紙パ技協誌
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77 巻, 7 号
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省エネルギー特集 II
  • 藤本 友行
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 575-577
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    1986年に日本初のオンラインコーターマシンとして運転を開始した新潟工場6号機は,2019年の停機後の転抄改造を経て,2020年3月新潟県内初の段ボール中芯原紙マシンとして営業運転を開始した。
    塗工紙マシンから段ボール中芯原紙マシンへの改造における注目すべき点の一つに,エネルギー効率が挙げられ,6号機においても転抄以降,幾つかの省エネルギーを目的とした改善を進めてきており,その代表的な事例を紹介する。
    原料工程においては,ダブルディスクリファイナーの運用方法に着目し,品質の安定化と省エネルギーの両立を達成し,最大で400 kWの省エネルギーを確認した。抄紙機においては,ワイヤーパートの駆動負荷低減を目的としたワイヤーの適用により,注目すべき負荷低減による省エネルギーが確認された。
    昨今の原燃料の高騰によるエネルギーコストへの影響は増大しており,更なる省エネルギーに取り組んで行く必要がある。設備の最適化による省エネルギーを継続的に進めて行くことで,更なる高効率化を目指していく。
  • 林 輝
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 578-584
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    王子マテリア㈱釧路工場では,計器用(オイルレス・除湿)エアと雑用エアを各々専用のコンプレッサから供給している。
    この内,計器用エアは,3台のコンプレッサから2台の除湿機を介し供給しているが,主力機が老朽化により維持困難となったことを受け,更新を計画するにあたり,構内のエア消費状況を調査し,露点管理基準,除湿方式の見直しを行った。
    その結果,プラントに必要な計器用エア消費量を約15%削減した上で,計器用エアコンプレッサを1台に統合し,更新を実施した。
    更新後,課題が2点確認された。1点目は,想定を超える計器用エア消費量の削減により,計器用エアコンプレッサに余力が生じ,供給過多によるサージングが発生したことである。
    2点目は,1台に統合更新した計器用エアコンプレッサは,電力会社側の系統に接続されているため,電力会社側での事故等による系統連系解列(工場単独運転)時に,計器用エア圧力を維持できず,ボイラ・タービン,用排水設備等のユーティリティー設備が停止する危険性が高いことである。
    これらの課題を解決するため,計器用エアコンプレッサを2台体制とし,電力系統側の他,自家発電側に接続された既設1台をハーフ運転(50%ロード・アンロード切替運転)で残すことで,突然の系統連系解列時も計器用エア圧力を維持できるようにした。
    また,供給過多となる計器用エアの一部は,除湿前エアとして雑用エアラインへ供給し,既設雑用コンプレッサを1台停止することで,計器用及び雑用エア全体でバランスを取り,省エネを図った。
  • 恩田 英
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 585-589
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    蒸気システム最適化プログラム(SSOP®)は,蒸気システムを「視える化」し,蒸気システムをアセットとして捉えて本来のパフォーマンスが発揮できるよう最適化し維持する継続可能なマネジメントの「仕組み」を提供する。SSOP®は,ドレン排出箇所管理(BPSTM®)と蒸気システム総合診断(CES®Survey)から構成されている。
    CES®Surveyは,四つの特徴がある。①プラント全体の省エネルギーポテンシャルを明らかにできる。②蒸気と電力の最適なバランスを分析する。③個別の提案テーマについて具体的な改善策を立案する。④蒸気システムに潜むリスク箇所を洗い出し,その改善方法を立案できる。
    本報告では,製紙工場における省エネルギー提案の事例を5つ紹介している。1つ目は,脱気器の蒸気排出の削減であり,投資を必要としないテーマである。2つ目は,ボイラブローダウンからの熱回収であり,幅広い工場で適用可能な事例である。3つ目は,製紙工場特有の設備である蒸解釜のドレンから生じるフラッシュ蒸気の有効利用の提案である。4つ目は,抄紙機のドレネージシステムの改善である。5つ目は,ヤンキードライヤーにおいて生産性と省エネルギーの両立を達成した事例である。
    実際のプラントは,上記事例をそのまま適用できるとは限らないが,CES®Surveyではプラント全体を網羅的かつ総合的に診断することによって,現場に合わせた最適な提案が可能である。
  • 吉村 秀治
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 590-594
