耳鼻と臨床
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46 巻, 1 号
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  • 井上 裕章
    2000 年 46 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性で、仰臥位から左右に寝返りをうつと回転性あまいが起こる。この症状が、5ヵ月間毎日続いていた。あまいを伴う方向交代性向地性頭位眼振を認め、右側臥位の方が左側臥位よりも眼振とめまいが強い。右側臥位における右向き水平性頭位眼振は潜時は1秒以下と短く、持続時間は約30秒でその後第2相の左向き眼振へと変化した。疲労性は認めなかった。この頭位眼振所見は、従来報告されているhorizontal canal BPPV (HC-BPPV) の頭位眼振の特徴とよく一致したので、本例は右外側半規管を原因とするHC-BPPVと診断した。HC-BPPVの発作期間は平均約20日、長くても2-3ヵ月といわれており、本例は遷延例といえる。治療としてLempert法を2 回試みたが、無効であったので、Vannucchiらの報告したforced prolonged position (FPP法) を行ったところ、1回の施行で翌日より頭位めまいと眼振が消失した。
  • 黒木 岳人
    2000 年 46 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    頸部深部受容器の眼回転反射に及ぼす影響を調べるためウサギを用いて実験を行った。ウサギを回転台の上に乗せて、頭部を中心に躯幹を反時計回りに15度一90度捻転させた状態で、振子様回転刺激を与えた。右回転時には眼振の緩徐相速度は抑制され、左回転時には緩徐相速度は促進された。この効果は15度という僅かな躯幹捻転でも出現し、捻転角度が大きくなるほどこの効果も大きくなった。また、伸側のC1-C4脊髄神経を切断することによりこの効果は消失した。以上の結果より、緊張性頸反射が眼回転反射に与える影響は伸側のC1-C4レベルの頸部深部受容器の働きによることが考えられた。
  • 浜田 昌史, 中谷 宏章, 竹田 泰三, 齋藤 春雄
    2000 年 46 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    高知医科大学耳鼻咽喉科で最近経験した、全く経過の異なる顔面神経鞘腫の3例を報告した。症例1では、腫瘍は鼓室部を中心に存在し伝音難聴を呈したが、顔面神経麻痺の既往はなかった。症例2は膝部に限局した鞘腫であり難聴は認めず、14年にわたり持続する高度顔面神経麻痺を呈した。症例3は膝部より内耳道にいたる鞘腫であり、感音難聴と病的共同運動を伴う中等度麻痺を示した。顔面神経鞘腫は比較的まれではあるが、さまざまな臨床経過をたどるため、顔面神経麻痺や一側性難聴診療の際に、その存在を常に念頭に置いていないと誤った診断に至る重要な疾患である。
  • 木寺 一希, 高木 誠治, 内田 雅文, 宮崎 純二, 津田 邦良, 進 武幹
    2000 年 46 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1982年から1997年までの15年間に、皮膚症状を呈し扁桃病巣感染症の疑いにて当科にて扁桃摘出術を施行した89例について臨床統計的観察を行った。対象は男性34例、女性 55例で、疾患の内訳は掌蹠膿疱症が最も多く62例 (69.7%) 、ついで多形滲出性紅斑、乾癬、結節性紅斑、薄麻疹の順であった。病巣感染症に対する扁桃摘出術の有効率は 85.7%であり病巣感染症に対して扁桃摘出術は積極的に施行すべきと考えられた。術前検査値と扁桃摘出術の有効率との検討では、ASO、ASKについては術前異常値を示した症例の有効率がやや高い傾向を示したが、統計学的有意差はなくその他にも病巣感染由来と思われる検査異常値は認められなかった。このことから病巣感染症に対する口蓋扁桃摘出術の効果を予測し得る検査方法の確立が必要であると思われた。
  • 香取 秀明, 鵜飼 潤, 宇留間 哲也, 吉積 隆, 佐竹 文介
    2000 年 46 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    1988年から1997年までの10年間において、群馬県立がんセンター頭頸科にて初回根治治療として、手術切除が行われた、舌癌110例、喉頭全摘出術が行われた喉頭癌108例、下咽頭癌47例のうち、再発した症例について、再発様式、二次治療を検討した。舌癌、喉頭癌、下咽頭癌各々で再発様式は異なるが進行した症例で再発した例は制御が困難となりがちで、特に下咽頭癌では、術後再発の制御が非常に困難であった。いずれにおいても術前の進展度の評価が重要で、一次治療の見極めが大切であると思われた。また、舌癌では再発例でも二次治療にて手術可能ならば、根治できる可能性が十分あると思われた。局所制御後の遠隔転移も認められ、何らかのadjuvanttherapyが必要と思われた。
  • 荻野 敏, 高橋 桜子, 川嵜 良明, 水津 百合子, 入船 盛弘
