排水の処理水質に対する法規制等が次第に強化される中,排水処理能力の向上は紙パルプ産業において,工場の安定操業を持続するための重要な課題の一つとなっている。
排水処理の改善策として,弊社では「微生物製剤MCシリーズ」による活性汚泥の微生物相の「改質」を提案し,これまでに多くの実績を上げてきた。これは,有機物分解力やフロック形成能力に優れる細菌群を活性汚泥中に組み込むことにより,活性汚泥の処理能力を向上させることを目的としており,排水処理に用いられる一般の薬品類はもちろんのこと,既存の微生物製剤とは一線を画する作用機序である。本報では,より効率的にMCシリーズを用いて活性汚泥処理の改善を行うために,汚泥中の微生物群集の変化をモニタリング可能とする下記の蛍光イメージング法を紹介する。
(1)FISH法による微生物製剤配合菌の動態追跡
微生物製剤MCの配合菌に特異的な塩基配列領域をターゲットとして,蛍光により細胞を検出する手法。汚泥フロックへのMC配合菌の定着状態を追跡することによって,効率的な微生物製剤MCシリーズの使用が可能である。
(2)生理活性染色法を用いた活性汚泥の状態診断
活性汚泥を構成する微生物群集の増殖性に基づいて,汚泥の生理状態を蛍光で可視化する手法。活性汚泥処理の不調の原因を特定し処理の最適化を行うための指標になるとともに,微生物製剤MCシリーズを用いて汚泥の改質を進めるための手段として有効である。
弊社が提案する手法は,活性汚泥処理システム内部における微生物群集の変化をモニタリングしながら処理の最適化を行うことを大きな特徴としている。これらの手法を活用して微生物製剤MCシリーズによる活性汚泥処理の最適化を行った実例を交えて,その有効性について言及していきたい。
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