紙パ技協誌
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70 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
新入社員歓迎号
  • 紙パルプ技術協会
    2016 年 70 巻 4 号 p. 345-349
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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  • 秋元 真也
    2016 年 70 巻 4 号 p. 350-353
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    OPE社は中南米の感熱紙・ノーカーボン紙の製造を牽引するメーカーである。同社は,王子ホールディングス(当時王子製紙)がフィブリア社より事業買収を行う2011年以前より,同情報用紙に関する技術供与を受けており,現在,ブラジル国内において,およそ80%のシェアを占める。設備については,抄紙機を2台,塗工機を3台有しており,1年の生産能力はおよそ120,000tである。近年,中南米諸国における需要増加が予想されることから,増産投資を検討中である。
    OPE社の感熱紙は,ファックス用紙,レシート用紙,ATM・クレジット用紙,ラベル,チケット,宝くじ券のラインナップがあり,レシート用紙,ATM・クレジット用紙に関しては,品質差を判別しやすいように色分けを行っており,事実上の業界スタンダードとなっている。また,ラベル,チケット及び宝くじ券用途の製品に関しては,保存性を付与するための,保護層のコーティングを行っており,ユーザーの要求に合った製品作りを行っている。
    OPE社の他事業所との関わりについては,親会社である王子イメージングメディアに属する海外事業所3拠点(OPE社除く)と,日本国内の神崎工場との間で,定期的に交流ミーティングを実施しており,生産技術面・販売面での情報交換を実施し,コストダウンや品質改善に取り組んでいる。
    先に述べたとおり,王子イメージングメディアは海外4ヶ所に情報用紙の製造・販売拠点を有しており,その中でもOPE社は,中南米地区における重要な拠点である。今後も関連事業所の協力を得ながら,技術力を高め,中南米地域での更なる収益向上を目指していく。
  • 乙幡 隆範, 豊田 和昌, 平原 知香, 福岡 萌, 後藤 至誠
    2016 年 70 巻 4 号 p. 354-357
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    洋紙の需要減による国内の古紙発生量の減少,並びに中国や東南アジア地域への古紙輸出増加により,再生紙の原料となる古紙は不足している。一方,印刷技術の発展により印刷物は多様化が進んでおり,特にUV照射によりインキを硬化させるUVインキ印刷は,環境問題(溶剤フリー)や短納期化への対応等の観点から,商業印刷の分野でも普及しはじめている。今回,各種上物系古紙サンプルについて,ダートの発生しやすさ(リサイクル性)をラボ高濃度離解機及びPFIミルを用いて評価した結果,従来UVインキ印刷物のほか,UVニスやポリスチレンのオーバーコート品のリサイクル性が大きく劣っていることを確認した。省エネUVインキ印刷物は従来UVインキ印刷物に比べリサイクル性は良好であったが,印刷時のUV照射条件に大きく影響されることがわかった。また,これら印刷物について,印刷面のIRスペクトルの違いに着目し,従来法よりも精度よくリサイクル性を予測できるATR―IRを用いた簡易判別法を開発した。この方法により,工場で古紙ベールに含まれる印刷物のリサイクル性を効率よく判別できることから,脱墨パルプ製造時のダート低減,品質向上につながると期待される。UVインキ印刷物を含めた各種古紙のリサイクル率向上に向け,業界を挙げて技術開発に取り組んでいくことが,今後ますます重要になると考えられる。
  • 杉本 武志
    2016 年 70 巻 4 号 p. 358-362
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    近年の化石燃料価格の高騰を受け,中越パルプ二塚製造部は微粉炭ボイラを2010年6月に停止し,発電単価の安価なバイオマスボイラ1缶1基運転体制に移行した。その結果,自家発電力はTMP製造設備以外の設備ですべて消費され,TMP製造設備の運転に用いる電力はすべて買電電力を使用する体制となった。
    TMPの製造には非常に多くの電力が消費され,買電単価の高い平日昼間帯は可能な限りTMP製造設備を停止するよう努めたが,貯蔵能力および生産能力の限界による原料バランスのため,平日昼間帯のTMP製造設備運転は完全には回避できなかった。
    そこで平日昼間帯TMP製造設備運転の完全回避を図るため,遊休設備を利用したTMP生産能力増強・貯蔵能力増強を実施した。この結果平日昼間帯におけるTMP製造設備の操業を完全に停止できた。このことにより買電の契約電力量は設備増強実施前との比較で50%削減され,電力費のトータルコストが大幅に削減された。
