紙パ技協誌
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73 巻, 10 号
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製紙技術特集 II
  • 賀川 泰裕, 桂 仁樹, 駿河 圭二, 三枝 隆
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 934-938
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    抄紙プロセスで使用されている多量の水は,原料古紙の変化や抄紙条件の影響を受け,水質が大きく変動する。しかし,水質が変動しているにも関わらず,水処理薬品は一定量で使用されている。このため,悪化した水質に対応出来ず,操業の不安定化や製品品質へ影響を与えてしまうケースが少なくない。

    当社は,この水質変動に着目し,水質と操業との相関解析から最適な水質管理・薬注入制御を行うことで,操業安定化に貢献する新システム「S.sensing®システム」を開発した。

    S.sensing®システムは主に3つの機能を有している。1つ目はリアルタイムに水質状況を監視し,過去からのデータを蓄積出来る点である。これにより,問題発生時の水質や,連続的な水質変化を可視化することが出来る。2つ目は水質と操業の相関関係を解析し,最適な水質指標を構築出来る点である。3つ目は,最適な水質が維持管理出来るよう薬剤の制御添加を行う点である。これにより,様々な影響による水質変化を迅速に察知し,管理することで操業安定化に寄与出来る。

    本報では,S.sensing®システム適用による水質と操業の関係解析から,水質をコントロールすることでウエットエンドの改善が図れることが確認された。さらに,S.sensing®システムを排水工程まで適用拡大することで,工場全体の水質維持管理を行い,操業安定化に貢献した事例を紹介する。

  • 清水 良三
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 939-943
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    これまでの紙の強度の計測方法は,枠替え後に巻取の表層からサンプリングしたシートを,試験室においてオフラインで破壊検査を実施する。したがって,計測結果を操業に反映させてその結果を得るまでに1時間近くのタイムラグが発生する。出荷製品の品質目標値を確実に保証するには,操業での設定値を高めに設定することで対応しているが,薬品や原料配合で過剰な浪費つまり無駄が発生する。品質目標値の許容範囲を超えて問題が発生してから対応するまでに生産している製品は損紙扱いとなるため,生産効率を下げる要因である。

    バーチャルセンサは,プロセスデータ・機械データ・試験データの解析処理とモデル化(静的・動的)によって,様々な品質管理値をオンライン予測して数値化できる技術である。リアルタイムでの品質管理ができるため,過剰な運転コストの削減と生産性向上が期待できる。スマート制御モジュールと組み合わせてオンライン制御することは,安定操業による安全確保や性能改善も提供できる。

    理論や経験に基づいて相関関係のあるプロセスデータだけを利用するのではなく,全てのプロセスデータ・機械データ・試験データから相関性の高いデータを見つけ出してモデルに反映させるので,非常に高精度なモデルが構築される。基本的に全ての品質管理値をバーチャルセンサとしてモデル化することが可能である。強度以外にも透気度・カール等で実績があり,強度は破裂強度(バースト)・層間強度(プライボンド)・曲げ剛性(ベンディング)・SCT・CMTなど様々な紙種に必要な管理値に対応している。

  • ─製紙工場の操業性および信頼性を向上させる先進的分析─
    ヤリ アルミ, サミュリ レヒトネン, 石原 健一
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 944-948
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    インダストリアルインターネットは,データを安全に評価し,それをパルプ,紙およびエネルギー生産者のための貴重な資産に変えるための現代のイネーブラーである。これにより製造者は,工場のプロセス作業,品質および収益性を安定させ最適化することが可能な有効な決定および修正を行うことができる。特に重要なのは,インターネットやクラウドコンピューティングにより,こうしたデータが容易に移送できるため,パルプ,紙およびエネルギープロセスのスペシャリストはプロセス,安定性および経済的操業の状況を,素早く確実に評価することができる。その結果,性能が向上することになる。

