紙パ技協誌
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69 巻, 9 号
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製紙技術特集 I
  • 小関 良樹
    2015 年 69 巻 9 号 p. 919
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
  • ―体系・歴史・最新鋭設備―
    高野 行範
    2015 年 69 巻 9 号 p. 920-936
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    抄紙機は,1799年,仏国ルイ・ロベールによって長網抄紙機として発明され,初めて連続的な紙の生産を可能とした設備である。それ以前,製紙は手すきによって行われていたが,この長網抄紙機による「連続的生産」という考えは産業界でも古く,追って発明,実用化されていった製鉄業界や他産業に少なからず影響を与えたと言われている。本稿では,その抄紙機に関して特に洋紙向け抄紙機のウェットエンド,つまりヘッドボックス,ワイヤパート,プレスパートについて,その歴史,体系,および最新技術について解説する。
    ヘッドボックスは開放型,密閉加圧型,およびハイドロリックヘッドボックスに分類できるが,機能上,どのヘッドボックスもディストリビュータ,整流装置,およびスライスという3つに分けることができる。ヘッドボックスは,その型式よりもヘッドボックス各所への要求機能を理解することが大切である。このことはワイヤパートも同様である。長網抄紙機を発祥とし,ギャップフォーマ,ハイブリッドフォーマへと発展してきたが,機能的に見ると,長網抄紙機で採用されていた技術の多くが今日でも採用されている。さらにプレスパートも同様に,古くからある技術が今日でも多数残されている。
    確かに1990年代,ヘッドボックスの希釈白水制御であるモジュールジェットや,ニプコフレックスプレス(シュープレス)が開発されることで,抄紙機の性能は大きく発展し,高品質でありながら,広幅化,高速化によって高い生産効率を得られるようになった。しかしながら,本稿の解説にある抄紙機設備の原点を理解することが,発明されてから200年経過した今でも非常に重要であるとあらためて感じることができる。
  • 島崎 宏哉, 疋田 孝寿
    2015 年 69 巻 9 号 p. 937-943
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    弊社は1963年にプレスロールの弾性カバー材「ハイトップロール」を開発,1983年にシュープレスベルトの「YNB」を開発し,プレスパートにおける要求品質を満たすべく改良を重ねている。
    サクションロールのカバー材は,搾水性能を向上させるための表面加工と安定した接着力が求められる。サクションロールおよびグルーブドロールでは,ブラインドドリルを付加することによりオープンエリアを増大させ,搾水性能の向上を図っている。一方,剥離トラブル防止のために開発したサクションロール用新下巻は,接着力とその安定性が大幅に改良されている。また,最新仕様のハイトップLシリーズをグルーブドロールにも展開することを開発テーマとして取り上げている。
    シュープレスベルトにおいては,操業中での形状安定性や耐クラック性等の要求品質に対応する必要がある。YNBでは2009年に高耐久性グレードSuper95を上市し,ボイドボリュームの低下やランドの欠損を防止できライフアップを実現した。Super95の実際のライフとしては100MNCを超える実績もあり,使用末期でも高いボイドボリューム保持率を誇っている。また,本年度には新材質Super93Hを商品化している。Super93HはSuper95の優れたボイドボリューム保持性を損なうことなく耐クラック性を大幅に改善できており,さらなるライフアップが期待される。
  • 奥田 浩史
    2015 年 69 巻 9 号 p. 944-948
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    尼崎工場6号抄紙機は,1979年にオントップフォーマーへの改造後,2層ライナー原紙を抄造している。経年劣化による老朽化が激しく,スライス調整も困難となるなど,品質及び生産性への影響も顕著となっていた。こうした経緯から,老朽化の更新とともに,品質及び生産性の向上を目的として,サクセスフォーマーへの改造を実施した。結果として,インレット濃度の低減を図ることができ,地合及び強度の向上も見られるなどの様々な効果を得ることができた。
    フォーマーの選定にあたっては,設置スペース等の制約,及び既設裏層の脱水能力を維持させる為抄合わせの位置を変えないことなどを考慮し,ヘッドボックス配置などを改良したサクセスフォーマーとした。カンチ方式は既設同様裏カンチレバー方式とし,構造上2本から5本となったことにより要具替えの作業性悪化が懸念されたが,要具替え時の引き出し用ブロックの軽量化を図るなどの事前対策により問題なくワイヤーの掛入れを行うことができた。
    稼働当初,原料系の表面欠点が改造前と比較して増加し生産性が一時的に低下したが,現在では欠点も減少し,改造前を上回る抄速で生産している。サクセスフォーマーの導入により,さらなる品質面・生産性の両面での向上を確信している。
  • ―ディリューション付ハイドロリックヘッドボックスS―バージョン―
    鈴木 陽介
    2015 年 69 巻 9 号 p. 949-951
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    今回,伊藤忠マシンテクノス(株)は,弊社が取扱いしているフランス・アリモン社の新商品である,ディリューションによるCDプロファイルコントロール付ハイドロリックヘッドボックス「S―バージョン」をご紹介する。従来のハイドロリックヘッドボックスに比較し,コンパクトで,シンプルな設計となっている本商品は,イニシャルコストと設備設置に関する工場の不安点を払拭することが可能である。
    ヘッドボックスのパフォーマンスの争点は,
    1)地合
    2)CD方向の坪量プロファイル
    3)CD方向の坪量コントロールと繊維配向性のゾーンごとのモニタリング
    である。上記の能力的な切り口に加え,操作上の簡易さ,清掃時のアクセス性の良さなども従来品と比較して遜色ない。
    本稿では,アリモン社の簡単な紹介とともに,アリモン社の研究成果である本商品の概要を説明させて頂く。
  • 田島 暁, 梁井 英之
