感染症学雑誌
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55 巻, 2 号
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  • 主として肺胞マクロファージ機能の障害と修復について
    二木 芳人
    1981 年 55 巻 2 号 p. 71-82
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    NO2, 暴露後は, 肺胞マクロフアージの機能的障害により, 肺の感染防御機能が低下する事はよく知られている. 今回私は, 20ppm NO2, 18時間暴露直後, および暴露24時間後のマウスを用い, その感染防御機能の障害と修復についての検討を行なつた.
    肺炎桿菌 (B-54) を用いた噴霧感染実験では, 暴露直後群は肺内菌増殖や, 肺炎の完成は速やかで, 生存期間も短縮されるが, 暴露24時間後ではすでにコントロールと同様の状態に復していた. 32P標識S.aureusを用い, 機械的除菌作用を比較したが, 3群間で有意差は認められなかつた.
    肺洗浄で得られるマクロフアージについて検討した結果, 以下の成績を得た.;(1) 採取された細胞は数, および分類で各群に差はなかつたが, 感染後の好中球の出現は, 24時間後群で最も著明であつた. (2) NBT還元試験での殺菌能の比較では, むしろコントロールは, 暴露後の2群に比して有意に低値であつたが, ラテックス貧食後の増加率では, コントロールが3.59倍と著明な充進を示し, 24時間後群でも2.19倍であつたが, 直後群は1.16倍で殆んど変化をみなかつた. (3) β-galactosidase, acidphosphataseのラインゾーム酵素活性は3群間で有意差を認めなかつた.
    以上より, NO2, 暴露直後の感染防御機能の障害は, 肺胞マクロフアージの殺l菌作用における, 反応性の低下によるもので, その回復は比較的早いものであると考えられた.
  • 宮崎 佳都夫, 中森 純三, 西尾 隆昌
    1981 年 55 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    サルモネラ症の疫学的背景を究明する一環として1978~79年に広島市内の公園に群棲するハトのSalmonella保有状況を観察した. 12,840個の新鮮な糞便について検索した結果, 213株 (12血清型) が分離された. 検出率はヒト散発患者と同様に盛夏に最高となり, 冬期には低下した. ハトの排出Salmonella生菌量は101~104/g (MPN) と計測され, 一時的な通過というよりもむしろハト体内で増幅が行われ, リザーバーを演じているものと判断された. 検出菌はS.typkimuriumが193株 (90.6%) と圧倒的に多く, 1株を除いてはすべてcopenhagen型であつた. その他は散発患者からごく一般的に検出されるS.tkompson, S.montevideo, S.livingstone, S.infantis, S.cerro等を含む20株 (11血清型) であつた. 同時期の散発患者からの分離株も半数近くがS.typhimuriumであつたところから, ハト・患者両由来株についてCordanoら, Brandis変法およびDuguidら (primary) の各生物型とO5抗原の有無を比較検討した. ハト由来株の96.9%はb: 10: 25/O5-と型別されたがこの型は患者株にはまつたく認められなかつた. しかしa: 1: 1/05-, a: 2: 17/05-およびb: 10: 26/O5+の3生物型 (4株) は両者に共通にみられ, 前2型は患者株にかなり高率に認められる型であつたS.typhimurium以外の血清型菌株はハト・患者両由来株の性状がよく一致した. 以上の諸点から, ヒトサルモネラ症への関与の可能性はハトが高率に保有するS.typhimurium b: 10: 25/O5-よりもこれ以外の生物型および血清型の方がはるかに高いものと考えられる.
  • I. 血清抗毒素の消長
    海老沢 功, 松橋 直, 山本 昭夫, 黒須 吉夫, 大塚 敏文
    1981 年 55 巻 2 号 p. 92-100
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/11/25
    ジャーナル フリー
    破傷風治療に用いる抗毒素は馬を免疫して作つたもの (TAT), あるいはヒト免疫グロブリンより成るもの (TIG), 最近ではとくに後者が主として使われている. 後者は筋注im用であるのでTIG (m) と呼ぶ. これは通常3,000~5,000国際単位iuが使われるが30~50m1に相当し, これを筋注される患者には負担がかかる. 静注iv可能なTIGとしてTIG (i) が開発されたのでTIG (i), TIG (m), TATを種々なルートから注射して血中抗毒素の消長をしらべた.
