 本研究において, 抗インフルエンザ剤としての使用施設のみならず, 抗パーキンソン病剤としての使用施設でも同程度に耐性株が高い頻度で検出されることが初めて示された.
  • 中町 祐司, 木下 承晧, 熊谷 俊一
    2000 年 74 巻 8 号 p. 653-657
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    MU3寒天培地を用いて日本でVCMが適用になった1991年から1998年に臨床分離したMRSAについて, ヘテロVRSAの検出を行いその年次推移およびその菌の性状を検討した. 978株のうちVRSAは検出されず, ヘテロVRSAは23株 (24%) であった. また, 年次推移による増加傾向は見られず, 検出率はほぼ横ばいであった. ヘテロVRSAのVCMのMICは1-2μg/mlに分布し, TEICのMICは0.5-12μg/mlであった. ポピュレーション解析では全てヘテロパターンを示した. コアグラーゼ型別, TSST-1, エンテロトキシンの産生はコアグラーゼII型・TSST1陽性・エンテロトキシンC型産生が43%ともっとも多かったが, 多様なパターンであった. PFGEでの遺伝子解析では2株ずつの組み合わせで4組は同一パターンを示したが, 全体的には多様なパターンであった. hetero-VRSAは1991年から存在し, その出現にはバンコマイシンと作用機序の異なる細胞壁合成阻害剤であるβ-ラクタム剤の使用の関与が考えられる.
  • 大槻 雅子, 西野 武志
    2000 年 74 巻 8 号 p. 658-663
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    近畿感染症研究会は, 近畿地区の黄色ブドウ球菌および肺炎球菌の薬剤耐性化の実態と年次的動向を把握する目的で, 近畿地区22施設にアンケート調査を行った. 1998年10月から12月に分離したmethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) とpenicillin-intermediate resistant Streptococcus pneumoniae (PISP) を含むpenicillin-resistant Streptococcus pneumoniae (PRSP) の検出率は61.5%と45.8%であり, MRSAにおいては, 前回の調査と比べ, 増加傾向が認められた. MRSAの単独菌検出率は495%で, 複数検出菌の相手菌種第一位はCandidaspp. であった. 一方, PISPを含むPRSPの単独菌検出率は36.4%であり, 複数検出菌の相手菌種第一位はHaemophilus influenzaeであった. MRSAに対する感受性はvancomycin, teicoplanin, ST合剤, arbekacinで良好であったが, PISPを含むPRSPに対してはarnpicillinやeryihromycinの耐性化傾向が大きかった.
  • 殺ウイルス効果に及ぼす血清蛋白の影響
    野田 雅博, 松田 俊二, 小林 正夫
    2000 年 74 巻 8 号 p. 664-669
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    陽イオン界面活性剤系, 両性界面活性剤系, ビグアナイド系, アルデヒド系およびハロゲン系の計5種の消毒剤の殺ウイルス効果を, DNAウイルスのヒトヘルペスウイルス, ヒトアデノウイルス, ブタパルボウイルスの3種およびRNAウイルスのウシラブドウイルス, ヒト免疫不全ウイルス, ポリオウイルスの3種を用い, 血清蛋白質の非混在および混在の条件下で検討した. アルデヒド系およびハロゲン系の消毒剤はすべてのウイルスに対して有効であったが, 陽イオン界面活性剤系, 両性界面活性剤系, ビグアナイド系消毒剤はエンベロープを有するウイルスに対してのみ有効であった. 血清蛋白質の混在は, 陽イオン界面活性剤系, 両性界面活性剤系消毒剤の殺ウイルス効果に強く影響した.
  • 寺田 喜平, 新妻 隆広, 大門 祐介, 片岡 直樹, 二木 芳人
    2000 年 74 巻 8 号 p. 670-674
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    我々の以前の看護大学や医科大学における院内感染防止対策の調査でウイルス抗体測定法の選択について混乱があると思われた. そのなかで選択頻度の多かったEIA法によるIgG抗体, HI法, CF法における測定感度の比較を行った. 対象は看護大学や短期大学の看護学生175名であった. 麻疹, 水痘, ムンプスのEIA法のIgG抗体による抗体陽性率はそれぞれ96.6%, 93.7%, 83.3%, 風疹のHI法による抗体陽性率は920%であった. EIA法のIgG抗体を基準にすると, HI法の測定感度は麻疹751%, 水痘102.4% (IAHA法), ムンプス69.2%で, CF法の感度はそれぞれ20.6%, 38.7%, 8.0%であった. 水痘ではIAHA法がEIA法より良好な感度であったが, EIA法のIgG抗体 (±) を陽性とすると逆にEIA法の方が良かった. CF法による風疹の感度はHI法を基準にして1α9%であった. 我々の以前の検討では風疹のHI法の感度はEIA法と同一であった. 以上より, 水痘のIAHA法, 風疹のHI法を除き, EIA法を選択すべきである. 米国では1995年に風疹抗体のEIA法におけるカットオフ値は下げられており, 我が国でも検討が必要である. また水痘抗体もEIA法でIgG抗体 (±) がIAHA法で陽性であったため, カットオフ値について検討が必要と思われた.
  • 柏木 保代, 河島 尚志, 武隈 孝治, 星加 明徳, ルナール野崎 純子
    2000 年 74 巻 8 号 p. 675-679
    発行日: 2000/08/20
    公開日: 2011/02/07
    ジャーナル フリー
    3カ月以上喘鳴をきたす10名の乳児を経験した. いずれもteophyllin製剤やβ刺激薬の反応は不良で, 3カ月以上にわたる喘鳴を認め, 入退院を繰り返していた. 全例白血球の増多を認め, 経過中にトランスアミナーゼの異常 (GOT, GPT上昇) を認めていた. 好中球殺菌能を検索した4例では2例で低下を認めた. IgE, RASTなどアレルギー検査結果は高値を示さず, さらに胸部レントゲン写真では間質性肺炎像や無気肺像を示すものもあった. 全例, サイトメガロウイルスIgM抗体陽性で, CF法も高値を示した. CMVPCRで唾液を検索し, 10例中7例が陽性であった. 気管支鏡を施行した3例では, 気管支洗浄液 (BAL) より2例でCMVが分離できた. CMVPCR陽性の検体はダイレクトシークエンス法にて1mmediateearly (IE) 領域の一部の塩基配列の決定を行い, silent mutationを認めた他はほぼ同じシークエンスであった. 乳児の長期喘鳴とCMV感染の関連が示唆され, CMVによる免疫機構への影響について検討が必要と思われた.
feedback
Top