    2000 年 46 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    アスピリン喘息 (AIA) を対象に日常の食事などにより発作を増悪させる可能性のある物質 (添加物) について問診により検討した。9名中6名で何らかの物質により症状の悪化、出現を見た。誘発物質は (1) 歯磨き、 (2) たくあん、漬物類、 (3) 缶ジュース類、 (4) カレー、香辛料、 (5) 野菜、果物類の5群に分類でき、それぞれにAIAの誘発に関連の可能性がある防腐剤や色素が含まれていた。また見られた症状は喘息、鼻炎の出現から喉のイガイガ感、異物感、咳などであった。このようにNSAIDs以外にも多くの物質により発作の増悪がみられ、このことがAIAの治療を難しくし、またこれらの指導が治療に重要であると思われた。
  • 古謝 静男, 糸数 哲郎, 新濱 明彦, 松村 純, 真栄田 裕行, 稲嶺 智広, 戸板 孝文, 小川 和彦, 野田 寛
    2000 年 46 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    当教室で治療を行った鼻・副鼻腔悪性リンパ腫40例について検討した。1) 全体の5 年生存率は49.5%であった。2) 免疫学的表現形の検索できた症例の63%がT細胞性であった。その中には8例のNK細胞性悪性リンパ腫が含まれていた。組織型は58%が PRで、その他びまん性の大細胞型、中細胞型や多形細胞型、および免疫芽球型などであった。また悪性度では中等度悪性群が75%を占めていた。3) CHOPと放射線治療の併用で治療成績が最も良好であったが、今後腫瘍細胞の種類や悪性度に対応した治療法の改善に努力する必要があると思われた。
  • 山本 貴義, 岡野 光博, 赤木 博文, 小川 晃弘, 西崎 和則, 増田 游, 後藤 昭一, 竹久 亨
    2000 年 46 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    急性副鼻腔炎症例に対して上顎洞穿刺洗浄療法を行い、得られた膿からの分離菌を検討した。菌分離率は90.7%、複数菌分離率は40.8%、嫌気性菌分離率は19.4%だった。1993年一1997年の5年間での分離菌の頻度は、1) 肺炎球菌、2) ペプトストレプトコッカス属、フラボバクテリウム属、4) インフルエンザ菌、5) α溶血性連鎖球菌の順であった。肺炎球菌、インフルエンザ菌は20-30歳代で高い頻度を示し、高齢になるにっれ頻度は減少した。逆にα溶血性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌は10歳代および50歳代以上の高齢層で特に高い頻度を示した。ペプトストレプトコッカス属は各年齢層でほぼ同様の頻度を示した。治療に当たって、これらの分離菌を念頭においた抗菌剤の選択が必要であると考えた。また、抗菌剤の内服に加え上顎洞穿刺洗浄療法の併用により5回までの洗浄で約8割の患者が寛解に至り、同療法の有効性を再確認した。
  • 楠見 彰, 幸地 綾子, 嘉数 光雄, 中村 由紀夫, 伊志嶺 了, 新濱 明彦, 糸数 哲郎, 古謝 静雄
    2000 年 46 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    シリコン膜とコラーゲンスポンジからなる二層製コラーゲン製品である人工真皮は、皮膚や粘膜欠損部位において使用され、その有用性について多くの報告がなされている。今回著者らは切除範囲の決定に苦慮し、病理組織の検討後に二次再建を行った症例において人工真皮を使用した。頭頸部悪性腫瘍の切除再建症例において、いわゆる遷延一次修復を行った症例での人工真皮は, 術創部を二次手術までの期間良好な状態を保っていた。いままでの創傷被覆材では得られなかった感染や創部の汚染の軽減が認められた。また、結果として、二次再建における手術時間の短縮をもたらすものと思われた。
  • -特に方法・手技・麻酔法について-
    調 賢哉, 調 信一郎
    2000 年 46 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2000/01/20
    公開日: 2013/05/10
    ジャーナル フリー
    約13年前より幼小児副鼻腔炎に対し、積極的に中鼻道よりキリアン氏上顎洞洗浄管使用による上顎洞洗浄を行って、治療効果を上げてきた。最近は二者併用療法 (上洗+ニューマクロライドおよびアゼプチン投与) を行っているのでその治癒率はさらに向上している。幼小児副鼻腔炎に対する上顎洞洗浄の適応としてはまず、最近、ニューマクロライドのみで治療され治らぬ症例が多いが、いずれにしても保存的療法で治らぬ難治型症例の他に、第一は高熱を伴う薬物療法で治らぬ急性副鼻腔炎であり、第二は頭痛症例である。第三には、いわゆる「副鼻腔気管支症候群」およびその亜型ともいえる膿性鼻漏と頑固な咳嗽、咳払いを伴った症例であり、いずれも軽快治癒した。その第四は、難治な滲出性中耳炎の合併例であるが、いずれもチューブ挿入術を行わず上顎洞洗浄のみで治癒した。第五に発作を起こす難治な気管支喘息で副鼻腔炎を伴った症例にも上顎洞洗浄は著効があった。なお、麻酔法としてコカインの適切な使用は必須であると述べた。
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