耳鼻と臨床
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40 巻, 1 号
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  • 原 由起代, 林 明俊, 森満 保
    1994 年 40 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    砒素暴露による鼻粘膜の変化を, 鼻粘膜スメアを採取し, その扁平上皮化生の発生頻度を比較することにより検討した. 砒素暴露群27% (23/86例), 対照群16% (14/88例) の発生頻度であった. 有意差はなかったが, 砒素暴露群に多い傾向にあった, 扁平上皮化生をきたす因子として, 年齢, 鼻疾患がすでに報告されているが, 今回の結果から砒素暴露の有無に拘わらず, 喫煙も明らかに扁平上皮化生を招く因子と考えられた.
  • 酒井 昇, 西澤 典子, 藤村 裕, 伊藤 大祐, 劉 沢周, 小市 健一, 依田 明治, 松島 純一, 犬山 征夫, 寺山 吉彦, 木村 ...
    1994 年 40 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    一色の甲状軟骨形成術I型は一側反回神経麻痺による声門閉鎖不全を改善する手術として, これまで広く行われてきている. 通常, 患側甲状軟骨板に開窓部を作成し, シリコン楔を挿入して患側声帯を間接的に正中に移動させている. 開窓部は正確に作られる必要があり, 術後の音声に大きく影響する. 狭い術野で正確に開窓部を計測し作製することは難しいが, 今回われわれはあらかじめ開窓部に相当する大きさのシリコンメッシュ片を作り, 簡単に応用する方法を考えた. この方法は正確かっ迅速に開窓できる利点を有している.
  • 秋定 健, 竹本 琢司, 武 浩太郎, 折田 洋造
    1994 年 40 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    対照的な転帰をたどった深頸部感染症の2症例を経験した, 症例1は50歳女性で, 咽頭痛と左頬部頸部腫脹で来院した. 抗生剤投与で経過をみるも4日目にCTで膿瘍形成を認めたため, 切開排膿を施行し乳白色の膿汁流出を認め, 以後経過良好にて退院となった, 症例2は79歳女性で, 意識障害, 呼吸困難で当科へ紹介となった, 両側頸部の著明な腫脹と呼吸状態の悪化を認め, 気管切開を施行した. 胸部X線で胸水, 膿胸を疑い胸腔穿刺を施行した. 頸部, 胸腔共に悪臭を伴った膿汁流出を認めるも敗血症性ショックにより当日死亡した.
    深頸部感染症は比較的稀な疾患で, 抗生物質の発達で重篤な症例は減少している. しかし逆に症状のmaskingや診断の遅れが問題となっている. 急速に進行する症例や種々の合併症も報告されている. 的確な抗生剤投与と, 早期のCT撮影で膿瘍形成を認めれば深頸部の解剖を熟知した上での迅速な切開排膿が, 深頸部感染症の診断治療の原則と考えた.
  • 細胞性免疫能の低下と術後再発
    古謝 静男, 糸数 哲郎, 神谷 聰, 江洲 浩明
    1994 年 40 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌患者64例で術前術後に細胞性免疫能の変動を検討した. リンパ球数, T細胞数, CD4陽性およびCD8陽性細胞数は術後3日目に低下し, 1か月後には回復傾向が認められた. PHA幼若化反応は, 20例で術前あるいは術後に低下が確認されたが, その中で55%に術後再発が認められた, 低下のなかつた44例における術後再発は23%であつた. 術後局所再発の確認はPHA幼若化反応の低下より数か月後であつた. 術後早期のリンパ球活性の低下は術後局所再発に関与していると考えられた.
  • 免疫抑制への影響因子の解析
    古謝 静男, 糸数 哲郎, 神谷 聰, 江洲 浩明
    1994 年 40 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌患者64例を対象に術前術後の細胞性免疫能を検索し, 低下群と非低下群に分けた, この2群間では性, 年齢, 手術時間, 出血量, IAP値に有意差は認められなかったが進行度および担癌部位において差が認められた.