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    スチームトラップ不良が生じると,無駄な蒸気を大気中へ排出したり,詰まりが発生した場合はドレン障害による操業不調・生産効率低下の原因になる。スチームトラップは工場内に多数設置されているにも係わらず,単体のエネルギーロスが少量であることや,蒸気漏れを計測できる測定器がないため,省エネ工事の対象として扱うことができず,修繕として1台ずつ交換していた。しかし,近年株式会社テイエルブイ(TLV)は,蒸気漏れ量の計測可能な測定器を開発したことから,数値化できるようになり,省エネ工事として交換できるようになった。
    日本製紙では,この測定器を使用して工場内のドレン排出個所調査及びデータベース化を行い,スチームトラップの故障原因を分析し,ベストモデルを推奨するTLVの診断システム「BPSTM(2009年度省エネ大賞受賞)」を採用し,全社のスチームトラップ最適化と蒸気漏れを極小化する取組みを2011年度に3工場で開始した。省エネ工事としてメリットを確保できる確認がとれたので他工場にも展開し,直近では10工場まで拡大させて,更に採用工場を増やす予定である。
    今回は,BPSTM導入後の省エネ実績について報告するとともに,蒸気用途別のスチームトラップベストモデルについて紹介する。
  • 坂東 竜弥
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 595-599
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    気候変動対策は近年の国際社会において重要な課題となっており,我が国においても同様である。当社においても最重要課題の一つと捉え全社一丸となって対策に取り組んでいる。
    小松島工場では省エネ,省CO2対策を近年で加速化させており,2021年度の実績は2013年度比のエネルギー使用量は14.7%削減,CO2は35.9%削減となっている。原単位ベースの改善結果として,2021年度の実績は2013年度比エネルギー原単位32.2%改善,CO2原単位39.3%改善となっており,地道な取組みが結果として表れている。
    主な取組みとして,まずA重油からLNGへの燃料転換が挙げられる。ガス化そのものは昨今珍しいものではないが,省スペース化等の最新技術を盛り込んだVサテライトを導入した。スペースは従来の1/6程度で,工期の短縮,メンテナンスの簡素化といったメリットが挙げられる。蒸気ボイラーに関しても省スペース性や負荷追従,排水処理,運用上のメリットが工場のニーズに合った設備導入を行った。他の燃焼設備として,熱媒油ボイラーと排ガス処理装置があるが,総じて燃焼トラブルが無くなったことや効率が改善したことでメリットにつなぐことが出来た。また,コンプレッサーの更新では台数と容量のバランスの見直し,Zスクリュー圧縮機を持つ水潤滑コンプレッサーの採用といった改善を試みた。工場のエネルギー使用における改善も小規模なものの数多く取り組んでおり,改善効果の背景となっている。
  • 西浦 弘智
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 600-604
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    大王グループの大津板紙株式会社では,2004年1月にガスタービンコンバインドサイクルシステム(GTCCシステム)の運用を開始し,大幅な環境負荷低減と省エネルギーを達成した。近年,継続した省エネ活動による構内電力・蒸気量の大幅な削減によってGTCCシステムのエネルギー利用率が低下すると共に,老朽化したGTCCシステム更新の必要性が生じていた。近隣が住宅街であり,狭小地スペースでの設備更新を余儀なくされる中,単純な設備更新ではなく,現状に即した全体最適化とメンテナンス性・運用管理の簡素化を企図。更新前はガスタービンコージェネ+排気再燃ボイラー+蒸気タービンから構成されるGTCCシステムであったが,ガスタービンコージェネ+貫流ボイラーで構成されるシンプルなシステムに更新。また3階建て架台を用いたレイアウトにするなど工夫を施し,狭小地スペースへの設置を実現,6.0%のCO2排出原単位削減を達成した。本稿では,設備更新に至った経緯と省エネ・CO2排出原単位削減事例を紹介する。
  • 福島 輝行
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 605-606
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    Heat shielding materials can be used in all kinds of industries and construction sites (roofs, walls, floors, equipment, cars, pets, tanks, tents, refrigeration, freezers, helmets), which are energy-saving materials with infinite possibilities. Although there are ups and downs depending on the surrounding environment and conditions, energy savings of about 30% can be expected.