    TIG (i) は低温エタノール処理して得られた免疫グロブリンをさらにプロピレングリコールで処理し, IgG aggregateを除去したものである.
    抗毒素の排泄速度はTAT, iv>TIG (i), iv÷TIG (m), iv>TIG (m), im+TIG (i), iv>TIG (m), i. m. という結果が出た.
    TIG (m) のim注射では最高値に達するのに2~4日かかり, 注射量の約1/3しか流血中に入らない. TIG (i), TIG (m), TATの静注では全量が血管内に入り, 注射後速かに最高値に達する. またTIG (m) の筋注では必らずしも注射量に比例して高い値が得られなかつたが, 排泄速度は最も遅かつた.
    血清中抗毒素価が0.01iu/m1の値が持続する期間はTIG (i) の静注後, 1,500iuで約7±2週, 3,000iuでg±2週, 250iuでは2~3週であつた.
    静注可能なTIG (i) は破傷風の治療と予防に十分使用しうる理想的な製品と考えられる.
  • II. 臨床的効果と副作用
    海老沢 功, 黒須 吉夫, 大塚 敏文, 松橋 直, 山本 昭夫
    1981 年 55 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    破傷風患者に静注用破傷風免疫ヒトグロブリンTIG (i) を1,500~3,000iu (17人), あるいは筋注用のTIG (m) をすでに注射してある者 (9人) にさらにTIG (i) を1,500iu静注して治療を行なつた. onset time 2日以内のもの12人, 人工呼吸を要するもの7 人などかなり重症例もあつたが死亡例は2 人であつた. これは従来の抗毒素 (ウマ) を用いた治療時の成績から得た期待死亡数9.3人をはるかに下回るよい成績であつた.
    また外傷患者102人にTIG (i) を250または1,500iu静注して破傷風発病予防を試みた. 患老の中には複雑骨折, 組織挫滅の強いものが多数あつたが, 破傷風発病者は1人もなかつた.
    TIG (i) を静注された者は合計128人に達したが, 発疹やアナフィラキシー様ショツクを起こしたものはなかつた.
    TIG (i) を破傷風治療に用いるときはその重症度に応じて1回1,500~3,000, あるいは, 3,000~4,500iuを静注するだけでその目的を達し得よう. 発病予防には250~500iu 1回の注射をすすめる. 広汎囲の第II度火傷例や開腹手術を要する例ではその注射時期と量を考慮する必要がある. 排泄速度の速かな例が上記患者には見られるからである.;
  • 第2報妊婦及び非妊婦の腟内におけるB群溶連菌検出率の検討
    大橋 浩文
    1981 年 55 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    女性の産道に常在するB群溶連菌 (GBS) は, 近年, 新生児敗血症や髄膜炎の原因菌の一つとしで圧目されている. 今回, 妊婦及び非妊婦のGBS陽性率について, 妊娠時期別, 月経周期別, さらに年齢別に検討し, GBS陽性例については血清型を検討したので報告する.
    対象は, 中央鉄道病院産婦人科外来患者301名 (妊婦177名, 非妊婦124名) であり, GBSの検出方法は, 滅菌綿棒で腔粘膜を擦過し, 腔帯下を採取, 滅菌シリカゲル入り小試験管内へ挿入し輸送後, Pikeの培地にて増菌し, 5%羊脱線維素血液加ハートイソヒュージョン培地にて分離培養した. コロニーの形態, 溶血性, バシトラシン威夢株試験及びPhadebact Streptococcus Testにて群別を確認し, 神奈川衛研の抗血清を用いて血清型を検査した.
