紙パ技協誌
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72 巻, 4 号
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新入社員歓迎号
  • 小関 良樹
    2018 年 72 巻 4 号 p. 359-360
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
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  • 第二報 パイロットテスト
    宮西 孝則
    2018 年 72 巻 4 号 p. 361-367
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    著者らは日本製紙の研究所において,サーモメカニカルパルプ(TMP)製造工程のチップ前処理としてキレート剤や苛性ソーダを用いることで,漂白性が著しく向上し,晒薬品が節減され,TMP最高白色度が上昇することを明らかにした。一方,米国の新聞用紙工場ノーパックではTMP製造工程において,一次リファイナー後の原料をスクリーン処理することによって,パルプ化された繊維を分級して二次リファイナーをバイパスさせ,省エネを図るインターステージスクリーン技術の工場テストを行っていた。しかし,バイパスによってアニオントラッシュが抄紙機に持ち込まれ,抄紙機でのピッチトラブル等の弊害が発生し,このプロジェクトは中止になっていた。また,ノーパックでの抄造品種転換ニーズや,北米での植林事情等により,大量に持続的に入手できる安価なダグラスファーチップを使用できれば,大きなコストメリットが得られる可能性があったが,ダグラスファーは過酸化水素との反応性が低いことなど,乗り越えなければならない大きな壁があった。

    著者はノーパックに転勤し,前述のチップ前処理とインターステージスクリーンを組み合わせることでピッチトラブル等の課題を解決できると考え,パイロットプラントテストを実施して2009年に有望な結果を得た。そしてノーパックは2012年に実機設備を導入し,大きな省電力効果を達成するとともに,高白色度中質書籍用紙の製品ポートフォリオを拡張した。日本で研究を開始してから12年の歳月を経て,米国でプロジェクトは成功裡に終了した。

  • 永田 紳一, 澤本 英忠, 酒巻 紀江, 森川 貴子
    2018 年 72 巻 4 号 p. 368-372
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
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    製紙工業において,紙の坪量と水分率を測定することは,品質管理上のみならず,商取引上においてもたいへん重要である。現行のBMシステムは約40年間の歴史において,ほとんどが水分率は赤外線,坪量は放射線(β線)で測定されてきている。しかし,放射線は人体に悪影響を与える危険性があるため,安全上の規制や対応が必要となっている。

    一方,我々は過去にマイクロ波を使ったオンライン繊維配向計やオンライン微量水分計を開発してきた経緯がある。繊維配向は紙の誘電率の異方性から,水分は紙の誘電損失率から測定される。我々は,オンライン繊維配向計の開発当時から,共振周波数のシフト量から繊維配向だけでなく坪量も測定できることは気づいていたが,水分によっても共振周波数が変わるため,もう一工夫必要であった。そこで,紙を絶乾部分と水部分に分けて考え,それぞれに誘電率と誘電損失率を想定し,共振周波数のシフト量(=Δf)が誘電率と体積の積に比例し,共振ピークレベルの変化(=ΔP)は,誘電損失率と体積の積に比例するので,ΔfとΔPを測定し,連立方程式を解く形で,絶乾部分の体積と水部分の体積をまず計算し,そこから坪量と水分率を算出する方法を見出した。

    この新しいBM測定用のソフトウエアをオンライン繊維配向計に移植し,実機マシンを使って長期に亘り,既存のBM計と同時測定を行い,その測定精度や実用性について比較検討を行った。その結果,既存のBM計との高い相関性等,良好な結果が得られたので,その測定結果および測定原理について報告する。

  • 小岩 豊史
    2018 年 72 巻 4 号 p. 373-377
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
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    抄紙用ワイヤーはワイヤーパートで使用される用具であり,その役割は①パルプスラリーの脱水,②紙質の形成,③次工程(プレスパート)への搬送の3つである。特に,紙質形成に関しては紙の出来上がりを左右する重要な役割であるため,その要求度は高い。近年,製紙業界における高品質,高生産性への要求が高まり,抄紙機は大型化,高速化へと発展している。抄紙ワイヤーもその要求を満たすべく常に進化し続けている。

