耳鼻と臨床
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61 巻, 4 号
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原著
  • 冨山 道夫
    2015 年 61 巻 4 号 p. 115-122
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    2010 年 7 月− 2014 年 6 月までに集団保育児(集保児)と同居している成人急性鼻副鼻腔炎症例 519 名を対象に、集保児の年齢層と検出菌の薬剤耐性の関係について検討した。 同居している集保児の年齢層が 3 歳未満の群は 3 歳以上の群より、drug-resistant Streptococcus pneumoniae、ampicillin 耐性 Haemophilus influenzae の検出頻度が有意に高かった。同居している集保児の年齢層が 3 歳未満の群は 3 歳以上の群より、検出菌の薬剤感受性が有意に不良であった。成人急性鼻副鼻腔炎の治療にあたり、3 歳未満の集保児と同居している症例では、薬剤耐性菌の感染を念頭におき重症度も評価した上で抗菌薬を選択する必要があると考えられた。
  • 菊池 良和, 梅﨑 俊郎, 安達 一雄, 井口 貴史, 山口 優実, 佐藤 伸宏, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 4 号 p. 123-128
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    口腔・中咽頭癌に対する手術後は、口腔・中咽頭を形成する組織の欠損の問題、その欠損を補填する再建組織により嚥下障害が引き起こされる。また、気管切開により喉頭へ呼気が通らないことで引き起こされる喉頭の知覚低下が、誤嚥の一因であることは古くから示唆されている。当科で口腔・中咽頭癌に対して、2010 年から 2013 年の間に手術を行い、術後初回に嚥下造影検査を行った 32 名(舌癌 18 名、中咽頭癌 14 名〔側壁 9 名、上壁 3 名、前壁 1 名、後壁 1 名〕)を対象とした。誤嚥量と咳反射、咽頭クリアランス、検査時のカニューレの有無、再建材料の比較を行った。その結果、検査時にカニューレがあり、咳反射が不良なほど、咽頭クリアランスが不良なほど、誤嚥量が増大した。また、舌癌術後のうち、残存舌根量が少ないほど、口腔保持が不良となり、誤嚥量も増えることを確認した。再建材料として、前外側大腿筋皮弁と腹直筋皮弁の差は認められなかった。以上より、組織欠損と再建組織以外に、喉頭感覚が嚥下にとって大切なことを再確認できた。
  • 本郷 貴大, 野田 哲平, 小宗 徳孝, 髙岩 一貴, 松本 希, 久保 和彦, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 4 号 p. 129-134
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)は反復する脳卒中様発作を特徴とするミトコンドリア病の一種である。感音難聴は MELAS の 40 − 60%に合併するといわれている。時に補聴器装用効果に乏しい重度難聴に陥る症例も経験するが、頻度が低いためか、MELAS による難聴に対し人工内耳埋込み術を行った報告は少ない。今回、われわれはミトコンドリア脳筋症 3 例に対して人工内耳埋込み術を施行し、2 例で良好な聴取成績を得ることができた。ミトコンドリア脳筋症に伴う難聴は一般的に内耳性難聴が多いが、後迷路性難聴も否定できず、後迷路性難聴が疑われる場合の人工内耳適応については、これからも更なる検討が必要と考える。
  • 西 総一郎, 樋口 仁美, 中川 尚志
    2015 年 61 巻 4 号 p. 135-139
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    症例は、28 歳、女性。近医総合病院で細菌性髄膜炎に対し入院。脳槽シンチで髄液漏が疑われ、側頭骨 CT にて右内耳の形態異常を認めた。反復する髄膜炎の原因として内耳形態異常が強く疑われ福岡大学病院耳鼻咽喉科紹介受診。側頭骨 CT にて蝸牛は 1 回転半回転、外側半規管の低形成、内耳道の ballooning を認め、内耳道底(lamina cribrosa)が欠損しており、内耳腔と交通がみられる所見であった。以上より反復する細菌性髄膜炎の原因は内耳形態異常と内耳道底欠損によるものが示唆された。細菌性髄膜炎の再発防止目的に内耳窓閉鎖術を行った。耳後部より採取した軟部組織を塊状にして、一つずつ挿入した。最終的に卵円窓より大きい軟部組織を 2 片挿入することで髄液漏を完全に停止することができた。内耳の充填は、髄液圧で充填材料が前庭窓を圧迫し、より強固に閉鎖されると考えられた。
  • 野田 哲平, 松本 希, 髙岩 一貴, 小宗 静男
    2015 年 61 巻 4 号 p. 140-147
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    難聴の本質はコミュニケーション障害であり、言語獲得、学業、就労、家庭など人生のさまざまなステージで多大な問題を引き起こしている。現在広く用いられている補聴の機器としては補聴器と人工内耳があり、これらの装用者は難聴患者の増加に伴って今後増加すると予想される。しかし、補聴器はその外見や価格などからすべての難聴者に受け入れられているとは言い難く、また難聴の程度によっては十分な効果が得られないことも多い。反響や残響、周囲の騒音レベルなどによっても、補聴器や人工内耳の効果は減退する。 こういった問題を補完するため、2013 年冬に難聴支援スピーカー Comuoon® が発売された。強い指向性と高音域を増強する周波数特性を持ち、聴取改善に寄与するとされる。その有用性を検証しここに報告する。
臨床ノート
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