紙パ技協誌
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74 巻, 11 号
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研究発表会特集
  • 木材科学委員会
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1063-1065
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり
  • 原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1066
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり
  • 梅澤 俊明
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1067-1070
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    再生可能資源の内,最も蓄積量の多い木質(リグノセルロース)バイオマスからの工業原材料生産に関する必要性と関心が,近年世界的に頓に高まっている。木質多糖の成分利用については,セルロースナノファイバーなど高次構造を生かした利用技術開発や糖化発酵技術開発が進展しているが,リグニンの大規模利用は,長きに亘りパルプ廃液リグニンの燃料・分散剤・粘結剤としての利用などに限られてきた。このリグニン利用の難しさは,主に⑴リグニンの構造の複雑さ,⑵単離の難しさ,及び⑶誘導体化起点となる官能基が限定されていること,に起因する。

    そこで,今後のリグニン利用技術開発においては,全く新たな変換反応系の開拓とともに上記の困難を緩和した利用し易いリグニンの作出を代謝工学により新規に進めることが緊要と考えられる。さらに,リグニンは多糖の1.4倍程度の高位発熱量を有し,バイオマスの熱利用,例えばペレット化後の直接燃焼などでは,リグニン含有率が多い方が有利である。実際,少なくとも当面は木質の直接燃焼利用の需要があり,栽培に要する面積減少のためにも,バイオマスの発熱量増加に繋がるリグニン増量は一つの重要な育種目標である。

    リグノセルロースは,樹木系と非樹木系(主にイネ科植物)に分けられる。一般にイネ科植物のリグニンは木材リグニンより単離が容易であり,イネ科植物ではリグノセルロース成分の分離特性が木材より優れている。木材が紙パルプ生産や梁材・柱材の生産に必須であることは論を俟たないが,バイオマス生産に必要な耕地・林地面積や化学成分利用に注目した場合,イネ科植物は今後一層重要になると考えられる。以上に鑑み,著者らは,イネ科バイオマス植物における代謝工学を進め,リグニン増量やリグニンの構造複雑性の緩和に関する成果を得てきた。本稿では,その概要を説明している。

総説・資料
  • 堀川 祥生
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1071-1075
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    題目にある「白い木材」とは樹木が形成した階層構造を維持しながら,選択的にリグニンを取り除いた木材を意味している。したがって,同じセルロース材料でも植物の組織・細胞構造が解消されたパルプとは大きく異なる。

    紙の原料であるパルプは木材を含めた植物資源を化学的あるいは機械的な処理によって単繊維化したものであり,近年ではパルプをさらに解繊したナノファイバーへの期待が高まっている。しかし,パルプ繊維にしてもナノファイバーにしても一旦分散すると構造制御が難しく,例えば植物組織のようにこれらを再配向させることは非常に困難である。そこで,本研究では新たな基盤材料の構築を目指すため,巨大な体躯を支持し1,000年以上もの寿命を保障している樹木の階層構造を維持しながら,リグニンを選択的に除去した木材,つまり「白い木材」の創出に取り組んだ。

    調製法を確立するため様々な処理条件を試験し,迅速・簡便且つ多成分分析が可能である赤外分光分析を駆使してモニタリングしたところ,アルコリシスと亜塩素酸ソーダの繰り返し処理によって木材を完全に白色化できることを見出した。次に木材の組織・細胞からセルロースミクロフィブリルにまで至る階層構造評価を実施した。様々な解析装置を駆使して観察したところ,「白い木材」には際立った破壊や構造的な乱れがほとんど認められず,マクロからミクロにまで至る天然の3次元構造が維持されていることが示された。

    リグニンは多糖間だけでなく細胞間の接着を担っているため,その溶脱は木材組織の解体を意味する。したがって,「白い木材」の創出とは不合理な課題設定ではあるが地道な処理条件の最適化によって達成できることを紹介する。