    妊娠のGBS陽性率は13.6%で, 女壬娠時期こおける陽性率の変動濡めなかつた.
    非妊婦のGBS陽性率は218%で, 月経周期に伴う陽性率の変動は認めなかつた:
    なお, GBS陽性率は加齢とともに増加する傾向があり, 閉経後では35.3%であつた.
    GBSの血清型については, 妊婦ではIII型, Ia型が多く, 非妊婦ではIa型, Ic型が多かつた. III型が妊婦に多く, 非妊婦に少なかつた (p<0.05) こと以外に特徴ある所見はなく, また, 妊娠時期における血清型の変化は認めなかつた.
  • 山田 良成, 斉藤 敏明, 坂本 裕, 海野 良二, 山本 泰秀, 林 茂, 中村 英世, 藤森 一平, 三井 健司, 鈴木 弘造, 荻原 ...
    1981 年 55 巻 2 号 p. 116-123
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Cefoperazone (CPZ) は新しく開発されたセファロスポリン系抗生剤である. 本剤は既存のセファロスポリン系抗生剤に比し, 抗菌力の増強, Pseudomonasaeruginosa, Enterobacter, indole (+) Proteusまでの抗菌スペクトラムの拡大がなされ, また血中濃度半減期は約120分と長い. このような本剤の特徴を考え, 本剤の低量投与での臨床的検討を行なつた.
    1日投与量を1gとし, 44例の臨床例に使用した. その内訳は呼吸器感染症17例, 乳腺炎2例, 膿瘍1例, 軟部組織感染症6例, 耳鼻咽喉科領域感染症11例, 尿路感染症5例, 骨盤死腔炎2例であつた. 成績は, 軽症例が数例含まれていたが, 著効17例, 有効22例, やや有効2例, 無効3例で有効率は88.6%と高率であつた. また, 前投与抗生剤無効例5例中4例に対して有効を示した. 細菌学的効果については, 検出された起炎菌20株中15株が消失し, 消失率は75.0%であつた.
  • 斉藤 厚, 下田 照文, 長沢 正夫, 田中 光, 伊藤 直美, 重野 芳輝, 山口 恵三, 広田 正毅, 中富 昌夫, 原 耕平
    1981 年 55 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.軽症の糖尿病を有する大酒家であつた. 昭和55年10月28日発熱と意識レベルの低下を来し, 当科へ入院した.著明な炎症所見と低酸素血症による呼吸性アルカロージスがみられ, 敗血症としてβ-lactam系抗生剤による治療を行なつた. 入院2日目から胸部レ線上右下肺野に浸潤影が出現し, 治療にかかわらず陰影は増強し, 11月1日死亡した. 市販のCulturebottleによる血液培養を5回施行したが菌陰性であつた.
    剖検時採取した検体の菌検索で, 肺穿刺吸引物, 肺組織からB-CYE培地のみにLegionella特有の集落の発育をみた. 胸水からはモルモットを通して培養陽性であつた. 血液からはBiphasic midiaへの直接接種およびモルモット接種によっても菌検出はできなかつた. 直接蛍光抗体法 (DFA) では肺吸引材料と肺組織でSerogroup Iにより特異蛍光を発する小桿菌陽性, また, 血清抗体価は間接蛍光抗体法 (IFA) で, 死亡時の血清にて, Serogroup Iに512倍と高値を示した.
    検出菌の生物化学的性状から本菌をLegionella pneumophila, Serogroup Iと同定した. 確認のため本菌株をLos Angeles, Wadsworth VA Medical Center (Dr.P.H.Edelstein) に送付し同様の結果を得た.
    本症例は直接培養陽性, DFA陽性, IFAでも抗体価の上昇がみられ, 本症診断のすべてを満足するものであつた.
  • 村田 銀蔵
    1981 年 55 巻 2 号 p. 129-139
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
  • 1981 年 55 巻 2 号 p. 140-142
    発行日: 1981/02/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
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