    停止した中越パルプ二塚微粉炭ボイラは北陸地区最大級の遊休発電設備であったが,東日本大震災後の電力不足による需要に対応し,電力会社への電力供給のために2011年7月より再度稼働することとなった。今回紹介するTMP製造設備能力増強の副次的な効果として,再稼働した微粉炭ボイラの電力のすべてを電力会社に供給することが可能となったため,安定して北陸地区へ電力を供給できる体制が得られている。
  • 伊藤 由梨
    2016 年 70 巻 4 号 p. 363-367
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    レンゴー八潮工場は,工場をあげての省エネルギーに取り組んでおり,その活動は社会的にも様々な面で認められてきている。本報では,その活動の一環として行った,余剰蒸気の回収を目的としたサーモコンプレッサーの検討・導入について述べる。
    レンゴーの抄紙機ではサーモコンプレッサーの使用経験が無かったが,最低限必要な制御機器の構成を見出すことができ,操業の妨げになるような問題も無く,電力を消費することなく余剰蒸気の回収が可能であるという結果が得られた。サーモコンプレッサーを用いた余剰蒸気の回収は,今回は必ずしも最適な設計とはならなかったが,抄紙機条件によっては非常に有効なシステムになると思われる。
  • 遠藤 哉
    2016 年 70 巻 4 号 p. 368-373
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    三菱製紙八戸工場4号抄紙機では,他号機に比べ蒸気原単位が大きく劣る状態にあった。
    要因は,マシン使用蒸気の大半を占めるドライヤパートでの蒸気量の差によるものであり,問題点は,根本的なドレネージ設備の効率の悪さ及びドライヤ操業条件と既設ドレネージフロー,バランスとの相違によるものである。
    これらの諸問題を解決すべく,2013年12月にドレネージシステム改造を実施し,大きな省蒸気効果を上げることが出来ている。
    本報告では,従来の問題点として,
    ① ドレネージバランス崩れによる再発生蒸気の再使用量減少
    ② ロータリーサイフォンによる高差圧化,ブロースルースチーム量増加
    ③ CD内部スポイラーバー不足による乾燥効率低下
    ドレネージシステム改造概要として,
    ①ステーショナリーサイフォン(以下,SS)化及びタービュレーターバー設置
    ②メインセクション再発生蒸気の自己循環化
    ③ドレネージ配管フロー適正化
    及びその省蒸気効果について紹介する。
  • ―機能性添加剤の開発―
    河崎 雅行
    2016 年 70 巻 4 号 p. 374-378
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    セルロースナノファイバー(CNF)の製造および用途開発が世界的に行われており,当社も新しいバイオマス素材としてCNFの実用化に向けた開発に注力している。CNFは結晶性の高いナノ繊維で,軽量・高強度,低熱線熱膨張などの特長を有しており,様々な用途が考えられている。その中で,食品,化粧品,日用品などの増粘剤やゲル化剤のような添加剤としての利用は,粉末セルロースやCMCなど既存のセルロース製品と類似しており,早期実用化が見込まれる。
    当社のCNFの製造は,TEMPOと呼ばれる有機触媒を用いた酸化処理またはモノクロロ酢酸でエーテル化する方法を主に検討している。パルプをこのような化学処理することでより低い解繊エネルギーでナノレベルまで微細化することが可能となる。当社は岩国工場に設置した実証機(生産量30t/年)を用いて,量産化に向けた技術開発および用途開発向けのサンプル提供を行っている。
    現在,CNFは数%の低濃度の水分散液として製造しているが,添加剤として実用化するためには固形化することが求められる。しかし,CNF水分散液を単に脱水・乾燥するとCNF同士が強く凝集するため,固形化したCNFに再度水を加えても元の分散体の透明性,粘性を示さない。再分散が可能なCNF水分散体の固形化方法として,pH調整,水溶性高分子の添加などの方法を見出し,ユーザーへのCNF粉末品のサンプル提供も開始している。
    機能性添加剤として既存の粉末セルロースやCMC,HECなどとは異なり,CNFはナノオーダーで結晶構造を維持した繊維状態で分散している。この違いからCNFは添加剤の特徴として,チキソ性が高く分散安定性,乳化安定性に優れていること,曵糸性がなく肌に塗布した際にべた付き感がないこと,高強度のゲル化が容易であることなどが見出されている。このような特性を利用して,食品,塗料,日用品,化粧品などへの添加剤としての展開を検討している。
