近年,国内では古紙利用率の向上や原料事情の悪化に伴う原料の悪化でマシン汚れによるトラブルは増加する一方,段ボール工場からの原紙に対する品質要求は一段と厳しくなっており,最終巻取り製品の継手率の低減は製造現場の大きな課題となっている。更には,労働人口の減少,熟練者の退職により,製造現場ではマシン汚れに対するタイムリーかつ適切な対応がますます困難となりつつある。この課題に対して当社はマシンの汚れをIoTで見える化,AIを用いて欠点・断紙の予兆解析を行い,マシン汚れ防止技術を用いて欠点・断紙を未然に防止するシステム『SmartPapyrus
®』を開発している。SmartPapyrus
®が目指す姿は抄紙工程における欠点・断紙をゼロにすることである。欠点・断紙がなくなることでこれまで当たり前のように行っていたことが削減され,マシンの生産性だけではなく働く人もより生産性の高い仕事に注力することが出来る。更に,欠点・断紙によるロスを抑えることで余分に生産していたエネルギーを抑制することが出来るため脱炭素への貢献が可能となる。
これまで当社は高温フード内をリアルタイムに監視し,カンバスの状態に合わせて汚れ防止薬品やファブリキーパーと連動するシステムである『SmartPapyrus
® Ver.1』,欠点種別毎にリアルタイムに分析するシステム『SmartPapyrus
® 1.0』をリリースしてきた。SmartPapyrus
® 1.0では,欠点種別毎に欠点発生数が定量的に取得できるようになった。これにより,欠点の発生箇所を確認することでマシンの対策箇所の絞り込みが可能となる。逆に言えば,各パートのマシンの状態が変化したときに,どの欠点種別の欠点が増えるのかを推測することが可能になる。そこで今回,SmartPapyrus
® 2.0として欠点発生予兆解析の開発に着手した。SmartPapyrus
® 2.0では,SmartPapyrus
® Ver.1のカンバス汚れのデータとSmartPapyrus
® 1.0の欠点情報に加えて,DCSやBM計からマシンの状態をデータとして受け取り,AIにより解析することで欠点が発生する前の予兆を捉え,欠点を抑えるための対策を提案するシステムである。本報告では,欠点発生予兆解析の概要について紹介しPoC(実証実験:Proof Of Concept)の速報について報告する。
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