段ボール箱等の紙製箱の設計最適化においては, それらの荷重下での挙動, 特に実際に箱が使用される状況を考慮すると, 圧縮荷重下での挙動を把握しておくことが重要である。この目的のために圧縮試験を行うには, 多くの試作, 実験が必要となるのが難点である。また, 箱は複数の板により互いに拘束されている複雑な構造物であり, さらに箱の圧縮は塑性変形, 座屈をともなう現象であるため, 理論的な解析には多大な困難がつきまとう。そこで本研究では, 非線形有限要素解析により, 箱の圧縮挙動を予測することを試みた。
箱モデルは単純化のため, 蓋と底のない側面のみの構造とし, これをシェル (薄板) 要素で均等に分割した。境界条件として, 圧縮試験機の2枚の平行板間における箱の上面から垂直方向への一定速度による圧縮を想定し, モデルの下端部全節点を完全拘束し, 上端部節点には圧縮方向の規定変位を与えた。材料は白板紙の物性を有する弾塑性体と仮定した。また, 箱の圧縮による座屈現象においては, 構造物の剛性が, モデルの材料, 幾何形状特性に加えて構造物の応力状態や変形にも依存するため, 初期応力と初期変位の剛性マトリクスを考慮し, Newton-Raphson反復法による増分解析を行った。
その結果, 紙製箱の圧縮挙動, すなわち座屈後も含めた詳細な圧縮変形過程, および圧縮強度を予測する手法を確立し, これにより, 箱形状, 材料特性が圧縮挙動に与える影響について検討することができた。したがって, 有限要素解析シミュレーションにより, 箱の最適設計すなわち, どのような特性の段ボールや板紙でどのような形状の箱を作ればよいかといったようなことを, 実験や試作の繰り返しを排除することで, 開発期間の短縮を図りながら検討できる可能性が示唆された。
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