    当初,理想的なワイヤーと考えられた3重織(第一世代)は,横糸による接結構造であり,接結強度が低いことから内部摩耗が発生しやすく,急激な普及には至らなかった。研究改良により3重織は第二世代,第三世代へと発展し,現在では抄紙機にて使用されているワイヤーの主流となっている。当社では更なる紙品質の向上,操業性の向上を目指し,高速ギャップフォーマー及び高速広幅マシン用として,横3重織を発展させた新組織(N-FAST)を開発した。

    N-FASTは縦糸1層,横糸3層で構成されており,3重織で問題となっている内部摩耗は発生しない。したがって巾方向のプロファイルも改善し,末期まで安定した操業が可能である。また,N-FASTは最適な脱水特性であることに加え3重織より流れ方向の剛性がしなやかであり,適度な湿紙水分でのパルス効果により地合改善も見込める。

    本稿では,抄紙機の発展とともに進化し続けているプラスチックワイヤーの1重織から3重織の特徴を紹介する。さらに,N-FASTの特徴について紹介する。

  • 久米田 和寛
    2018 年 72 巻 4 号 p. 378-382
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
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    製紙分野における酵素を利用した技術事例は多岐に亘り,様々な用途へ応用が検討されている。酵素の使用により種々の製紙工程改善や紙・板紙製品への様々な特性付与効果が期待される。一方で酵素に充分な働きを行わせるには,古紙中の夾雑物による酵素定着阻害や酵素の作用条件がネックとなり,酵素の使用には制限が掛かっているのも事実である。そこで本報では夾雑物を多く含む古紙パルプでの酵素処理として,作用の異なる複数の酵素を併用し,酵素の接触効率を高めるとのコンセプトのもと,ピッチコントロール及び脱墨への応用検討を行った。古紙中の夾雑物の剥離作用を持つ酵素をピッチやインキの分解作用を持つ酵素と組み合わせることで,古紙パルプ中で効率よく,ピッチの粘着性低減効果と,古紙の脱墨性向上効果(白色度向上,ダート数の低減)を示した。複数の酵素の併用により,酵素が有効に働く適応条件を拡げることが期待できる。

    今後はコンセプトの検証・有効な酵素系薬剤の模索とともに,弊社が手がけているポリマーとの組み合わせ・相乗効果により操業安定化,コストダウン,品質向上等へ貢献したいと考えている。

    また,本報では紙質改善,操業性改善を目的とした弊社酵素製品についても合わせて紹介する。

  • 林 靖浩
    2018 年 72 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    中越パルプ工業㈱高岡工場では,抄紙機での品種構成見直しにより針葉樹漂白パルプ使用量が減少した。このため設備能力が過大となることが多くなり,生産効率,エネルギー原単位が悪化していた。また老朽化した設備の機器メンテナンスのコスト増,建設後51年経過している建屋の耐震強度不足が問題点としてあった。これらの問題を解消すべく,針葉樹漂白設備及び建屋を新設し2015年12月に操業を開始した。

    アンドリッツ社製洗浄機を選定した理由は,省スペースでの多段洗浄が可能であり,薬品,エネルギー原単位の改善が見込めること,また運転停止作業に対するオペレーターの負担が小さいことである。

    蒸気ハンマリングの発生しない加温装置ソラリス,ドラム高圧洗浄機オシュレーター,クリーナー後脱水機GFF,漂白自動制御システム晒ACE等を導入し,稼働当初から様々な問題点はあったものの,その都度改善工事,調整を行い,現在はおおむね安定した操業状態となり,操業状況および原単位の改善を得た。

    電力原単位は,晒4段シーケンスを3段シーケンスへ1段減らしたことで改善した。蒸気原単位は悪化したが酸脱工程の温度アップによりΔ白色度,ΔKappa価は大幅に向上した。薬品原単位は有効塩素換算で6%改善した。また漂白自動制御システム晒ACEの導入効果によりパルプ白色度のバラつきを大幅に低減させることができた。