    今後は,CNFの量産化技術の確立とCNFを利用するユーザーとの連携をさらに強化するとともに,産業用素材としてのCNFの品質規格や安全性の評価を早期に確立する必要がある。とくに機能性添加剤で食品や化粧品の用途を考える場合,安全性は重要な評価であり,これについては大学,公的研究機関との連携が不可欠と考えている。
  • 内田 洋介
    2016 年 70 巻 4 号 p. 379-382
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    王子グループでは,事業構造転換の一環として2014年5月より,王子製紙(株)米子工場にて広葉樹溶解パルプの製造,販売およびフルフラールの製造実証試験を実施している。今後,国内での紙需要の縮小が予想される中,世界的な人口増加を背景に,衣服の綿繊維の代替となりえるレーヨン繊維,液晶テレビ等の液晶フィルムの原料となるセルロースアセテート,薬の錠剤の賦形化剤等に使用される微結晶セルロース等の需要増が見込まれ,これらの原料となる溶解パルプの需要増が期待されるためである。
    溶解パルプの製造方法としては,一般的にサルファイト法(DSP)と前加水分解―クラフト法(DKP)の2種が知られているが,既存の製紙用クラフトパルプ製造設備を最大限に活用するため後者の方法を選択し,前加水分解設備を挿入して溶解パルプを製造している。なお,チップ原料には,持続可能な植林木であるユーカリを用い,前加水分解時に発生するキシラン分解物の有効利用方法として,フルフラールを同時製造する方法についても実証試験を実施している。
    本発表では,王子製紙(株)米子工場におけるバイオリファイナリー事業として,前加水分解クラフトパルプ化法による溶解パルプ製造と,前加水分解液を用いたフルフラール製造の同時製造の試みについて報告する。
  • 森田 裕一
    2016 年 70 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
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    白板紙を生産する大竹工場8マシンは食品容器用途の製品を抄造しており,製品への虫混入はユーザーからの信用を失墜しかねない致命的な問題となる。8マシン建屋内で捕獲した虫を分析したところ,外部侵入由来の虫が全数の3/4以上を占めており,虫の侵入防止対策が重大な課題となっていた。
    外部からの虫侵入は建屋の陰圧が高いことが主原因と考えられたため,給気バランス改善による陰圧改善に取り組んだ。防虫効果としては「陽圧化」が理想的であるが,給気ダクト敷設等の設置スペース確保が困難であり,また設備費が高額であったため,「差圧ゼロ化」案を採用した。なお,給気ユニットのタイプとしてはダクト敷設を要さないものを選定し,室内の空気流れを考慮して12台を配置した。またフィルタ連続洗浄機能付給気ユニットとしたことで,フィルタ目詰まり掃除の手間を省けており,安定した給気が継続できている。
    差圧ゼロ化の工事後,虫の室内捕獲数を激減させることに成功し期待以上の効果を上げている。また虫捕獲数がピーク値を示していた春から梅雨時期および秋時期においても大幅に削減できており,年間を通して低いレベルまで抑えることができている。
    本稿では,工事前に行った調査内容,給気ユニット配置検討の考え方および工事効果について報告する。
総説・資料
  • 先名 康治
    2016 年 70 巻 4 号 p. 388-405
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    日本製紙連合会は日本経団連加盟の他の業界団体と共に,1997年より環境自主行動計画を策定し,毎年その取り組み状況を公表して来た。2013年度からは2020年度に向けて新たな環境行動計画として「低炭素社会実行計画」を策定し,地球温暖化防止に積極的に取り組んでいる。主な活動目標は以下である。
    ・2020年度に化石エネルギー由来CO2の排出量を,BAU比(2005年度のCO2排出原単位基準)で139万t削減する。
    ・森林資源の確保とCO2吸収のため国内外の植林事業を推進し,2020年度までに植林面積を70万haに拡大する。
    2015年度のフォローアップ調査結果(2014年度実績)によると,2005年度の化石エネルギー由来CO2排出量2,491万tに対し,2014年度のCO2排出量は1,805万tとなり,削減率は27.6%であった。また,CO2排出原単位は,2020年度の目標値0.852tに対し,2014年度の実績値は0.781tとなった。これは,各社が省エネルギー対策や,非化石エネルギー源であるバイオマス燃料への燃料転換対策等を積極的に推進してきた結果である。但し,再生エネルギーの固定価格買取制度により近年バイオマスボイラーが多数設置されており,今後はバイオマス燃料の調達が計画通りに進まない懸念があるため,2016年度に低炭素社会実行計画のレビューを行う予定である。
