紙パ技協誌
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77 巻, 8 号
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パルプ特集
  • パルプ技術委員会
    原稿種別: 会議報告
    2023 年 77 巻 8 号 p. 661-663
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
  • 稲葉 敦
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 664-671
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    近年「カーボンニュートラル」を実現するために,ライフサイクルアセスメント(LCA)を用いた製品や組織の温室効果ガス(GHG)排出量の算出が注目されている。製品のLCAの実施方法は国際標準規格(ISO)(ISO 14040:2006,ISO 14044:2006)として発行されているが,GHG排出の影響のみを評価する場合は,カーボンフットプリント(CFP)(ISO 14067:2018)により精緻化されている。企業などの組織については,LCAやCFPの算定方法のISO規格が存在するが,むしろGHG Protocolが発行するScope 3基準がデファクトとして多くの企業で利用されている状況にある。本稿では,LCAとCFPの基礎的な算定方法を解説し,組織のScope 3基準などLCAに関連する最近の活動についても紹介する。
  • ―パルプ繊維からナノファイバーまで―
    小瀬 亮太
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 672-676
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    製紙業界が取り扱うセルロース繊維には,パルプ繊維からCNFに至るまでマルチスケールでサイズと形態の異なる繊維が存在する。機械的解繊の場合,パルプ繊維からCNFにまで微細化される過程で繊維形態が複雑になる。パルプ繊維の形態は,明確に両端を判別可能な「単繊維」として認識できるが,CNFなどの微細繊維は著しい枝分かれや繊維の主軸部とフィブリル化部の繊維幅が同程度になることによって,「単繊維」として認識することが難しくなる。また,マルチスケールで幅の異なる繊維が存在する場合,顕微鏡で一定の倍率で観察した画像の中にすべての繊維を捉えることができない。例えば低倍率では,パルプ繊維は観察できるが,CNFは観察できない。このような繊維群の形態を評価するためには,評価対象をパルプ繊維やCNFのみに限定するアプローチや,光学的手法により繊維群の形態や繊維幅情報を平均的に抽出するアプローチなどがある。
  • ―ライムキルンのカーボンフリー化―
    田中 啓介
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 677-680
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    紙パルプ業界では長きに亘り化石燃料の使用削減の為に様々な取り組みが行われ,通常運転中は化石燃料を使用しない。しかしながら唯一ライムキルンでは石灰焼成の熱源として未だに重油をはじめとした化石燃料が使用されており,工場全体としてのカーボンフリー化を妨げている。
    バルメットにはライムキルンの熱源として化石燃料に替わり木粉を燃料として使う技術があり,さらに樹皮等のバイオマスをガス化して熱源として使う技術がある。昨今,プラスチック製品代替として紙製品がシェアを増やし始めている中,化石燃料を消費しないパルプ製造工程は紙製品の付加価値を高めるものと考えられており,本稿では弊社から市場に投入している2つの代替技術について紹介する。
  • 和田 望
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 681-685
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    2010年代後半から情報処理技術が急成長し,産業分野への応用(IoT)が世界的に広がっており,PLCやDCSでの制御の可能性を飛躍的に向上させている。
    一方で,日本の製紙会社においては,今日に至ってもオペレーターが計器指示値を見ながら絶え間なく調整する操業がしばしば見受けられ,オペレーター毎の操業経験や考え方の違い,ひいては体調や気分によって大きく影響を受けやすいことが課題である。品質下振れへの懸念により,薬品や蒸気・エネルギーを過剰気味に使用する傾向にある。
    これらの課題を解決すべく,近年は紙パルプ業界においても高度プロセス制御(APC)/モデル予測制御(MPC)の導入が始まっているが,国内での導入に当たっては,得体の知れないものへ制御を委ねる事に対する懸念や,仕組みが不明瞭であることへの不信感から躊躇される声も多く聞かれる。