  • 正木 慎二
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 607-611
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    地球温暖化抑制のために,CO2排出量の削減が世界で強く求められている。日本においても,2050年カーボンニュートラルの実現を目指すことを,政府が宣言した。IHIでは政府方針である2050年カーボンニュートラルに向けて,脱CO2循環型社会と快適で安心な自律分散コミュニティの実現を目指している。火力発電で使用される燃料の多くは石炭,石油,天然ガスなどの化石燃料であり,燃焼にはCO2の排出を伴う。今後はCO2ゼロエミッションに向けてCO2を排出しないカーボンフリー燃料への転換を進める必要がある。その一つとして有望なものがアンモニアである。
    石炭焚設備へのアンモニア導入については,石炭に対して発熱量ベースで20%混焼する技術開発を行なってきており,実証段階に来ている。開発段階では窒素酸化物(NOx)と灰中未燃分の抑制が重要課題であったが,これらを所定の値に抑制することが確認できた。実証に向けては実機の実運用に即した運用特性の把握が必要であり,これについても検証を行ない実証試験バーナの設計条件を見出すことができた。
    アンモニアのガスタービンでの利用については,従来の気化したアンモニアガスを燃焼させる方式から変更し,液体アンモニアをガスタービン燃焼器に直接噴霧して利用する技術の開発に取り組んでいる。この手法のメリットとしては,アンモニアを気化する装置や熱源が不要となるため,アンモニア供給装置全体の構造が簡略化できる点などが挙げられる。液体アンモニアの安定燃焼やエミッション低減に着目した燃焼器の開発を進めた結果,GHGが99%以上削減可能である燃焼技術を開発した。
  • ―トランジション期の低炭素対策から連続性を持って脱炭素を目指す重要性―
    吉田 裕
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 612-618
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    欧州に端を発したカーボンニュートラルの波は,2019年から急速にグローバル規模で拡大しており,2050年におけるカーボンニュートラル社会の実現は人類の共通課題と言える。
    日本においても,2020年11月の菅元総理大臣によるカーボンニュートラル宣言後,各企業が急速にカーボンニュートラルの実現を目指している状況。
    カーボンニュートラルの実現に向け,再生可能エネルギーの利用拡大により電力のグリーン化が進展しているが,一方日本の民生・産業部門のエネルギー消費の6割を占める熱エネルギーの脱炭素の進展は定まった打ち手が現段階では乏しく,2050年カーボンニュートラル実現に向けては熱エネルギーへの対処が重要課題と言える。
    熱エネルギーの脱炭素を実現するためのキーアイテムは“グリーン水素”である。このグリーン水素を社会実装し,拡大して行くためには経済性との両立が必要不可欠であり,そのための有効な打ち手が“e-methane”の活用であると考える。
    本稿では,“e-methane”の大規模な社会実装による熱エネルギーの脱炭素実現を目指した各種活動の最新状況を記載する。
総説・資料
  • 和田 徹
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 619-621
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    国内で稼働中のソーダ回収ボイラ向電気集塵機(EP)の大半は,経年劣化が進んでいる。他方,回収ボイラも設計負荷以上となっている事が多い中で,EPの捕集性能の低下が工場操業に影響を来すことも多い。EPの性能改善への対応策として,経年劣化した内部品の交換,整流器の交換,EP制御装置の更新,従来型整流器から高周波電源装置への更新等が考えられる。喫緊の問題として,EP構成部品製造メーカの撤退もあるが,アンドリッツでは他社製EPの更新も行っている。
    内部品は経年劣化により機器の腐食のみならず,アライメントのズレが多くみられる。機械的な僅かなズレであっても電気的にEPの荷電状態を悪化させ,性能低下の一因となる。調整で対応可能な場合もあるが,通常は内部品の更新と調整を同時に行い,捕集性能の長期的な維持を目指す。
    EPの荷電制御によっても,荷電状況の改善が可能となる。高ダスト負荷の運転状況においては,空間電荷効果の影響でダストの捕集性能が下がるが,アンドリッツの第4世代コントローラは,従来型コントローラと比較して高い電流値が得られるよう設計されている。
