日本化学会誌(化学と工業化学)
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1995 巻, 3 号
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  • 大前 貴之
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 169-176
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    C60の臭素化反応について,量子化学的反応性指数(とくに電子密度とフロンティア電子密度)に基づいて研究した.ここで,C60からC60からC60の反応性はその分子表面に分布していると考えられている三次元の共役系によって支配されていると仮定し,各反応性指数は単純Httckel法を用いて計算した.また臭素化の反応モデルとしては,平面共役系の臭素化をよく記述するのと同様のものを用いた.この結果,C60からC60Br6を生成するいくつかの反応経路が得られた.しかし,従来考えられていたシクロペソタジエニリウムカチオソ様の共役構造を持つ化学種を経由するような反応経路は得られなかった.今回得られた反応経路は,より対称性の低い共役構造を持った中間体を経由するか,またはシクロペソタジエニドアニオン様の共役構造を有する中間体を経由するようなものであった.また,ここで用いた反応モデルではC60Br8やC60Br24を生成する合理的な反応経路は得られなかった.さらに,C60Br6の生成経路が,臭素が6個付加した段階で停止することを合理的に解釈するには,C60からC60の臭素化がBrによって進行すると考えればよいことを初めて指摘した.
  • 加藤 雅裕, 佐和山 一郎, 山崎 達也, 小沢 泉太郎
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 177-183
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    種々のアルカリ金属イオンでイオン交換したZSM--5にSO2を吸着させ,吸着量測定,および種々の分光学的測定(IR,XPS,XRF)と吸着相互作用ポテソシャルの理論計算を行い,吸着状態の解明を行った.理論計算結果は物理吸着したSO2に二つの安定な吸着構造が存在することを示唆し,IR測定によってその存在が確認された.分光学的手法で求められた不可逆吸着量は,吸着量測定において観測された値よりもかなり小さく,微量の強く吸着したSO2,または含硫黄吸着種がゼオライトの内部や細孔の入口に閉塞空間を生じ吸着を阻害しているものと考えられた.
  • 今井 哲也, 佃 岩夫, 野島 繁, 飯田 耕三
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 184-190
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Si/Fe比,Si/A1比が異なるMFI型構造のフェリアルミノシリケート,フェリシリケートおよびアルミノシリケートを合成し,酸特性,耐スチーミング性,およびメタノールの転化反応に対する触媒特性について検討を行った.フェリアルミノシリケートにおいて,Feはゼオライト骨格に組み込まれて強酸点を形成するが,アルミノシリケートの強酸点よりも酸強度が弱いことがわかった.FeとAlの含有量の合計が約400μmol/g以下の領域では,強酸量はFeとAlの含有量の合計の約80%で,含有量に比例して増加するが,それ以上の領域では,FeとAlの含有量の増加量に対し約15%の割合で増加することが明らかになった.873Kで18時間スチーミソグ処理を行ったフェリアルミノシリケートにおいて,FeとA1の含有量の合計が約400μmol/g以下の領域では,強酸量はFeとA1の含有量の合計に比例して増加するが,それ以上の領域では,ほぼ一定になることがわかった.スチーミング処理による骨格中の舟の脱離については,フェリアルミノシリケートの方が,アルミノシリケートより起こりにくいことがわかった.スチーミング処理を行ったフェリアルミノシリケートにおいて,メタノールの炭化水素への転化反応に対する触媒特性については,Fe含有量約200μmol/gのフェリアルミノシリケートが最も活性が高いことがわかった.
  • 小比類巻 孝幸, 松田 恵三
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    亜硫酸カルシウム半水和物(CaSO3・1/2H2O)は,ゲル法で合成すると,種々の結晶形態の結晶が得られる.ゲル法を用いて結晶形態ごとの生成条件を明らかにし,形態制御の条件を探った.メタケイ酸塩ゲル内でCaSO3⋅1/2H2Oを合成することにより,三種の球状集合体,柱状結晶集合体,板状結晶および楕円板状結晶集合体の合計6種類の形態をもつ結晶集合体が得られた.各種形態の結晶集合体はゲル内の初期pHを調整することにより球状集合体はpH5.5~6.6,板状晶はpH4.8付近,楕円板状結晶集合体はpH7.6以上のゲル内で生成し,柱状結晶集合体はpH6.6以上のゲル上部で生成した.形態制御の要因としては,ゲル内のpHおよびイオン積([Ca2+] [SO32-])と結晶形態との相関を調べ,球状集合体三種と柱状結晶集合体,楕円板状結晶集合体の生成条件を明らかにした.また,板状結晶は一部の球状集合体の成長過程で形態変化により生成することが確認され,板状結晶の生成は成長時間により制御できた.この結果,6種類の形態結晶すべての制御条件が明らかになった.結晶形態の変化は,pH調整により結晶析出時のゲル内のイオン積が異なり,結晶核の生成量が調整されるために起こることがわかった
  • 今井 弘, 塩見 浩之, 吉富 恒弘, 中林 安雄
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    マロン酸,エチルマロン酸,ブチルマロン酸のジヒドラジド化合物(MDH,Et・MDH,Bu・MDH)とホルムアルデヒド(FA)を1:6のモル比で縮合させてマロン酸ジヒドラジド類一ホルムアルデヒド系のキレート樹脂(MDH-FA,Et・MDH-FA,Bu・MDH-FA)を合成し,Mn2+, Co2+, Ni2+, Cu2+, Zn2+, Cd2+の捕集能をバッチ法とカラム法で調べた.その結果,金属イオンの捕集率はMDH-FA樹脂>Et・MDH-FA樹脂>Bu・MDH-FA樹脂の順に減少した.MDH-FAとEt・MDH-FA樹脂を用いてバッチ法で各金属イオンの捕集率を調べると,Ni2+ とCu2+はpH5.5~7.0で,Co2+はpH7.5付近で最大値を示した.その他の金属イオンの捕集率はpHとともに増大した.同じく2種類の樹脂を用いて,6種類の金属イオンをそれぞれ約10PPm含むpH5.5の水溶液をカラムの上部から流下すると,Ni2+とZn2+が多少混入するが,Cu2+をほぼ完全に捕集することができた.MDH-FA樹脂を用いてpH7.8の水溶液を処理すると,6種類の金属イオンは85%以上の捕集率で捕集することができた.