    本稿では,APCの仕組みと導入までのプロセス,および導入後の操業(従来との違い)について明らかにし,日本の製紙業界へのAPC普及を促進したい。
  • 吉田 令, 萩原 幹児
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 686-690
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    COVID-19のパンデミックやロシアのウクライナ侵攻により,輸入原料,エネルギー,輸送コストが短期間で高騰している。また従来通り異常気象が毎年続いており,このような状況下でもCO2排出削減の要請は強く,製紙工場でのCO2排出削減対策やエネルギーコスト上昇への対応は避けられない状況になっている。
    この様な状況から,クラフトパルプ工場の操業コスト管理に対する考え方は大きく変わらざるを得ない時期に来ていると言える。
    クラフトパルプ製造工程は,工場内の主要エネルギーを生産する重要なプロセスであると同時に,エネルギー,原料,ユーティリティを大量に消費するプロセスでもある。このプロセスの運用を別の視点から見直し,コスト削減のための対策を検討・実行する時期に来ている。
    そこでアンドリッツでは,工場内の問題点やコスト削減の可能性を調査し,コスト削減や操業改善,CO2排出量削減を検討するサービスを国内で開始した。
    本報では,近年の海外パルプ工場での投資動向の紹介と,現在行っているクラフトパルププロセス操業診断サービスならびに,その診断から現在提案を行っている具体例について説明を行う。
  • ―インラインリアルタイム繊維特性データ取得システムによる工程の最適化,品質改善:PulpEyeとPulp on Target―
    横山 勝彦
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 691-697
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    インダストリー4.0は,企業を優れた業績へ導くと期待されている。このようなソリューションは,特に労働力不足が深刻化している現在,コスト削減や人的介入の低減など,紙パルプ産業にも大きな影響を与えると考えられている。繊維の特性が製品の品質や生産管理に影響を与える為,正確かつリアルタイムの測定は,スマート製造方法論を実現,実装する為にも不可欠である。これを実現するための鍵となるのは,複雑なデータを工程管理に活用できる情報へと瞬時に変換すること。多変数統計解析,MVAは,大規模なデータを簡潔かつタイムリーに解釈可能な情報に変換する手段として認識されつつある。本システムの大きな特徴として,パルプと繊維の属性を測定するだけでなく,実測データを有効活用データに変換した情報をリアルタイムで提供する。ハードウェアの特徴としても,最先端のインライン繊維・パルプ測定技術を採用。繊維長等従来の評価項目に加え,繊維壁厚,フィブリルアングル,クリル等の評価モジュールも搭載されており,こちらも工程改善,生産コスト削減の後押しをしている。本稿ではPulpEye社パルプアナライザー採用の効果を実用例と合わせて報告する。
  • 西原 禎朗
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 698-702
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    昨今,パルプ製造に用いられる木材チップには従来のユーカリ材チップに代わり低品質かつ嵩比重の小さいアカシア材チップ等も多く含まれるようになりつつある。それらのチップを使用した場合に従来の収率を確保することが困難な場合が見られ,尚一定の生産効率を達成できるよう,設備面の改善も常に求められている。
    バルメットでは,90年代初頭からのクラフトパルプ蒸解条件に関わる研究成果を鑑み,断続的に蒸解プロセスの設計思想の見直しを行ってきた。バルメットの蒸解技術Valmet Continuous Cooking(以下コンパクトクッキング)は,チップへの低温長時間の薬品浸透や柔軟性を持った操業により,低嵩比重のチップを用いた場合でも高収率な蒸解が実現される。また,国内で多く見られるワンベッセル蒸解釜に対しては,Valmet OptiCookへの改造を提案している。コンパクトクッキングのコンセプトをワンベッセル釜へも適用することに因り,低嵩比重チップを使用する場合においても従来と遜色ない操業を行うことが可能である。
  • 袖山 卓司
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 703-707