    SIR®(スイッチング高周波電源装置)は商用周波数を利用した従来型整流器とは出力波形の違いにより,スパーク発生からの復帰に要する時間が少ないことから,高い平均電流・電圧をEPに与える事出来る。また,ガス流れ上流側の荷電区にSIRを設置することにより系内が安定し,下流側が従来型整流器のままであっても,全体的な性能改善につながる。
    アンドリッツは機械的・電気的双方のアプローチから,最終的な目標であるダスト捕集性能改善につなげていく。
  • 千浦 光彦
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 622-625
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    三菱製紙株式会社八戸工場の動力設備は回収ボイラ,石炭ボイラ,廃棄物ボイラが常用で稼動している。回収ボイラは,黒液を燃料とし安価なエネルギーを工場へ供給する他にパルプ蒸解薬液を回収する重要な役割を担っている。
    回収ボイラでのエネルギー効率向上には,燃焼用空気を可能な限り少なくし(排ガスO2濃度を下げる),排ガスのヒートロスを低減することが必要である。また,薬液回収を安定的に行うためにはチャーベッドを安定的に形成し,高い還元率を維持する必要がある。この両者を達成するためには,黒液の噴射量に応じた燃焼空気の一次,二次,三次の振り分けの最適な調整が重要である。
    八戸工場の4号回収ボイラにバルメット社の最適制御システムを導入し,スーツブロワー使用蒸気削減,排ガスO2濃度ばらつき低減による蒸気発生量向上,還元率向上による苛性化での投入生石灰の削減を達成することができた。
  • ―CO2排出量削減の取組紹介―
    山田 忠弘
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 626-629
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では,カーボンニュートラル実現に向けた世界情勢と日本に与える影響について解説し,CO2排出量削減のためのシステム活用でのユーザの課題およびYOKOGAWAの提案するソリューションについて紹介する。
    2021年,カーボンニュートラル実現に向けた活動が世界から10年以上遅れているといわれていた日本が,政策として2030年に46%削減(2013年比)を宣言したことにより,これまでの省エネを中心とした取組が,CO2排出量削減に急激に変化する。
    サプライチェーン排出量の公開や,製品毎のCO2排出量の算出が急務であり,さらにCO2排出量削減を実現することが求められる。
    YOKOGAWAでは,FEMS(Factory Energy Management System)を活用し,見える化でとどまらず,蓄積したデータを活用して効率よくムダの原因解析を行うソリューションを提案する。
    改善担当者の労働生産性を低下させず,エネルギー生産性を向上しCO2排出量削減に寄与する解析手法を提案する。
  • 宍戸 正弘
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 7 号 p. 630-635
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    2021年9月から稼働を開始したレンゴー淀川流通センターでは,自社開発のトラック管理システムやピッキングアプリ,日本では初号機となるレーザー誘導方式の自動クランプリフト,RFIDシステムなどを導入した。
    トラック管理システムは,物流関係者の情報共有や業務効率化に,ピッキングアプリは淀川流通センターでの事前荷揃えに効果を発揮している。淀川流通センターでのトラックの平均滞在時間は30分を切るなど,トラックドライバーの待機時間削減に大きく貢献している。自動リフト8台を有する自動倉庫は,当初の設計通りの能力を発揮し,倉庫全体の運営に効果を発揮している。
    RFIDシステムでは,自動倉庫への入庫時と,流通センターからの出荷時の自動読み取りを可能にしており,後者はトラックドライバーの附帯作業の低減,及び安全対策に繋がっている。RFIDの取組は,サプライチェーン下流の段ボール工場での活用があり,既に一つの工場をモデルとして荷受時間の削減に貢献しており,他工場への展開や他社の参入も期待される。
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