  • 木村 雄
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 949-955
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    近年,環境負荷低減のために古紙配合率や水の再利用率が上昇しており,抄紙マシン内は古紙由来の汚れの増加,内添薬剤の歩留り低下による増添などにより,以前よりも操業トラブルが発生しやすい状態になっている。弊社では微生物が介在する汚れの対策としてスライムコントロール剤の「キュアサイドシステム」,内添薬剤やピッチ成分による汚れ対策として歩留り剤・凝結剤システムの「アクシーズシステム」を展開しており,微生物・非微生物の両面から抄紙マシン内の汚れを低減させるための薬剤開発を行っている。「キュアサイドシステム」は次亜塩素酸ナトリウムと反応させる無機タイプのスライムコントロール剤であるが,殺菌成分として「無機成分」だけでなく「有機成分」を発生させることや,次亜塩素酸ナトリウムと混合した直後に添加できる特徴により,非常に高い殺菌効果を発揮することができる。「キュアサイドシステム」を使用することで,白水中の微生物数を大きく低下させ,微生物によって発生していた紙面欠陥やタンク汚れを低減することができた。非微生物由来の汚れ対策としては「アクシーズシステム」の高機能アニオン性歩留り剤「リアライザーFX77」を紹介する。「リアライザーFX77」はポリマー構造等を大きく見直し,ポリマーにせん断力(シェアー)がかかり分子量が低下した状態でも歩留り向上効果を発揮しやすい「リアクティブポリマー」の技術を導入したことで,内添薬剤の定着性を改善し,サイズ剤由来成分が検出された紙面欠陥数を大幅に低減することで抄紙マシンの操業性を向上することができた。

  • 宮西 孝則
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 956-958
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    著者らは日本製紙の研究所においてウェットエンド科学の基礎的な実験を行って知見を蓄積し,製紙工場の大型ツインワイヤー抄紙機(年産10万トン)を用いて第一回実機テスト(12時間)を実施し,オンサイトPCC(沈降性軽質炭酸カルシウム)を高配合した中性新聞用紙が技術的に製造可能であることを示した。しかし印刷所において紙粉トラブル(リンティング)が発生し実用化には至らなかった。

    そこで研究所にてプリューフバウ印刷テスト及び電子線マイクロアナライザー(EPMA)と電子顕微鏡(SEM)による観察を行ってリンティングと紙層構造を調べた。その結果,抄紙機ワイヤー上の紙層形成過程において,PCC粒子が機械的な濾過作用により紙の表層に不均一に留まり,それが印刷工程で剥離して紙粉トラブルを起こしたと推定された。

    次にラボ実験にて対策を検討し,第二回実機テスト(23時間)に踏み切った。オンラインゼータ電位測定装置で連続的に抄紙機のヘッドボックス原料を測定し,ゼータ電位を高分子歩留剤の効果が発揮できる範囲にコントロールした。ヘッドボックスpHは7.5~8.0の範囲で安定し,機械パルプのアルカリ焼けによる白色度低下,断紙,発泡,ピッチトラブルなどは発生せず操業は順調であった。歩留り剤の効果により微細繊維とPCCのファーストパスリテンションが向上し,紙の表裏差と印刷所でのリンティングは解消し,地合いが良く,インキ転移,裏抜けなどの印刷品質に優れた,高白色度で高不透明度のカラー印刷に適した中性新聞用紙を開発した。

    得られた知見を他の抄紙機にも適用し,数多くの出版用紙を生産する日本製紙石巻工場を完全中性化し,安価で高白色度のオンサイトPCCを配合してパルプと高価な填料を減配し大幅なコストダウンを達成した。

    このようにウェットエンド科学を用いた解析技術は,紙の抄造の基盤技術として多くの製紙工場で幅広く活用されている。紙パルプ技術協会は次世代に紙パルプ製造技術を継承するためシニア世代の会員に紙パ技協誌への報文投稿を呼びかけている。本報告がその一助になれば幸いである。

  • 糸瀬 龍次
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 959-964
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    ハリマ化成は,日本,中国,アメリカ(米国),および東南アジアにおいて,品質要求やFDAなどの環境規制に対応した製紙用薬品を販売している。本報では,その国および地域における製紙業界の動向や原料事情を捉えながら,製紙用薬品であるウェットエンド薬品の概要,およびウェットエンド薬品事情を報告する。また,当社の主要ウェットエンド薬品であるPAM系紙力剤やロジンサイズ剤Co-mingleシステム®について,その特徴および効果・メリットを紹介する。

