紙パ技協誌
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77 巻, 5 号
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プラスチック代替特集
  • 松島 輝幸
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 409-413
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    紙を油や油脂成分が多く含まれる食品の包装に使用する場合,食品の油が包装用紙に浸透しないように耐油性を有する紙や板紙が使用される。従来の耐油性を有する紙では,紙に耐油性を付与する手段としてフッ素系耐油剤が使用されていたが,有機フッ素化合物は健康や環境への懸念があることから代替品への置き換えが求められるケースがでてきている。しかし,フッ素系耐油剤と同等の耐油性を得る事は難しく,またアクリル系などの非フッ素系耐油剤を用いた場合,紙の通気性が低下して,蒸気を逃がしにくくなり,フライドポテトなどの揚げ物を放送した際に食感が悪化するという課題がある。
    本報では非フッ素系でありながら,紙の通気性を高く維持可能であるという特徴をもった耐油コート剤であるSEIKOAT® T-EF201について紹介する。SEIKOAT® T-EF201は下記の特徴を有する。
    ・食用油に対する高い耐油性
    ・フッ素系耐油剤を使用した耐油紙に匹敵する高い通気性
    ・紙の端面からの油の侵入抑制
    ・固形分中におけるバイオマス素材の割合が95%以上
    ・生分解度(絶対値)が70%以上
    ・FDA21CFR§176.170,§176.180収載組成で構成
    T-EF201は,高バイオマス率を有し,生分解性であるという特徴も併せ持っており,より環境に配慮した耐油コート剤である。
  • 佐藤 輝彰
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 414-419
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,SDGsやカーボンニュートラルの観点より,紙包材の活用ニーズが高まっている。
    例えば,プラスチックの持つ優れた機能性(水蒸気バリア性,耐油性,耐水性,ヒートシール(以下「HS」という)性,柔軟性,引き裂き強度など)を持った紙包材や健康リスク懸念のあるパーフルオロアルキル化合物を使用しないで通気性のある非フッ素系耐油紙の開発が各社で行われている。そこで当社では,これらサステナビリティ課題の解決に向けて,機能性水系製品(AWシリーズ)を開発検討している。
    本稿では,AWシリーズの中から紙包材向け水系コーティング剤(AW-500,AW-102,AW-200)を紹介する。AW-500は,柔軟で高い水蒸気バリア層をクラフト紙上に形成し,固形付着量7.4 g/m2で透湿度6 g/m2・day(折り曲げ後8 g/m2・day)を示した。AW-102は,耐油性や耐水性のある柔軟なHS層をクラフト紙上に形成し,固形付着量6.3 g/m2で,110℃圧着後のHS強度5.2 N/15 mm,2分コブ吸水度6.3 g/m2,折り曲げ前後の耐油キット値7を示した。AW-200は,クラフト紙の通気性を保ちながら耐油性を発現し,固形付着量6.7 g/m2で耐油キット値6と透気抵抗度1,500秒を示した。また合成樹脂を対象にした食品用器具・容器包装の暫定ポジティブリスト対応品の開発状況についても報告する。
  • 片野 敏弘
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 420-423
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,持続可能な社会の実現のために,環境負荷を減らす試みの一環として,プラスチック製品から紙製品への置き換えが進んできている。VOITHグループでは,ドイツ・ハイデンハイムおよび福島県本宮市に保有するパイロットコータと塗工技術をお客様にご利用いただくことで,その環境に配慮する動きに貢献してきた。
    この度,ハイデンハイムにあるパイロットコータにおいて,バリアコーティングを想定し,特に乾燥能力とカーテンコータに焦点を当てた改良を行った。ここでは,そのハイデンハイム・パイロットコータについて,紹介させていただく。
    また,合わせて,福島県本宮市にある当社のパイロットコータ設備とバリアコーティングに関する開発活動についても紹介させていただく。
  • 寺嶋 淳泰
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 424-427
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では,飲料用紙パッケージの再利用化をテーマとして,ドイツにあるRepulping Technology社製キャビテーション式パルパー,Saperatec社製複層材料の分離装置,HydroDyn社製ハイドロダイナミック摩擦洗浄装置をご紹介する。2015年に国際連合サミットで採択された,2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すことを目標としたSDGsが背景にあり,紹介する各装置,技術は資源の有効活用を目的としたリサイクルにおいて,既存技術では対応が難しい課題を克服するものであると考える。飲料用紙パッケージをリサイクルするためには,紙とラミネートされたポリエチレンやアルミニウムを選別し,さらにはインクや汚れを洗浄する必要があるが,既存技術では効率よく分離することは難しいのが現状である。Repulping Technology社製キャビテーション式パルパーは,紙とそれ以外の不純物を分離し,Saperatec社製複層材料の分離装置は,ポリエチレンとアルミニウムを分離する。HydroDyn社製ハイドロダイナミック摩擦洗浄装置は,フィルム上のインクの脱墨,洗浄をするものである。飲料用紙パッケージから,紙,アルミニウム,ポリエチレンを回収するこれらの技術の普及により,資源の再利用化実現の一助となればと考える。我々,伊藤忠マシンテクノスでは,工場にて生産された飲料用紙パッケージや食品包装材がリサイクルされるまでの一貫した製品/技術をご提案できるよう,邁進していく所存である。
