感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
62 巻, 9 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 作用温度, 溶存物質濃度の抗菌作用に及ぼす影響
    山吉 孝雄, 土井 均, 巽 典之, 國田 信治
    1988 年 62 巻 9 号 p. 765-771
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    オゾンの医療領域での応用は, 今日急速に広がりつつある. そこでオゾン注入率, 作用温度, 溶存有機物質濃度等と抗菌作用効率との関係について検討し, 数理論的解析を行った.
    溶存物質を含む水相中において, 一定の作用温度における, オゾン注入率は, 溶存有機物質濃度が高くなるに従って, 増加する傾向が認められた. その殺菌効率は, 溶存有機物質濃度とオゾン注入率の関数で示された. 即ち, 溶存物質を含む水相中における殺菌効率は, 微生物数に直接関係するのではなく, 溶存有機物質濃度に依存していることが明らかとなった. また作用温度については, 低温域の方がオゾン注入率も低く, 殺菌効率も上がることが認められ, 作用温度依存性があることが明らかになった.
    これらのことは, 今後, オゾン滅菌法の応用領域における有効な指標となりうると考えられる.
  • 第2報過去7年間の材料別薬剤感受性成績の検討
    山崎 悦子, 水岡 慶二, 増田 剛太, 中江 太治
    1988 年 62 巻 9 号 p. 772-782
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    都立駒込病院において1979年4月より1986年3月までの7年間に臨床材料から分離された細菌の薬剤感受性成績を材料別に集計し検討した. 調査対象は1菌種について7年間の分離菌株数を100株以上としたので, 菌種は16菌種, 菌株教は30, 921株, 材料は尿, 膿, 耳漏, 喀疾および咽頭粘液であり, その結果は次の通りである.
    (1) 材料別の感性率間に有意差を認めたのは, S. aureus, S. epidermidis, Enterococcus sp., E. coli, Citrobacter sp., Klebsiella sp., Enterobacter sp., Serratia sp., P. mirabilis, Acinetobacter sp. およびP. aeruginosa であった.
    (2) 尿由来株の感性率を基準として, 他材料由来株を, 有意差検定した結果, 上記のグラム陰性桿菌では, 全般的に尿由来株で最も耐性株が多く, グラム陽性球菌では, 膿, 喀疾および耳漏由来株に耐性株が多かった.
    (3) 前報で記したように, 今後も問題となるであろうS. aureus, Enterobacter sp. およびP. aeruginosaについて, 材料別感性率の年次推移は, 尿, 膿, 耳漏, 喀疾, 咽頭粘液の順に, 年々耐性株が多く出現し, この7年間で最も耐性化の著しかったのは喀疾であった.
    以上のことから今後の感染症の課題はこれら三菌種による下気道感染症であろうと考えた.
  • 船戸 豊彦, 北村 嘉男, 川村 明廣, 内田 孝宏
    1988 年 62 巻 9 号 p. 783-791
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    室戸地方に発生した紅斑熱リケッチア症2症例の臨床経過, 検査成績, 治療について記載し, さらに昭和58年10月より3年間に経験した23症例の臨床的疫学的検討を行なった. 患者は全年齢層に分布し, 性差はみられず, 発生時期は4月から10月であった. ベクターは明らかにされていないが, 感染から発症までの潜伏期間は4-7日であった. 高熱 (38-40℃) と紅斑はすべての症例にみられ, 熱型は弛張熱を示すものが多く, 紅斑は米粒大から大豆大で, 体幹・四肢に現われ, 治療の遅い例では皮下出血性となるものがあった. 一部には手掌に発疹を認めた. 刺し口は症例の半数にあり, 所属リンパ節の腫脹は2例にみられたが, 全身のリンパ節腫脹は認められなかった. その他の症状として, 食思不振, 頭痛, 嘔吐, 関節痛, 悪寒戦慎, 全身倦怠感, 血圧低下, 精神障害等が認められた. CRPは強陽性を示すものが多かった. 白血球数はほぼ正常値内にあったが, 5,500/mm3以下が半数例にみられた. 白血球像は急性期には好中球の増加とリンパ球の減少, 回復期に好中球の減少とリンパ球の増加がみられ, 好酸球は消失する例が多かった. 血清トランスアミナーゼは12例中9例に軽度乃至中等度の上昇をみた. Ricketts montmaを抗原する蛍光抗体法で, すべてIgGおよびIgM抗体価の上昇を示した. 治療は発症後1-7日で開始され, テトラサイクリン系薬剤が有効であり, 2-5日で解熱し, 臨床症状は改善した. 死亡例なく, 後遺症もみられなかった.