    今後の課題として,さらなる薬品,エネルギー原単位の改善,白色度自動制御を最大限に生かした操業に努めたい。

  • 木村 悟朗, 内田 有治, 榎田 順一
    2018 年 72 巻 4 号 p. 388-391
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    本報告は,飛翔性昆虫類,特にユスリカ類に対する防虫網の効果について試験した。40目(目開き:503/549μm)ではユスリカ類の通過が認められたが,その他の防虫網では通過しなかった。

    一方,アザミウマ類については50メッシュ(目開き:330μm)でも通過した。さらに,本報告では,侵入対策以外に重要となる接近対策としての照明管理と早期駆除としてのライトトラップについて,最新の知見を中心にレビューした。

  • 渡邉 竜平
    2018 年 72 巻 4 号 p. 392-395
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    BTGは2006年に,ベロイト社のOEMとしてヘッドボックスシートやメタリングロッド・ベッドを製造していたIPI社(現BTGアメリカ工場)を買収し,現在はBTGブランドにてこれら製品の販売をしている。このためBTGアメリカ工場は,ヘッドボックスシートやロッド塗工分野において,豊富な経験と最先端の技術を有し,世界でも数少ない提案・最適化に特化したサプライヤーの1つとして認知されている。

    ヘッドボックスシートは古くからある技術でありながら最新マシンにも搭載され,地合や繊維配向・プロファイルといった紙製造における最も基本的でかつ重要な品質に大きな影響を与えることが知られている。設計当初とは異なるマシン速度や原料配合・坪量帯での操業を余儀なくされているマシンも多いことから,現状の操業条件とヘッドボックスシート・デザインがマッチしていない事例も多く見受けられる。BTGでは単にリプレース品の提供のみならず,膨張エネルギー解析を活用したヘッドボックスシート・デザイン最適化提案も実施している。

    フィルムプレス(サイザー)やロッドコーターで使用されるメタリングロッドは,径や溝形状を最適化することにより,非常に大きなコスト削減をもたらすことができる。

    ヘッドボックスシートやメタリングロッド・ベッドはいずれも消耗品であり,巨大なマシンにおいて小さなパーツの1つに過ぎない。しかしこれらのデザイン最適化は,大きな設備投資を必要とせずに,コスト削減や品質改善に大きなインパクトをもたらす。本稿ではこれら商品の最適化事例の一部について紹介する。

総説・資料
  • 先名 康治
    2018 年 72 巻 4 号 p. 396-413
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    日本製紙連合会は日本経団連加盟の他の業界団体と共に,1997年より環境自主行動計画を策定し,毎年その取り組み状況を公表して来た。2013年度からは2020年度に向けて新たな環境行動計画として「低炭素社会実行計画」を策定し,地球温暖化防止に積極的に取り組んでいる。主な活動目標は以下である。

    ・2020年度に化石エネルギー由来CO2の排出量を,BAU比(2005年度のCO2排出原単位基準)で139万トン削減する。

    ・森林資源の確保とCO2吸収のため国内外の植林事業を推進し,2020年度までに植林面積を70万haに拡大する。

    2017年度のフォローアップ調査結果(2016年度実績)によると,2005年度の化石エネルギー由来CO2排出量2,494万トンに対し,2016年度のCO2排出量は1,796万トンとなり,削減率は28.0%であった。また,CO2排出原単位は,2020年度の目標値0.853t-CO2/tに対し,2016年度の実績値は0.770t-CO2/tとなった。これは,各社が省エネルギー対策や,非化石エネルギー源であるバイオマス燃料への燃料転換対策等を積極的に推進してきた結果である。

    本報告ではこの調査結果を報告するとともに,現在の日本の紙パルプ産業のエネルギー事情や2021年度以降の2030年度に向けた温暖化防止対策となる低炭素社会実行計画(フェーズⅡ)の概要,さらには温暖化防止対策に関する最近の情報を紹介する。

  • 大井 洋, 田上 歩, 幸田 圭一, 浦木 康光, 古川 貴大, 松本 雄二
    2018 年 72 巻 4 号 p. 414-422
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル 認証あり