    本報告ではこの調査結果を報告するとともに,現在の日本の紙パルプ産業のエネルギー事情や2021年度以降の2030年度に向けた温暖化防止対策となる低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)の概要,さらには温暖化防止対策に関する最近の情報を紹介する。
  • ―2016年1月26日カナダ大使館にて開催―
    宮西 孝則
    2016 年 70 巻 4 号 p. 406-409
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    カナダ大使館はカナダから科学者とプロジェクトリーダーを招聘して「日本・カナダナノセルロース国際シンポジウム」を主催し,日本の企業,大学,研究機関,政府から約100名が参加した。本報告では講演の概要を紹介する。
    森林製品産業(木材,紙パルプ,燃料)は持続的で再生可能な循環型産業であり,次世代製品としてバイオエネルギー,バイオ燃料,バイオ化学製品,バイオマテリアル(例えばナノセルロース)を挙げている。カナダには8つの研究開発グループを統括する国家戦略研究ネットワークがありFIBREと呼ばれている。大学,研究機関,企業がメンバーとなり,大学教授100名,大学生・博士研究員400名が参加している。バイオエコノミーに関する研究ネットワークとしては世界最大であり,FPIイノベーション(旧カナダ紙パルプ研究所:PAPRICAN)と強い協力関係にある。ArboraNanoはセルロースナノクリスタル(CNC)の用途開発を行う研究ネットワークで25のプロジェクトから構成されている。
    カナダの大学はナノセルロースの基礎科学を重視し,CNCを汎用品の代替ではなく新規物質として可能性を研究している。ブリティッシュコロンビア大学(UBC)は,バイオ製品研究開発のリーダーシップを発揮できる人材を育成することを目的として,大学院に新しい修士課程を設け,エンジニアリング,森林科学,経営学を必修にしている。ナノセルロース研究開発のアプローチは,日本とカナダでそれぞれ特徴があり今後の展開に期待したい。
  • ピーター フェゼラ, エリック バーグフリーダー, 宮西 孝則
    2016 年 70 巻 4 号 p. 410-413
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    多くの抄紙機は数回増産工事を行う。復旧,換気平衡,排熱,蒸気システム,コンデンセートシステムなどさほど重要だと見做されていない工程には特に関心が払われていないが,省エネルギーの概念は劇的に変化している。エネルギー効率,紙品質,生産性の相関関係が複雑なため,乾燥工程を深く解析せずに抄紙機の消費エネルギーを最適化することは不可能であり,抄紙機の仮想モデルを数式で表すことが最短で最も効率的な道である。
    設備投資を実施して抄紙機の乾燥効率を向上させ省エネルギーまたは増産を図る場合,工事開始前にその効果を効率的に実証する唯一の方法がコンピューターシミュレーションである。改造工事が始まってから不測の事態を招かないように事前に設計を最適化しファインチューニングする。メーカーが保証するパラメーターを抄紙機のモデルに入力し動かしてみることによって,このモデルが有効な解析ツールであり,全ての技術的課題の解決を支援し,プロジェクトリスクを著しく減少させることが明らかになる。コンピューターシミュレーションはプロジェクトのコストを低減させ,最適な解決策を提供し,短期間の立ち上げを実現しプロジェクトに高収益をもたらす。
    尚,本報告の一部はTokyo Paper2015でフェゼラ氏が発表し,オーストリア大使館の要請で全文を翻訳して紙パ技協誌に掲載する。
  • ―2015年10月29日~11月1日東京大学にて開催―
    宮西 孝則
    2016 年 70 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    2015年10月29日~11月1日の4日間にかけてTokyo Paper 2015が東京大学にて開催された。本学会は,第9回国際製紙及び塗工化学シンポジウム(IPCCS)と国際紙物性会議(IPPC)との共同開催である。
    IPCCSは,スウェーデンとカナダのコロイド化学,界面化学の研究者が中心となって約3年毎にスウェーデンとカナダで交互開催されてきた。IPPCは紙物性に関する国際会議であり,IPCCSとIPPCの共同開催は,2012年に次いで2回目である。参加総数は148名で,そのうち海外からの参加者が60%であった。研究発表の割合は海外の研究者が75%に達し,近年国内で開催された紙パルプ研究に関する国際会議では最大規模であった。主な参加国はスウェーデン,カナダ,フィンランド,中国,フランス,韓国,オーストリア,タイ,ノルウェー,ドイツで,米国,英国,オーストラリア,スイス,ルーマニア,ブラジルからの参加もあり,日本を含めて17か国の国際会議となった。
