紙産業界では,電子媒体の急速な普及や経済の急激なグローバル化に伴い,国内の紙の生産量は低迷しており,新規需要の開拓と海外製品との差別化が求められている。
その一方で,近年の紙製品の拡がりは著しいものがある。例えば,電気・電子分野,自動車分野,医療・介護分野,食品分野等において,機能性シート状素材としての用途が拡がっており,機能性材料等を活用した新たな紙製品の開発が望まれている。このような研究開発を推進するために,平成26年4月,全国の大学で初めての紙産業に特化した研究センターを愛媛県四国中央市に設立した。
愛媛大学社会連携推進機構紙産業イノベーションセンターは,紙産業に関する学際的な研究及び教育を行うことにより,紙産業の発展につながる研究開発を推進するとともに,本センターで開発した新技術や先端研究の実用化を促進することを目的として,愛媛県産業技術研究所紙産業技術センター内の一角に設置された。本センターでは,紙産業界の発展に資する研究を推進するために,3つの研究部門と1つの研究支援室を設置した。
(1)製紙技術研究部門 :現在の製紙・紙加工に関する課題解決と製紙技術の高度化に向けた研究を行う。
(2)紙製品研究部門 :機能性材料等を紙に付与することにより,新規紙製品を開発する。
(3)機能性材料研究部門 :各種原材料の新たな機能を探求する。
(4)地域連携・研究支援室:新技術の実用化を推進するために,市場調査やマーケティング戦略,特許戦略,企業との調整等を行う。
本センターでは,以上のような研究開発体制で各部門相互が有機的に連携し,一体となって研究開発を実施するとともに,地域紙産業界や自治体との連携を密にすることで,開発技術の迅速かつ円滑な技術移転及び実用化を目指す。
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