    すなわち, 低下群では非低下群に比較して進行例が多く, 担癌部位では低下群で中咽頭, 下咽頭が多かった. 下咽頭癌では発癌にアルコールの多飲が関与していると指摘されており, アルコールの多飲が免疫能抑制に作用していると予想された. また, 進行例では全身状態の低下が免疫能低下の一因と考えられた.
  • 小市 健一, 酒井 昇, 松島 純一, 藤村 裕, 小笠原 誠, 犬山 征夫, 山地 誠一
    1994 年 40 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれは鼻腔および上顎洞の鼻石の2症例を経験し, 本邦における鼻石の統計的観察を行ったので報告した.
    症例1は28歳女性で左鼻閉感の増悪と悪臭を伴う鼻漏を自覚し来院した. 左総鼻道下方に小指頭大の黄褐色の結石を認め, 副鼻腔断層撮影でも左固有鼻腔に石灰化陰影が確認された. 左鼻腔の鼻石と診断し, 局所麻酔下に結石を一部破砕して摘出した.
    症例2は88歳男性で軽度の両耳閉感があり来院した. 右中甲介後方から鼻中隔に接して茶褐色の結石を認めた. 副鼻腔断層撮影, CTで右上顎洞内から鼻腔側壁を貫き鼻中隔に達する石灰化陰影を認めた. 鼻腔からの結石の生検で真菌塊を認め, 真菌に起因した上顎洞の鼻石と診断し, 全身麻酔下に上顎洞根本術を施行し摘出した.
    本邦の鼻石症例153例について統計的に検討し, 鼻石の核および成因について考察した.
  • 河合 晃充, 秋定 健, 東川 康彦, 山本 英一, 堀 香苗, 折田 洋造
    1994 年 40 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    Cystic hygromaは, 原始リンパ嚢の遺残物として頸部, 腸間膜根部などに発生する. 生下時から2歳頃までにほとんどが発症し, 成人での発症は, 腋窩, 後腹膜, 縦隔など発見されにくい部位に多い. われわれは, 62歳の高齢成人に発症した頸部Cystic hygromaの1例を経験した. 本症例は, 頸部Cystic hygromaの成人発症例としては, 本邦で最高齢の症例である. 診断には, CT, MRI, 超音波が有用であったが, 特にMRIが質的診断, 周囲との関係をみるのに有用であった. また, 治療は手術による完全摘出が唯一の根治治療であるが, 小児においては, 周囲組織に浸潤しているものや, 手術による神経損傷など合併症の危険性のため, 完全摘出が不可能な場合もある. 一方, 成人では被膜に覆われており, 完全摘出が比較的容易と言われている. 本症例でも, 完全摘出が可能であったため, 他の治療を加えずに, 再発もなく経過良好である. 本症例を若干の文献的考察を加え報告した.
  • 定永 恭明, 宇野 正志, 鮫島 靖浩, 増山 敬祐, 石川 哮
    1994 年 40 巻 1 号 p. 34-44
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    近年社会問題化している, スギ花粉症の発症に及ぼす因子を疫学的に解析するために, 花粉飛散の違う熊本県内の3地区に居住する高校生を対象として, 2度にわたるスギ花粉症アンケート調査, 及びIgEと遺伝的要因としてのHLAを測定することにより発症因子を外因と内因の両面に分けて検討してみた. それによると花粉症の臨床症状は, 花粉飛散 (抗原) 量とよく相関するが, IgEの産生には単に抗原量だけでなく, 社会的因子としてのストレスや大気汚染それに遺伝的素因の及ぼす影響も強いものと想定された.
  • 池田 元久, 渡辺 勈
    1994 年 40 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1) 26歳男性の上顎洞, 筋骨洞, 蝶形骨洞のアスペルギルス症を, アンフォテリシン B希釈液による対孔洗浄で治癒せしめた, 1症例のみではあるが手術的侵襲も少なく最初に試みる価値のある方法と考えた.
    2) 一側上顎洞炎を示した42歳, 63歳女性の2症例について, 自然口を閉塞するように存在していた真菌塊を除去することによって, 上顎洞炎を軽減せしめた。この2症例は, 真菌塊が自然口を閉塞した事によって, 上顎洞炎を増悪させていたものと考えられ, 硬性内視鏡などで自然孔に真菌塊を認める症例に対しては最初に試みる価値のある方法と思われた.