  • 町野 彰
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    近年,地球温暖化防止の観点から二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,フロンなどの大気中微量成分の濃度上昇が注目されている.なかでもメタン濃度の増加による温室効果の増大は,二酸化炭素のそれと比較して約20~30倍と高いため,メタンの発生源および発生量に関する詳細な調査が求められている.そこで,日本のメタン発生量の1割以上を占めると推定される首都圏において採取した試料土壌のガス拡散係数,透気係数および空気間隙率を測定した.これらの結果を基に,土壌中のメタンの移動を鉛直一次元の移流拡散によると仮定し,定常状態におけるガス濃度および圧力からメタン発生量を推算した.その結果,調査地域における土壌微生物由来のメタン発生量は年間5~228×109gとなった.以上の結果から,首都圏においては低地地形区などの土壌微生物がメタンの主要な発生源であると考えられる.
  • 興津 健二, 東 国茂, 永田 良雄, 堂丸 隆祥, 竹中 規訓, 坂東 博, 前田 泰昭
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 208-214
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有害化学物質であるかp-クロロフェノールの湿式酸化分解反応に対して,種々の貴金属担持アルミナ触媒が分解に及ぼす影響について検討した.分解は湿式酸化反応では,かなり穏やかな条件(反応温度;150℃,酸素量;0.3MPa)で行った.触媒の活性は,Pt>> Pd > Ru > Rh > Ag.の順で,Agを除く他の触媒で正の活性を示した.とくにその効果は,白金担持アルミナ触媒の場合で最も著しく,150℃ 到達30分後でp-クロロフェノールは91%分解され,この時のTOCの除去率は89%であった,次に,白金触媒の担体としてアルミナのかわりに種々の酸化チタンを用いて,その触媒活性について検討した.その結果,結晶形がアナタース型で粒径の小さいものほどp-クロロフェノールの分解およびTOCの除去に優れ,最適な触媒となることがわかった.この分解過程においては,マレイン酸,マロン酸などの様々の有機酸が検出されたが,反応に伴うそれらの濃度変化の結果から,ほぼ完全に二酸化炭素と水に変換されていくことが確認された.分解反応は,ラジカル種による反応と共に,加水分解,脱炭酸などの反応が同時に進行していることが示唆された.
  • 渡 俊一, 林 弘
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    薬剤の補充を必要としないボイラー用水の処理方式の一つとして,工業用水レベルの低い濃度のCa2+イオンを含む水について熱再生樹脂の麻用を試みた.実験はSirothermTR-10熱再生樹脂を用いて,模擬的にボイラー用水条件の0.001meq/mlCaCl2溶液(CaCO3換算50PPm相当)で連続通塔実験を行い,20℃ と80℃ の昇温一冷却サイクルを繰り返し,Ca2+の捕捉と脱離を行った.潅水(3000PPmNaCl)を部分脱塩して飲料水レベルの水を得るために開発された熱再生樹脂は,多価イオンが存在すると脱離処理ができにくいとされていたが,ボイラー用水条件のような希薄溶液では,熱再生によりCa2+イオンのような多価イオンが除去できる可能性を見いだすことができた.[RaCOOH+RbN]形熱再生樹脂の最初のCa2+捕捉量に対して原水再生で約1/5,純水再生で約1/2量が可逆的に捕捉,脱離iを繰り返した.流出液濃度は純水再生でppbのレベルを得たが,原水再生でも実用性のある値に近い5ppmに達した.