    近年,インターネットの普及による通販の物流増加が製紙業界においても大きな影響を及ぼしており,印刷用紙等の紙消費の減少に対し,梱包資材である板紙需要が増加している。その板紙生産量は各国の貿易政策や直近の米中貿易摩擦により影響を受け,原料事情に大きな変動がある。また製紙用薬品の動向はその原料事情により影響を受け,原料古紙の確保激化,古紙リサイクル回数の増加による繊維劣化や灰分増加によりウェットエンド薬品の効果に悪影響を及ぼす。そのような状況の中,品質である紙力強度やサイズ度は重要であり,その紙力剤やサイズ剤は機能性だけでなく,生産性向上に寄与しなければならない。紙力剤として使用される澱粉は安価であるが,ワイヤー上での濾水性は悪く,生産性や環境負荷の悪影響がある。今後,さらに古紙使用率の増加,原料強度の劣化に伴い,当社は効果的なPAM系紙力剤やロジンサイズ剤の適用を提案し,原料事情やウェットエンド事情を把握し,加えてマシン操業条件の最適化によりウェットエンド薬品の効果を最大限に発揮し,顧客の要望である品質や生産性向上に応えていく。

  • 姫井 康年
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 965-969
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    近年の製紙業界では,古紙利用率の増加,また系内クローズド化によって,古紙に含まれる粘着物を主要因としたピッチトラブルが増加している。また,製品の多様化,薄物化など,紙・板紙ユーザーの様々な要求もあり,安定操業・品質向上を目指す製紙技術者にとって大きな課題のひとつとなっている。

    ピッチ問題への取り組みに関する考え方として,弊社では以前から「NISSIN-Pitch Control Method (NISSIN-PCM)」というものがあり,ピッチ問題に取り組む上で,弊社が最も重要と考えているものである。ピッチ対策としては,「ピッチを系外に排出する」,「ピッチを紙中に抄き込む」,「マシンに付着させない」,この3つの方法が挙げられる。

    NISSIN-PCMの前段階である「ピッチを系外に排出する」,「ピッチを紙中に抄き込む」方法としては原質工程において内添薬品にて対応している。

    本稿ではNISSIN-PCMの最終段階となる「マシンに付着させない」すなわちウエットエンドでの弊社取り組みについて,弊社が開発した外添薬品である「ハイタッチFR」,「ニュートロン」,「ハイタッチSPH」シリーズについての開発コンセプト,ならびに効果発現メカニズムを含め紹介する。

  • 田中 正守
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 970-976
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    アプローチフローは抄紙工程直前にある,抄紙機の操業や製品の品質に大きな影響を及ぼすシステムのひとつである。ここでは主に脈動対策,濃度ムラ対策,混入エア対策が必要とされている。最新のシステムではこれらの対策に加え,省エネ・省スペースといったメリットも得られるような改良が加えられている。

    原料同士を混合させるミキシングタンクでは,スタティックミキシングを併用することでタンク容量を最大70%削減でき,それに付随してアジテータの容量も小さくすることができる。原料を希釈するサイロでは,希釈水と原料との流速差を大きくすることで均一な希釈が速やかに行われるハイドロミックス方式がある。これは従来のサイロよりも容積を最大80%削減できる。またリテンション時間が短くなり気泡が先送りされる懸念については,白水トレーで脱泡することや渦を発生させない構造を適用することで気泡の巻き込みを防止している。また微細な泡や溶存空気を除去するためには真空タンク式脱気装置が用いられる。これは遠心式脱気装置よりも省スペースかつ省エネのシステムである。脈動対策には低脈動型ロータや特殊ケーシングをもつスクリーンを適用することで脈動を最小限に抑えることができる。