    The 19th International Symposium on Wood, Fibre and Pulping Chemistry was held in Porto Seguro, Bahia, Brazil on August 30-September 01, 2017. Totally about 140 researches were presented(oral 80, poster 60). Presented researches covered wide range of chemistry and were divided into sessions:pulp chemistry versus bleachability and quality, pulping, biorefinery, chromophore formation and brightness stability, bleaching of dissolving pulps, bleaching for biorefinery purposes, lignin, lignin biosynthesis, nanomaterials, dissolving pulp, hemicelluloses, analytical, lignin preparation, lignin product, and lignin based resins. In this report, some of presentations will be briefly introduced.

シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (122)
総合報文
  • 宮西 孝則
    2018 年 72 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    [早期公開] 公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    オゾン漂白では排水の有機塩素化合物が著しく低下し,オゾン漂白パルプを配合した紙製品は環境に優しく,市場から高い評価を得ている。オゾン発生装置の効率は初期よりも50%以上改善されており,パルプ強度を損なうことなく蒸気と漂白薬品費を削減できる。

    製紙工場の自家発電能力に余裕がある場合は,二酸化塩素ECF漂白よりもコスト競争力がある。高い到達白色度が得られ,色戻り,ピッチトラブル,叩解エネルギーが減少し,溶解パルプをオゾン漂白する場合は粘度を正確にコントロールできるなど様々なメリットが報告されている。オゾン漂白は中濃度(パルプ濃度12%)または高濃度(パルプ濃度40%)で行われる。

    中濃度オゾン漂白は既存設備を利用できるため投資金額が安価で設置面積が小さい。反応が速く,脱リグニンの選択性に優れ,パルプ強度についても従来の塩素漂白パルプと同等レベルである。オゾン漂白と二酸化塩素を組み合わせたZDを多段漂白シーケンスの初段に設置すると低コストで最大の脱リグニン効果を発揮する。

    高濃度オゾン漂白では,オゾンガスとパルプ繊維が直接接触して反応するので,反応効率(ΔKN/kgO3)が高く,オゾンを高添加できる。高濃度オゾンリアクターは大気圧より若干負圧で運転するため,オゾンガスを圧縮する必要がなく,オゾンガス漏れが防止でき安全である。

    実機が稼働し始めた1990年代は改造工事が主体で設備費が安価な中濃度が優勢だったが,2000年以降は高濃度設備が改良され,中濃度と高濃度が拮抗している。2000年以降に世界で稼働した新しいオゾン漂白設備の50%を日本の製紙会社が所有している。二酸化塩素ECF漂白とオゾンECF漂白のどちらを選ぶか,オゾン漂白を選択する場合,中濃度オゾン漂白と高濃度オゾン漂白のどちらが有利か,工場の諸条件を十分勘案して最適な漂白シーケンスを選定することが肝要である。

  • Takanori Miyanishi
    2018 年 72 巻 4 号 p. 435-439
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/01
    ジャーナル フリー

    Ozone bleaching began on an industrial scale in 1992 in connection with increasing environmental pressure and customers’ demand for Elemental Chlorine Free(ECF)and Total Chlorine Free(TCF)bleached pulps. Ozone bleaching did not immediately reach its optimal efficiency from a technical viewpoint, but had to face several issues during its early years. By improving mixing technology, better understanding ozone chemistry on pulp components and tuning the whole process, ozone bleaching sequences made it possible to produce a pulp quality similar to or better than conventional ECF would do. They mark a clear milestone in the development of environmentally sound bleaching methods. Today the choice of ozone may still be motivated by ecological requirements but it is mostly justified by the economical savings resulting from chemical cost reduction. They allow combining high brightness and strength with cost efficiency. Ozone bleaching is conducted either at medium or high pulp consistency, depending on ozone bleaching process suppliers. The choice of one process over another depends on a number of factors – including investment costs, carry-over load, bleaching filtrates recirculation and bleach plant temperature profile and others.

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