紙パ技協誌
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55 巻, 11 号
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  • 宮西 孝則, 茂木 茂
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1521-1532,011
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    抄紙機の白水中にはパルプの溶出成分, 晒し工程の残薬品, 無機イオンなどが多量に存在する。これらの成分はウエットエンド添加薬品のパルプ繊維への定着を阻害することが知られている。近年, クローズド化, 抄紙薬品の多様化, 抄紙機の高速化などが進行し, 白水中の溶存成分は益々増加する方向にある。そこで, 白水中に溶存成分が多量に含まれる中質紙の中性抄紙条件と, 溶存成分の少ない上質紙の中性抄紙条件で, 新規な凝集度測定装置 (フロッキーテスター) を用いて各種歩留まりシステムの効果を評価して最適処方を検討した。
    その結果, 高価な歩留まりシステムほど高いワンパスリテンションが得られ, 薬品コストとワンパスリテンションとの関係は, ほぼ正の直線関係になった。工場の実機の抄紙機で求められるワンバスリテンションは, 抄紙機のスピード, 米坪, 原料配合, 灰分などの操業条件によって異なる。従って, 低いワンパスリテンションで充分ならシングルPAM歩留まりシステムが経済的であり, 高いワンバスリテンションならマイクロパーテイクル歩留まりシステムが適しており, さらに高いワンパスリテンションが要求されるなら, 高価でもPEO/PF歩留まりシステムを選択するべきである。クローズド化が進んでくると, アニオントラッシュの影響を受けない非イオン性のPEO/PF歩留まりシステムが有効であった。
  • Typuk Artiningsih, Wawan Kartiwa, Djoko Padmono, Joko Widodo, 大崎 満, 泥谷 ...
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1533-1536,011
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    パルプ産業は, 環境基準をクリアすると同時に経済性をも満足させねばならないという挑戦に直面している。このことは, 粗原料資源から製造工程, 製品の開発と販売, 及び排水処理に至る, 製紙産業の全ての管理過程に, 極めて大きな影響をもたらしている。
    未来システムとしての生物処理システムは, 例えば拡張脱リグニン工程において化学薬品の必要量を減らし, 薬品が環境に及ぼす有害な副作用を減少できるといった, いろいろな効果がもたらし得るものである。菌, とりわけ白色腐朽菌の, 木材中のリグニン化合物を分解する能力は, これらの菌及びそれらが保有する酵素紙パルプ産業への広汎な利用の機会をもたらすものである。その利用のプロセスは, 菌または酵素の, 木材チップ, パルプ, または廃棄物への添加を含んでいる。資源保護の精神に沿って, インドネシアの一次林, 即ちスマトラ, ロンボク, ジャワ, カリマンタン (ボルネオ) の天然林から, 数百種もの菌が採取分離された。Aphyllophorales菌の多数の種類が, 脱リグニンと漂白の優れた能力を有している。幾種もの菌種を14日間培養させることによって脱リグニン量を大きく増大し, 残留リグニン量が初期量の30-70%に減少すると言う結果が得られた。本報文で論じている我々の研究は, 選択された菌を用いた生物処理プロセスによって, よりクリーンな紙パルプ製品の製造において大きなメリットが得られることを示している。
  • 山田 信夫, 福井 照信
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1537-1542,012
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    製紙スラッジ焼却灰からの塗工用顔料再生方法を検討し, 得られた顔料の塗工適性を評価した。製紙スラジッジ焼却灰の焼成方法は, ロータリーキルンを用いる場合, 焼成温度が900℃ であれば90分そ, 1,000℃ であれば60分で80%以上の白色度に達した。X線回折による分析では, 焼成温度が1,000℃を越える場合には, 焼成後の焼却灰中にカオリンと炭酸カルシウムの一部が化合したアノーサイト (CaAl2Si2O8) やゲーレナイト (Ca2Al2Si2O7) 等の鉱物が生成していることがわかった。焼成後における焼却灰の粉砕性および磨耗性については, 焼成温度で比較すると, 900℃ で焼成した焼却灰は1,000℃で焼成した焼却灰に比べて良好であった。磨耗性については, 900℃ で焼成した焼却灰の平均粒子径が1μm以下となるまで粉砕することで, 重質炭酸カルシウムと同程度まで改善できることがわかった。なお, 本報はJAPAN TAPPI Annual Meeting and Pan Pacific Conference (2000年10月) にて, 報告したものである。
  • 谷田貝 光克
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1543-1549,012
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    樹木抽出成分は構造が多様なゆえにその働きも幅広く多様である。化学合成品の環境汚染や人体に対する安全性などが問題視されるにつれ, 比較的安全性が高く自然に還る天然物の利用が注目されだしている。ここでは抽出成分の生物活性を中心とした研究とその利用の動向について紹介する。
