紙パ技協誌
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50 巻, 10 号
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  • 田上 量一
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1371-1383
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    1. 生産と消費地をつなぐもの
    紙は遠隔地で, 板紙は関東, 近畿, 中部で生産されているのに対して, 消費地は首都圏が対全国比65%, 近畿圏が18%, 中部圏が9%と三大都市圏に集中している。とくに首都圏は出版印刷同関連産業が集中しており, 圧倒的に大きい市場を形成している。
    この大消費地への輸送は板紙においてトラック便にて大部分が配送されているのに対し, 紙の方は内航海運, トラック便および鉄道輸送にてほぼ均等に分担されている。これらの輸送機関の夫々の受け皿施設は消費地の好立地点に配置されている。
    2. 紙類物流の役割と活発な共同行為
    出版印刷産業は極めて東京都心密着型産業であるが, ここに主要媒体である紙類を納入する紙業界の物流も都市密着型にならざるをえなかった。
    出版物が要求する多品種小ロット, 断裁加工を伴いながら短い納期に間に合わすために, 流通商社は自社車輌にて, これら受け皿倉庫間を集荷して廻っているが, 倉庫規模が大きく取り揃えが豊富にあること, その地区に倉庫が多く集合している事で, 必要品種を一度に集荷でき車輌を満杯にして出発できて, 配送効率, 輸送時間を改善できている。
    当業界は過去より業界あげて大規模共同倉庫の建設をおこなってきた。その結果としての在庫の集約化はいきおい配送の共同化を生み出し, 業界の配送効率を向上させている。また当時, 「紙パルプコードセンター」を設立, 業界コードの統一化をおこなってきた事が, 現在稼動している製紙会社, 流通商社, 運送会社ぐるみの受発注, 配送手配処理システムを可能ならしめているし, 使用後パレット板を回収還流させている「パレット回収機構」もその当時の成果である。このような業界に共通する基盤整備事業は今後も新しい意向を盛り込み, 継続していく必要があろう。
    3. 予想される問題
    (1) 東京都下の出版印刷産業は近年伸び悩み傾向にある。埼玉県は伸張しているが, 首都圏全体ではシェアは低下しつつある。とくに印刷業は平成3年以来出荷額は毎年減りつつあり, この中で構造改善投資を迫られている。紙二次製品および印刷物の輸入量が近年著しく伸びている事の影響も大きい。
    (2) 東京都心の半径10kmの円圏内に東京の出版印刷産業の85% (全国の40%弱) が集中している。また東京港湾地区に散在している紙類在庫量は都下総在庫の過半に当り, これも集中している.災害発生時には港湾地区は流砂現象と橋梁の損傷を被る危険が大きいし, 倉庫内に積載中のパレット積み配の倒壊で被る被害も大きい。災害発生時における対応の研究は今おこなっておく必要があろう。
    (3) 物流技術と情報処理方式が日進月歩の只中にある現在では変化に柔軟に対応できるようにしておく事が大事。あまりがんじがらめのシステムをつくっておく事は危険であろう。
  • 正水 孝二, 江川 純太, 萩原 雅明, 浮海 紀之
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1384-1390
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    近年オフィスのオートメーション化 (OA化) に伴いオフィスで使用される印刷・情報用紙の増加が際だっている。これまでオフィスから出る大量の印刷・情報用紙 (いわゆるOA古紙) は秘密保持, 回収の困難性からその大半が捨てられていたが, 都市ゴミ削減対策からも再利用が必要となっている。今後古紙利用率の向上からも印刷・情報用紙に大量に使用されている白色度の高いバージンパルプの一部をOA古紙に切り換えるためにはトナーインキの再生処理技術の確立がますます重要となってくる。
    これまで第1報, 第2報では, 実機と相関性の高いラボ評価方法の導入および新聞古紙を用いて得られた脱墨剤の構造と性能について報告した。
    そこで, 本報では新規高級アルコール系脱墨剤を用いてPPC印刷トナーインキの脱墨性についてインキ剥離およびインキ補集に及ぼす各因子の影響, また, 脱墨剤の種類と性能について評価し界面科学的アプローチを取り入れて解析した結果についても併せて報告する。
    使用されるバインダーの違いからトナーインキは新聞に使用されるオフセットインキに比べて剥離しにくいため, 良好な品質の再生パルプを得るためには, インキ剥離力の優れた脱墨剤を使用すること, また操業条件の点からは処理温度を高くすることと機械力を大きくすることが特に有効である。
  • 西村 雅夫
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1391-1405
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    抄紙機のドライパートにおける紙の乾燥のメカニズムは, 湿紙の中の水分とパルプとの温度を徐々に上げ且つ水を徐々に蒸発させて, ドライエンドで規定の水分まで乾燥するよう, 個々のドライヤーで必要な熱量を与えることである。多くの場合, その熱量を蒸気によって与えるが, 蒸気はドライヤー内で熱量を放出して凝縮水となる。