    これらの最新技術を適用したシステムは従来よりもコンパクトかつ省エネであり,かつ品質をより重視してクリーナを適用するラインにもその効果を発揮する。

  • 下地 力
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 977-980
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    王子製紙株式会社米子工場N-1M/Cでは,抄込まれ欠陥の発生,ならびに抄込まれ欠陥発生に伴なう紙切れが散見し,この低減が課題であった。

    そこで,まずアプローチ系の設備を点検し,マシン前1次スクリーンのバスケットを更新して穴軽欠陥の削減を図った。

    また,「横裂け」と称する穴を採取,分析し,欠陥発生箇所の推定と絞り込みを行なった。採取した穴欠陥には,填料,パルプ繊維の塊が存在し,塗工損紙配合系統内に存在する未溶解原料がその原因と推測した。

    塗工損紙処理系統を設備点検し,対策を講じて,抄込まれ粕ならびに紙切れ要因である裂け欠陥の減少に大きく寄与した。

総説・資料
  • 古城 敦, 関沢 真吾, 安住 尚也, 塚本 晃, 池水 昭一 , 井手 浩平, 兼澤 みゆき, 福田 明, 上村 毅
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 981-985
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    空気中の二酸化炭素を吸収して生長する植物を原料として生産するバイオエタノールは,再生可能な自然エネルギーであること,および,その燃焼によって大気中の二酸化炭素量を増やさない点から,化石燃料とは異なり,持続可能なエネルギー源としての将来性が期待されている。すでにブラジルやアメリカでは,サトウキビやトウモロコシなどから製造したバイオエタノールを,ガソリンと混合し,自動車燃料として使用しているが,バイオエタノールの増産により,食料と競合するために食料価格が高騰する問題が指摘されている。

    また一方で,我が国における低いエネルギー自給率を背景に,2009年「エネルギー供給構造高度化法」が制定され,温室効果ガス排出量を削減するバイオ燃料の使用が義務づけられている。現在,ブラジルからサトウキビを原料としたバイオエタノールを輸入しているが,法には食糧との競合に配慮することが記載されており,エネルギーセキュリティーの観点からもセルロース系エタノールの開発が望まれている。

    そこでJXTGエネルギー株式会社(以下,JXTG)と王子ホールディングス株式会社(以下,王子HD)では,セルロース系エタノールの開発と実証を目的として,「セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業(2015~2017年度)」を実施した。本事業は国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(以下,NEDO)の支援の元,前身であるNEDO事業「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業(2009~2013年度)」で得られた要素技術を持ち寄り,ラボ実験にて最適な組み合わせを選定した上で,パイロットプラントでの実証実験を行った。

  • ─Valmet社(フィンランド)技術の日本での展開─
    安尾 典之, 岩根 公明, 井上 大介
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 986-991
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    当社はフィンランド・Valmet社と抄紙機におけるドライヤーシリンダー用非粘着コーティングDryOnyx Hについての技術契約を締結し,2015年より日本国内での提供を開始した。DryOnyx HはValmet社が2001年頃より提供しているDryOnyx Zの各種特性を向上させた特殊皮膜形成技術であり,世界中の製紙メーカーにその効果が認められ採用されている。2014年8月時点での施工実績本数は300本以上にもおよび,ほとんどの顧客においてその機能皮膜は優れたリリース特性やドクタリングとの相乗効果による汚れ付着防止特性を発揮し,製紙プロセスにおける紙品質,生産性の向上に寄与している。

    DryOnyx Hはオンラインにて短期間で施工することができ,一般的な非粘着コーティング技術のようにシリンダーをラインから取り外して工場に搬送する必要がない。また,オンライン施工可能な技術として低温焼成型の塗装皮膜やテフロンシートの貼り付けなどもあるが,いずれもドクターブレードが使用出来ない,皮膜が早期に損傷してしまうなど品質面,寿命面での問題がありユーザーの満足を得られていない。DryOnyx Hはそれらの課題を解決すべく開発された画期的なオンライン施工技術である。また,定修期間内に施工できる短期間施工であること及び長寿命の観点からも各顧客の期待に応えている。