  • 工藤 篤
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1550-1554,012
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    近年新設された抄紙機速度は著しく増大し, また既設抄紙機の速度も増速傾向が著しく, 結果としてブレス及びドライヤーパートでのライン走行性がマシン効率, 生産効率に多大な障害を与えることとなった。このような背景下, 数社の製紙会社でプレスパート後のシート水分プロファイルの研究がなされてきた。時にはシートの走行性, 水分プロファイルの問題が顕著となり, プレスパート近辺にその検知, 計測装置を取付け, プロファイル及びトレンドを把握するに至った。EVグループは独自の調査に基づき, ドライヤー内の過酷な環境下においてウェップの水分プロファイルの計測, データ収集, 解析を行うスキャナーを開発した。スキャナーから伝達される計測結果を基にフオーミングおよびプレスセクションの改善を行うことにより抄紙機全体の効率を向上させることが可能となった。
  • 抄造系の変動因子が濾水性と地合及び紙力効果に及ぼす影響
    下吉 孝幸, 千明 史枝, 東浦 収, 飯田 嗣郎, 石田 正久
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1555-1565,013
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    経済情勢の変化に伴い, 製紙業界においてもコストダウン競争及び環境問題への取り組みは加速し, 原料の悪化や白水のクローズド化, 抄速アップなどにより抄造環境はますます悪化している。
    紙薬品には環境変化に対応しうる性能が求められており, 紙力剤では共重合型紙力剤が, その高い紙力効果から抄物を問わず広く使用されるようになった。近年の共重合型紙力剤はポリマー設計の改良により濾水性の付与が可能となり, 濾水性が異なるさまざまな製品が上市され, マンニッヒ型紙力剤を使用した処方やホフマン型紙力剤からの置き換えも進んでいる。
    ただ, 共重合型紙力剤の濾水性向上手法はポリマー中のイオン基偏在によるいわゆるイオンコンプレックスによるものであり濾水歩留剤の高カチオン・高分子量化による手法とは根本的に異なっている。このような紙力剤への濾水性付与が紙地合へ与える影響やそれに伴う紙力効果の変動については, 詳しく解明されておらず, また, それらが抄造条件により受ける影響も体系的にとらえられているとは言い難い。
    抄造条件に適した紙力剤を選定するために, 高濾水性紙力剤の濾水性を低下させる4つの変動因子に着目し, これらの因子による濾水性の挙動とそれに伴う地合及び紙力の挙動変化について検討した。
  • 今井 隆之
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1566-1571,013
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    環境に配慮したパッケージの基本的視点は, reduce, reuse, recyclingである。一方で, パッケージに求められる最大の機能は内容物の保護である。その他に, 利便性, 商品の差別化, 経済性が要求される。今後は, 環境への配慮とこれらの要求の調整が最大の課題である。さらに本稿では, 環境への配慮とパッケージに要求される機能との調整により実用化されている代表例について述べる。
  • 村山 定光, 村田 守, 平岡 宏一
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1572-1578,013
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    携帯電話機やDVC (デジタルビデオカメラ) などの電子機器に対する高性能化や小型軽量化, 高速処理化要求は, 年々高まっている。このような要求に対応すべく, プリント基板の実装密度向上や小型軽量化, 薄型化も加速されつつある。しかし従来のドリルによる孔あけとメッキ加工からなるスルーホール構造のガラス繊維/エポキシ樹脂基板では, 孔の小径化に限界が生じるばかりでなく, この孔が配線や配線引き回しの障害になって, もはや電子機器市場の要求に対応できなくなりつつある。そのような市場背景下にあって, 新だにフォトやレーザーで, 精密なマイクロビアを容易に形成できるビルドアップ構造多層基板が関連業界で渇望されていた。
    我々は, パラ型アラミド繊維の有する耐熱性や寸法安定性, 軽量性, レーザー加工性などに着目して, プリント基板に最適な不織布を開発, 適用することに成功した。このアラミド不織霜/エポキシ樹脂からなるプリント基板は, 表面平滑性や軽量性, 面方向の熱寸法安定性に優れているばかりでなく, レーザーによる微細な孔あけ加工が自由にできるため, 高密度実装化も可能となって各種の電子機器に採用され, 特に携帯電話機の軽量と高性能化, 薄型化に大きく貢献したものである。
  • ボストローム バーント
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1579-1585,014