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    製紙工程において,操業の悪化や品質の低下に繋がるピッチトラブルを抑制することは,大きな課題の一つである。クラフトパルプにおいて,その製造工程や抄紙工程で発生するピッチトラブルの主な成分は木材由来の樹脂成分であり,系中における樹脂量の増加やpHの低下による樹脂成分の不安定化が,その原因となっている。ピッチトラブルを抑制するには洗浄の強化が主な対策となるが,状況によっては対応できない場合があり,このような場合の手段としてピッチコントロール剤の適用が有効となる。このピッチコントロール剤には,タルクや界面活性剤といった複数の種類がある。このため,適用においては,それぞれの特徴に合った使用方法が重要であり,使用方法を誤るとピッチトラブルを解決することができないだけでなく,新たな問題の発生に繋がることもある。
    当社のピッチコントロール剤「ASシリーズ」は,ピッチを微細な状態で分散させるとともにパルプへ歩留める効果を有している。このため,ピッチが不安定化し粗大化する前に使用いただくことで,その効果を最大限に発揮することができる。クラフトパルプの製造工程においては,O段やEop段といった高pHの工程から,pHが低下するD段直前の洗浄機の落ち口へ「ASシリーズ」を添加することで,ピッチトラブルを効率的に抑制できることが確認されている。またクラフト紙の抄紙工程においても,pHの低下を伴うAlumの添加位置よりも上流側へ「ASシリーズ」を添加することで,ピッチトラブルを抑制できることが確認できている。
    本稿では,クラフトパルプの製造工程および抄紙工程におけるピッチトラブルと,その対策としてのピッチコントロール剤の適用を述べるとともに,当社ピッチコントロール剤「ASシリーズ」の適用例を紹介する。
  • 濱野 彰吾
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 708-713
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    紙・板紙の需要は,リーマンショックまで3,100万トンを超える需要があったが,2008年のリーマンショック後に紙・板紙とも急激に減少した。2010年は板紙の需要が戻ったことによって,若干回復したものの,紙の需要減により,そこから減少を続けている。
    2020年の新型コロナウイルス感染拡大を受け,デジタル化だけではなく,休業や在宅勤務の実施,インバウンドの減少により,さらに200万トン近い減少となったが,2021年,2022年は経済活動が上向きになり,インバウンドが増加したことで,若干回復した。
    このような需要動向の中,古紙の回収状況について種類別に見ると,まず段ボール古紙は2008年のリーマンショック後の減少を挟み増加傾向にあったが2022年は若干減少に転じた。それでも2007年比で100%を超えており,段ボール原紙の生産,消費は堅調であることから,しばらくは微増あるいは横ばいとなると思われる。ただし,増産に伴う東南アジアからの段ボール古紙輸入の増加,欧米諸国の輸出減少などがあった場合は,状況が変わってくる可能性がある。
    次に新聞古紙は,デジタル化や紙の購読者減少,広告媒体の変更等による折込チラシの減少で,年々減少しており,2022年はリーマンショック前の2007年比で約45%の状態である。コロナ禍で更に折込チラシの発行が減っている状態では,新聞古紙回収量は今後も減少が続くと思われる。新聞古紙の回収余力は殆ど無く,製紙メーカーの新聞古紙調達はより厳しい状態となり,先々代替原料の検討が必要になる可能性がある。
    最後に雑誌古紙は,デジタル化でマガジン類が減少しているものの,雑がみの回収が進んだことで減少傾向は新聞古紙よりは緩やかになっている。ただし,雑がみ回収を進めると「雑がみ」の割合は増加し,更なる雑がみ化・低品質化が進む。そのため,将来,雑誌古紙を使用している製紙工場では製造分野別に雑誌古紙の配合や設備対応の検討が必要と思われる。
  • 織戸 慧
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 714-719
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    パルピング工程におけるデトラッシュシステム(異物処理)はパルパの能力を維持するために不可欠なものであり,近年の原料古紙の品質悪化傾向によりその重要性は年々高まっている。
    デトラッシュシステムは補助離解機と洗浄・脱水機にて行われるが,近年ではよりパルパから異物を積極的に引き抜くために特に補助離解機の効率化が求められている。弊社インテンサシリーズはこの要望に応える特徴を備えている。
    インテンサマックスは2010年にリリースされて以来現在まで300台以上の実績がある。特徴としては,まず,ロータとスクリーンプレートが本体上部に設置されているため,異物の巻き込みや摩耗が起こりにくく交換部品の寿命が長くなる。次に,ロータ中心軸とケーシング中心軸とが傾いた角度で配置されており,ケーシング内の同心円状の回流が起こりにくくすることで異物同士のからまりによる粗大化を防いでいる。また,リジェクト配管を本体最下部,かつ入口配管の近くに設置することで,重量異物の効果的な排出と,異物の不要な巻き上がりを防止している。