    ドライパートでの湿紙の乾燥効率を高めるためには, 即ち生産量をより多くするための効率的操業をするためや省エネルギーを図るには, ドライヤー内で発生した凝縮水を効率よく排出し, またドライヤーに供給する必要な蒸気量を経済的な装置で供給しなければならない。そのためには供給蒸気量や発生する凝縮水量をできるだけ正確に知る必要がある。
    この技術報文では, 個々のドライヤーで発生する凝縮水量を知るための考え方を, 代表的な品種を取り上げて纏めた。各蒸気群の必要蒸気量を計算する手法は確立しているが, 個々のドライヤーの必要蒸気量や凝縮水量を知ることは, 適正なドレネージ装置各部の設計の指針となるのではなかろうか。
  • 本間 忠一
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1406-1414
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    本誌は, 本年 6 月, スエーデン国ストックホルム市の国際展示場で開催された「SPCI」において, 特に印象の深かった次の 3 つのセンサについて紹介する。
    (1) シート欠陥計 : ABB社, ULMAスマート欠陥検出システム。
    (2) シート欠点計 : Mx社, ウエブ・インスペクション・システム。
    この二つのシステムのユニークさをわが国の場合と比較して紹介する。
    (3) シート平滑計 : Mx社, プレシジョン・プラス・表面センサ。
    レーザ光線方式としては, 製品第一号であり, オフライン・テストでは良い相関が得られている。
    (4) 新世代抄紙機シート用センサ : 抄紙機より広幅化, 製品のより小ロット化に対応したシート用センサについて, ハネウエル社の提案を紹介する。
  • 木材科学委員会
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1415-1432
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    平成8年 (1996年) 6月20日 (木) ~21日 (金) の2日間, 東京都北区「北とぴあ」の「つつじホール」において, 約320名参加のもとに第63回紙パルプ研究発表会を開催した。
    発表は, 産・官・学の各界から, 口頭発表33, ポスター発表9, 合計42件で, 昨年の33件を遙かに上回り, 過去最高の発表件数となった。
    特別講演は, 石油公団プロジェクト企画室手塚登室長の「石油・天然ガスの現状と将来」と題するご講演を聴講した。紙パルプ産業にとって重要なテーマであり, 石油開発の歴史, 最新の技術開発, 埋蔵量予測などについて, 非常に分かりやすく解説して頂いた。
    20日の発表会終了後, 恒例の懇親会を約140名の参加のもとに「飛鳥ホール」で開催した。懇親会にはご後援を頂いた北区の北木正夫区長, 高野登次郎産業文化振興部長が来会された。
  • 1996年5月6日~10日オークランド (ニュージランド) にて開催
    福井 照信, 山口 裕之, 阿部 裕司, 飯田 清昭
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1433-1444
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    Pan Pacific Conferenceは紙パルプ技術協会 (日本), CPPA-TS (カナダ), TAPPI (U.S. A.), 及びAppita (オーストラリア・ニュージーランド) の4協会が紙パルプの技術交流を目的として2 年ごとに各国の回りもちで開催する国際会議である。
    1996年の大会は, Appitaの主催で, Appitaの50周年の年次大会に併設してニュージーランドのAucklandで5月6日から5月10日まで開催された。日本から紙パルプ技術協会池田副理事長, 秦国際技術交流委員会委員長をはじめ12名が参加した。
    大会は, Governorの臨席のもと, マオリ族の歓迎の儀式により開会された。ついで, 別会場で 1996 Pan Pacific ConferenceのOpeningを4団体で開催し, 池田副理事長が日本の製紙産業の現状を紹介された。
    この後, 研究技術発表に入ったが, Appitaの年次大会は, オーストラリアとニュージーランドの製紙技術者にとっての最大の大会で, 参加者約500名, 発表件数121報で, 4日間にわたって非常に盛大であった。日本からは8報の技術発表がなされたが, いずれの発表も多くの聴講者の注目を集め, 活発な質問もあり, Appitaからそのレベルの高さを感謝された。
    大会には展示会も併設されていたが, こちらのほうはやや規模が小さい感じであった。大会5日目は4コースに分かれて見学が行われた。
    大会終了後, 一部の参加者でBoyer Mill, Australian Newsprint Mills, Maryvale Mill Australian Paper, 及びCSIRO & APPI を見学, 有意義なものであった。