    2015 年 69 巻 9 号 p. 952-958
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    抄紙用ワイヤーはワイヤーパートで使用される用具であり,その役割は
    ①パルプスラリーの脱水
    ②紙質の形成
    ③次工程(プレスパート)への搬送
    の3つである。
    特に,紙質形成に関しては紙の出来上がりを左右する重要な役割であるため,その要求度は高い。近年,製紙業界における高品質,高生産性への要求が高まり,抄紙機は大型化,高速化へと発展している。抄紙ワイヤーもその要求を満たすべく常に進化し続けている。
    当初,理想的なワイヤーと考えられた3重織(第一世代)は,横糸による接結構造であり,接結強度が低いことから内部摩耗が発生しやすく,急激な普及には至らなかった。しかし,3重織は研究改良により第二世代,第三世代へと発展し,現在では抄紙機にて使用されているワイヤーの主流となっている。第三世代の3重織であるWSBは張力のかかる縦糸にて接結する構造であるため,上下網の密着が強く従来からの課題である内部摩耗を極限まで軽減させることが可能である。当社ではこのWSBのデザインの研究をメインに行い,SAKURA・FUJIシリーズを開発し,市場に投入した。内部摩耗は軽減し,末期まで安定した操業が可能となった。また,シミュレーション等の最新ツールを使用し,付加価値のあるデザインの開発にも取り組んでいる。
    本稿では,抄紙機の発展とともに進化し続けているプラスチックワイヤーの組織開発の歴史と,1重織から3.5重織の特徴を紹介する。さらに,3重織内での開発の経緯と,最新の3重織(第三世代)であるFUJIシリーズ(WSB)について紹介する。
  • ―マーケットデマンドに対応した転抄の実現―
    井下 秀文
    2015 年 69 巻 9 号 p. 959-963
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    製紙業界やマーケットは急速に変化している。需要に見合った生産品目への対応が必要となるが,設備の新設でなく,既設設備を活用し,改造による生産品種変更,すなわち転抄という考え方は有効である。
    最近の傾向では,洋紙から板紙への転抄が中心になってきている。板紙の生産においては,高い品質,軽量化が求められており,低坪量,安価な原料,再生紙原料を用いながらも,設備の高速化に対応しつつ,強度を保つ必要がある。
    バルメット社では,板紙の様々な品種生産の要求に対応したヘッドボックスやフォーミングセクションの開発をしてきた。
    2層抄きヘッドボックスOptiFloレイヤリングと,真空アシストフォーミングボードVacuBalanceにより,フォードリニア数を減らしたマシン構成,および高品質の紙生産が可能となる。
    またアクアレイヤリングヘッドボックスにより,2層間の水層に機能性添加剤を供給することで,結合の改善と原材料節約が可能となる。
    転抄において,新技術を導入しながら,低コストで高品質を実現するためには,適切なマシンコンセプトの決定が重要である。バルメット社では技術センタで様々なトライアルおよび解析を行なうことができる。技術コンセプトの比較検討に活用されたい。
総説・資料
  • 下世 昭一
    2015 年 69 巻 9 号 p. 964-968
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    (株)共立合金製作所は1938年に耐摩耗材料 超硬合金メーカーとして創立し,1957年よりスプレーノズルの製造を開始し今日に至っている。
    抄紙機には,洗浄,トリミング,調湿,塗布,冷却などの用途にいろいろなスプレーノズルが多数使用されている。これらのノズルは実操業において,必要不可欠で,製品品質に直結するものも多くある。
    スプレーノズルの仕様には,圧力,流量,噴射角度等があるが,その他として固有の流量分布,衝突力分布等の分布形状があり,これらは,配置設計において重要なポイントとなる。
    スプレーノズルの性能を把握し,ライン全体で最適化することで,ムラの改善,使用水量の削減,噴射圧力の低減につながり,ワイヤ・フェルト・ブレード等延命化や省エネルギー化が期待される。
    本稿では最適化キーワードとして,1)流量分布,2)衝突力分布,3)ノズルの近接化,4)最適値の把握を挙げて説明し,配置対策,分布の最適化を講じることで,塗布や冷却,洗浄といったラインの問題解決策(ソリューション)を紹介する。
  • 小島 英順
    2015 年 69 巻 9 号 p. 969-973
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    製紙工場では抄紙プロセスから排水処理において,その水質に起因する臭気が発生する。臭気対策には消臭剤が使われるが,許容されるコストが限られるなか,より効率的な薬剤適用が求められる。また,臭気物質は工場の安定操業や生産性にまで悪影響を及ぼす深刻な原因物質である。このような視点から臭気対策の最適化について述べるとともに,単なる悪臭対策ではない工場にとってメリットが得られる対策を紹介する。
    抄紙プロセスでは,原料中で生成した硫化水素が貯留タンクやマシンで放散するが,抄紙に悪影響のない消臭剤の適用が重要であり,その添加量は酸化還元電位を指標に最適化できる。また,無機系殺菌剤を用いてパルプスラリーの微生物コントロールを行うと,臭気発生の抑制に加え,抄紙薬剤の使用量削減や欠点減少という生産性向上のメリットが得られる。一方,排水処理工程では,嫌気化抑制剤の適用により活性汚泥中の硫化水素を除去でき,曝気槽での臭気発生の抑制に加え,排水処理能力の改善につながる。さらに,制御室に存在する低濃度硫化水素は,高性能触媒活性炭カートリッジを充てんした腐食環境改善装置により素早く除去でき,腐食による機器故障の抑制が可能である。
  • 2015 年 69 巻 9 号 p. 974-979
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    Ever since the establishment in 1931, we Nissin Kagaku Kenkyusho Co., Ltd., have produced and supplied various kinds of chemicals. We tried hard to be a part as chemical assistants solving troubles at production sites.
