現在,日本では年間12億900万トンものCO
2が排出されているが,コンクリート材料となるポルトランドセメントの生産に起因したCO
2排出量は,全排出量のおよそ4%と大きく,その削減が求められている。そこで,鉄道総研では,ポルトランドのセメントを全く使用しないことからCO
2削減効果に優れ,かつ産業副産物である石炭灰を使用することで環境負荷低減効果に優れた新しいジオポリマーコンクリートの研究・開発に取り組んでいる。
セメント原料の多くは石灰石(CaCO
3)であり,これを高温で焼成するとCaOとCO
2に分解し,直接CO
2ガスが発生する。また,1450℃という高温で焼成するためのエネルギーとして化石燃料も多く使われ,ここでもCO
2が発生する。一方,ジオポリマーコンクリートとは,石炭火力発電所の副産物である石炭灰をケイ酸アルカリ溶液で硬化させる比較的新しい技術であり,セメントを全く使用しないためCO
2削減効果に優れる。なお,ジオポリマーはAlやSiがケイ酸アルカリ溶液中に溶け出し重合して岩石が出来るように硬化することから,「ジオ=地球」+「重合体=ポリマー」からジオポリマーと名付けられた。
鉄道総研では,このジオポリマーコンクリートを引張力に弱いコンクリートに圧縮力を導入してコンクリートを補強する,いわゆるプレストレストコンクリート(PC)によるジオポリマーまくらぎ,あるいは繊維補強したジオポリマー短まくらぎを試作して,それが所定の基準を満たすことを確かめた。
現在,ジオポリマーコンクリートは,セメントコンクリートより高コストになりがちであることから,当面は価格に占める材料コストの割合が小さい,あるいは鉄筋組み立て工程を減らすなど低コスト化を図った形での工場二次製品への利用を検討している。ジオポリマーコンクリートの出発材料は,石炭灰以外にも高炉スラグ,下水汚泥など種々の材料が考えられており,また現在ではそれらを混合して用いることが多く複雑である。広く実用化するための課題として,この複雑な体系の中で,種々の出発材料に対応してハンドリングなどを改善するジオポリマー用の混和剤の開発が重要である。また,水ガラスを使用しない方法や,石炭灰に加えて強度が出やすいCa系材料を利用するなど,出発材料の選定による低コスト化も重要であり,現在研究を進めている。
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