    このインテンサマックスの導入例として,従来の補助離解機二台をインテンサマックス一台に交換した場合,省エネ効果として年間約1,560万円,かつメンテナンスコストを年間約600万円削減することが可能となり,安定したデトラッシュシステムの稼働が可能となった。
    インテンサスクリーンドラムは従来型にはない洗浄機能を兼ね備えた脱水機である。特徴としては,ドラム自体に傾斜をつけることで異物を十分に洗浄することができ,繊維ロスを防止している。また,ドラムを回転数制御しているため,様々な処理条件に応じることが可能である。洗浄機能を付与したことで,補助離解での洗浄工程を省け取込工程などその他に時間を充てることができた。
    弊社最新機種を導入することで,ライン全体の品質向上や工程の効率化を大幅に図ることができる。
  • 浦田 治朗
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 720-724
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    古紙状況につき,2021年頃までは国内古紙は余剰傾向であったが,それ以降コロナ禍や天候等の影響を受け,古紙の発生や回収が低調となり,今現在も国内古紙在庫も減少傾向である。
    具体的には昨年1月~10月までの古紙回収量は2021年と比較し2.4%減となっており,このまま推移すると一昨年に比50万トン弱減少する見通しとなる模様である。
    一方で古紙利用率は66%以上と高い水準であり,古紙回収量が減少する中,製紙工場は生産を維持していかなければならない。必然的に古紙争奪が激しくなり,価格上昇,これまで廃棄されていた古紙についても原料として使用せざるを得ない状況となっている。
    このような状況に対抗すべく,離解工程における連続式デトラッシュシステム「S-PAL」を提案する。これまでのパルパーデトラッシュシステムであるバッチ処理のデトラッシュシステムと比較し,異物処理効率を劇的に改善したシステムとなっており,この状況を打破する有効な手段である。
    「S-PAL」システムは,それぞれ新規に開発された無閉塞ポンプ・デトラッシャー・ドラムスクリーンから構成される。連続的に異物の処理が可能となった結果,処理効率は大幅に向上。供給される異物に対して,処理効率が上回る結果となった。
    これら新技術は,日本国内のみならず,全世界的に採用・実績が進んでおり,今後もより厳しくなる現状に対抗できる提案であると確信している。
  • 渡邊 和宏
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 725-729
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    火力発電でのCO2ゼロエミッションに向けてCO2を排出しないカーボンフリー燃料への転換を進める必要がある。その一つとして有望なものがアンモニアである。本報では石炭火力発電用ボイラおよびガスタービンにおけるアンモニア利用技術の開発動向を紹介する。
    石炭火力発電用ボイラでは石炭に対して発熱量ベースで20%混焼する技術開発を行なってきており,実証段階に来ている。開発段階では窒素酸化物(NOx)と灰中未燃分の抑制が重要課題であったが,化学反応モデル(CHEMKIN)を用いてアンモニアの投入位置を検討した。その結果,燃焼火炎内(Flame zone)である高温の還元性領域にアンモニアを入れた場合がNOx値,CO値が共に最小となることを確認した。この結果をもとにバーナ開発をおこない,IHIの大規模燃焼試験炉で燃焼試験を実施した。アンモニア20%混焼時においてNOx,灰中未燃分を石炭専焼時と同程度まで低減することができることを確認した。アンモニアのガスタービンでの利用については,従来の気化したアンモニアガスを燃焼させる方式から変更し,液体アンモニアをガスタービン燃焼器に直接噴霧して利用する技術の開発に取り組んでいる。液体アンモニアは気体アンモニアと比較してアンモニア気化器,アキュムレータが不要であり,シンプルな供給系でガスタービンに供給することができ,アンモニア供給量を増加させるためのコストを低減できる。またガスタービン運用のメリットとして,アンモニア気化器の暖気が不要であり,ガスタービンの負荷変動への対応が容易となる。一方で液体アンモニアが燃焼器内で蒸発するため,局所的な火炎温度の低下による失火や,未燃アンモニアや温室効果ガス(GHG)の一つである亜酸化窒素(N2O)の排出が増加する可能性がある点が課題となる。新規開発燃焼器では専焼時に未燃アンモニアおよびN2Oの排出を抑制しGHG削減率99%以上を達成した。
  • ─スウェーデン国立研究所(RISE)との取り組み─
    田中 多加志, 山田 理生, 安本 繭美, Lars Sundvall, Mats Westin, Robin Westin