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    多色刷りオフセット印刷において, 印刷機内での経過時間, 紙張力および紙品質に依存した紙構造内への水分移動量の結果として発生する寸法変化は, 操業性に影響を与える原因となる。この紙の特性は, 異なる平衡相対湿度下での紙片試料の寸法変位より計算される “Hygro-Expansion (湿度膨張)” として伝統的に呼ばれている。紙が印制ニップ間でのプレスセクション内を走行している問に発生する寸法変位に起因する問題があるので, この平衡した測定条件下で求められる “静的” 値は全ての操業性の問題と相関しない場合がある。本稿において, 蒸気 (%RH) より水分が供給される場合の “Dynamic hygro-expansion (動的湿度膨張)” と, オフセット印刷で水分が紙表面に印刷される場合の “Dynamic hydro-expansion (動的水分膨張)” について述べる。異なる品質の新聞紙と塗工紙のテスト結果より, 動的プロセスで発生する2次元的寸法変位の問題に注目する利点が明らかになった。
  • 太田 節三
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1592
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 李 鎔奎, 安 国憲, 空閑 重則
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1593-1598,015
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    親水性の塗工層を持つインクジェット用紙の特徴を動的走査吸液測定, ドットの画像解析および表面の走査型電子顕微鏡観察により解明した。非インクジェットグレードの未塗工紙および塗工紙と比してインクジェット用紙は短時間に顕著な表面吸液を示したが, そのパターンは製品により多様であった。走査吸液測定による水吸収時間に対して, ドット面積は相関がないが真円度は負の相関を示した。すなわち, 速やかな吸液は円形のドットを作るのに有効である。光沢品と艶消し晶を比べると前者の方が真円度が低かったが, これは走査型電子顕微鏡観察の結果から塗工層のカレンダ処理で生ずる割れ目の影響と考えられた。
  • 塗工紙の光学特性と印刷物の色彩科学的因子の制御
    濱田 仁美, 江前 敏晴, 尾鍋 史彦, 斉藤 陽子
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1599-1606,015
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    近年粒子内部に空孔を有する中空球状粒子が, 塗工紙の軽量化や光学特性を向上させる有機顔料として注目されている。そこで本研究では, スチレン・アクリル共重合体の中空球状粒子からなるラテックス (以下中空粒子と呼ぶ。) を配合した塗工紙の光学特性を評価し, 通常の密実粒子からなるラテックス (以下密実粒子) と比較した。また, その印刷物の色彩科学的因子への影響について検討した。
    塗工層のみの白色度と比散乱係数を算出する式をKubdka-Munkの式から導き, 塗工層のみの光学特性を評価した。塗工層のみの特性を評価することは, 塗工量の異なる場合でも比較できる点で優れている。中空粒子を含む塗工層は密実粒子を含む塗工層よりも白色度, 比散乱係数ともに高い値を示した。塗工層にある中空粒子の空孔はカレンダリング後も完全にはつぶれることなく維持され、中空粒子のポリマ) 層と内部の空気層との界面での光散乱により, 比散乱係数が向上する。塗工層の白色度と比散乱係数の向上により原紙の低白色度をおおい隠す効果が現れ, 塗工紙の白色度が向上した。また, 集束イオンビームにより加工した塗工紙断面の観察からも, 塗工層内部の中空粒子はほとんど潰されず, 中空構造を維持していることが示された。印刷物の色彩科学的因子の変化は, インキ転移量と平滑性の関係から説明できた。塗工紙の平滑度が上がるにつれ, インキ転移量が下がり, 印刷物の明度が上昇した。印刷物の明度は, 主にその下地にある塗工紙の平滑性によって決定されるが, 中空粒子配合の塗工紙の場合は, インキ転移量の影響のみならず, 塗工層の比散乱係数の上昇に伴い, 塗工紙の明度がかなり上昇し, これも印刷物表面の明度上昇に影響を及ぼしたと考えられる。
  • 大昭和製紙株式会社本社工場鈴川事業所
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1607-1615
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
  • 最近の注目特許
    2001 年 55 巻 11 号 p. 1616-1617
    発行日: 2001/11/01
    公開日: 2010/10/27
    ジャーナル フリー
    本発明はオーブンで使用可能な食品用トレー (1) 及びその製造方法に関するものである。板紙または厚紙のトレーに, 本発明の少なくとも1つの高分子コーティング (3, 4) の層が供給される。トレーの少なくとも食品と接触する側にこのコーティング層が形成され, また, このコーティングは, 交互に並ぶ珪素と酸素原子を有する無機系の連鎖または架橋高分子主を有し, 有機系の基または有機系の鎖により形成される側鎖及び/又は架橋結合を含む重合架橋構造を為している。トレー (1) は, 反応性成分を含み, 重合されて耐熱性で且つ耐油脂性のガラス状コーティング (3, 4) を形成する混合液を, 板紙 (2) の少なくとも一方の面に, 好適には両面に点着し, このようにして得られるコーティングされた板紙からトレーを形成することにより製造される。重合される成分は, エポキシド等の架橋有機化合物がそれと反応するオルガノシランであってよい。このようにして得られるコーティングされたトレーは耐水性で且つ耐油脂性であり, 通常のオーブンや電子レンジの操作温度に耐えることができる。
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