  • 新垣 民樹, 一瀬 休生, 山本 耕一郎, 岩永 正明
    1988 年 62 巻 9 号 p. 792-797
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    エルトール型コレラ菌及びNAGビブリオが産生する溶血素の検出と定量に対し, 生物活性 (溶血) と抗原活性 (凝集) による方法を併用してみたところ, エルトール型コレラ菌で溶血活性を示したものは56株中33株であったが, 55株から溶血素の抗原活性を検出することができた. NAGビブリオで溶血活性を示したものは55株中52株であり, 抗原活性を示した株は54株であった. エルトール型コレラ菌では溶血素の抗原活性が高いにもかかわらず溶血活性を示さない株が多数見られた. NAGビブリオでは溶血活性と抗原活性の強さはおおよそ一致していた. 静置培養と振愚培養を比較すると, エルトール型コレラ菌では静置培養において圧倒的に溶血素産生が高く, NAGビブリオでは株によって全く異なっていた. 溶血素の生物活性が不安定なことを考えると抗原活性による溶血素の検出, 定量 (逆受身ラテックス凝集法) は有用な方法であると思われる.
  • IPAzyme法と蛍光抗体法との比較
    田島 マサ子, 武田 史子, 安田 和人, 沖永 公江
    1988 年 62 巻 9 号 p. 798-804
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    伝染性単核症の病因として, またはBurkittリンパ腫, 上咽頭癌等に密接な関連があるウイルスとしてEpstein-Barrvirus (EBV) は広く知られている. またEBVの関連抗原に対する抗体測定には蛍光抗体間接法がおもに用いられているが, 我々は酵素抗体法 (IPAzymeキット) によるEBV抗体の測定を行ない, 酵素抗体法の特異性を蛍光抗体間接法と比較検討し以下の成績を得た.
    1) VCA-IgG抗体測定において両者間の相関係数は0.51であり, 一管差を誤差範囲とすると不一致率は41.0%であった. その中でIFA法に比べ, IPA法が2管以上高い抗体価を示したのは26.3%(IM7例, 肝脾腫大2例, 慢性EBV感染症1例) で, EBVの初感染像を示す例が殆どであった. 一方IFA法で2管以上高い抗体価を示したのは14.3%で (白血病2例と肝炎1例) EBV感染の可能性が少ない症例であった. 2) IgM抗体の検出率で両者間で一致しなかったのは46.7%認められた.それらの被検血清は非特異反応が認められる自己免疫疾患例が殆どで, IFA抗体は陽性, IPA抗体は陰性であった. 3) VCA-IgA抗体の検出率はIFA法は5.9%, IPA法は22.3%であった. これらの成績から, IgM, IgA抗体の様に検出しにくい例ではIPA法がIFA法より優れていることが判明した. またIPA法によるIgA抗体陽性者ほとんどがEBV初感染によるIMとVCA抗体価の高い悪性リンパ腫の患者であった. しかしVCA抗体価が高く (VCA640倍, NA160倍以上) EBVの再活性が認められる, 胃癌患者には1例も認められなかった.
  • 林 純, 柏木 征三郎, 池松 秀之, 野口 晶教, 池田 潔, 新宮 世三
    1988 年 62 巻 9 号 p. 805-810
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    医療従事者に対してHBワクチンを接種し, その抗体反応の推移を, 最長5年に渡って調査した.
    対象者は262例 (男性61例, 女性201例, 平均35.1歳) で, HBワクチン20μgを3回 (初回, 1ヵ月, 6ヵ月) 接種した. 用いたワクチンは, 2社3種類のplasmaderived HBワクチンで, A群 (120例) にはY社製乾燥を, B群 (74例) にはY社製液状を皮下に接種し, C群 (68例) にはZ社製液状を筋肉内に接種した. なお, 対象者はHBs抗原, HBs抗体およびHBc抗体のいずれのHBVマーカーも陰性であった.
    HBs抗体陽性率 (RIA法) は, 3回目接種直後である9ヵ月で, A群では79.8%, B群では78.6%, C群では95.4%と最も高い成績を示した. 以後, A群は5年で42.3%, B群は4年で46.8%と減少したが, C群は4年で89.4%と殆んど減少はみられなかった. HBs抗体価 (PHA法) は, B群は9ヵ月で26.5倍, C群は1年で27.7倍と最も高値を示したが, 4年でそれぞれ24.5倍, 25.9倍と低下した. HBs抗体陽性率および抗行価ともにC群が最も良い成績であったが, これは用いたワクチンの製造法あるいは接種法の違いにあると考えられた.