    日本からは,東京大学,京都大学,九州大学,筑波大学,東京農工大学,高知大学,東京家政大学,慶應義塾大学,王子ホールディングス,日本製紙,北越紀州製紙,大王製紙,荒川化学工業,栗田工業,星光化学が貴重な研究成果を発表し,活発に質疑応答を行った。開会式では,実行委員長である東京大学大学院磯貝明教授が開会挨拶を述べ,続いて紙パルプ技術協会が日本の紙パルプ産業の現状について特別講演を行った。開会式終了後,参加者は2会場に分かれ,IPCCSは東大キャンパス弥生講堂一条ホールにて,IPPCは中島ホールにて口頭発表を行った。全部で78件の口頭発表と28件のポスター発表があった。IPCCSの発表はナノセルロースが多く,大きな関心を集めた。
  • 第6回 和紙産業の対応及び環境への意識
    飯田 清昭
    2016 年 70 巻 4 号 p. 422-429
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル 認証あり
    和紙の生産は,江戸時代では以下のようであった。
    製法は,基本的には古くからの踏襲で,楮,三椏を原料として,手作業で,手漉きであった。しかし,各藩は,重要な産業として保護し,育成していた。その紙をベースに,木版印刷による出版文化が栄えた。
    明治になり,新しい生活様式として活字印刷と紙器が持ち込まれると,それに適した品質の洋紙が輸入され,和紙は印刷紙としての用途を失った。しかし,ここから和紙の反撃が始まる。藩の統制がなくなった自由な雰囲気の中で,吉井源太に代表される技術開発が行われ,円網抄紙機の導入,新製品開発,開かれた技術交流等で,生産を維持,1915年頃(最初の洋紙生産から40年後)まで,洋紙を上回る生産(金額)を行った。代表的な製品が,コッピー紙として統計に載せられている薄紙で,タイプライター用紙や典具帖紙であり,1913年の統計で輸出量が350トンであった。
    しかし,1920年を境に,急速に生産が減少した。木材パルプを原料として,大型抄紙機で生産する洋紙とは価格と供給能力で競争できなかった。その中で,和紙の特徴を生かした高機能紙が新しく開発されてきている。これはまた別のテーマである。
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (110)
総合報文
  • -Special Lecture of Tokyo Paper 2015-
    Takanori Miyanishi
    2016 年 70 巻 4 号 p. 434-440
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    [早期公開] 公開日: 2016/02/18
    ジャーナル フリー
    The manufacture of pulp and paper is one of the world's oldest industries. The significance of paper and paper products is obvious to everyone ; no manufactured products play a more meaningful role in every area of human activities. The industry has developed through many technological innovations for centuries. Japan is an energy efficient country and the emission per GDP is very low among advanced economies. The carbon dioxide emission per unit of paper and paperboard production has been reduced significantly due to industries' numerous efforts including energy saving, conversion from fossil fuel to biomass residues and installation of energy efficient equipment. We aim to realize a green recyclable economy and nurture“urban forest.”It is a part of the program to reduce fossil fuel consumption and carbon dioxide emission in preventing global warming. By applying biotechnology to forest science, Suzano in Brazil will start commercial scale field tests of gene transformed Eucalyptus trees that grow fast or hold the traits of salt, frost or drought stress tolerances. In advanced economies, printing