    It is our honor, as a forerunner in this field of research, to answer all kind demands of users. At the same time, we will create a novel value with users day by day.
    We will try harder to open new aspects for producing chemicals.
研究報文
  • 福岡 萌, 鈴木 浩由, 中谷 徹, 後藤 至誠
    2015 年 69 巻 9 号 p. 980-986
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    [早期公開] 公開日: 2015/03/16
    ジャーナル フリー
    各種薬品を内添した時の脱墨パルプ(DIP)中の疎水性物質の凝集および繊維への定着挙動について,共焦点レーザー顕微鏡とフラクショネータを併用して分析した。DIPスラリー中の疎水性物質をナイルレッドで蛍光標識化した後,フラクショネータにて「長繊維」「長・短繊維」「短繊維」「ファイン(微細繊維・填料)」「コロイド」の5つの画分に分級し,各画分を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果,無薬添のDIPの場合には疎水性物質の大半がコロイド画分に存在しており,長~短繊維画分には認められなかった。一方で,凝結剤などの薬品を添加すると長~短繊維画分においても疎水性物質が観察され,コロイド画分における存在比率が減少していることが明らかとなった。添加する薬品によって疎水性物質の凝集・定着挙動が異なっていたが,この一因として,疎水性物質の大半がファイン分に定着しているためと考えられた。例えば,中分子量・高電荷密度の凝結剤Bを用いた場合には,疎水性物質は長繊維画分にはほとんど認められなかったのに対し,高分子量・中電荷密度の歩留剤Dを添加した場合には長繊維画分にも存在していたが,これは,凝結剤Bはファイン分を長繊維に定着させる作用が弱く,歩留剤Dはファイン分を凝集させて長繊維に定着させる作用を有しているためであると考えられた。
    以上,本法によって様々な薬品を添加した際の疎水性物質の凝集・定着挙動を簡便に確認することができた。疎水性物質の挙動の把握は,操業上のトラブルの要因解析や適切な内添薬品の選定につながる有用な手段であることから,本法を用いることでこれまでよりも迅速かつ効果的に,操業の安定化につながる研究・分析が可能になると考えられた。
  • Moe Fukuoka, Hiroyoshi Suzuki, Toru Nakatani, Shisei Goto
    2015 年 69 巻 9 号 p. 987-993
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
    The agglomeration and/or fixation behavior of hydrophobic colloidal substances (HCS) in deinked pulp (DIP) furnish was investigated by using a method combined with confocal laser scanning microscopy (CLSM) and a tube flow fractionator (TFF) in order to clarify the influence of wet-end chemicals. A solvatochromic fluorescent dye (SFD) was employed as a hydrophobic probe to visualize the HCS. The effect of wet-end chemicals addition into DIP furnish was evaluated. The furnish was classified into several fractions, as long fibers, short fibers, fines and colloidal materials by using the TFF, and the fluorescence of SFD attached onto HCS in each fraction was observed by CLSM. In the case of DIP without chemicals, the fluorescence was hardly observed in the fractions of long and short fibers, and a lot of fluorescence patches were confirmed in the fraction of colloidal materials. On the other hand, after the coagulant addition to DIP, the patches of fluorescence were observed on the surface of fibers and the amount of patches in colloidal fraction decreased significantly. It was thought that the addition of coagulant induced the attachment of HCS onto fiber surfaces without excess agglomeration of them. Consequently, this method combined with CLSM and TFF, visualized the distribution and behavior of HCS in pulp furnish. It can contribute to get more efficient and effective approach to select proper wet-end chemicals.
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