    さらに, 9ヵ月でのHBs抗体価と5年後でのHBs抗体の状態を検討した. 9ヵ月の抗体価が27倍以上の群では, 4年後の抗体陽性率が97.4%, 24-26倍では76.2%, 23倍以下では30%と減少し, それぞれの間で有意差がみられた (x2test, p<0.05)-すなわち, 3回接種後の抗体価が低い例ほど, 4年後での抗体は陰性化する傾向を示した.
  • 伊藤 忠彦, 山崎 清, 中村 清純, 新開 敬行, 坂井 冨士子, 寺山 武, 薮内 清, 大橋 誠
    1988 年 62 巻 9 号 p. 811-817
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    東京都におけるツツガ虫病の防疫対策の一環として, 1985年4月より多摩地区の三保健所と協力し, 各管轄地域に生息する野鼠におけるツツガムシおよびRickettsia tsutsugamushi汚染の調査を行なった. 捕獲野鼠105匹中98匹をリケッチア分離試験に供したところ16匹 (16.3%) のApoaemus speciosus (アカネズミ) からR. tsutsugamus勉が検出された. また, 間接蛍光抗体法 (IF) および補体結合反応 (CF) による血清学的試験においてもリケッチア分離の成否にかかわらず多くの個体においてR. tsutsugamushiに対する抗体が認められ, 多摩地区の広い範囲におよぶ野鼠のリケッチア汚染が確認された. 分離されたR. tsutsugamushiはすべてKarp近縁株と同定された. 分離株はマウス腹腔内接種により次代マウスに容易に継代することができたが, L929細胞での継代はできなかった.
    捕獲野鼠に吸着していたツツガムシは3属8種であった. 新型ツツガ虫病を媒介する種として知られるLeptotrombiaium palliaum (フトゲツツガムシ) は町田, 福生および五日市の三保健所管内で, Leptotrombiaiumscutellare (タテツツガムシ) は五日市保健所管内で捕獲された野鼠に認められた.
  • 大橋 誠, 伊藤 武, 斎藤 香彦, 高橋 正樹, 新垣 正夫, 森田 盛大, 斎藤 志保子, 船橋 満, 石原 政光, 小林 一寛, 田口 ...
    1988 年 62 巻 9 号 p. 818-825
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我が国におけるカンピロバクター血清型別のレファレンス・システムを確立することを目標に, 国際統一法が開発されるまでの間国内で利用すべき型別法を得るため, 8地方衛生研究所のす協同作業を開始した. 本報では, 東京都立衛生研究所で開発されたスライド凝集反応法 (TCKシステム) によって全国各地で得られたヒト由来Campyylobacter jejuni分離株を血清型別した成績を記載した.
    全国各地で発生したC. jejuniによる下痢集団発生37事例由来の335株について, TCK1からTCK33までの33型の型別用血清を用いて, 型別した結果は, 282株 (84.2%) が型別され, 53株 (15.8%) が型別不能であった. 前者の内242株は単一の型別用血清とのみ反応し, 40株は2種或いはそれ以上の型別用血清と反応した.
    集団事例ごとにみた場合, すべての分離菌株の血清型が一致したのが14事例であった. 2種類の血清型の菌株が分離されたのが10事例, 3種以上の血清型が分離されたのが13事例であった.
    散発下痢症患者から検出された1,064株では, 714株 (67.1%) が型別され, 340株 (32.0%) が型別不能であった.残りの10株はR型であるために型別出来なかった. 最も高頻度に認められた血清型はTCK1 (12.8%), 20 (12.3%), 4 (8.2%), 7 (6.8%), 24 (6.6%) などであり, これらの分布に地域的な偏りはなかった.次いで普遍的に認められた型はTCK26, 21, 6, 12, 10などであった.型別された714株の内95株 (13.3%) は2種以上の型別用血清と反応した.
    以上の結果から, 本血清型別システムは, 国際統一型別法が確立されるまでの間の実用に充分耐え得るものであろと考える.
