紙パ技協誌
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74 巻, 6 号
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省エネルギーⅠ/バイオマス関連特集
  • エネルギー委員会
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 567-569
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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  •  ─省エネルギー,再生可能エネルギー,そして人工光合成への挑戦─
    西見 大成
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 570-576
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    CO2排出量削減が地球規模の課題となっており,その解決法として,「省エネルギー」「再生可能エネルギー」とともに「カーボンリサイクル/CCUS」(CO2の有効利用)が大きな注目を集めている。カーボンリサイクルの代表的例であるNEDO人工光合成プロジェクトは,「①光触媒によって,水を水素と酸素に分解し,②次に,分離膜によって,水素と酸素の混合ガスから水素を安全に分離し,③最後に,その水素と工場排ガス等から取り出した二酸化炭素を原料として,基幹化学品であるC2~C4オレフィンを製造する基盤技術を開発する。」という3つの技術により構成され,2021年度末における基盤技術確立,2030年頃の社会実装に向けた技術開発が着々と進行している。社会実装のためには,技術開発のみならず,競合技術(太陽電池+水電気分解,CO2直接還元によるギ酸生成等)と比較した場合の,経済合理性を踏まえたビジネスモデル構築が必要不可欠である。

    大気中からのCO2 回収(DAC:Direct Air Capture of CO2)もまた,カーボンリサイクルにとって必要不可欠,かつ人工光合成と相補的な技術である。人工光合成技術や超薄膜を用いたDAC技術等,日本発のイノベーションを展開してゆくことは,日本の国益(レピュテーション・エネルギー安全保障・新産業の創出/輸出.等)を考える上で,極めて大きな意味を持つ。

  • 須田 俊之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 577-582
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    昨今,台風による自然災害の激甚化や,海外での大規模な森林火災など,気候変動を身近に感じる機会が増加している。温室効果ガスの代表格であるCO2の削減は,国としての取り組みだけではなく,ESG投資など民間企業の経営面からも重要な取り組みである。一方で,CO2は様々な機器から排出されており,その低減手法も一つではない。弊社では,各種エネルギー機器の高効率化・省エネ化・ライフサイクル全体での低CO2化を進めつつ,以下に示す新たなCO2削減技術の開発を実施している。

    ① エネルギーキャリア:火力発電でのアンモニアの直接利用技術

    ② カーボンリサイクリング:CO2の回収と有価物への転化技術

    ③ 再生可能エネルギーの地産地消:エネルギーマネジメントとPower to X

    本報では,これら技術の概要について紹介する。

  • 井戸 成之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 583-587
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    大王製紙株式会社可児工場の課題の一つである購入電力削減による省エネルギーを図るため,稼働後30年が経過している3号タービンについて経年摩耗による性能低下を回復させるタービン翼と仕切板用蒸気ノズルの更新にあわせて高効率化技術を導入した。

    タービン翼,仕切板更新による性能回復と3次元流体設計によるタービン翼と高効率ノズルの導入により1,573kW(定格発電量の約6%)の発電性能向上が得られた。

    3号タービンの性能改善により,回収ボイラーの蒸発量の変動で定格発電量を超過する可能性が生じたため,定格発電量以内で最大限発電できるように発電出力の制御を変更した。また,この性能改善の効果を長期間発揮できるようシールフィンの耐摩耗性を向上し経年摩耗速度を小さくすることとボイラー水からのシリカキャリーオーバーによるスケール抑制のため水処理を改善したことにより長期的性能が改善されることが期待される。

  • 宮田 英人
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 588-590
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
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    祖父江工場は,5・6・7マシンの3台の抄紙機を有し,白板紙やライナーを製造している。今回紹介する5マシンは,同じく白板紙を製造している6マシンと比較して,ドライヤ蒸気原単位が高く,その改善が長年の課題であった。

    ドライヤ工程では,シリンダー内部に多量の蒸気を入れ,蒸気の熱をシリンダー外側に接触している湿紙,つまりシートに伝えることで紙の水分を蒸発させているが,この熱伝達により蒸気がドレン化し,シリンダー内壁面にドレン液膜が形成される。理論上,水膜はわずか0.5mmの厚さで約90%も熱伝達を阻害するため,ドライヤでの省エネの取組として,ドレン水を極力排除して,水膜を薄く保つことが望ましいとされている。

    この度,薬品メーカーより,ドライヤーシリンダー内面に撥水作用を持たせることにより熱伝達率を向上させる省エネ薬品の紹介を受け,長期間のテストを行ったところ,蒸気原単位を年間平均で約4.7%改善することができた。