  • 松井 隆尚, 松下 洋一, 貝掛 勝也, 喜堂 浩英, 中山 法親
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 220-224
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    蒸煮爆砕したスギ材から溶媒抽出によりリグニン及びリグニン-糖質複合体を分離し,アシル化反応を試みた.リグニソをピリジソ中無水酢酸,塩化パルミトイル及び塩化ベソゾイルと室温で反応させると,相当するアシル化リグニンが得られた.アシル化リグニンはリグニソに比べ溶融点が低下し,また極性の低い溶媒に可溶となった.ゲル浸透クロマトグラフィーによりこれらの分子量を測定した結果,木材部位や蒸煮時間の違いによる差はなく,リグニソは約6-10量体と推定された.一方,リグニン-糖質複合体を酢酸ナトリウム存在下に無水酢酸と還流反応させたが,生成物は不完全なアセチル化体であった.しかし,この反応生成物をクロロホルムで抽出すると可溶部として三酢酸セルロースが得られ,その収量はリグニン-糖質複合体中に含まれるセルロースの全量がアセチル化されたときの理論量に等しかった.また,その平均重合度は7であり,セルロースがアセチル化反応過程で低分子化を受けて分離したものと考えられる.
  • 田畑 健, 馬場 健治, 岡田 治
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然ガスエンジンを用いるコジェネレーションシステムの排ガス中のNOx低減のために用いられている三元触媒(Pt,Rh,Pd/Al2O3)の劣化原因について,長時間使用した触媒の分析と貴金属種・量を変えた試作触媒を用いた加速試験により調べた.その結果,ガソリン自動車仕様の触媒では,メタンの酸化活性が低く,数千時間で理論空燃比から空気過剰(リーン)側の活性がなくなってしまうため,ウインドウ(NOとCOが同時に除去できる空燃比の範囲)はなくならないものの,燃料過剰(リッチ)側にシフトして,制御空燃比でNOxが十分に除去できないことがわかった.加速劣化試験との対応から,この原因は,貴金属の凝集によるものであることが判明した.さらに,貴金属種・量を変えた試作触媒による実験から,Ptがメタソの酸化に本質的な役割を担っており,ガスエソジン用三元触媒としては,Pt含有量をガソリン用触媒より多くし,Pt/Rh比を高め,Pt表面積を長時間維持することにより,ウインドウのシフトが防げる事がわかった.また,Pt含有量の増加は,助触媒として添加した酸化セリウムに起因する触媒の酸素吸蔵能力の向上にも寄与し,動的空燃比制御システムでの長期間の使用を可能にすることがわかった.
  • 宇田 成徳, 舟見 準, 近藤 滋骨, 高尾 寛, 川村 賢二, 信田 健一, 佐々木 和夫
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 232-240
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    小型モーターの電気接点に,特有な接点障害は,2-メチル-2,4-ペソタンジオール(ヘキシレングリコール)などを使用する気相潤滑方式により解決出来る.本報では,接点潤滑剤の改良を試み(1)その高分子化により長寿命化が達成できること.(2)分子構造中へ第三級炭素原子を組み込むことが潤滑に有効であること.(3)有機シリコーンガスによる接点妨害から保護する効果を有すること.(4)経時変化により接点に悪影響を及ぼす劣化が見られない.などを実証した.
  • 円満字 公衛
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 241-243
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Concentration dependence of aggregates of copper chlorophyllin (Cu-chin) molecules in ethanolwater mixed solvents has been investigated by ESR and vaper pressure measurements. Cu-chin exists as oligomeric species in low ethanol concentration (5%) while it forms monomeric one in high ethanol concentration (75%). The vaper pressure measurement showed that the aggregate exists in dimeric form in dilute aqueous solution ( < 1 mmol dm-3), and in polymeric form (degree of polymerization = 7)in higher concentration.
  • 安井 三雄, 木村 良晴, 北尾 敏男
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 244-246
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In order to develop biocompatible materials, many workers have studied on conjugation of gelatin with synthetic polymers, for example, by graft polymerization of vinyl monomers onto gelatin in aqueous solution or by dry-blending of gelatin powder with synthetic polymers.
    So, it was tried to esterify carboxyl groups of the aspartic and glu tamic acid residues of gelatin with a functional alcohol, and a reactive gelatin modified with allyl ester groups was newly obtained by chlorotrimethylsilane mediated reaction of gelatin and allyl alcohol. The degree of esterification was found to be determined by the 1HNMR spectroscopy.
    The resulting allylated gelatin wa s proven to cause graft polymerization through its allyl groups with styrene monomer by the action of radical initiator in an organic solvent to result in a gelatin/synthetic polymer conjugate.
  • 新海 正博, 北川 寿美子, 南波 憲良, 飯塚 崇伸, 梶谷 正次, 杉森 彰
    1995 年 1995 巻 3 号 p. 247-249
    発行日: 1995/03/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The protecting effect of dithiolatocobalt (III) complexes of the type [CpCo (S2C2X2)] (M) against photodegradation of a cyanine dye 1'-buty1-1, 3, 3, 3', 3', 5-hexamethyl-2, 2'-benzo[e']indodicarbocyanine perchlorate (D) was studied in a t hin layer film system for digital recording and in an acetonitrile solution for the mechanistic examination.
    The dithiolatocobalt (M) show much higher protecting effect than bis (benzene-1, 2-dithiolato) nickel complexes which are used industrially.
    The protecting effect of d ithiolatocobalt complexes is due to the quenching of the excited triplet state of D as well as due to the quenching of singlet oxygen.
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