  • 家高 佑輔
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 428-431
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    従来のプラスチックが持つ機能性や低コスト性は,現代の私たちの生活に欠かせないものとなっている。しかしながら,地球の持続可能性の観点から,地球温暖化ガスの排出や,マイクロプラスチックに変化する可能性のある廃棄プラスチックの流出が,現在問題となっており,世界中で議論が活発化している。バイオマスプラスチックはその良い代替品であると期待されているが,特に材料調達の面で困難がある。そこで当社では,大量に入手可能な木材パルプを原料とした新しいバイオマスプラスチックの製造方法を開発している。
    これまでに当社は,エタノール生産酵母を用いた生化学的プロセスにより,木材パルプをエチレンの原料となるエタノールに変換する技術を開発してきた。本プロジェクトの手始めとして,この技術の再現性を検証し,さらに小規模および大規模スケールにてパルプ由来エタノールを製造した。このエタノールを化学的にエチレンに変換し,さらにポリエチレンに重合できることを実証した。さらに精製方法を確立し,高純度のパルプ由来エタノールを得ることで,パルプ由来ポリエチレンの製造を実証した。
    また,エタノール生産酵母を乳酸菌に置き換えた前述の技術にてパルプ原料を生化学的に変換することで,乳酸を得られることを実証した。それらを複数の工程で精製し,化学的なプロセスを用いることで,パルプ由来のポリ乳酸を製造することも実証した。
    今後は,日本政府が掲げる2,000千トン/年のバイオマスプラスチックの普及に合わせ,2025年以降の実用化を目指し,開発を加速していく。
  • 野田 貴治
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 432-435
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    日本製紙は,飲料用紙パック事業において「原紙製造~加工~充填機~使用済み紙パックの回収・リサイクル」までのトータルシステムサプライヤーとしての機能を確立し,多様な製品の開発・生産を行ってきた。人口減少や牛乳離れなどの背景から,飲料用紙パック需要の低減が見込まれる一方で,化粧品・日用品分野における容器包装の環境対応ニーズに応えるべく,飲料用紙パックの製造・開発で培ってきた技術を応用し,化粧品・日用品などの非飲料分野の環境対応容器として,差し替え式紙パック「SPOPS(スポップス)®」を開発し,商品化を進めてきた。SPOPSは「利便性の向上」と「環境対応」を両立できる容器であり,シャンプーなどのパーソナルケア製品での採用が進んできた。直近では,消毒剤や洗濯洗剤などの当社想定していなかった用途や,サブスクリプションサービスなどの新しいビジネスモデルでの採用が進んでいる。また,SPOPS専用充填機については,メーカーでの生産性向上を目的として高速充填機の開発を行い,充填コスト低減や充填キャパシティの向上につながることから,さらなる用途拡大が期待される。今後,使用済み紙パックの回収の取り組みを推進するとともに,グローバル市場への展開を視野に入れている。
  • 佐藤 壮, 東川 一希, 川浪 悠生
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 436-440
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)やプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の制定を背景に,プラスチック製パッケージから紙製パッケージに切り替える取り組みが活発化してきた。紙製の弁当容器や食品トレイの採用が進むなか,市場で最も普及しているピロー包装の紙製パッケージ化も注目されている。ピロー包装に紙素材を適用する際,従来のプラスチック素材に見られない様々な技術課題が散見されたため,当社では紙製ピロー包装に関する開発を進めてきた。
    本報文では,その開発事例のなかから2つの取り組みを紹介する。一つは,硬く,鋭利な内容物をピロー包装する際に生じるピンホールや破袋を抑制するための開発事例である。一般的なクラフト紙や片艶紙に比べ,高い突刺強度を有するクルパック紙を活用する点に特徴があり,高強度と製袋加工適性(シワの入りにくさ)を両立することが可能になった。もう一つは,賞味期限やロット番号等の可変情報印字に関する取り組みであり,従来の熱溶融型サーマルプリンタで生じていた文字の欠けやカスレを改善するための開発事例を紹介する。当社では紫外線レーザーの光が特定の顔料を黒く発色させる効果を見出し,新しいレーザーマーキング技術を開発した。本技術をピロー包装と組み合わせ,印字トラブルの解消,及び消耗品削減によるコストダウンとプラスチック量の削減が可能となった。
  • 宮崎 さくら, 立花 宏泰, 山本 浩己, 石澤 仁志
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 441-444
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,化石燃料由来のプラスチック使用量を削減する「脱プラスチック」「減プラスチック」への取組が加速している。当社は,パルプを主成分とした「不織布」を製造しているメーカーだが,パルプ主体の不織布を用いた減プラスチックに関する相談が各社から多数,寄せられている。
    こうした背景を踏まえ,当社はプラスチックの特徴を兼ね備えた成形可能なバイオマス不織布「キナリト」を開発した。「キナリト」は,木材パルプなどのセルロース繊維と,バイオマス原料を主成分とした土壌生分解性のある熱可塑性樹脂(バイオマスプラスチック)であるポリ乳酸繊維からなる。この不織布の特徴は,①バイオマス由来の原料を使用し,一定の条件下で生分解性を示す,②熱成形が可能,③粉体を配合可能という点である。また,印刷やシール加工など様々な加工方式に対応した素材でもある。バイオマス原料を活用した素材への注目度は高く,社会からの期待も強く感じている。実用化に向けての開発に取り組んでいきたいと考えている。