    本稿では,省エネ薬品使用により,ドライヤ省蒸気を達成することができた事例について報告する。

  • ─平成30年度省エネ大賞経済産業大臣賞(ビジネスモデル分野)受賞─
    黒坂 和弥, 池田 博之
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 591-595
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    熱を発生させるプラント設備に多くの保温材が使用されている。プラント設備は,昭和58年から平成4年頃までが建設のピークを迎えているが,経済の冷え込みと供に設備投資が減少してきた。建設のピークから30年が経過し,プラントの老朽化が進んでいる。プラントの法的な検査が必要とされる箇所以外は,保温材の更新が行われず建設当時の状態である。多くのプラント設備が屋外に設置されている為,経年と供に保温材に雨水が侵入し保温材機能の低下による熱路ロスが発生している。一般財団法人省エネルギーセンターの報告によれば,保温材のストック量約1,500万m2が10%程度含水していると仮定すると660PJ(ペタジュール)の熱ロスが発生していると発表している。

    ここに紹介する工法は,建設以来保温材更新がされていない熱ロスの多い蒸気配管などをサーモグラフにより潜在的な熱ロスを発見し,既設保温材を解体することなく,エアロジェル保温材を既設保温材の上から増し保温を行う事により,保温効果を高め既設保温材の機能回復と,エアロジェル保温材の有するはっ水性と水蒸気透過性により保温性能維持を図り,施工後の熱ロス改善を検証する一連のビジネスモデルである。熱ロス削減により省エネ対策,CO2削減効果と機器を停止すること無く施工できる画期的な工法である。

    この一連の工法が評価され平成30年度省エネ大賞経済産業大臣賞(ビジネスモデル分野)を受賞した。本ビジネスモデルの熱ロス削減の原理と効果を紹介する。

  • 小塚 治
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 596-602
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    製紙原料への古紙の利用は紙のリサイクルとしての側面や紙ごみの削減にも貢献する。一方で古紙を原料化する過程において紙の原料とならない異物は古紙粕として系外へ排出され,産業廃棄物や焼却などで処理せざる得ない問題があった。

    日本製紙株式会社大竹工場においても段ボール原紙を専抄している9マシンでは,原料として使用する古紙から異物として排出される古紙粕の全量を産業廃棄物として外部へ処理委託していた。古紙粕は主にプラスチック,繊維(パルプ),金属で構成されており,成分はRPFと同様である。しかし水分が高いこと,各成分の構成比が変動することから固形燃料化することが難しかった。サーマルリサイクルの観点から古紙粕を固形燃料化することを検討するに当たり,脱水能力の強化と古紙粕の性状に合った成形機を選定することで固形燃料化を達成できた。

    固形燃料化設備は2017年に運転を開始し2019年の増強工事を経て現在に至っている。連続操業をするに当たり金属異物の混入による成形機の閉塞などのトラブルが発生したが,選別機の導入や設備の改造によって対応することで安定操業に繋げている。2019年4月からは大竹市からの回収プラスチックごみの処理委託を受け入れて,古紙粕と混合した固形燃料化処理を開始している。その結果,当初計画よりも固形燃料化設備での処理量は増加した。固形燃料化した古紙粕は場内の新エネルギーボイラーにおいて石炭代替燃料として燃焼させることでサーマルリサイクルを実践している。

  • ─ガスエンジンコージェネレーションシステム導入による省エネ事案─
    大森 直樹
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 603-607
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    地球温暖化対策の具体的な活動が各国に求められている。日本政府は「2030年までに2013年度比でCO2を26%削減する」という方針を出している。その実現のために,企業に対してもCO2削減努力を強く求めている。

    土居加工工場では,2012年に排ガス燃焼処理後の排熱を利用した「排熱ボイラー」を導入し,大きな効果を得た。その後,工場の規模が拡大するとともにエネルギー使用量が増大し,温室効果ガスである二酸化炭素の排出量も増大してきた。また,全社的な二酸化炭素排出量削減と省エネルギー原単位の改善も必要であった。種々の対応策を検討し,工場の生産状況に最も適したガスエンジンコージェネレーションシステムを選定し,省エネルギー補助金の活用もでき,設備導入することができた。その結果,エネルギーとして10.6%(原油換算),CO2で24.5%の削減効果を達成できた。

    本稿では,「ガスエンジンコージェネレーションシステム」の導入までの検討内容,運用改善事例,トラブル事例,効果的な設備メンテナンス,省エネ,省CO2削減の成果を紹介する。

  • 松下 敬通
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 608-615
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    環境省の2019年度「プラスチック資源循環戦略」には,世界的なプラごみ問題への我が国としての対策として,紙やバイオプラに代替していくことが明確に謳われ,特に食品トレー等の「使い捨てプラスチック容器」に焦点を当て,最も積極的に変わらなければならないとされている。その大きな理由は,我が国の年間廃プラスチック排出量が900万tあり,この内の約半分が使い捨てプラスチック容器と言われているからである。