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 730-736
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    森林資源を利用することは,持続可能なカーボンニュートラル社会の実現を可能とする有効な手段の一つであり,パルプの生産においては,原木原単位辺りのパルプ生産量を増加し,品質の高いパルプ製品を生産することが重要になってきている。
    これらの課題を解決する方法として,蒸解の効率を高め,パルプの収率を向上する目的で,蒸解促進剤を使用する方法がある。今回,天然物を使ったより安全な新規蒸解促進剤を開発した。
    さらに,工業プロセスを再現した評価が必要と考え,スウェーデン国立研究所(RISE)にて新規蒸解促進剤の評価を実施した。その結果,パルプ収率が向上する傾向にあることが観察できた。RISEを訪問,ラボ評価に立ち合い,設備・方法などの見学を通じて,蒸解評価方法がより理にかなったものであることを確認した。
    今回,当社が開発した蒸解促進剤の理論的な考えと,RISEで実施した蒸解試験方法と結果について解説する。
  • 池田 努
    原稿種別: 会議報告
    2023 年 77 巻 8 号 p. 737
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
総説・資料
  • 魚谷 佳博
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 738-741
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    近年,抄紙機の高速化が進む一方,品質・省エネ・歩留への要求も高まってきている。レンゴー尼崎工場ではこれらの要求に対応すべく,2020年10月にニーダー設備を導入した。従来の原料の分散目的ではなく,古紙原料処理工程の最終リジェクト処理を目的とし導入した結果,古紙原料処理工程の処理量増加及び歩留改善といった成果を得ることができた。本稿ではニーダー設備の操業経験を紹介する。
  • ―今,最もホットな見える化=パルプ繊維の形態把握―
    渡邉 竜平, 松野 博政, 和田 望, 尹 国珍
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 8 号 p. 742-748
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル 認証あり
    ティッシュペーパーや段ボール・包装用紙・印刷情報用紙といった紙は,現代社会においてなくてはならない生活必需品であると同時に,私たちの生活や産業・文化を側面から支えている。SDGsが重視される世の中において,『森林』『エネルギー』『二酸化炭素』『製品(紙)』を上手く循環させている製紙産業は,資源循環型産業の優等生としてその価値が近年見直されている。脱プラスチック化はその代表例である。
    日本の古紙回収率は80%を超え,古紙利用率も70%近くに達し,世界でもトップクラスの循環型産業を実現している。一方で,新型コロナウィルスの感染拡大後に広がったリモートワーク化の影響により,木材パルプを主原料とする印刷情報用紙の需要減は一層進み,良質な古紙の確保が顕著に難しくなってきている。木材パルプにおいても,一般的に紙力が出にくいとされる安価チップへの切り替えに取り組んでいる製紙工場が多く,これらのことは製造現場において,安定した品質や操業を達成するための大きな障害となっている。
    紙ボディーの80%以上を占めるもの,紙製造に掛かるコストの約半分を占めるもの,それはパルプ繊維である。パルプ繊維は,例えば,樹種や蒸解方法によって,リファイニングのやり方によって,或いは再利用回数によって,その長さや幅・フィブリル化の度合いが異なる。
    パルプ繊維の形態は,例えばティッシュペーパーにおける手触り,段ボールにおける強度,印刷情報用紙の印刷適性といった重要な品質指標と密接な関係がある。このパルプ繊維の形態を把握するための方法として,製造現場では長らくフリーネス測定が用いられてきた。一方で濾水性のみで繊維の形態を把握するには限界があり,近年の急激な環境の変化がもたらす繊維形態の変貌をフリーネス測定で捉えることは困難であると言える。
    本報では,『ファイバー・モルフォロジー=繊維形態』を測定できるインライン型繊維分析計SPM-5550と,これを活用した重要品質のリアルタイム予測モデルについて紹介する。製造現場が直面する課題の解決に真正面から取り組んできた弊社が提供する『ソリューション』であり,今まさに一番ホットな『見える化』と言える。
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (152)
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