and publishing on-demand is the future of the industry and is one of the most important strategies that publishers need to embrace to grow in today's digital marketplace. In the United States, TAPPI Agenda 2020 Technology Alliance encourages the development of advanced manufacturing technologies that promise transformational impact on the paper and forest-based industries. In Europe, deep eutectic solvent was selected as the winning concept to lower carbon dioxide emissions. By dissolving wood and selectively extracting lignin, it could replace both chemical pulping and mechanical pulping. In Japan, the Nano Cellulose Forum was established for its rapid commercialization. It is all-Japan based consortium, for sharing information and enhancing cooperation among academies, industries and governments. Dr. Isogai et al. received Marx Warenberi Award for their research on TEMPO mediated cellulose nanofibers. By their method, the energy need can be reduced significantly and the cellulose produced this way can disperse homogeneously. It is a discovery that paves the way for nanocellulose being one key product of the future forest industry.
  • ―Tokyo Paper 2015 特別講演―
    宮西 孝則
    2016 年 70 巻 4 号 p. 441-445
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/01
    ジャーナル フリー
    紙パルプ産業は世界で最も歴史のある産業の一つで,環境に調和しながら文化の担い手として素晴らしい素材と製品を提供している。紙は幾多の技術革新を経て進化を続け,その伝統は現代に引き継がれている。日本の紙パルプ産業は,省エネルギー,バイオマス燃料への転換,エネルギー効率の高い設備の導入などによって二酸化炭素排出量を1990年と比較して著しく削減している。ブラジルでは,遺伝子組み換えユーカリが開発され,Suzano社は政府の認可を得て商業規模の植林テストに乗り出す予定である。成功すれば収量が増加し伐採期間が短縮され製紙産業に大きな波及効果をもたらすであろう。
    先進国では,オンディマンドデジタル印刷が急速に伸びており,カタログの40%,ダイレクトメールの50%が数年以内に切り替わると予測されている。特にインクジェットの伸びが著しく,製紙会社はそれに対応した用紙を開発している。
    米国では,TAPPIが高歩留まり化学パルプ,省エネルギー型黒液濃縮法,プロセス排水の再利用,抄紙機ドライヤー入口水分の低減,ナノセルロース,高付加価値バイオ製品を次世代研究テーマに挙げている。ヨーロッパでは,CEPIが共晶溶媒を最優秀テーマとして選定し,木材からリグニンを選択的に抽出し,化学パルプや機械パルプに代わる新しいパルプ化法を開発する。日本では,経済産業省が主導してナノセルロースフォーラムを立ち上げ,会員相互の情報交換を密にして実用化を加速させ,既に様々な企業,大学,政府機関など260以上の団体と個人が会員登録している。
    先月,東京大学大学院磯貝明教授と齋藤継之准教授が,セルロースナノファイバーTEMPO触媒酸化に関する画期的な研究業績により,フランス国立科学研究センター西山義春博士と共に,アジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞した。この賞は,「森林・木材科学分野のノーベル賞」と言われている。心からお慶び申し上げるとともに,本学会の成功を祈念する。
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