パルプ産業は, 環境基準をクリアすると同時に経済性をも満足させねばならないという挑戦に直面している。このことは, 粗原料資源から製造工程, 製品の開発と販売, 及び排水処理に至る, 製紙産業の全ての管理過程に, 極めて大きな影響をもたらしている。
未来システムとしての生物処理システムは, 例えば拡張脱リグニン工程において化学薬品の必要量を減らし, 薬品が環境に及ぼす有害な副作用を減少できるといった, いろいろな効果がもたらし得るものである。菌, とりわけ白色腐朽菌の, 木材中のリグニン化合物を分解する能力は, これらの菌及びそれらが保有する酵素紙パルプ産業への広汎な利用の機会をもたらすものである。その利用のプロセスは, 菌または酵素の, 木材チップ, パルプ, または廃棄物への添加を含んでいる。資源保護の精神に沿って, インドネシアの一次林, 即ちスマトラ, ロンボク, ジャワ, カリマンタン (ボルネオ) の天然林から, 数百種もの菌が採取分離された。Aphyllophorales菌の多数の種類が, 脱リグニンと漂白の優れた能力を有している。幾種もの菌種を14日間培養させることによって脱リグニン量を大きく増大し, 残留リグニン量が初期量の30-70%に減少すると言う結果が得られた。本報文で論じている我々の研究は, 選択された菌を用いた生物処理プロセスによって, よりクリーンな紙パルプ製品の製造において大きなメリットが得られることを示している。
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