  • 竹下 陽介
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1076-1079
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    日本国内においてもEコマースの普及により,軽量のダンボール原紙の必要性が高まってきている。当然このような薄物の原紙は幅広の高速抄紙機で抄造されている。洋紙と違い段ボール原紙の原料はほとんど古紙が使用され,この原料にはホットメルト,ワックス,ガム状物資及びプラスティック系の異物が含まれ,そのため軽量粘着異物はドライヤーキャンバス等の要具の汚れを発生させる,高速抄紙機ではこの粘着物をいかに高い効率でのぞくことが操業安定性に対して非常に重要になった。これに対するプロセス上の対応である分散(ディスパージョン)及びスクリーンシステムはキープロセスとなっている。本稿では,特にスクリーンシステムに対して記述する。

  • 大木 亜里沙
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1080-1083
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    OptiConceptMは2011年に開発されたモジュラー式の抄紙機である。

    各種板紙,及び,洋紙の両方の製造に適しており,お客様のニーズを満たすシンプルで機能的なソリューションを備えている。

    目的に応じたマシン選定は,高い投資回収率を確保する上で鍵となり,バルメット社の焦点は,適切な抄紙機の選定と共に,お客様に役立つ持続可能なソリューションを提供することにある。

    本稿では,OptiConceptMの特徴と板紙マシンにおける最新の開発技術を紹介する。

  • 瀬戸 邦彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1084-1089
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    紙パルプ装置への多変数モデル予測制御の適用が国内でも進みつつある。多変数モデル予測制御はリアルタイムに装置最適運転を実施することで収益改善を実現する。最適化の手法として線形計画法を使用しているので,きちんと活用して収益を最大化するためには最低限の線形計画法の理解は必要となる。非線形性の高い装置では線形計画法で真の最適解を求めることはできないが,非線形モデルに対応した非線形計画法を解くことは非常に難しいことが知られている。しかし,装置とインタラクティブにやりとりを実施している多変数モデル予測制御では線形計画法を拡張する形で非線形な装置の最適化を実現することが可能となる。そのためのゲインアップデートという手法が過去から使われていたが,最近ではヘッセ行列アップデートを用いた非線形最適化も実現できるようになったので,それらの手法を簡単に紹介する。また,装置レベルの最適化を実施する多変数モデル予測制御を組み合わせた複数装置の全体最適化はすでに運用されているが,さらにスコープを生産計画などにまで広げた大規模最適化が実現できる環境が実用になったので概要を紹介する。

  • 泰井 修
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1090-1096
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    ワイヤパートは紙の特性である地合,表裏差,縦横比を決定する重要なパートである。ここではワイヤーパートの典型的な脱水機器とその脱水メカニズムについて記載するとともに,ワイヤパートの代表的な型式を解説する。ワイヤーパートでの脱水は脱水メカニズムの違いからハイドロフォイル脱水(ブレード脱水),バキューム脱水,遠心脱水,ワイヤテンション脱水がある。ワイヤパートの形式としては円網式フォーマ,長網式フォーマ,ツインワイヤ式フォーマがあるが,ここでは一般的な長網式フォーマ,ツインワイヤ式フォーマについて述べる。ツインワイヤ式フォーマにはギャップフォーマのほか長網式フォーマにオントップフォーマを追加したハイブリッドフォーマがある。そのほかにも板紙用に複数の長網式フォーマを組み合わせた多層抄きフォーマがある。

  • 第7回:「文化経済学」から見た紙の物質的価値と文化的価値
    尾鍋 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1097-1099
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル 認証あり

    1.Introduction 本シリーズでは学術における理系と文系の並立・融合の問題に触れてきたが,製紙工場を出た後,各種の処理により付加価値を与えられた紙製品が人間や社会と関わることにより生まれる文化的または文系的側面の問題を紙パ技協誌の編集に取り込むことにより,領域を拡大させ,興味深い豊潤な内容の雑誌に転換できるのではないか,という提案を行ってきた。

    今回は紙の製造以降消費に至る過程で,どのように物質的価値や文化的価値という付加価値が形成されて行くのかという問題を経済学の新しい分野である「文化経済学」から探ってみた。