    紙パウダーと合成樹脂の複合素材MAPKAは世界的にも類がない我が国独自の技術として環境省からも認知され,プラスチック原料から代替することで使用量が50%以下に削減され,機能性がプラスチック容器とほぼ同等であることから,大量にプラスチック容器を使用する我が国の大企業から多くのオファーをいただいている。また,当社が進出しているアメリカ,韓国でも大企業を中心に自動車,家電等の大型案件での採用も始まった。

    MAPKAは製紙業界との連携無しには成立しない技術・製品であり,普及・拡大に伴い,フロントランナーとして現在提携している中越パルプ工業株式会社様に次ぐ取り組みが開始する可能性を感じている。

    現在は,日本企業はもとより,世界中に展開する海外の大企業からのオファーが増え,それぞれがプラスチック原料の削減について真剣に検討している姿を目の当たりにし,もはや言葉で言うだけではなく,実行ベースで取り組むべきテーマになったことを実感している。

    MAPKAは我が国で誕生したメイドインジャパンの技術・製品であり,現在のところは当社グループでしか生産ができないオンリーワンの事業である。今後,国内の有力企業と提携し,生産能力を更に高めていく計画であり,我が国の「脱プラ政策」のフロントランナーとして更なる前進を実現したいと考えている。

  • 藤田 敏宏
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 616-618
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    繊維ボードは,主に木材などの植物繊維をマット状のシート又はマットに成形した繊維板である。本発表で紹介する特殊硬質繊維ボードは1971年9月から湿式製法で製造している。木質ボードの風合いと,原材料はパルプと共に古紙原料及び回収原料が使用可能でありバインダレスの点からも環境に優しいというメリットを有する繊維ボードは,様々な用途に加工され,製品として流通している。

    今回は,特殊硬質繊維ボードの機械的特性として曲げ強さとアイゾット衝撃強度を測定して,木質ボード及び樹脂製ボードと比較した。当て板用途の特殊硬質繊維ボードの曲げ強さは,チップボード貼合品やパーティクルボードよりも高くなった。箱用途の特殊硬質繊維ボードの曲げ強度は,樹脂製ボードと同等の品質となりアイゾット衝撃強度は高くなった。この結果より,特殊硬質繊維ボードはバインダレスでありながら,原材料のフレッシュパルプ,古紙及び回収繊維の組合せを考慮すれば,木質ボードや樹脂製ボードの代替えも可能と思われる。

    近年の脱プラスチックの問題等から,本発表の特殊硬質繊維ボードは益々環境面で貢献できる商品として製品開発及び用途展開を図っていきたいと考えている。

  • 大杉 寛
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 619-623
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    当社では,製紙工場における自家発電の操業ノウハウを生かし,エネルギー事業を拡大している。特に温室効果ガスの低減を目的とした木質バイオマスエネルギーの積極的な活用を図っている。

    当社石巻工場に隣接する石巻雲雀野(ひばりの)発電所は,2018年3月に運転を開始した木質バイオマス(ペレット・チップ)と石炭を主燃料としたバイオマス混焼発電所であり,その混焼比率は微粉炭ボイラー式としては国内最高の最大30%である。

    バイオマス混焼発電は,石炭専焼と比べて温室効果ガスの低減に貢献する一方,ボイラーにおける燃焼管理や燃料の搬送・保管に配慮する必要があり,混焼技術確立及び混焼比率の向上が求められている。

    本発表では,石巻雲雀野発電所の概要とバイオマス混焼に関する操業経験,バイオマス混焼比率向上への取組について報告する。

総説・資料
  • 第3部:情報化社会の到来
    飯田 清昭
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 625-630
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    1800年からの産業化社会が大型化に行き詰る2000年頃から情報化社会に変わる。情報化社会では,情報を利用することで社会のパラダイムが大きく変化しつつある。その変化の理解には楽観論と悲観論が共存する。

    一つの事実として,情報化社会となった先進国において,一人当たりのGDPの年増加率が2-3%から1%以下に激減している。一方,単位GDP当たりの消費エネルギー量は,情報化社会の進展に伴って年率数パーセントで低下している。情報化社会は,産業化社会のようにGDPを増加させるものでなく,情報化技術により社会のエネルギー効率を改善する社会と理解したい。

  • 第3回:組織の力学と権力構造
    尾鍋 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 631-633
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    紙パ技協誌の誌面の編集様式や掲載許容内容の自由度,ジャーナリズム機能の発現のレベルは母体である紙パルプ技術協会の組織体としての特性に依存する。協会は業界団体と学術団体の二面性をもつ複雑な組織であり,両団体の間での組織文化やビジョンの捉え方,会員の参加のモチベーションなどは多様であり,そのために組織内での企業間の売上高の序列による階層構造(ヒエラルキー),企業と大学との関係性,および組織外にある所管官庁としての経済産業省や文部科学省などの国家組織の権力構造との関わりなど,活動を促す組織の力学は複雑である。