  • 前田 裕史
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 445-448
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    世界中を襲っている大規模な気候変動や生態系の変化など,環境問題が深刻になる中で事業活動が環境に影響を与える企業の役割は非常に重要なものとなっている。当社では「地球環境の保全に主体的に取り組む」という経営理念の下,リサイクル可能な紙製品に加え,FSC認証を取得した木材パルプを原料とした球状セルロース粒子「ビスコパール」の製造・販売をおこなってきた。
    研磨剤,洗顔料や化粧品に使用されてきたマイクロプラスチックビーズは,その微小さから,回収・リサイクルは非常に困難であり大部分が河川を通じ海へと流れ出ている。マイクロプラスチックビーズによる海洋汚染が地球規模での問題となる中,自然環境下(土中,淡水,海水)で微生物によって水と二酸化炭素に容易に分解され,燃焼させても有害物質の発生しないビスコパールは,その代替が可能な天然素材である。
    ビスコパールは,粒径3 μmから4 mmまでの幅広いラインアップとなっており,当社独自技術である多孔化粒子の製造も可能である。マイクロプラスチックビーズによる海洋汚染解決の一つの選択肢として,ビスコパールによる代替を促進し持続可能な社会づくりに貢献していく所存である。
総説・資料
  • 大山 孝政, 鎌田 美志, 川上 理亮, 中田 拓司, 谷野 正幸
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 449-455
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    We have developed the open-cycle type adsorbent thermal storage system, so called “Mega Stock”. Based on adsorbent of HAS-Clay, the thermal storage system can utilize the low-temperature waste heat. In the offline heat transportation type, the thermal storage tank charged in the co-generation system was transported by the tractorftrailer and used to heat up water and air in a swimming center. The adsorption heat storage system was evaluated through three kinds of seasons: summer, interphase, and winter. By the tests the regenerating efficiency of 90% or more was confirmed. On the other hand, we performed the demonstration test of the offline heat transportation from the charged thermal storage in the co-generation system to the air handling unit (AHU) of painting process by the tractor. The energy consumption of the cold and hot water used in AHU decreased by dehumidifying the air which flowed into AHU with the thermal storage tank. And, the CO2 reduction effect of 57% was confirmed from the test.
  • 松原 果唯
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 456-460
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
    当工場のバイオマスボイラーの主な燃料は主に建築廃材由来の木質燃料,石炭,そして工場内で発生するペーパースラッジと廃プラスチックである。木質燃料とペーパースラッジで燃料の約90%(熱量ベース換算)を占めており環境に配慮した燃料構成となっている。廃プラスチックは約1%程度であり,残り約10%が石炭を使用している。2021年に当社では二酸化炭素発生量を2050年までに実質ゼロにする「Road to 2050」を発表した。これに向け,石炭の使用量を削減する取り組みを2020年から開始した。
    始めの取り組みとして設備面の限界により下限に達していた石炭投入量をさらに削減するために設備の改造を実施。その結果、石炭使用量の約10%を削減することができた。石炭削減によってボイラー内の管に付着するデポジットの増加が懸念されるため操業データの監視を強化してきたが削減後1年間のデータに異常は見られず、またバイオマスボイラー停止時の点検ではデポジットの増加は確認されなかった。これにより石炭の投入量を10%程度低下させた操業による影響は無いもしくはきわめて軽微であると判断した。
    その後、石炭使用量をさらに約25%まで削減をする取り組みを実施。燃焼灰やボトムアッシュの分析を実施し、バイオマスボイラーへの影響度を確認しながら操業を継続している。
    本稿では石炭削減に向けたこれまでの取り組み事例と今後の方針について発表する。
  • 木材科学委員会
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 5 号 p. 461-469
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル 認証あり
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