    経済学的に紙を捉えると有形の物質としての財であると同時に人間との関りにおいて生まれる無形の文化的な価値を保有している。また文化的財である紙は実用的な機能だけでなく,人間との関りにおいて美的価値,精神的価値,歴史的価値などを生み出し,製紙産業は文化産業といわれる。

    文化産業である製紙産業は経済的存在であると同時に社会的存在でもあり,利潤追求という経済的責任と共に社会的責任を果たさなければならない。コロナ禍のなかで経済の維持と感染拡大の阻止という二律背反的な問題が大きく浮上しているが,文化産業を自負する製紙産業には他の素材産業にはない特有の役割があるのではないだろうか。デジタル化の進展や国内消費市場の縮小のなかで,わが国の製紙業界は一つの転機に直面していると思われ,業界誌でもある紙パ技協誌の新たな展開のための私案として本稿を記した。

研究報文
  • Keishi Tanifuji, Hiroshi Ohi, Taisuke Nakahira, Katsuyuki Murai
    原稿種別: research-article
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1101-1108
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル フリー

    (D0)treatment during elemental chlorine-free(ECF)bleaching for a hardwood oxygen-bleached kraft pulp(LOKP)to improve yields of the bleached pulp. The D0 or D0/MPS treanted pulps was followed by alkaline peroxide(Ep)stage and chlorine dioxide(D1)stage. The final pulp yield(93.1%)of D0/MPS-Ep-D1 sequence was steadily higher than that (90.6%) of D0-Ep-D1 sequence. The peroxymonosulfuric acid(MPS)was added at 0.1% dosage as H2SO5 for the initial stage of chlorine dioxide

    When the dosage of chlorine dioxide was increased during D0 stage or D0 with MPS(D0/MPS)stage at 60 ℃, the pulp yield was decreased. When the temperature of D0 stage or D0/MPS stage was increased to 70 ℃, the yield of D0 stage was decreased more than that of D0/MPS stage. On the other hand, the total organic carbon(TOC)concentration of the filtrate from D0 stage was also higher than that from D0/MPS stage. The glucan and xylan contents of the D0/MPS-Ep-D1 bleached pulp was higher than those of D0-Ep-D1 bleached pulp. It was clarified that decomposition and denaturation of carbohydrates in LOKP during ECF bleaching were reduced by the D0/MPS treatment, and this would effect on the increment in bleached pulp yield of the D0/MPS-Ep-D1 sequence.

  • 谷藤 渓詩, 大井 洋, 中平 泰輔, 村井 克之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 11 号 p. 1109-1115
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/02/01
    ジャーナル フリー

    広葉樹酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)の無塩素(ECF)漂白の初段二酸化塩素処理(D0)にモノ過硫酸(MPS)をH2SO5として0.1%添加したところ,漂白パルプの収率が向上した。D0またはD0/MPS処理を行ったパルプは,さらに過酸化水素添加アルカリ抽出(Ep)段と二酸化塩素(D1)段で処理した。D0/MPS-Ep-D1シークエンスの最終パルプ収率は93.1%で,パルプ収率がD0-Ep-D1シーケンスの収率90.6%よりも確実に高かった。

    D0処理およびD0/MPS処理において二酸化塩素の添加率を変化させると,どちらも二酸化塩素添加率の増加とともにパルプ収率は減少する傾向にあった。しかし,D0処理を70~90℃の温度で行うとパルプ収率の減少が著しいのに対し,D0/MPS処理ではパルプ収率の減少は小さく,D0/MPS処理のパルプ収率がD0処理よりも高くなった。パルプ処理廃液のTOC濃度とパルプ収率の減少には正の相関があり,D0/MPS処理ではパルプ収率が高く,廃液の有機物量が削減された。D0/MPS処理の導入による環境負荷の低減が期待される。D0/MPS処理では,D0処理に比べてパルプ中のグルカンとキシランの合計収率が高いことが示され,炭水化物の分解および変質が抑制されることが明らかとなった。この抑制がD0/MPS-Ep-D1漂白パルプの収率向上に寄与したものと考えられる。

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