    次回の会議は, カナダが1998年10月6日~8日に, ケベック市 (Quebec City) でInternational Printing and Graphic Arts Conferenceと合同で開催する。この会議は4地域の団体が参加する数少ないものであり, 今後とも盛り上げて行くべきであろう。
  • 伊藤 通弘
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1445
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • Phanerochaete chrysosporiumFusarium solaniの細胞融合による機械パルプの光による色戻り抑制能を持つ融合菌作出の試み
    橘 燦郎, 和田 みゆき, 伊藤 和貴, 伊藤 智仁, 沖 妙
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1446-1455
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    機械パルプの光による色戻り抑制能を有する2種の菌, Phanerochaete chrysosporiumFusarium solaniのプロトプラストによる細胞融合により, 親株よりも色戻り抑制能の高い融合菌の作出を試みた。P. chrysosporiumからのプロトプラストの最大収量は細胞壁溶解酵素セルラーゼ “ONOZUKA” R-102%, ノボザイム234 2%とキチナーゼ0.2%を組み合わせた場合に得られた。また, F. solani からのプロトプラストの最大収量はセルラーゼ “ONOZUKA” R-10 2%とノボザイム234 2%を組み合わせた場合に得られた。プロトプラスト調製時にマンニトールと硫酸マグネシウムの2種の浸透圧調節剤を使用したが, 硫酸マグネシウムの方が優れた浸透圧調節剤であった。P. chrysosporiumF. solaniからのプロトプラストをポレエチレングルコール法により細胞融合した。最小培地上で生育してきた融合菌を還元性色素, 2, 6ジクロロインドフェノールを含む麦芽寒天培地上でスクリーニングし, 色戻り抑制能を有する2種の融合菌 (融合菌1, 2) を得た。アイソザイム分析により, これらの融合菌は両親株からの融合菌であることを確認した。融合菌からの菌体外粗酵素液とメトキシ-p-キノンとの反応性を調べた。その結果, メトキシ-p-キノンからメトキシヒドロキノンと3, 4ジメトキシフェノールの生成が見られたが, 3, 4-ジメトキシフェノールの生成は少なく殆ど生成しない場合も認められた。
    融合菌1, 2から得られる菌体外粗酵素によりTMPの光による色戻りが大幅に抑制された。融合菌1はほぼ完全に色戻りを抑制し, 融合菌2も色戻りを81%抑制した。両融合菌の色戻り抑制能は親株のそれらよりも高かった。しかし, 融合菌は継代を重ねるとその色戻り抑制能は大きく低下した。
  • アルカリ・メタノール・アントラキノン蒸解廃液とクラフト黒液との比較
    阿部 善作
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1456-1461
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
    アルカリ・メタノール・アントラキノン蒸解について, より詳細な知見を得ることを目的に, 広葉樹ブナノキを供試し, AMA蒸解の廃液 (黒液) とクラフト黒液とを比較検討した。次のような結果を得た。
    (1) メタノール抽出処理済の木粉のAMA蒸解におけるシリンゴールとグアイアコールの収率は原料木材単位重量あたり, それぞれ0.50%, 0.25%であった。一方クラフト蒸解ではそれぞれ 0.18 %, 0.17%であった。
    (2) AMAリグニンは淡黄褐色であり, 色彩計によるL*a*b*は48.0, 8.8, 21.0であった。一方, クラフトリグニンは黒褐色であり, L*a*b*は30.6, 3.7, 8.8であった。
    (3) 波長230-300nmにおけるAMAリグニンの紫外吸光度E (lg-1cm-1) はクラフトリグニンのそれよりも大きかった。しかし, 波長300-400nmではAMAリグニンの吸光度Eはクラフトリグニンのそれよりも小さかった。
    (4) 波長250-260nmにおけるAMAリグニンのイオン化示差スペクトルΔEiはクラフトリグニンのそれの1.5倍であった。AMAリグニンには遊離のフェノール性水酸基がクラフトリグニンにおけるよりも多いことを示す。
    (5) AMA 蒸解における脱リグニン機構はクラフト蒸解における脱リグニン機構と異なる。
    (6) 大気下, 一定温度加熱におけるAMA黒液の蒸発速度はクラフト黒液のそれの2倍以上であった。
    (7) 黒液を初期の体積の5分の1に濃縮すると, 室温でAMA黒液は溶液であり, クラフト黒液は高粘度の溶液であった。
  • 1996 年 50 巻 10 号 p. 1462-1467
    発行日: 1996年
    公開日: 2009/11/16
    ジャーナル フリー
  • 印刷用塗工紙の製造方法
    張 鳴
    1996 年 50 巻 10 号 p. 1468-1471
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/02/09
    ジャーナル フリー
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