    当社では,2015年9月のオンラインでの施工を皮切りとして2017年下旬までの約2年間で9件のドライヤーシリンダーへの施工を実施した(2018年も6件以上の施工を予定)。本稿ではDryOnyx Hの基本的な特性,施工方法を紹介すると共に,日本国内で施工した実績について実例を交えて紹介する。

  • ─ローレンツェンアンドベットレーの新世代の全自動紙質試験機とオンラインパルプ測定器─
    山﨑 光洋
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 992-997
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    成熟したビジネスには,競争力の維持に持続的な改善が要求される。今日では以前に増してこのことがより重要になっている。コスト削減と効率改善の探求が常に議題となる。パルプ・製紙業界では,定められた品質内の製品を可能な限り低コストで製造するのが第一の目標であり,品質試験とプロセス管理がその目標を達成するひとつの方法である。

    規格に準拠した物性および品質の測定により,可能な限り低いコストでプロセスオペレーターは定められた品質仕様内で製造することができる。信頼のできる,迅速かつ費用効率の高い,プロセスを通した物性および品質の測定は,製品最適化に必要不可欠であり,規格に準拠した測定こそがその実施に最良の方法である。

    本稿では,L&Wオートラインについて,世界中で500台に迫る実績から得られた経験と知見を紹介する。さらに,L&WフリーネスオンラインおよびL&Wファイバーオンラインについて,そして,これらを組み合わせた新製品L&Wフリーネス・ファイバーオンラインについて,設計コンセプトと機能を紹介する。

  • 武井 俊達, 友田 生織, 田原 江利子, 近藤 光隆
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 998-1002
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    当社分析センターには,王子グループ全体から,製品中のイオン分析に関する相談や依頼が寄せられる。その内容は,日本工業規格(JIS)に準拠した公定法による測定から,製品中の微量イオンが問題となった場合の原因調査の分析まで多岐にわたる。紙製品中のイオン種とその濃度は様々な製品品質に影響を与えるため,定性及び,定量分析することは品質管理をする上で非常に重要なことである。また,イオン濃度を正確に知るためには,十分な感度を有する方法が必要となる。その一つとして,クロマトグラフ法による液体中のイオンを測定する手法としてH. Smallらによってイオンクロマトグラフィーが1975年に発表された。イオンクロマトグラフィーは,イオン種成分を分離し選択的に検出する分析器機を用いた方法で,JIS K0127イオンクロマトグラフィー通則,上水試験法に採用され,環境,化学工業,食品,製薬・医薬など,さまざまな分野で応用されている。今回,低イオン量サンプルの高感度分析に取り組み,水,試薬,実験器具に起因する汚染物質を少なくし,新たにカラム種類,試料導入量等の装置条件を検討した。今まで微小なクロマトグラムとして検出していた炭酸イオン(CO32-)が増大し検出した。このため一部のイオン種で分離精度の低下が発生したため,更に分離条件を検討した。

    本稿では,測定条件の検討を行い,紙試料及び,フィルム試料への適用を試みたので,報告する。

  • 原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 1003-1010
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル 認証あり

    Together with about 100 group companies in Japan and overseas, Kawasaki Heavy Industries(“KHI”)  oversees the formation of a “technology corporate group”. Our technological capabilities, polished over a history that exceeds a century, send diverse products forth into wide–ranging fields that go beyond land, sea, and air, extending from the ocean depths to space. Aerospace division is active in products ranging from aircraft to satellites. The products that our rolling stock division delivers to the world include Shinkansen and New York subway cars, while our ship and offshore structure division’s products range from gas carriers and large tankers to submarines, and our energy solutions division covers the spectrum from development and manufacture of energy equipment to management systems. We are also active in wide–ranging businesses driven by diverse and high–level engineering technologies, including environmental and recycling plants, industrial plants, precision machinery, industrial robots, and infrastructure equipment. We operate our leisure and power products business that features the motorcycles known as the Kawasaki brand. Through the development of unique and broad businesses unmatched elsewhere, we will continue to create new values that solve the issues facing our customers and society.