    3) 上述の3症例の治癒過程の観察には, 副鼻腔冠状断CTが有用であった.
  • 福島 泰裕, 坂本 邦彦, 森山 一郎, 清田 隆二, 大野 郁夫
    1994 年 40 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当科における10年間に経験した8例の深頸部感染症症例の臨床集計と, 最近の代表的な3症例について報告した. その中の1例は, 縦隔洞炎発症した重症例であったため, 頸部よりのアプローチにて縦隔のドレナージを行い良好な結果を得た.
    診断にあたっては, 胸部までを含めたCTが有用であり, 治療方針の決定にも役立つこと, 治療を行う際には, 嫌気性菌を想定した化学療法を行うとともに, 膿瘍を形成した症例に対しては, ドレナージを積極的に行うことが重要であることなどについて述べた.
  • 館野 秀樹, 浦尾 弥須子, 川崎 篤
    1994 年 40 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    聴器に発生する悪性腫瘍は稀であり, 部位的には, 外耳道癌が耳介癌, 中耳癌より多い. 外耳道癌を病理組織学的にみると, 扁平上皮癌が最も多く, 次いで腺様嚢胞癌であり, 単純癌, 腺癌は稀である.
    われわれは, 74才男性の右外耳道より発生した耳垢腺癌症例を経験したので報告した. 患老は, 耳痛を主訴に来院した. 初診時, 右骨部外耳道前上方壁より突出し外耳道をほとんど覆う腫瘤を認めた. 穿刺吸引細胞診でClass III, CT像で外耳道骨壁の破壊を認めたことから悪性を予想したが, 部位が外耳道浅部に限局していたため, 腫瘍を周囲の皮膚, 骨とともに切除するという局所拡大摘出術のみを行つた. 術後4年6ヵ月を経て局所再発遠隔転移を認めていないが, 今後長期にわたる経過観察が必要と考えている.
  • 内薗 明裕, 渡邊 荘郁
    1994 年 40 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当院に勤務している職員160名に対して, 鼻前庭細菌培養を実施した. その結果, 8名で同部位よりMRSAが検出された. これらの職員について検討をおこなつた. 耳鼻咽喉科的診察を行い, 鼻副鼻腔疾患の有無を確認した後, 鼻毛の切断を行い, 生理食塩水の微温湯による鼻洗浄を1日1回1週間以上施行した. その結果, 施行した6例中4例で1週間の洗浄で菌培養が陰性化した. また, 他の2例では, 鼻副鼻腔疾患を有しており1週後の細菌培養でもMRSAが陽性であつたため, 更に, 洗浄を継続した結果, 1例で2週間後, 更に他の1例で3週間後に菌は陰性化した.
  • 多施設共同用量比較試験
    馬場 駿吉, 坂倉 康夫, 木村 利男, 高木 一平, 横田 明軌, 伊藤 弘美, 大屋 靖彦, 月山 昌夫, 河合 孝, 梅田 敬子, 北 ...
    1994 年 40 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 1994/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    外来の慢性副鼻腔炎患者を対象に, 封筒法によりBroncasmaBernaの2・4・20倍希釈群に分け, 各群1回1mlをジェット式ネブライザーにて週2回鼻腔内に4~8週間投与し, エアロゾル療法の用量比較による有効性および安全性に対する検討を行なった.
    1, 自覚症状は, 鼻漏改善度がいずれの投与群においても, 有意な改善が認められた. 改善度評価は, 中等度改善以上が2倍希釈群で33%, 4倍希釈群で64%, 20倍希釈群で31 %であった.
    2, 他覚所見は, 鼻汁量の20倍希釈群, 鼻汁性状での4倍希釈群で改善が認められ, 改善度評価は, 2倍・4倍・20倍希釈群で中等度改善以上がそれぞれ17%, 36%, 15%であった.
    3, 有用度評価はかなり有用以上が2倍希釈群で33%, 4倍希釈群で46%, 20倍希釈群で15 %であり, やや有用以上がそれぞれ75%, 91%, 77%であった.
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