  • 矢木 崇善, 佐野 浩一, 中林 愛晶, 坂中 勝, 森松 伸一, 田中 恵津子, 中井 益代
    1988 年 62 巻 9 号 p. 826-829
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    我々は, CD-4陽性リンパ球継代株であるMolt-4細胞を材料として使用し, 国産の無血清培地3種類 (ASF-101, ASF-102, SFM-101) と血清加培地とを, human immunodeficiency virus type1 (HIV-1) 感染細胞と非感染細胞の培養に用い, 細胞増殖速度とHIV産生量及び, reverse transcriptase assay (RT assay) に及ぼす影響について比較検討した. その結果, 蛋白含有量の少ない無鯖培地の方が, 血清加培地に比べて, HIV-1産生が多いと思われた. また, 無血清培地のRT assayに及ぼす影響は少なく, 比較的均一であるので, 培養上清そのものをRT assayにかけることができた.
  • 加藤 明彦, 深山 牧子, 稲松 孝思
    1988 年 62 巻 9 号 p. 830-834
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    肝胆道系由来のK. pneumoniaeによる転移性全眼球炎2例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. (症例1) 69歳, 女性. 39℃ 台の発熱, 右季肋部不快感にて発症. 第5病日には右眼窩痛, 視力低下が出現した. 眼窩蜂窩織炎にて眼窩内容摘出術を施行. また右季肋部不快感, 軽度のアルカリフォスファターゼ上昇, 画像診断より胆嚢炎と診断し, 胆嚢摘出術を施行した. 眼窩内容, 術中胆汁よりK. pneumoniaeが検出された. (症例2) 77歳, 女性. 39℃ 台の発熱, 嘔気にて発症.第3病日より左眼痛, 視力低下が出現し, 全眼球炎にて眼窩内ドレナージが施行された.入院後, 画像診断より肝膿瘍と診断し, ドレナージを施行した. 硝子体液, 肝膿瘍よりK. pneumoniaeが検出された. いずれも血液培養は施行されていないが, 肝胆道系感染に伴う菌血症に続発した全眼球炎であったと思われた. K. pneumoniaeによる転移性全眼球炎は, 今まで自験例を含め20例報告されている. 感染原発巣としては肝胆道系が15例 (75%) と最も多い. 視力に対する予後は悪く, 16例 (80%) は失明し, 残る4例も視力の著しい低下を残していた. 従って, 原発巣の検索も含め, 早期からの対応が必要と思われた.
  • 鵜木 哲秀, 中村 功, 藤沢 倫彦, 光岡 知足
    1988 年 62 巻 9 号 p. 835-840
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    Lactobacillus属による心内膜炎 (IE) は極めてまれである. 著者らはL. acidophilus groupによる本邦第1例目, 世界第3例目のIEを経験したので, 文献的考察を加えて報告した.
    基礎疾患としてFallot4徴症根治術後の肺動脈弁閉鎖不全兼狭窄症を有する26歳の家婦. 人工妊娠中絶後, 3ヵ月間, 微熱, 全身倦怠感, 食欲不振が続いた. 入院前後4回の血液培養すべてと子宮内分泌液からL. acidophilus groupの性状を示す菌が分離された.本菌はDNA相同性試験によれば既知の何れの基準株とも合致せず, おそらく新種と考えられた.IEと診断して, PCG1,200万U/日の静脈内使用を開始, 3週間後に軽度の顆粒球減少が出現したためPCGを中止し, EM1,200mg/日に変更した. 全期間を通じ, 心内膜や心弁膜のvegetationは認められず, 塞栓症も起こさず, 患者は第5病週に軽快退院し, 以後の経過は良好である.
    文献上報告されているLactobacillus属によるIE27例について検討した結果, Lactobacillus属によるIEの臨床像は緑連菌のそれと酷似していた.
  • 島田 雅巳, 山本 成郎, 上村 洋之助, 小谷 富男, 大滝 幸哉, 和気 典雄, 林 麻美, 佐々木 次雄
    1988 年 62 巻 9 号 p. 841-844
    発行日: 1988/09/20
    公開日: 2011/09/07
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性で腹痛と腹部膨満感を主訴に来院.腹部単純レ線像にて腹腔内遊離ガス像を認めたため緊急開腹手術を施行した. 術後8日目に腹腔内ドレナージよりの分泌液培養にてMycoplasmaを多数検出したためMinocyclineとDibekacinを各々100mg/日投与し術後44日目に治癒した.
    血清学的検査ではELISA法および代謝阻止法によりMycoplasmaに対する著明な抗体価の上昇が観察された. さらに, Immunoblottingにより回復期血清に物Mycoplasma hominisの特異蛋白に対する抗体が検出されM. hominisによる腹膜炎と確定診断された.
feedback
Top