    KHI Energy System & Plant Engineering Company supplies power generation products and systems that use gas turbine generators, gas engine generators, and etc. as key components in the energy field, and it provides engineering for those products according to customers’ diverse needs for energy.

    Our gas turbines are developed by our own technology, with line–up for cogeneration up to 30 MW class, combined cycle up to 100 MW class, and emergency generator sets up to 4,800 kW class. We are active in various field of the world for distributed power supplies and emergency power supplies in case of natural disasters.

    In addition, 5 MW class and 8 MW class green gas engines are also developed by our company, and are used for cogeneration, in–house power generation, distributed power generation and etc. Energy saving, energy cost reduction, and reduction of emissions with high efficiency of power generation and eco–friendly performance.

シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (130)
研究報文
  • 井上 信一, 牧 正矩, 津村 徳道
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 73 巻 10 号 p. 1015-1021
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    紙の品質として光沢を考えた場合,反射光の強さだけではなく,紙表面に見られる光沢ムラもまた考慮すべき品質である。しかし,光沢ムラは不規則であり,これを数理モデル化することは難しかった。本研究では,このような紙の光反射に関わる現象を総合的に評価する方法として,紙の表面形状(トポグラフィ:地形図)の数理モデルについて論議した。

    本研究では,パーリンノイズを用いた紙表面形状の数理モデルを提案した。パーリンノイズは,近年のコンピュータグラフィックス描画技術であり,雲,炎,水面などの自然界の不規則な現象をパラメータの調整によって自然な感覚で生成することができる。パーリンノイズは物理モデルではないため,パラメータも本来は物理量ではない。本研究では,モデルを規定するパラメータを物理的な測定量により決定することを試みた。これらは紙の光反射特性から導出した。表面法線分布確率密度は,コリメータ光学系による測定方法を用いた。光沢ムラの空間周波数特性は,テレセントリック光学系の測定方法を用いた。紙の光反射特性から導くパーリンノイズによる紙表面形状の数理モデルを提案し,このモデルが実際の紙に似た不規則な形状を有する紙表面形状を生成できることを示した。

    提案したモデルで生成した紙表面形状の光反射特性は,実際の紙の光反射特性に近いものであり,光沢現象をよく説明できるものであることを確認した。今後は紙表面形状の実測値と比較検討し,モデルの精度を上げて行きたい。紙表面形状のような不規則な分布を数理モデルで構築し,光反射特性といった物理量で規定できたことは,紙の数値解析やコンピュータグラフィックスにも展開可能である。

  • Shinichi Inoue, Masanori Maki, Norimichi Tsumura
    原稿種別: research-article
    2019 年 73 巻 10 号 p. 1022-1029
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/01
    ジャーナル フリー

    Both of gloss and gloss unevenness are important quality for printing paper. In addition, it is assumed that these optical refl ection characteristics are caused by paper surface topography. Therefore, it is important to build the mathematical model of paper surface topography to evaluate gloss and gloss unevenness. However, it is diffi cult to measure paper surface topography. Furthermore, it is diffi cult to make the mathematical model because it is irregular. In this paper, we propose a new method of mathematical modeling of paper surface topography based on the Perlin noise. To estimate paper surface topography, we assume that surface topography is expressed as the Perlin noise. The Perlin noise is a computer graphics drawing technique in recent years. It can generate irregular phenomena of natural world such as clouds, fl ames and water surface. These images are generated with a sense of natural by adjusting parameters. It is assumed that these optical refl ection characteristics are caused by paper surface topography. The parameters which decide about the Perlin noise model is derived from the measured statistical optical refl ection properties of paper. The statistical property of the surface normal distribution, that is BRDF (Bidirectional Refl ectance Distribution Function), is acquired by the collimator optical system. The spatial frequency property of the unevenness is acquired by the telecentric optical system. We estimate the surface topography with this method and verify the validity of the proposed model. The optical refl ection characteristics of the surface topography generated by the proposed Perlin noise model were close to the actual optical refl ection characteristic of paper. It was confi rmed that it can explain the paper gloss phenomena well.

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