    本稿では経営学における組織の考え方の原点から紙パ技協誌の革新による変容の可能性を探る目的で,サイモンやバーナードなどの近代的組織理論や社会学におけるマックス・ウェーバーの官僚制論や権力理論に触れながら,組織体としての紙パルプ技術協会の変容を通した紙パ技協誌の新たな展開の可能性と限界という問題を考えてみたい。さらに組織の力学と権力構造の分析の事例として2008年に浮上した郵便はがきへの古紙配合率偽装問題を採り上げる。

    パンデミックな拡がりを見せるコロナ問題と共に浮上したグローバル化した現代の資本主義の欠陥と限界の把握の中から企業経営や国家の経済政策の大きな変容と転換が予測され,それに伴いポストコロナに向けた組織の新たな捉え方が必要になるだろう。

  • 原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 634-638
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル 認証あり

    DKS Co. Ltd. is a company over 100 years old which has gained a reputation as a top manufacturer of industrial chemicals. Aqueous dispersions of TEMPO–oxidized cellulose nanofibers (CNFs) have unique properties such as high viscosities at low consistencies, characteristic thixotropy behavior by shear forces, high emulsifying and suspending capability, increasing dispersibility of the hydrophobic fine particles etc. We have continued R&D of CNFs and accumulated numerous fundamental data for industrial applications of CNF/water dispersions. In 2013, we started manufacturing and selling CNF/water dispersions as a trade name of “RHEOCRYSTA”.

シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (134)
研究報文
  • 奥田 貴志, 尾﨑 靖
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 74 巻 6 号 p. 642-647
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    セルロースナノファイバー(以降,CNF)は,木材等のパルプを微細に解繊して得られたナノファイバーであり,有用な新規材料として期待されている。ところで,偽造防止技術を強化するために,様々な機能性材料を用紙に付与している。機能性材料としては,磁性材料,蛍光材料,感圧材料等がある。

    新規機能性用紙を開発するために,CNFと機能性材料を混合し,スプレードライ装置で処理した。結果として,CNFと機能性材料が一体化した粒子状セルロース複合体を製造することができた。

    スプレードライにより,CNFと機能性材料の混合水溶液をスプレードライヤーの加熱チャンバー内に噴霧すると,CNFと機能性材料の複合体が形成された。チャンバー内で水分が蒸発する過程で,水の表面張力により粒子状セルロース複合体は球状になった。また,CNFの強固な水素結合により複合体を形成するため,バインダーは不要であった。さらに,粒子状セルロース複合体は,再度水につけてもふたたび分解することはなかった。

    機能性材料とCNFとの粒子状セルロース複合体は,走査型電子顕微鏡(SEM)と共焦点レーザ顕微鏡(CLSM)で観察した。その結果,機能性材料がCNFに取り込まれているのが確認できた。

    CNFの水酸基により,粒子状セルロース複合体は容易に水に分散した。この特長を生かし,粒子状セルロース複合体の水溶液をノズルガンで,実験抄紙機に流れている湿紙上に付与した。機能性材料とCNFの複合体は,接着剤を用いなくても紙に定着した。摩擦試験において,粒子状セルロース複合体は,紙からはがれることはなかった。

    水に不溶の機能性材料であれば,この複合化技術は,多くの応用が期待できる。

  • Takashi Okuda, Yasushi Ozaki
    原稿種別: research-article
    2020 年 74 巻 6 号 p. 648-654
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    Cellulose nanofibers(CNF)are expected to be a valuable new material made by finely pulverizing wood pulp. In addition, various functional materials can be added to paper in order to enhance anti–counterfeiting technology. Among others, these functional materials include magnetic, fluorescent, and pressure–sensitive materials.

    In order to develop new functional papers, CNF and functional materials were mixed and treated in a spray dryer. As a result, it was possible to produce cellulose composites into which functional materials and CNF had been integrated.

    A water solution of the functional materials mixed with CNF was sprayed from a nozzle into a heated chamber of the spray dryer, which allowed the CNF composites to form. During the evaporation process in this chamber, the CNF composites were formed into spherical shapes by the surface tension of the water. Moreover, no binder for fixing between the CNF and functional materials was necessary due to the strong hydrogen bonds of CNF. In addition, the newly formed cellulose composites were completely resistant to dissolving back into the water.

    CNF composites with functional materials could be observed with SEM(scanning electron microscope)and CLSM(confocal laser scanning microscope). As a result, it was confirmed that the functional materials were introduced into the CNF’s.

    The formed cellulose composites easily dispersed in water due to the hydroxyl groups of CNF. Using this special property, the water solution of CNF composites and functional materials was distributed onto a web of wet paper using a spray gun on the experiment paper machine. CNF composites with functional materials were fixed on paper with no binder agent. A friction test showed that the CNF composites would not separate from the paper.

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